いつも通りの執務室。 俺は机に向かって次の資源確保の為の作戦行動の計画を立てていた。
「ドクター」
俺一人しかいなかったはずの部屋で、突然背後から声がかかる。
記憶を失った当初はこの現象にひどく驚いて何度も悲鳴を上げていた。
今でも多少は驚くが、もう悲鳴を上げる事はない。
「レッドか、こんにちは」
「こんにちは。これ、宿題」
「お、宿題終わったんだな、偉いぞ。どれどれ……」
レッドは卓越した戦闘技能を持つ暗殺者だが、それ以外の事についての知識が非常に不足している。
俺はこうした一部のオペレーターがロドスから離れた時に生活出来るように教鞭を執っている。
記憶喪失で鉱石病研究について貢献できる事が少なくなった俺がこうした形で仕事が出来るのは俺にとっても嬉しい事だった。
この勉強会についてはアーミヤとケルシーも賛同してくれている。
「うん、よく出来てる、頑張ったな。 ただここだけちょっと惜しかったな、正解はこうだ」
「どうすれば合ってた?」
「たぶん単純な計算ミスだな、ほらここでずれてるから……」
「ん」
俺は紙を見せながら正しい計算式を示していく。
レッドは脇から覗き込みながら頷いた。
分かってもらえたようだ。
「と、まあこんな感じだな。分かったか?」
「分かった、ありがとう」
「よし、ちゃんとお礼も言えたな」
「あっ……!」
俺が頭に手を伸ばしたその瞬間、レッドの手が閃く。
「ドクターッ…!」
「だ、大丈夫かすり傷だ…! ほら大した事ない」
俺は血が滲む手を見せた。
手の甲から血が流れ出ているが、大怪我という程ではない。
医療アーツで治療すれば明日には完治するだろう。
「レッド、また前より傷が浅くなってる。進歩してるぞ」
「でも危ない……ドクター、また怪我をしてしまう」
「俺の怪我で済むなら安い物さ。レッドが斬らなくなるまで何度でも挑戦すればいい」
「ドクター……」
レッドは複雑そうな表情を見せる。
自分のせいで怪我をさせるとなれば無理もないだろう。
だがこれについてはレッドの為にも妥協するわけにはいかない。
『ドクター、教えて……。もしウルフハンターじゃなければ、レッドは、違う人生を過ごせたか?』
レッドとの交流も深まった時、彼女が初めて俺に見せた顔。
俺はまだレッドについて知らない事が多い為軽々しく彼女の未来について断言する事は来ない。
だが少なくとも彼女が望むなら、俺が出来る範囲で彼女の望む未来を手繰り寄せる協力はしたい。
今からでも彼女がウルフハンターレッドとはまた別のレッドとして歩む事を望んでいるのなら、俺はその力になりたい。
「勿論、もしレッドが俺に触れられるのが嫌なら無理にとは言わない。その場合は別の……」
「嫌では、ない」
「……ありがとう。なら、これからもよろしくな」
「分かった、レッド頑張る」
レッドはそう言うと天井に消えていった。
「……必要ない時は普通に移動するようにっていうのも言った方が良いかもな」
手に簡単な止血を施しながら俺は次の宿題について考え始めた。
ドクター。
レッドが守らないといけない人。ケルシーとの約束。
レッドに宿題を出す人。宿題はケルシーからもやるように言われてるからやる。
レッドに触れようとする人。……レッドは、触られそうになると斬ってしまう。
ドクターはいつもレッドに触れようとしてくれて、怪我をしている。
ケルシーにもいつも怒られているけど、ドクターは触ろうとするのをやめない。
変な人。でも、嫌ではない。
「お、今日は全問正解だな」
「頑張った」
今回の宿題は前にやったことを覚えていたから出来た。
「偉いぞレッド」
「……!」
「っつ…! まだだめか……!」
「ごめんドクター……!」
「大丈夫、気にするな。よし宿題満点だった記念になんか飯奢を奢ってやる! ほら行こう!」
