ドクターとオペレーターの短編ラブコメ   作:機玉

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多分信頼度400ぐらいのラップランドとドクターの話


狼の執着心(ラップランド)

 ある日の朝、ボクはロドスで最も重要な区画のはずで、実のところ誰でも入れてしまう部屋にやって来た。

 そう、ここはドクターの執務室だ。

「やあ、ドクター。ここ、座るよ」

「こんにちはラップランド、今日はよろしく頼む」

「ははっ、お任せあれ。と言っても今日もドクターを見てるだけで終わりそうだけどね」

「流石にロドス内で護衛の仕事が多発したら問題だ」

「違いない。ボクは退屈だけどね」

 ドクターの秘書官はだいたい週替わり制で、今週はボクが指名されたのでこうして執務室にやって来た。

 秘書官の仕事は指名されたオペレーターによってまちまちで、僕は護衛担当になっている。

 恐らく事務が得意なオペレーターは仕事を手伝ったりもするはずだ。

 実際の所仕事内容自体は二の次で、こうして仕事を理由に各オペレーターと円滑なコミュニケーションを図るのが目的なのではないかと思う。

 僕はドクターの事はそこそこ気に入っているので、この秘書官の仕事も嫌いではない。

「流石に何もしないと暇だね、何か良い暇つぶしはないかな?」

「このパズルはどうだ? 結構面白いぞ」

「悪くないけど、そこは仕事を振ったりする所じゃないのかい?」

「気持ちはありがたいが……いや、そうだな。俺はたまに集中し過ぎる事があるからタイムキーパーを頼む。昼になったら知らせてくれ」

「それぐらいならお安い御用さ」

 これは取ってつけたような仕事、という訳ではなく実際ドクターは放っておくといつまでも働いてしまいそうな節がある。

 医療オペレーターにドクターが注意されている姿を見る事があるのも日常茶飯事だ。

 まるで失った記憶、中身がない自分の姿を埋めるように働くその姿はどこか危うく、美しく……

「ふふっ」

「……ラップランド?」

「何でもないよ、このパズルも悪くないけどやっぱりドクターを眺めてる方が楽しそうだ」

「……とてもそうとは思えないがなあ」

 首をひねりながらも再び仕事に集中するドクターをボクはソファからじっと眺めていた。

 そして昼になった頃、案の定集中したまま帰ってこないドクターにボクは声をかけた。

「ドクター、昼になったよ。さあ行こう、食事は大事だ」

「ん、もうそんな時間か……分かった行こう。っと、その前に」

「なに?」

「プレゼントだ」

 ドクターはボクの手を取ると小さな箱を置いた。

「これは……」

「良ければ開けてみてくれ」

 予想外の贈り物に正直困惑しながらも、ドクターに言われて開けてみるとなから出てきたのは小さなアクセサリーだった。

 翠色の宝石が付いたそれは、飾り物とは無縁の生活を送ってきたボクでもなかなか魅力的な物だと感じた。

「ラップランドがロドスに来てくれてからだいたい1年だろう? これはその記念だ」

「そんな事をわざわざ覚えてたのかい?」

「そりゃあ覚えてるとも、ラップランドと初めて会った時の名乗りは印象的だったからな」

「ハハハ、確かにあの時は第一印象を意識したからね」

 記念日か。

 祝うような日なんて今まで無かったしあまり縁がない言葉だ。

 今まで奪われる事は多々あれど何か貰うことなんて記憶する限りなかったから不思議な気持ちだ。

 何か欲しいと思う事もなかった。

 必要なら殺して奪ってやれば良かった。

 ボクに食ってかかってくる奴なんてはいて捨てるほどいたから。

 ここにくる前は殺すのに必要なものや生活に必要な物さえあれば事足りたので、今までのボクならアクセサリーなんてとっとと金か装備に変えてしまっていた所だろう。

「あーもしいらなかったら適当に換金して……」

「ねえドクター、せっかくだからキミがボクに付けてよ」

「俺がか? いや生憎俺にファッションセンスは皆無だから他の子に」

「どこでも良いよ、キミがくれたんだからキミが付けてくれないと」

「……髪に触れても良いか?」

「ふふっ、構わないよ」

 ドクターはアクセサリーに紐を通すとボクの左側のもみあげ前のあたりにアクセサリーを結んだ。

「こ、こんなものか?」

「良いんじゃないかな? ありがとうドクター」

「……ああ、喜んでくれたなら嬉しいよ」

 その時お礼を言った時のボクは、我ながら珍しくも満面の笑顔を浮かべていたんじゃないかと思う。

 ……いやはや全くもってボクらしくない事だ。

 

