ヒーリングっどプリキュアvsジュウオウジャー ~歓迎! 動物戦隊御一行様~   作:runguri

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第2話

 ◇ ◇ ◇

 

 

「「ジュウオウバスター!」」

 四人のジュウオウジャーは、手にした銃を一斉に空に向かって放った。

 圧縮されたジューマンパワーの弾丸が、宙に浮かぶメガビョーゲンの体を穿つ。しかしその全ては、霞のようなメガビョーゲンの体を手ごたえもなくすり抜けていくだけで、大したダメージも与えられないようだ。

「結構めんどくさいやつね! アム!」

 オッケー、と応えながらアムは数歩下がり、手にした銃、ジュウオウバスターにアタッチされた赤と青のキューブの前後を入れ替える。すると、前にせり出た赤のキューブから刀身が伸び、瞬く間に鋭い剣が形成された。その間に、残りの三人は円陣を組み、中心で全員の腕を組み合わせた。

「行けぇ、アム!」

「はぁぁぁぁ、はっ!!」

 猛然とダッシュしたアムは勢いよく跳躍し、三人が組んだ腕を踏み込み台にして、三人の腕力も借りて空高く飛び上がった。

 大砲のような勢いで一直線に飛び上がったアムは、その速度を剣に乗せ、一文字にメガビョーゲンの頭部を切り裂いた。

「メガァァァッ!?」

 これにはメガビョーゲンもよろめき、切り付けられた箇所を手で押さえ悲鳴を上げた。

 

「うわー、あの武器もチョーやばい! やっぱ、あたしたちも剣とか銃とか持つべきかな!? キュアブラスターとかキュアソードとか! ……ん? キュアソード……」

「何言ってんだよひなた! ヒーリングステッキじゃ不満だってのか!?」

「や、やだもぅ冗談だよ冗談。そんなマジ怒んないでよぅニャトラン、うりうり」

「やっ、やめろ! そんな戯れにオレは屈しな……ごろごろ……」

 アゴを指でくすぐるひなたと喉を鳴らすニャトランの緊張感の無さにちゆはため息をつきつつ、

「でも本当に強いわ、あの人たち。ジュウオウジャー、だっけ?」

「なんてゆーか、あたしたちとは攻撃力が段違いだよね! 磨き抜いた野生のパワーって感じ! このままあのメガビョーゲンも倒しちゃうかもー!」

 ひなたのその一言に、ちゆもペギタンも、ニャトランまでもが同時にひと際大きなため息を吐き出した。

「な、何よぅみんなしてー!」

「あのなぁひなた、何回も説明してるだろ?」

「??」

 

「っし! 大和がいりゃあ、相手が空飛んでようが楽勝なんだけどよ」

「文句言わないの、大和はまだ戦えないんだから。今のうちにさっさと決めるわよ!」

 四人は一列に並ぶと、手にしたジュウオウバスターに己がジューマンパワーを集中し始めた。四人の銃口が、次第にまばゆい光を放ち始める。

 ジュウオウシュート――引鉄が引かれた瞬間、極限まで高まったジューマンの生命エネルギーが四重の色彩を纏う濁流となり、メガビョーゲンの体を押し流す勢いで炸裂した。

「メ……ガッ……!?」

 その奔流の直撃を受け、メガビョーゲンの体は跡形も無く消し去られた。

「よし、やったぞ!」

 喜びの歓声を上げるタスク。しかし、それを嘲るかのようなダルイゼンの笑い声が遠くから響き渡る。

「なに笑ってやがんだ、ガキンチョ!」

「いやいや、すごいよお兄さんたち。ウソみたいに強いね。ただ……オレたちビョーゲンズとは、ちょっと相性が悪かったかな」

「何……!?」

 その不敵な笑みに、消し去ったはずのメガビョーゲンの方へと向き直ったタスクは、今度は驚愕の声を上げた。

 ジュウオウジャー達の攻撃を受け四散したメガビョーゲンの体は、確かに小さなもやとなり空一面に散り去った。しかし、それらは徐々にまた一箇所へと集まり始め、見る見るうちに元の大きさへと戻っていく。そして、