「……うん」
ドクターはレッドに色々なものをくれる。 物だけじゃないくて、色々な事を教えてくれた。
ケルシーも教えてくれたけど、ドクターが教えてくれた事はケルシーとは違った。
友達と一緒に遊んだり、付き合う方法。
最初はよく分からなかったけど、ドクターに教えてもらってからテキサスやプロヴァンスとも少し話せるようになった。
だからレッドもドクターが触りたいというなら、触らせてあげたい。
「ドクター、いつかレッドの体に触らせてあげられるように頑張る」
「……レッドその言い方だととてつもない語弊があるから他所では言わないでくれ」
「?」
それからしばらく経ったけれど、やっぱりドクターが触ろうとすると斬ってしまう。
レッドは、今まで斬るのが普通だった。 どうすれば斬らなく出来るのか、分からない。
「はあ……」
このままではいけない。
どうすればいいのか休憩室で座って考えてみたけど、答えは出なかった。
「んー、赤ずきんか? あにひてんだほんなほころへ?」
レッドの目の前に、イフリータが現れた。 好物のハバネロチップスを頬張りながら歩いている。
「……イフリータ、行儀悪い」
「んぐっ!? 別にいーじゃねーか今誰も見てないし……」
「レッドが見てる」
「オマエが黙ってれば誰も分かんねーだろーが見逃せ見逃せ! あ、特にサイレンスには言うなよ!?」
「まあいいけど」
「よし……ってそうじゃない!」
「? 何か用?」
「いやため息ついてたじゃねえか、どうしたんだよ?」
「なんで聞くの?」
「だああぁあっっっ元気ねえから心配してやってんだよ!! 面倒くせえなオマエ!?」
「心配? イフリータが?」
とてもびっくりした。 イフリータは、特に仲がいいというわけではない。
ドクターに宿題を出されているから、話をする事もあるけど。
「一応オレサマ達はドーキューセーだってドクターが言ってただろ! オマエが落ち込んでると調子狂うんだよ! ほら原因話してみろ、オレサマがバーンと燃やしてやる!」
「燃やしてはダメ」
「あん? なんでだ?」
「ドクターだから、原因」
「……あー、うん。そりゃダメだな」
イフリータは椅子を動かすとレッドの前に座った。
「で、なんだ? 喧嘩でもしたのか?」
「違う。ドクターは褒める時レッドを撫でようとしてくれる」
「うん、そうだな。オレサマもよく撫でられる……ま、まああれだ、ドクターは特別だからな!」
「そう……でもレッドは、近付かれたら斬ってしまう」
「ふむふむ?」
「レッド、斬らないようにしたいけど、どうすれば斬らないで済むのか分からない」
「あーうん、前フロストリーフも言ってたな、赤ずきんは近付いた奴全員斬るって……それか」
「そう、ドクターは斬りたくない。でも斬ってしまう。どうすればいいのか分からない」
「なるほどなあ」
イフリータは目の前でうんうん唸り始めた。
本当に考えてくれてるみたいだ。
「よしいいか赤ずきん、オレサマは火の制御がほんの少しだけ苦手だった。分かるな?」
「うん、知ってる」
「そんなオレサマもロドスに来て少しだけ頑張った。そしたらほれ見ろ! ちょっと前までは廊下とか書類燃やしちまってたけど最近はそういう事もなくなった」
「そうなの?」
「そう! つまりアレだ、オマエだって多分出来るさ。オレサマが出来たなら、赤ずきんだって出来る。間違いない」
「イフリータ、滅茶苦茶な理屈……」
「ああどこがだよ!? 出来るったら出来る!」
イフリータの言ってる事は滅茶苦茶だけど、本当に少しだけ出来る気がしてきた。
「ふふ……ありがとう」
「お、おう……オマエ笑えたんだな」
「?」
でも、イフリータが力の制御をした方法、確かに何か参考になるかもしれない。
聞いてみよう。
「イフリータ、火の制御をした時、何か普段と違う事した?」