 

 

 その日からボクは基本的にその髪飾りを身に付けて過ごすようになった。

 アーミヤをはじめとした一部のオペレーターはこのドクターの贈り物をよく似合っていると褒めてくれた。

 ロドスはいい子が多すぎてボクみたいな日陰者には眩し過ぎるね。

 でもこのアクセサリーが素晴らしいのは本当で、部屋で何となく見ているとと不思議と何か満たされた気持ちになった。

 今までボクを満たす事が出来たのは歯応えのある戦闘による高揚感ぐらいだった。

 ああ、最近は腑抜けてしまったテキサスを煽るのも、ちょっとした娯楽にはなっていたけどね。

 まあともかく、そう簡単に消え去るような物でも無かったはずだ。

 そこにこのアクセサリーが突然割り込んでしまったわけだ。

 信じがたく、不可解な話。 

「ふふふ、全くドクターは最高だね」

「……ラップランド?」

「?」

 共有スペースでアクセサリーを弄びながらくつろいでいると、大変珍しくもテキサスがボクに声をかけてきた。

「やあテキサス、珍しいじゃないか君から声をかけて来るなんて。演習の誘いならいつでも歓迎だよ」

「そのアクセサリーは……?」

「ああ、これが気になったのか。我らがドクターの贈り物だよ。

 なんでもボクがロドスに来てから一年が経っただとかで。

 全く出来た上司だね。ボクでも貰えたぐらいだし君も貰えるんじゃないかな」

「……なるほど、ドクターか」

「ドクターがここに付けてくれたんだ。

 せっかくの贈り物だからあまり変な目では見ないでくれよ」

「いや、似合ってると思う」

「……は?」

「邪魔をした」

「いやちょっテキサス? テキサース!?」

 テキサスがボクに声をかけただけでなくアクセサリーを褒めた……?

 意味が分からない。

「なんだって言うんだ……」

 全くこのアクセサリーを付けてからボクの日常はかき乱されてばかりだ。

 然してボクはそれに困っているわけでもない。

 むしろ心地よい刺激とさえ感じている。

 全くもって、困った事だ。

 

 

「ねえテキサス、なんでわざわざあの子に声かけたの?」

「……アイツすらロドス……ドクターに絆されつつある事が信じられなくて、ついな」

「ふーん……まあ結論リーダー凄いって事ね!」

「……まあそうだな」

 

 