「メガ、ビョーゲン!」

 撃ち砕いたはずの頭も腕も、ものの見事に生え揃い、メガビョーゲンは何事もなかったかのように復活した。

「え~~~! うそ、まさかあの雲オバケ、アザルドと一緒で不死身ってこと!?」

「メェェェガァーーー!!」

 動揺するアム達に向かって、メガビョーゲンはそのパワーに一切の衰えも見せず、再び瘴気の雨を見舞う。

 動揺のまま、ジュウオウジャーたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。

 

「やっぱり、ダメだったペェ……」

「……あ、そっか! ビョーゲンズはただ倒すんじゃなくて、浄化してあげないと消えないんだ……!」

「そういうこと。でも、わたしもこうやって目にして、改めて思い知ったわ。ビョーゲンズはプリキュアの力で、」

「お手当てしないと、だろ?」

 ニャトランとペギタンは、エレメントボトルを二人に差し出す。

 ちゆとひなたは目を合わせて頷き合い、決意とともに立ち上がった。

 

「「スタート!」」

「「プリキュア、オペレーション!」」

 ちゆとひなたは、それぞれ水、光のエレメントボトルを純白のヒーリングステッキにセットした。ボトルに込められたエレメントパワーがステッキへと充填され、ヒーリングゲージの上昇とともにステッキから淡い光が漏れ始める。

 やがてその光は、ステッキの先端にあるクリスタルから勢いよく発露し、星屑のように散りばめられ、ちゆとひなたの周囲を渦のように包み込んでいく。やがてそのうねりは、光の白衣へと姿を変え、二人はそれを手に取り纏う。

 水と光の恵みを穂先まで浴びた髪はたおやかに伸び、清流の青、陽光の金へと染め上がる。白衣は瞬く間に、穢れを退ける純潔のバトルドレスへとその姿を変えた。

「交わる二つの流れ、キュアフォンテーヌ!」「ペェ!」

「溶け合う二つの光、キュアスパークル!」「ニャ!」

 