「オレサマが? んーそうだな……あの時は燃やしてもいい紙使って燃やさないように練習したな。
まあ最初は沢山燃やしちまったけど」
「物を使って練習?」
「間違えても誰も怒らないしな。アレは良かった」
物。
確かに物なら斬っても大丈夫。
何かドクターに似た物を用意すれば……
「レッド、やってみる」
「おう、よく分からないけど、頑張れ!」
イフリータにもう一度お礼を言うと、練習の為にドクターの部屋に向かった。
「ドクター、コートを貸して」
「何故」
レッドがいつものように執務室に来たと思ったら唐突にコートを貸して欲しいと言い出した。
分からない。
何があった。
「ドクターに撫でられた時、斬らない練習をしたい」
「ああ、なるほど」
レッドはループスだから匂いなどに敏感だろう。
そういう意味では俺のコートに慣れておくというのはなかなか有効な手段かもしれない。
幸いコートには沢山のスペアがあった。
何故記憶を失う前の俺がこんなに同じデザインのコートを用意したのかはちょっとした謎だが……今回助かったのでよしとしよう。
「ほらこれだ」
「ありがとう」
コートを受け取ったレッドは訓練室からもってきたと思われるダミー人形に着せた。
「ドクター、レッドは部屋でぶらぶらしてるから、適当な時にこれを押し付けてくれる?」
「えーと、くっつければいいのか?」
「ドクターが体を離してれば、失敗しても斬れるのは人形だけだから」
「分かった」
というわけでレッドのリクエストにより仕事の合間に人形をレッドにくっつけてみたが……やはりというか毎回斬られてしまった。
「うう……ダメだった」
「でもこれなら怪我せずに練習できるし良いアイデアだな。誰か教えてくれたのか?」
「イフリータが、似たような練習をしていたって」
「そうか、イフリータが……ふふ、今度お礼しないとな」
イフリータはああ見えて影でとても努力していて、また身内に対しては深い思いやりを持った少女なのだ。
今回の件も同級生のレッドを気遣ってくれたのかもしれない。
「さてじゃあ片付けようか」
「……ドクター、このコートこのまま借りて良い?」
「ん? 良いけど、部屋でも練習するのか」
「うん」
「そういう事なら構わない。適度に洗いながら使ってくれ」
「分かった」
レッドはコートを抱えると今日はちゃんと扉から出て行った。
レッドが近づいた人を斬るのは、今までの戦いで身につけた本能。
近づいた異物は無意識に排除しようとする。
でも、レッドから近づいた時は大丈夫。
なら、ドクターの匂いに慣れれば、きっともっと成功に近づく。
「ドクターの匂い、覚える」
普段の赤い服の上からドクターのコートを着た。
これならいつでもドクターと一緒にいるのと同じになる。
「……頑張る」
それからレッドは毎日ドクターのコートを着て過ごして、ドクターの部屋にいる時は前のように人形を押し付けて貰った。
訓練のお陰で、ナイフを少し抑えられそうな気がしてきた。
あと少し。
もう少しでドクターを斬らないように出来そうだ。
「ド、ドクター!? レッドさんにもコートをあげたんですか!?」
「いやあげたわけじゃなく、訓練の為に貸したんだ。今仕事の為にレッドも色々試していてな」
「そう言うことですか……うーん、ま、まあそれなら仕方ない、ですね……!」
「?」
最近アーミヤは何故か、レッドがドクターのコートを着ていると複雑そうな目で見てくる。
「おいドクター! なんで赤ずきんがドクターのコート着てるんだよ!?」
「いやイフリータあれは訓練の為でな……」
「ぬぐぐ……いや訓練の為でも赤ずきんだけずりーぞ! オレサマにもコートくれよ!」
「欲しいか!? 俺のコートだぞ!?」
「い、いいからよこせって!」
「わー分かった分かった! 一着貸してやるから引っ張るな!」
