美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

37 / 43
【act.037】最後の光

『…彼女がその姿を現す時…それは…

この世界が闇に染まる時… 』

 

スモールレディの胸の中で、激しい鼓動と共にエリオスの言葉が何度もリフレインする。

 

「まさか…現れると言うのか…?彼女がっ…?」

 

呟くエリオスは、スモールレディを抱きしめる腕に思わず力を込めた。

闇に染まる聖地エリュシオンの空。遥か向こうに浮かぶ『太陽の神殿』から、光の粒のように舞い降りる美しい歌声に合わせて、太陽の神殿が光り輝く。

 

歌声に乗ってまっすぐに伸びるひとすじの光が、エリオスたちのいる『祈りの塔』へゆっくりと舞い降りると、きらきらと輝くガラス片のような光の粒が、エリオスとスモールレディを優しく包んだ。

 

「やはり…君なのか…?ラー…!!」

 

自分たちを包む無数の光の粒を見つめ、エリオスは彼女の名前を呼んだ。

エリオスの呼びかけに応えるように、無数の光の粒が、ゆっくり、ゆっくりと、そのカタチを結ぶ。

 

… … …

 

金色の長い髪が揺れる。薄黄金色に輝く法衣が、闇に染まる聖地を駆ける灰色の風になびく。

白く、透き通るほど美しい肌に輝く金色の瞳。しなやかな両手にそっと携える、金色の竪琴。

長い指先が、竪琴をひとつ弾くと、彼女とエリオスたちを包む無数の光の粒が、噴水のように聖地の空へ散った。

 

… … …

 

訪れる静寂。

 

彼女の出現に、瞳を大きく見開き、息をすることも、瞬きすることも忘れたエリオスとスモールレディ。

そんな二人に、優しく微笑みかける彼女の唇が、ゆっくりと動く。

 

「…久しぶりね…エリオス…」

 

彼女の声はまるで、銀色に輝く水晶のように透き通る。

 

「ああ…久しぶりだね…ラー。エリュシオンの空が闇に染まり、君が現れた。わかっているさ…」

 

彼女が出現した理由を、エリオスは痛いほどよくわかっている。絶望と悲しみに曇るエリオスの瞳を見つめるラーは、それでも穏やかな笑みを浮かべている。

 

彼女の瞳に、『悲しみ』という感情はないのか、ラーは穏やかに語る。

 

「そうよエリオス…。先ほど地上が、そして太陽系が、カオスの放つ闇に覆われました…」

 

ラーの言葉を聞くが早いか、両膝をエリュシオンの大地に落とし、泣き叫んだスモールレディ。

 

「そんな。お母様は…?お父様は…?セーラーカルテットたちは…?みんな、みんなはどうなったと言うのっ?!ねぇっ!!みんなはどうなったと言うのっ?!教えてよっ!!教えてよっ!!ラーッ!!」

 

瞳から溢れる大粒の涙を、いくつも聖地へ落とし、ラーへ掴みかかろうとするスモールレディを、エリオスが強く抱きしめる。

 

「初めましてスモールレディ…

大丈夫よ。微かだけれど、地上にネオ・クィーン・セレニティの輝きを感じるわ。きっと彼女たちはまだ無事。

ごめんなさいねスモールレディ。こんな時ですら、私にはこうして微笑んでいることしかできない…

私には…『悲しみ』と言う感情は…ないの…」

 

スモールレディにゆっくりと微笑みかけるラー。ラーの言葉、そして、『悲しみ』を持たない瞳に見つめられたスモールレディは、ハッとした。

 

「ガイアッ…いえ…もう一人のあなたが地上にいるのっ!!あなたなんでしょ!?お願いよ ラーッ!みんなを助けてっ!!」

 

スモールレディがラーに叫んだ。

 

もう一人のラー=ガイア

 

スモールレディは確信していた。

 

この世界に、『悲しみ』しか感じることのできないガイア。

こんな時でさえ、『悲しみ』すら感じることのできないラー。

彼女たちは太古の神々によって引き離された、2人でひとつの存在であると。

 

「そう…。彼女…いえ、私を知っているのね。遠い昔、神様が引き離した…もう一人の私。

地上にカオスを呼んだのは、きっと私のせいね。ごめんなさいね、スモールレディ…」

 

もう一人のラー=ガイア がその身に取り込んだカオス。

 

「いいえっ!あなたも、ガイアも、なんにも悪くないっ!神様が決めたことなんでしょうっ?!

ラーもガイアも、全然悪くないのに、どうしてっ…!」

 

スモールレディはエリオスから聞かされている。彼女は地上に光を与えるために、神に選ばれた生贄だと言うことを。

 

「あなたは優しいのね、スモールレディ。大丈夫よ。地上が闇に染まる時、私が現れる。

私は、闇の中にこそ現れる…最後の光。カオスの闇も、私の光で照らしてあげる…それが私の使命…」

 

そう言って、携える金色の竪琴を握り締めるラーの姿。

 

『それが使命』と呟いたラーに、スモールレディは、胸に訪れた直感と共に、無意識に呟いた。

 

「使命…。あなたはまさか…セーラー戦士…?」

 

ラーの持つ特別なチカラ。ラーだけに与えられた、特別な使命。

スモールレディが本能的に感じた彼女の輝きは『セーラー戦士』の輝きであった。

 

「いいえ。私の存在は、光そのもの。セーラー戦士ではないわ。

私はスターシードを持たないの。いえ、持たないのではく、見えないの。

一切の闇を持たない私のスターシードが、そのカタチを結ぶことはないわ。だから…私はセーラー戦士になどなれない…」

 

呟いたラーの胸元が、キラリと光った。そこにスターシードがあるかのように。しかし、スモールレディたちの瞳に、彼女のスターシードが映ることはない。

 

「さあ、私は地上へ向かいます。 そうなれば、このエリュシオンは完全に闇に閉ざされ、あなたたちも無事では済まないわ。共に地上へ行きましょうエリオス、そしてスモールレディ、いえ…セーラー・テラ…」

 

テラ・クリスタル・パワー・メクアップッ!!

 

差し延べられたラーの手を取り、強く頷いたスモールレディの高らかなスペルアウトが、闇に染まる聖地の空に、輝く光の柱を貫いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。