 メガビョーゲンの猛攻から息も絶え絶え逃げ惑う四人は、突如現れた二人の戦士の姿に目を奪われた。

「あ、あれは?」

「敵……なわけねぇよな」

「まさか、彼女たちがあの少年が言っていたプリキュアか?」

「えっ、何やだ、めっちゃくちゃかわいい!!」

 約一名、異なるリアクションをしているものの、ジュウオウジャーたちは二人の華やかな姿に戸惑いを見せる。

 一方ダルイゼンは、大して驚いた様子もなく、乾いた目で二人を見据える。

「ようやくいつものプリキュアがお出ましか。…………あれ、キュアグレースは?」

「グレースはね! ……そういえばどこ行ったんだろ」

「すぐ近くにいるはずなんだけど……」

「ふぅん。まあいいや、青と黄色しかいないんなら、その方が楽だし」

「ちょっとちょっと! 青と黄色ってなによ! なんか扱いが不公平じゃない!?」

 きーきー怒鳴るスパークルだが、ダルイゼンは眉一つ動かさず、静かにメガビョーゲンに命じる。

「じゃ、公平に、まとめてきれいに潰してしまえ、メガビョーゲン」

「メガーーーッ!」

 ダルイゼンの命ずるまま、メガビョーゲンは目標を切り替え、二人のプリキュアに向かって淀みの雨を浴びせかけた。

「速い……!」

 それを難なくかわす二人に、セラは目を剥く。

 足湯のスペースを弧を描くように駆け回り、メガビョーゲンとの距離が詰まると一斉にジャンプした。

「「はぁっ!!」」

 流れるように、勢いの乗った回し蹴りを放つ二人。それは強かにメガビョーゲンの頭部を捉えるも、

「浅い……!」

 フォンテーヌは舌打ちをしながら着地する。そこまで素早い相手でもないが、メガビョーゲンの高さまで到達するまでに、身構える隙を与えてしまうようだ。

「これ、接近戦は不利じゃない……!?」

「なら、動きを止めてしまいましょう!」

 フォンテーヌは懐から、煌びやかな六華の象られたボトルを取り出す。

「氷のエレメント!」

 それをヒーリングステッキにセットすると、辺りの空気が鋭く冷え始めた。

「はっ!」

 ステッキの先端のクリスタルにその冷気が収束し、一筋の光となってメガビョーゲンの体を刺し貫いた。

「よし、これでアイツの体はカチンコチンペェ! ……ペ?」

 しかし、いつまでたっても凍り付かないメガビョーゲンに、ペギタンの威勢も萎んでいく。

「なんかアイツ、凍るどころかあの冷気をゴクゴク飲み込んでいるようニャ……」

「なんかこれ……、マズくない?」

 顔を引きつらせるニャトランとスパークルのぼやきに答えるように、メガビョーゲンはにやりと笑い、

「メッガ、ビョーゲンッ!」

「……雪玉~~~!?」

 今度は、つやの出るほど磨きこまれた雪の砲弾を放ってきた。先ほどまでの雨粒とは違い、明確なほどの質量を持った砲弾は、床に着弾するたびに鈍い音を立てて破裂する。当たったらひとたまりもないであろうことは明白だった。二人はつんのめりながらも慌てて逃げだす。

「もうっ、フォンテーヌ! 敵に味噌送ってどうすんのよー!!」

「そ、そんなこと言われても! あと、それを言うなら味噌じゃなくて塩!」

「ラーメンの好みみたいな事言い合ってる場合じゃないニャ! どうすんだこれ!?」

 必死に逃げまどいながら、二人は再度考え込む。

「そうだ! これならどう!? 雷のエレメント!」

 スパークルは稲妻が描かれたボトルをセットし、ステッキを振りかぶった。

「ちょ、ちょっと待つペェ! 嫌な予感しかしな」

「はっ!」

 ペギタンが制止するより早く、スパークルはステッキの先から電撃を迸らせた。

 狙い通りにメガビョーゲンを直撃したその雷光は、しかし先ほどの氷と同様、順調にメガビョーゲンの体内へと飲み込まれていく。

「あらー……、あたしこれ、また何かやっちゃった感じ?」

 冷や汗を垂らすスパークルに向かって、メガビョーゲンは帯電した眼光を光らせる。

「メッガビョーゲーーーン!」

「「きゃああああ!!??」」

 メガビョーゲンは、地を這うような雷を二人に向かって撃ち下ろす。地面を転がるようにしてぎりぎりのところで避ける二人だったが、すでに息も絶え絶えだ。

「ちょっと! 味噌どころか醤油まで送っちゃったじゃないの!?」

「うえーん、あたしたちアイツと相性最悪だよー! グレースー、早く来てー!」

 

「……ねぇ、あの子たち、大丈夫?」

「いや全然大丈夫じゃねぇだろ」

「しかし、どうやらあの敵生物との戦いには慣れているようだ」

「なら、やることは一つじゃない?」

 