最近何故か、イフリータもドクターに強請ってコートを着始めた。
「ねーねードクター、私もドクターのコート着てみたいよ―!」
「ふむ、ドクターのコートには私も大変興味がありますね、はい」
「いやだからなんで皆俺のコートなんだ!?」
気がつけば何故か、ドクターのコートを借りるのが流行ったりしていた。
……本当になんでだろう。
ともかく、レッドは毎日訓練し続けた。
毎日訓練し続けて、あと少しで手が届きそうという気がする。
でも、まだ手が届かない。
レッドは、少し焦り始めていた。
このままずっと、出来そうで出来ないんじゃないかという焦り。
……ドクターにこのまま、撫でて貰えないかもしれない焦り。
そんな焦りから、その日は少し手に力が入り過ぎてしまった。
「あ……」
ドクターのコートが、裂けてしまった。
もう使う事は出来そうにない。
「謝りに行かないと……」
ドクターは優しい。
レッドがコートを破いても、怒ったりはしないと思う。
でも、ちゃんと謝らないといけない。
破れたコートを持って、ドクターの執務室に向かった。
この前言われた通り、部屋の前で壁から降りて正面の扉から入る。
「ドクター、こんにちは……ドクター?」
ドクターはソファで寝ていた。
仕事に疲れてしまったのだろうか。
ドクターは、結構無理をしてソファで寝てしまう事が多い。
レッドはどこでも寝られるけど、ドクターはちゃんとベッドで寝た方が良いと思う。
「……ドクター、いい匂い」
ドクターの匂いがすると落ち着く。
ドクターから借りていたコートもいい匂いがしたけど、もうなくなった。
「すぅ……ふぅ……」
レッドもソファに座って、ドクターに身を寄せた。
ドクターが起きるまで待たないといけない。
それまでソファに座っていよう。
「んん……もうこんな時間か。そろそろ起きないとな」
俺は仕事の合間に疲れが来たのでソファで一眠りをしていた。
理性回復剤や栄養ドリンクで眠気を飛ばし仕事の効率を上げるという手もあるが、あくまでそれは奥の手だ。
戦闘時ならともかく普段の業務では適切な休息を挟んでいく事が業務効率を上げると最近の研究でも証明されている。
さて、疲れも取れたしそろそろ午後の仕事に取り掛かるとしよう。
と、起き上がった俺の左腕に何かが引っかかった。
「……うん?」
「くー……くー……」
左腕を確認すると、何故かレッドが抱きついたまま寝ていた。
宿題を出しに来てそのまま寝てしまったといった所だろうか。
「すー……すー……」
「かわいい寝顔だな」
思い返せばレッドも最初は非常に態度が固かった。
護衛として立っていてもあまり話はしてくれなかったしそもそもだいたい天井裏に隠れていた気がする。
ケルシーの提案で勉強会を開くようになってから少しづつ距離を縮め、食事やおやつにも誘い、ようやくある程度心を開いてくれるようになった。
女性が男の近くで寝てしまうのは少々不用心な気がするが……レッドはあまり深くは考えていないのだろう。
もっとも、レッドならちょっとやそっとの相手なら襲われても撃退できるだろうが。
娘の成長を見守る父親とはこんな気分なのだろうか、などと考えながら、特に深い意識はなくレッドの頭に手を伸ばした。
「ん……ドクター……?」
「おはようレッド、よく眠れたか」
「あ……ごめんなさい勝手に寝ちゃって」
「良いよ、今日は非番だったろう」
「……あれ? ドクター頭、撫で、てる?」
「……あれ!? そういえば撫でられた……?」
無意識であったが、今俺の手はしっかりとレッドの頭を撫でていた。
なでなで、なでなで。
レッドは俺に撫でられ続けるとだんだん気持ちよさそうに目を細めていった。
「良かったな、レッド! これでようやく成功だ」
「……ありがとう、ドクター」