 はてさて今日もロドスの皆と戦場にやって来た。

 いつもどおり良からぬ事を企むテロリスト諸君との愉快な殺し合いというわけだ。

 名前はなんだったか、つい最近出来た組織って話だったけどまあボクには関係ない。

 ただボクと愉快な仲間達の前に立ちはだかる敵を斬るだけだ。

「悪くない位置取りだね」

 今日の戦場は廃墟が立ち並ぶ入り組んだ場所。

 隠れ場所が多いので待ち伏せにはもってこいだけど、隠れやすいのは敵も同じだから警戒が必要かな。

 今回の敵の部隊は大体小隊規模の人数との事なのでうまくやれば損失を出さずに済むはずだ。

 偵察部隊の連絡を待つとしよう。

『A7待機地点に敵の先鋒が侵入。奇襲せよ』

「了解」

 ボクは建物の上から剣を振るい斬撃を敵の首に飛ばす。

「なんだ!?」

「奇襲! 奇襲だ! 戦闘態勢!」

 命中確認。

 まだアーツは不要かな。

 武器を相手がこちらに気付いたが構わずに連撃を放つ。

「剣なのに遠距離攻撃だと!?」

「腕がっ! 俺の腕がぁっっ!!!」

「ハハハッ、脆すぎるよ君達? もっと抗ってくれよぉっ!!」

 挑発をして敵の注意をこちらに引きつける。

 ボクに注意が向けば後から味方の術師が一掃してくれるはずだ。

 まあ挑発はボクの趣味でもあるけどね。

「狼狽えるな!! 射撃用意!」

 おっと敵の指揮官が部隊をまとめ直したみたいだ。

 テロリストのくせになかなか良い動きをするね。

 アイツを真っ先に殺れればよかったんだけど、まあ流石にそこまで間抜けな部隊はそうはいない。

「おっと、危ない」

 敵がボクが乗っていた壁に手榴弾を投げてきたので地面に向けて跳躍。

 素早くを受け身を取って起き上がり、敵の方に斬撃を放って牽制する。

 敵は斬撃をかわすとこちらに向けて突撃してきた。

 数は10人。

「いいね、かかってきなよ!」

「おおおお!!」

 敵が振り下ろした鉈をかわし、すれ違いざまに足を斬る。

 まず一人。

 両脇から二人が迫る。

 ボクはここでアーツを起動した。

「遅いよ」

「ぐあっ!!」

「なっ、ぎゃあああっっ!!?」

 双剣から放ったアーツは両脇の二人を切り裂いた。

 肉塊と化して宙を舞う二人の後ろから更に仲間が迫る。

 悪くない判断だ、流石にアーツを放った直後は隙が出来やすいからね。

 普通なら。

「次行くよ」

「またアーツ!?」

「なんて奴だ……!!」

「ふふっ、ボクは前衛だよ? 隙が出来る技を使うわけないじゃないか!!」

 4人5人6人7人目、アーツ振るうと更に肉塊が増えて積み重なる。

 ボクの大好きなミルフィーユだ。

 しかしここに来て流石にアーツは打ち止めになる。

 残りの敵はボクの隙を見逃さず決死の突撃をしてきた。

 全く情熱的過ぎて困っちゃうな。

「イグニッション!!」

「うがあぁっっ!!」

「クソッ術師!?」

「ナイスタイミング」

 ここで味方の術師、エイヤフィヤトラ嬢の技が炸裂し部隊は全滅した。

 別の通路からも敵の悲鳴が聞こえてきたしこれでほぼ全滅かな。

 周囲の警戒を怠りながら高台の術師に周囲の様子を確認しようとしたその時。

 銃声が鳴り響いた。

「っっッッ!! ふふっ銃なんて素敵なオモチャ持ってるじゃないか……!!」

「ラ、ラップランドさん!! 今治療を!!」

 ボクに放たれた銃撃は急所こそ外したものの、肩の一部を抉り、髪を焼き切った。

 とはいえ治癒のアーツで治る程度の傷だ。

 ハイビスカスのアーツに身を任せ……待て、髪……?

「あ……」

 ボクが左のもみあげにがあった位置に触れ、そこにあるべきものが無いことを感じると咄嗟に地面を見回した。

 そこにはあった。

 無残に焼け焦げたアクセサリーが。

 思わず膝を折って地面のそれに触れる。

 ああボクは何をやってるんだ、今は戦闘中だからこんな事してる場合じゃないだろう。

 頭の片隅で理性がそうささやくがボクはそうせずにいられなかった。

 ボクのアクセサリーが、ドクターがあまり上手とは言えない付け方をしたそれは今、壊れてしまった。

 もう付けられる事はないだろう。

「ラップランドさん大丈夫ですか!? あと少しで治療が終わり…」

「……はは、はははははハハはははハハやっってくれたねゴミクズが!!!」

「ラップランドさん!!?」

 ハイビスカスの治療の完了を待つことなく、ボクの体は跳ねていた。

 どこだ、どこだ。

 ボクのアクセサリーを壊しやがったクソッタレはどこにいる!!

 銃撃を受けた場所から射線が通っている場所を見渡すと2階建ての建物がある。

「そこかぁぁああっっ!!」

 壁を跳躍したボクは近くの建物の屋根に飛び乗ると狙撃手を発見した建物に向かって駆け出す。

 敵の狙撃手はボクに向けて銃弾を放つが左右に飛んでかわした。

 狙撃銃は装填の動作が丸わかりな上に連射が効かないのは知っている。

 当たるわけがない。

 ボクは狙撃手のいる屋上に降り立った。

 目の前には死刑が確定した獲物が一人。

「ようやく会えたねえ……! ゴミクズ……!」

「ヒッ……!? クックソ!!」

 ボクが睨みつけると狙撃手は悪態をつきながらナイフを手に向かってきた。

 いいね、抵抗してくれなくちゃボクの気が晴れない!