「「ぷにシールド!!」」

 ついに壁際まで追い込まれた二人を守るため、ペギタンとニャトランはバリアを展開した。

 しかし、霰のように降り注ぐ砲弾の前に、それ以上一切の身動きが取れなくなってしまった。

「一体、どうしたら……」

 じりじりとバリアごと押し込まれていき、フォンテーヌとスパークルは冷や汗を流す。

「じらす必要なんかない。一気に畳みかけろメガビョーゲン」

 ダルイゼンの冷酷な声が静かに響く。

 メガビョーゲンがその瞳をより大きく開き、攻撃の勢いを強めようとした、その時だった。

「メガ……!?」

 降り注ぐ雪の砲弾は、二人の背後から発射された光の銃弾によって、その悉くが撃ち抜かれた。フォンテーヌとスパークルが思わず振り返ったその先には、

「アムさん、タスクさん!」

「はいはーい、援護に来たよ!」

「ここは僕達が防ぐから、君たちは一旦下がれ!」

 そう叫びながら、アムとタスクはジュウオウバスターを連射し、絶え間なく撃ち下ろされる雪玉を負けじと相殺する。

 感謝を述べつつ飛び退いたその先には、セラとレオが待ち受けていた。

「すみません、助けていただいて……」

「何言ってんの。ここは協力して戦わないと。あのデカブツ、弱点とかないの?」

 セラに尋ねられ、そうだ、と思い出したようにフォンテーヌはヒーリングステッキを眼前に構える。

「「キュアスキャン!」」

 ペギタンの両目から放たれた光が、アム、タスクと撃ち合うメガビョーゲンの体をシークしていく。すると、

「……なんだあの小っこいの?」

 サーチライトが見つけ出した、メガビョーゲンの体内に囚われうめき苦しむ小さな精霊の姿を、レオは不可思議そうに見据える。

「あれは、雲のエレメントさんペェ!」

「エレメント……さん?」

「はい、地球の万物に宿る精霊のようなもので、ビョーゲンズはエレメントさんの力を蝕んで成長するんです」

「よくわかんないけど、つまりあの子を助け出せばいい、あなた達はそれができる、ということね」

 セラの言葉に、フォンテーヌはこくりと頷く。

「飲み込みが早いペェ……聡明な大人の女性ペェ……」

「……ペギタン?」

「でもぉ、アイツにこっちの攻撃効かないし、ジャンプしても避けられるし、もぉどうしたらいいかわかんないんですよー!」

 嘆くスパークルの肩を、レオはがしっと掴む。

「心配するな! 俺に任せとけ!」

「ホントですか!? いったいどうすればいいんですか!?」

 レオはへへっと笑うと、肩を掴んでいた手で、今度はスパークルの両手を握った。

「……握手??」

「黄色の力、見せてやろうぜ!」

「はい、え? うわっ、わっ、わっ! わわわわわわ!?」

 そのままレオは、スパークルの体をジャイアントスイングよろしく自分の体を軸に猛烈な勢いでぶん回し始めた。

「す、スパークル! 手ぇ放すニャよぉぅおぉぅおぉぅお!? うぇ気持ち悪くなってきた……」

「こんなの滅茶苦茶だよおおぉおぉおぉお!?」

「泣き言言ってる暇はねえぜ! どおおおおおおっせいぁ!!」

 回転数が最高潮に達したその瞬間、レオはハンマー投げのようにスパークルの体を放り投げた。

「よしっ、ドンピシャ! かましてやれ、スパンコール!」

「スパークルですううぅぅぅぅうりゃっ!!」

 矢のような勢いで一直線に飛んできたスパークルに完全に虚を突かれたメガビョーゲンは、驚きの声を上げる間もなく彼女の槍のような蹴りに貫かれ、その巨躯をぐらつかせた。

 スパークルはメガビョーゲンの向こう側に猫のように見事に着地したものの、コンマ数秒後に「ふにゃぁ」と二回転ほどスピンをしながら倒れこんだ。

「よし! それじゃあ私たち青チームも……いっとく?」

「い、いやいやいやわたしは結構です!」

 両手を差し出すセラに、フォンテーヌは慌てて首を振る。

「冗談よ。私はレオみたいな馬鹿力はないし。ねえ、あなたさっき、氷を撃ってたわよね。もしかして、水を出すこともできるのかしら。それもなるべく勢いのあるやつ」

「え? はい、出せると思いますけど……。ただ、そんなものあのメガビョーゲンに撃ったら、今度はスコールが降ってくるかも……」

「当たらなくていいから、あいつ目がけて撃ってほしいの。じゃ、私の合図でお願い」

 疑問符を浮かべるフォンテーヌの前に躍り出て、セラは気合を込め始める。

「野生開放!」

 セラの背中がぐぐっと蠢いたかと思うと、大きく鋭い背びれが物々しく顔を出した。

「すごい……!」

「野生解放……こんなことができるなんて驚きだペェ!」

「今よ!」

 フォンテーヌはうろたえながらも、水のエレメントボトルに意識を集中する。

 よろめきつつも未だ高度を保つメガビョーゲンに向けてヒーリングステッキを掲げた。

 瞬間、鉄砲水のように噴き出した水流にセラは腹ばいになって飛び乗った。

「いいわね、この波最高……!」

 水流も味方につけて加速度を増し、先ほどのスパークルを上回るスピードでメガビョーゲンへと迫るセラ。

「はっ!!」

 水流が途切れたと見るや、セラは勢い良く舞い上がり、その速度をそのまま回転力へと変えて、背びれを逆立てた円刃となりメガビョーゲンへと襲い掛かる。

「メガァァァァ!!」

 無数に斬りつけられたメガビョーゲンは、ついに地上へと墜落した。その荒々しさに、目を回していたスパークルも我に返り、思わず息を飲んだ。

「すごい、やっぱジュウオウジャーさんたち、めちゃくちゃ強い……!」

「ああ。でも最後はやっぱりオレたちが決めなきゃ、だろ?」

「わかってるよニャトラン! 雨雲なんて、あたしたちの光で晴らしちゃいましょ! エレメントチャーーージ!」

 スパークルはヒーリングステッキに力を集中させる。光のエレメントボトルがそれに呼応し、ステッキに癒しのエナジーが充填されていく。先端のクリスタルの輝きが最高潮に達したその時、スパークルはその切っ先をメガビョーゲンに向けて叫んだ。