そう言いながらレッドは今度は自分から頭を手に擦り寄せてきた。
「ドクターの手、温かい……やっと、触れてもらえた」
「お、おい、レッド?」
レッドは撫でられながら腰に抱きつくとそのまま深呼吸を始めた。
「すぅ……ドクター、大きくて暖かくて、気持ちいい……」
「あー、レッドそんなに匂いを嗅がれると流石に恥ずかしいんだが」
「んん……」
肩を掴んで優しく剥がそうとすると、レッドはいやいやと頭を振りますますしがみついてきた。
「……まあ、ちょっとはいいか」
そのまま抱きつくレッドに好きにさせながら、俺はもう少しだけ休憩時間を延長することにした。
「……ドクター、触れてもらえて、良かった」
あれからしばらく。
レッドは俺との距離感は元より、他のオペレーター達との交流も着々と進み、今では交友関係が大分広がった。
俺以外のオペレーター達と触れ合っても斬らないようになり、もう彼女の交流上の心配はほぼなくなったと言って良いだろう。
フロストリーフなどは最近のレッドの様子に目を丸くして驚いていたが、これもレッドが頑張ったからだ。
あとは彼女が自分で、ロドスの人々と共に新たな自分の在り方を模索していければ良い。
俺の役割もここからは減っていくだろう……そう思っていた時期もあった。
「レッド、前も言ったがキミももう立派な女性なんだからあまり俺を含めた男性に気安く近づくのは……」
「これはレッドが望んでの事、だから問題ではない」
「……いやそうは言ってもな」
「ドクターはレッドが乗るのは嫌?」
「そうではない、そうではないんだが……」
今、レッドは俺の膝に乗り足と尻尾をご機嫌そうに振っている。
あれ以来レッドはますます俺に甘えるようになってしまった。
まさかここまで俺に懐いてしまうとは思わなかった、まるで犬の如く俺に遠慮なくくっついてくる。
このままでは良くないのではないか、そう思いつつも甘え上手なレッドをいまいち拒みきれずにいる。
「あー赤ずきんまたドクターに座ってる! だからなんでオマエがいつも先に乗ってるんだよ!!」
「私も撫でてよ―ドクター!!」
扉をぶち破る勢いで入ってきたイフリータとカーディが今度は両腕にひっつく。
この前のコート騒動以来この子達もレッドに影響されるようにぐいぐいくっついてくるようになった。
何故ロドスは体の成長とは裏腹に言動が天真爛漫な女の子がこうも多いのか。
流石に俺も男である以上このままではマズイ。
この部屋で唯一俺にくっついていない秘書に俺は一縷の望みをかけた
「イースチナ、彼女達をどうにか」
「ドクター大変面白い話になりそうなのでしばらくはそのままでお願いします。
あと非力な私ではいずれにせよどうも出来ませんね、はい」
「クソッ神は死んだ!!」
と、そこで開きっぱなしだった入り口からひょっこり新たな人間がやってきた。
「ドクター、先程は大きな音がしましたが大丈夫で……」
「ドークーター、そろそろお昼だよー遊ぼうよー」
「そうだぞドクター! 休憩は大事だっていつも言ってただろー!」
「君達が原因で仕事が進んでいないんだが!? ああアーミヤちょうどよかった助けてくれ! この子達を」
「み、皆さんばかりいつもずるいです! 私だって髪の手入れには気を使ってるんで撫で心地は良いはずですよドクター!」
「お前もかアーミヤ!!!」
「ふふっ……」
周りの騒動にレッドは思わず笑みをこぼしていた。
レッドが楽しそうで何よりだが今日の仕事はまともに進みそうにもなかった。
幸い今は急ぎの仕事もないからこうして悲鳴を上げているだけで済んでいるが……
(……今度ミッドナイト辺りに女性の扱いをご教授願うか)
アーミヤまでやって来てますます混沌とした状況から目を反らしながら俺はひとまずどうやって昼飯を食べれば良いか頭を悩ませた。