「まずは右腕」

「ぐあっ!」

「左手も危ないかな?」

「ぎゃあっ!!?」

「いい声で鳴くねええ! もっと聞かせてよ!! さあもっともっと!!」

「やめろ! もう降参するやめてくれ!」

「ハハハハ、ふざけるなよ。まだ頑張れるでしょ? そうだ元気が出るようにもっと裂いてあげるよ!!」

「うわあああっ!!」

 ボクが次は足を斬ってやろうと剣を振り上げると、誰かが屋上に飛び込んできた。

 テキサスだ。

 テキサスは素早く後ろに回り込むとボクを羽交い締めにした。

「クソッ離せテキサス!! この臆病者!!」

「よせラップランド! もう十分だ!」

「コイツはボクのアクセサリーを壊したんだ!! こんな奴がボクの……!!」

『ラップランド!!!!』

 ボクがテキサスを振りほどこうとしたその時、連絡用のインカムから大声が響いた。

 ドクターだ。

 普段落ち着いたドクターがこんな大声を出すなんて珍しい。

 ああいや……こっちの声、ドクターにも、聞こえてるんだったっけ。

『……作戦終了だ。敵の生き残りは捕虜にして撤収する』

「……」

『ラップランド』

「……了解だよ、ドクター」

 ボクはテキサスの腕を外すと、剣を鞘にしまった。

「ラップランド」

「……なんだいテキサス?」

「……捕虜は私が運ぶ。お前は治療を受けて、休んでいろ」

 なんだい君がそんな事を言うなんて珍しいじゃないか、まるでボクを気遣ってくれてるみたいでなんだか逆に気味が悪いなあ……

 なんて、普段なら皮肉を交えながら絡んでいた所だろうけど、なんか、そんな気分じゃなかった。

「……ありがとう」

 結果、ボクらしくもなく素直にお礼を言って立ち去ることになってしまった。

 もう、いいや。

 今日は帰ってとっとと寝てしまおう。

 あーくそ……最悪の気分だよ全く。

 

 

 

 それから一週間、特に任務もないボクは、自室でだらだらしていた。

 ここ最近は朝にあの髪飾りを付けるのが習慣になっていたから、今は無いことを再確認してしまい余計に気分が上がらない。

 あの髪飾りがもう無いのを見られるのもなんとなく嫌で、ドクターにも会っていない。

 正直ここまで引きずっている事に、ボク自身が一番驚いてる。

 失った途端に気分がどうしようもなく盛り下がるなんて依存性の薬物でもあるまいに。

「そろそろ何か食べないとな……」

 ここ最近は部屋にある栄養バーと水で適当に食事を済ましていたけど、流石に尽きてしまった。

 仕方ないので買い物に出ようかと考え始めたあたりで、扉がノックされた。

 ボクの部屋を訪れるような人物はほとんどいない。

 せいぜいボクの鉱石病の件で医療オペレーターが訪れるぐらいだ。

 今回も検診の連絡か何かだろうと思い、扉を開けた。

「やあ、ラップランド」

 部屋の前にはドクターがいた。

 ボクは扉を閉めた。

「ラップランド、閉めないでくれ……」

「ドクター悪いけど今は会う気分じゃないんだ」

「ラップランド、私は医者だ。記憶喪失でだいぶ知識は失ってしまったが、それでも今塞ぎ込んでいる君が良くない状態なのは分かる。

 君が心配なんだ。扉を開けてくれないか」

「……」

 ドクターに説得され、無視するわけにもいかなくなったボクは扉を開けてしまった。

 ドクターの言葉は、どういうわけか抗い難い。

 どうせほとんど何もない部屋だから人を入れるのに支障は無い。

「ラップランド、まずこの前の傷は大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だよ。優秀な医療オペレーターのお陰で傷痕すら残ってない」