「プリキュア! ヒーリングフラーーーッシュ!!」

 怒涛の勢いで放たれた稲妻にも似た光が、メガビョーゲンの体を刺し貫く。二又に分かれたその光は二重螺旋を描き、その先端にはメガビョーゲンの病巣から救い出された雲のエレメントさんを掻き抱く。

「ヒーリングッバイ……」

 力の源泉を失ったメガビョーゲンは、己が使命から解き放たれ、安堵の笑みを浮かべながら霧散していった。

「お大事に! ……って、こっちがお大事にだよぉおぉおぉ……ぱたり」

 三半規管に限界を迎えたスパークルは、その場でぐったりと倒れこんだ。

 レオはスパークルの元へと駆け下り、突っ伏したままの彼女の背中をばしばし叩きながら笑う。

「おう、やるじゃねえかお前ら! そんなひらひらしたナリしてるくせによ!」

「うっ、あうっ、ありがとうござ、い、痛いッス……」

「キュアフォンテーヌ、だっけ? あなたもお疲れ様。ほんと、あなた達がいなかったらどうなってたか」

「いえ、こちらこそありがとうございましたセラさん。それに、タスクさんやアムさんも……って、二人とも! どうされたんですか!?」

 跪いた姿勢のまま、肩で息をするように苦しむ二人に気づいたフォンテーヌは、セラとともに二人の元へと駆け寄る。

「タスク、アム! 一体どうしちゃったの!?」

「セラ、ちゃん……。さっき撃ち合ってた時に、アイツの攻撃を少しだけ喰らっちゃったみたいで……」

「っ、ああ、少し掠めただけのはずだが、その部分が熱を持ったように疼く……まるで急にたちの悪い風邪にかかったみたいだ」

 セラとフォンテーヌは、二人の肩を抱えて、とりあえず足湯の腰掛けへと運ぶ。

「ビョーゲンズの攻撃は、生き物の生命力そのものを蝕むペェ。プリキュアは、エレメントの力が体を守ってくれるからある程度は耐えられるけど……」

「すみません、わたしたちを庇ってもらったばっかりに……」

「いや、敵の能力を侮っていた僕たちのミスだ、気にすることはない。おそらく、しばらく休めば治ると思う」

 気丈な口ぶりとは裏腹に、タスクはベンチに腰掛けると、体力が尽きたようにがくりとうなだれた。

 担ぎ上げてきたスパークルの体を同じくベンチに横たえ、ぐったりとする三人を見渡しながらレオがぼやく。

「六人中三人がダウン、か。あのメガビョーゲンとかいうヤツ、デスガリアンと同じくらい厄介だな」

「いや、あたしのダメージの半分以上はレオさんにぶん回されたせいですけどね?」

 そうだったか? ととぼけるレオに、フォンテーヌは神妙な面持ちで尋ねる。

「あの……、そのデスガリアンって一体何なんですか? ビョーゲンズの他に、この地球を狙う誰かがいるってことなんでしょうか」 レオはセラと顔を見合わせると、「まあ、そういうこった」と頷いた。

