美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.036】聖地の闇

カオスの禍々しい声に見送られ、シールドに守られるパレスの中へと避難したキング・エンディミオンたち。

クリスタルパレスの入口、長い廊下に着くなり、その場にいる誰もがパレスの床へ倒れ込んだ。

 

 

「ファイター…ヒーラー…メイカー…いやぁっ…!」

 

その胸に、彼女たちのスターシードを抱え、クリスタルパレスの廊下に泣き崩れるプリンセス・火球

息も切れ切れに、床に伏せるセーラーカルテットたち。

未だ ぴくりとも動かないガイアを傍らに寝かせるキング・エンディミオン。

 

そして、セーラームーンへと変身することができないネオ・クィーン・セレニティは床に伏せ、言葉なくパレスの壁にもたれかかったまま、僅かに開く唇は、ただ息をするだけで、何も語ることはない。

 

「セレニティッ!しっかりするんだっ!」

 

キング・エンディミオンは、ネオ・クィーン・セレニティに駆け寄り、彼女の肩を強く抱いた。

見つめるネオ・クィーン・セレニティの瞳が絶望に曇り、ぶるぶると震える唇が僅かに動く。

 

「…エンディミオン… 私…変身できなかった…。 私、信じてた…戦いの果てにある…希望と未来を…でも…変身できない… もう…戦えない…」

 

『変身できない』事実が、彼女から戦士としての使命を奪ったのだ。

 

『変身できない=戦えない』

 

いつだって『戦いの果てにある希望と未来を信じる』彼女にとって、それは生きる意味をなくすことと同義。

彼女の瞳から溢れる涙は止まることを知らず、クリスタルパレスの床にチカラなくこぼれ落ちる。

 

「君らしくないことを言うじゃないセレニティッ!ガイアを見るんだっ!君の輝きが、カオスから彼女を救ったんだぞっ!? 信じるんだ、君自身の輝きをっ!」

 

キング・エンディミオンはネオ・クィーン・セレニティの瞳から溢れる涙を、両手でしっかりと受け止め、すぐ横に寝かされたままのガイアへと視線をやった。

 

「ガイア…。あんなにも傷ついて…。本当に…ごめんなさいね…。やっと帰って来られた…ここが…あなたの故郷よ…。

あなたを傷つけないと言ったのに…あなたを守ると言ったのに…こんなことって…。

スモールレディ…ごめんなさいね…結局私…彼女を…ガイアを守れなかった…」

 

力なくガイアを見つめるネオ・クィーン・セレニティ、彼女の瞳から大粒の涙がいくつも いくつもこぼれ落ちる。

そんなネオ・クィーン・セレニティを抱きしめるキング・エンディミオンもまた、瞳から溢れる涙を、抑えることができなかった。

 

悲しみの嗚咽だけが響くクリスタルパレスに、長い長い沈黙が訪れる。

 

『…スモールレディ…ごめんなさいね… 』

 

 

 

 

---

 

「太古の昔に、光に捨てられたと言う…闇の乙女…?」

 

聖地エリュシオンで地上に祈りを捧げる神官エリオスの瞳が曇った。

スモールレディはつい先ほど、ダイアナが護る時空の扉を抜け、エリュシオンへと降り立ち、『祈りの塔』にいる神官エリオスを訪ねていたのだ。

 

「ねぇ、エリオス似てるでしょっ?!彼女にっ!」

 

スモールレディの声は震え、エリオスの腕を掴み、必死に叫んでいる。

 

「そんな、では…そのガイアと言う乙女が、ラーが失った闇だと…?ガイアの肉体が、ラーが失った身体だと…?」

 

 

『太陽の巫女=ラー』

 

 

彼女は、聖地エリュシオンで、地上に光を与えるために、太古の神々の力を借りて自身の身体から闇の部分を切り離し、光の存在となるためにその肉体を失った、言わば生贄。遥か太古の昔にラーが失ったモノが、ガイアだと言うのか。

 

「ガイアは言ってたわ!『ある日突然、眩しい光に照らされて、意識を失った。気付いたら、宇宙の片隅で目を覚ましてた。自分の存在は闇でしかない』って…。もし、ガイアが彼女なら、全部つじつまが合うのよっ…!」

 

 

スモールレディがひとしきりエリオスにまくし立てた次の瞬間、銀色のエリュシオンの風が、突然唸り声を上げると、薄ラベンダー色に照らされるエリュシオンの空が、ゆっくりと闇で覆われた。

 

「っ…!?エリュシオンの空がっ…! 地上で…何かが起こった…?」

 

叫んだエリオスの銀色の髪が、唸り声を上げる風に舞う。

 

「エリオス!何…?何が起こったのっ?!お母様たちはっ?!」

 

見たこともないエリュシオンの空、聴いたこともない風の音に怯え震えるスモールレディは、思わずエリオスの胸に飛び込んだ。

 

「スモールレディ、私にも、地上で何が起こっているのかわかりません。ただ、エリュシオンのこの空の色は、1000年前と同じ…。太陽が黒点で覆われ、太陽系が闇に染まったあの時…」

 

エリオスは唇を噛み締め呟いた。スモールレディを強く抱きしめる腕は、微かに震えている。

 

「…お母様を…お母様を助けなきゃっ!お願いっ!一緒に来てエリオスッ!力を貸してっ!」

 

エリュシオンの大地に泣き崩れるスモールレディをしっかりと支えるエリオスは、瞳を曇らせ、唇を固く結び、遥か地上に想いを馳せる。

 

その時…

 

… … …

 

 

歌声が響いた。

 

エリュシオンの空に、微かに響く美しい歌声。

いくつもの宝石の粒のように、闇に染まるエリュシオンの空から、ゆっくり…ゆっくりとこぼれ落ちる。

 

… … …

 

「…まさか…現れると言うのか… ?彼女がっ…?」

 

その歌声に、息をすることも忘れ、瞳を大きく見開くスモールレディの耳に聞こえる、エリオスの声。

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