「そうか、良かった……ラップランド、ありがとう」

「何が?」

「ほら、この前。俺があげたペンダント壊された時怒ってくれただろ?」

「ああ……みっともないよね、あんな取り乱したりしてさ」

「それだけ大事にしてくれてたって事だろ? 嬉しいよ」

 面と向かってそう言われると照れてしまうので、思わず顔を背けた。

 ボクはここに来るまでお礼なんて言われて事なかった。

 ドクターはボクが手に入れた事無いものばかり押し付けてくる。

 そういうのは、どうしたら良いか分からなくて本当に困る。

「……別に、そんなお礼言われる事でもないさ。それにアレもう壊れちゃったし」

 ああ、思い出したらまた憂鬱になってきた。

「あーアレなんだがな、実は……はい」

 そう言ってドクターが取り出したのは、この前と同じアクセサリーだった。

「え?」

「そのアクセサリー、元はイヤリングでな。一組だったからもう一つあったんだ。

 いや正直ラップランドの戦闘は激しいからなくなる事もあるかなーと思ってな」

「……ふふ、あはは流石はドクター! なんというか、相変わらずの洞察力だね」

「付けるか?」

「お願いするよ」

 もみあげはこの前の戦闘で少し切ってしまったので、今回は左の頭の辺りに結んで貰った。

「これでよし、と。せっかくだけど戦闘中は外した方が良いかもな」

「ああそうだね、これからはそうするよ」

 あの時のアクセサリーはもう返って来ないけど、だいぶ気が楽になった。

 改めてあのアクセサリーがボクにとってどういうわけかとても大事だった事を自覚しながら、ちょっと苦笑いした。

「でも、ドクターの好意には甘えっぱなしだな。ボクだって気がひけるよ?」

 人との関わりが薄いボクでも、いやだからこそ無償の施しというのは落ち着かない。

 何か返せるものがあるなら越した事はない。

「うーんそうだな……まあそれならお返しはラップランド自身って事でおいおい返していってくれれば良いさ」

「は……? ボ、ボク……が?」

「ああ」

 ……いやはや、参った。

 ボクにとって人から求められるなんてのはそれこそ想像の埒外の事だ。 

 ボクなんて今までこの剣一本、いや二本で生き残ってきたからこそたまに人から必要とされる程度の者。

 大概は恐れられるばかりで人から求められるなんて以ての外だった。

 そんなボクを、ドクターが求めてくれるなんて。

 ああ、なんて……信じ難く、甘い夢だろうか。

「はあ……キミは、全くズルいやつだよドクター……」

「ラ、ラップランド?」

 気がつけばボクはドクターの腰を捕まえ顔をうずめていた。

 戦闘とは無縁の立場のくせに結構良い体をしてるじゃないか。

「ドクター、ボクはようやく気付いたよ。このアクセサリーがボクを狂わせていたんじゃない。

 キミがボクにこのアクセサリーをくれたという事実がボクを狂わせていたんだ。全く罪深い男だよキミは……

 そんなボクを欲しいだなんて……こうなったらこっちこそ手放すつもりはないから、覚悟してくれよ?」

 ボクは熱くなった顔を隠すようにドクターに抱きつきながら、あの宝石のように間違ってもこの男を手放す事がないように、固く抱きしめるのだった。

 さあそのままドクターの服に手をかけボクは脱がせようとし始めたわけだが……

「あ、あのラップランド。気持ちは嬉しいんだが……こうさっきのは単にロドスの貿易所とかで貢献してくれれば良いとかそういう意図で、その、ラップランドとの関係を求めていたわけでは……」

「……は?」

 今、イマ、コノオトコハナントイッタ?

「ラップランドは魅力的な女性だと思うがそういうのはもう少しお互いを知ってから」

「ド ク ター?」

「ひっっ!?」

「あのね、ボクは確かにそれと意識させる言動をしていないかも知れないけどこれでも女なんだから今の流れでそんなつもりは無かったとか言われたらこんのスケコマシ八つ裂きにしてくれようかとかそういう気持ちに

「待てラップランド本当に悪かった落ち着いてくれ!」

「これが落ち着いていられるか女の敵! 今日ここから逃げられると思うな!!」

「また出直してくる!!」

「待てコラー!!!」

 その日、ドクターとボクの追いかけっこはロドス中を駆け巡る大立ち回りに発展しこの騒ぎは当然ロドス中に知れ渡る事となった。

 ドクターの思わせぶりな言動には心当たりがあると多くの女性陣がボクの肩を持ってくれたのは不幸中の幸いではあるのかも知れないが、

 代償としてボクが経験した事のない羞恥心に苛まれたり普段ドクターと親しい女性からライバル認定される事になったりして……

「はあ……あのバカ。今度絶対ボクのモノにしてやる」

 何故か鬼が増えた鬼ごっこの末、女性陣から袋叩きに遭うドクターを眺めながらボクは決意を密かに固めた。

 

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