「うぇぇウソでしょー、もうビョーゲンズだけでも大変だってのにぃ! これ以上新しいのが登場したらあたし、頭が持たな――」

 と、頭を抱えたスパークルの背後。

 大浴場との間を隔てる垣根が、いきなり派手な音を立てて吹き飛んだ。

「…………い?」

 恐る恐る振り向いたその先、湯煙の奥に、まるで巨大な岩のような人影が現れた。フォンテーヌは反射的に身構える。

「まさか、二体目のメガビョーゲン!?」

「ちょっとー! 一日に何体も出すのはルール違反だってこないだも言ったでしょー!」

 寝そべりながらびしっと指さすスパークルに、珍しく動揺の色をにじませながらダルイゼンは言い返す。

「いや、そんなこと言われてないしルールを制定した覚えもないけど……、あれはメガビョーゲンじゃない」

「えぇっ!? じゃ、じゃあまさか……」

 フォンテーヌが恐る恐るセラの方を振り返ると、彼女はこくりと頷いた。

「……そ、あなたたちが噂するから、本当に来ちゃったわよ」

「ということは、あれがその、デスガリアン……!?」

 湯煙が晴れ、現れたのは、デスガリアンのプレイヤー、モンド・ダイヤだった。

「おんやー? ジュウオウイーグルに言われて来てみれば、こっちにゃ他のジュウオウジャーと、……なんか変な格好した小娘たちがいるど」

「大和に言われて……?」

「おそらく、入浴中に出くわして、何とかこっちに誘導したのだろう……さすがに丸腰ではな」

「丸腰どころか素っ裸だもんね……」

 タスクとアムのフォローを他所に、レオが一歩前に出て、モンドに向かって啖呵を切る。

「わざわざこんなところまで何しにきやがったデスガリアン!」

「お前らと同じ、単なる慰安旅行だど。ただ……、事前の情報通り、いや、それ以上に、この旅館沢泉の温泉は非常に素晴らしい! 気に入ったど! 温度、泉質、風景……何を取っても他とは一線を画した魅力に満ち溢れているど!」

「……はぁ? 何言ってやがんだテメェ?」

 微妙に早口でまくし立て始めたモンドに、ジュウオウジャーもプリキュアも目を見合わせ首をかしげる。

「この旅館を、オデの支配する温泉旅館の記念すべき第一号にしてやる、と言っているんだど! 今日からこの温泉は常にオデの貸し切り! 常にオデが一番風呂! 温泉卵もフルーツ牛乳も懐石料理も全てオデのために作ってもらうだど!」

「……はぁ? 何言ってやがんのよあなた……」

 と、そこに割って入っていったのは眉間に大きく皴を寄せたフォンテーヌだった。

「ていうか、なに人の温泉の壁、派手にぶっ壊してくれちゃってるわけ……?」

「あー? 入り口がわかんなかったからとりあえず最短距離でぶち破ってきただけだど。なぁに、この温泉はすぐにオデのものになるんだから、むしろ光栄に思うがいいど」

 けたけた笑うモンドに、フォンテーヌのたゆたう海のようなロングヘアーが、嵐の前の浜辺のようにざわめき立つ。

「ふざけないでよ……ビョーゲンズやらデスガリアンやら、よってたかってウチの温泉めちゃくちゃにして……。ウチを営業停止に追い込むつもり!?」

 先ほどまでとは打って変わった剣幕に、セラもレオも動揺し始める。

「お、おい、黄色の方ー。なんかお友だち、さっきとまでとキャラ変わってんぞ……?」

「いやー、ちゆちー完全にマジギレモードですね……。そうなったちゆちーはもう、のどかっちが小一時間かけてなだめないと止められませんね……」

「ひなた!!」

「ぴぃ!? あ、あたし、ラテのお手当てしてきまーす!」

 寝そべっていたスパークルは猫のように飛び上がると、ラテの元へと逃げるように駆けていった。

「まったく……! とにかく、これ以上うちの営業を妨害しようってんなら、徹底的に"お手当て"してあげるんだから……!」

「え、ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 セラが制止する間もなく、矢のように駆けだしたフォンテーヌは、瞬時にモンドとの距離を詰め飛び掛かる。

「せぇぇいやっっ!!」

 フォンテーヌの繰り出した渾身の蹴りは、モンド・ダイヤの巨大な頭部へとクリーンヒットした。

 だが、

「硬い……!?」

 フォンテーヌの目じりに思わず涙がにじむ。モンドの光輝く外皮は、これまでに相手をしてきたどのメガビョーゲンよりも硬く、まるで地面を殴っているかのように手ごたえを感じない。

 フォンテーヌは、なるべく硬い外皮を避けるようにパンチの連打を浴びせるが、それでもまるで効き目がないようだ。

「弱い、弱い! 弱すぎて気持ちいいくらいだど! オデ、まだマッサージなんて頼んでねぇど?」

「くっ……!」

「そろそろこっちから行くど!」

 思わず距離を取ったフォンテーヌに向かって、モンドは両腕を堂々と突き出した。その大きく肥大した腕の根元から、突如ガスのように炎が噴き出し始める。と思った次の瞬間、突如分離した腕がまるでロケットのように射出され、フォンテーヌ目がけて飛来した。

「いいぃっ!?」

 予想だにしない攻撃にうろたえたフォンテーヌは、バク転しそうなほどの勢いで上体をそらし、ぎりぎりのところで襲いかかる双拳をかわした。

「な、何なのよコイツ! 滅茶苦茶な攻撃だわ……!」

「なに言ってるんだど。ゴリラと言えばロケットパンチ。これは常識だど」

「いったいどこの界隈の常識なのよ!」

 くるりと弧を描いて帰還してきた両腕を再びセットし不敵に笑うモンドにツッコミを入れるフォンテーヌだったが、外野から気の抜けた声が飛んでくる。

「あー、でも確かに、うちのゴリラくんも使ってるよね、ロケットパンチ」

「んー、となるとぉ、あたしたちもパートナーがゴリラちゃん型の妖精だったらワンチャンあったかもですね」

「スパークル! アムさんも! 敵の言う事に同意しないでください! 大体、だからって名前がキュアゴリラになるってわけでもないでしょ! ……ん? キュアゴリラ……」

「おしゃべりはおしまい! さあ、どんどんいくどー!」

 モンドは、二つの拳を交互に飛ばし、フォンテーヌに付け入る隙を与えない。

「くっ……! こうなったら……!」

 飛び交う拳を避けながら苛立つフォンテーヌは、ヒーリングステッキを身構え、懐から水のエレメントボトルを取り出した。

「ええぇっ!? フォンテーヌ、相手はビョーゲンズじゃないのに、さすがにそれはどうかと思うペェ……」

「いいからやるわよペギタン!」

「ひぇぇ、マジギレちゆちーペェ…」

 エレメントボトルをセットしたちゆは、ヒーリングステッキの肉球を素早く三回タッチし、ライフルの銃口を向けるように狙いをつける。

「プリキュア! ヒーリングストリーーーム!!」

 ステッキの先端から鉄砲水のような勢いで流れ出た浄化の光が、油断しきっていたモンドの体を押し流すように直撃する。

「ぐおああぁっ!? な、なんだどこの光は……!?」

 青い光はさらに勢いを増し、モンドの体を完全に飲み込む。やがて、その奔流が消え去ると、そこには跡形もなく浄化されたモンドが――

「……うそ、浄化できない!?」

 ――ということはなく、まったく無傷の状態で、しかし何かに心を奪われたようにただぼんやりと立ち尽くすモンドがいた。

「ヒーリングッバイ……って、はっ!? いつの間にか、身も心も故郷の惑星に帰っていたつもりになってたど!?」

「フォンテーヌ……あれは確かに悪者だけど、ビョーゲンズじゃないから浄化も何もないペェ……」

 やや呆れ気味にツッコむペギタンに、うう、と気まずそうに目をそらすフォンテーヌ。

「で、でも、それじゃあ一体どうすれば……」

「そりゃ、デスガリアンなら俺らに任せとけってことだぜ!」

 後ろから大声がしたかと思うと、そこにはセラとレオが立っていた。

「あなたはちょっと休んでなさい、ジュウオウジャーの本当の戦いってやつを見せてあげるから……!」

 セラはジュウオウバスターを剣に切り替え、その切っ先をモンドへと向ける。

「ぬうううぅぅ、なんだか頭がのぼせたみたいにフワフワするど! またさっきの変な技を撃たれる前に、ジュウオウジャー! やっぱりおめぇらから倒してやるど!」

 モンドが再び両腕を撃ち込もうとするより先に、レオが吠える。

「野生開放!!」

 途端、レオの両手が大きく肥大化し、その指先の爪も長く伸び鋭さを増す。

 レオがその爪を大きく振るうと、ジューマンパワーが雷光を帯びた斬撃の波動となって飛来し、モンドの拳と正面衝突する。二つの拳はそのパワーに押し負け、明後日の方向へ飛んで行った。

「なんだぁ? 全然ヘナチョコじゃねえか自慢のパンチもよぉ!」

「ぐぬぅぅぅ、体にうまく力が入らねえど! 長湯したってこんなことにはならねぇのに!」

「じゃあ遠慮なくいかせてもらうわよ、はっ!!」

 その隙に、セラはモンドとの距離を一気に詰め、大きく上段から斬りかかる。その刃はモンドの正中を捉えるも、やはり額のダイヤが鋭い音を立てて、一片の傷さえ負わせることができない。

「ククク、だからって防御力にはなんの衰えもありゃしねぇど!」

「そう? じゃあ遠慮なく切り刻ませてもらおうかしら?」

「やれるものならやってみるがいい、ど!?」

 突然の背後からの衝撃に、思わずモンドはのけぞる。しかしセラは真正面で相対しているし、レオも未だモンドの視界の中にいる。では一体誰が――

「って、アムさん!?」

「はーいやっほー!」

 先ほどまで腰掛けでぐったりしていたはずのアムは、いつの間にかモンドの背後へと回り込み、レオと同じく野生開放した大きな爪をモンドに突き立てていた。

「やはり、あのダイヤの隙間であればこちらの攻撃は通るようだな」

「タスクさんも! 本当に大丈夫なんですか?」

「ああ、ラテ……様と呼ぶべきなのか? あの子のおかげだ」

 足湯の方に目をやると、聴診器を片手に手を振るスパークルと元気に吠えるラテ、そしてその傍らに、ぷかぷかと浮かぶ雲のエレメントさんがいた。

「ラテが雲のエレメントさんに頼んでくれて、タスクさんとアムさんに力を分けてくれたんだよー!」

「あのワンちゃんも只者じゃないってことね……!」

「なんだかよくわかんねぇが、とにかくチャンスだ! 行くぜてめぇら!」

 セラとレオも加勢し、アムとともにモンドの体を切り刻む。ダイヤの硬皮の部分にこそ傷はつけられないものの、無数の刃は確実にダメージを蓄積させていく。

「ぐっ、ぬおおぉぉ……! ま、まずいど……!

「折角の好機だ。ここで決めさせてもらう! 野生開放!」

 タスクが叫ぶと、彼の両足は大槌のような太く大きな足へと進化する。

「はああぁぁ……」

 タスクは気合を込め、ジューマンパワーを集中させた右足を大きく、ゆっくりと振り上げる――

「ちょ、ちょーーっと待ってください!!」

 と、その様子を見つめていたフォンテーヌは慌ててタスクに向かって声を上げた。思わぬ制止に、タスクはつんのめるように動きを止める。

「っっ!? な、何だ! どうして止める!?」

「それ、その技、なんかよくわかんないけど、足でドカーンってやるやつですよね!?」

「?? ああ、そうだ。大地に流し込んだジューマンパワーで地盤ごと相手の体を破壊する――」

「そ、そんなことしたらウチの温泉が壊れちゃいます!!」

「っ、君は、そんなことを言っている場合か!」

 と、二人が言い合っている間に、モンドは態勢を立て直していた。

「んぬぬ、なんだか頭もドリーミングな感じだし、ここはいったん本当にグッバイさせてもらうど!」

「お、おい待ちやがれ!」

 レオは慌てて追いかけようとしたが、両腕も駆使して地面を蹴り走り去るモンドは予想以上に速く、あっという間に湯煙の奥へと消えていった。

 

「す、すみません。わたしのせいで……」

 静けさを取り戻した足湯の真ん中で、フォンテーヌはタスクに平謝りした。

「……いや、仕方がない。ここは君の両親が経営する旅館だしな」

「! やっぱり、私たちの正体……」

「そのステッキから顔を出しているのは君たちが連れていた子達だったし、気付かないわけないだろう」

「そもそも、さっき一回『ちゆ』『ひなた』って呼び合ってたしね」

「うう、そういえばそうでした……」

 タスクとセラのツッコミに少し恥じ入りながら、フォンテーヌとスパークルは変身を解除した。

「えぇぇ~~! プリキュアの正体ってお前たちだったのかよ!」

「いや君は気付いていなかったのかレオ……」

「だってよぉ、服も髪の色も全然違うからよー」

「バカ」

 掛け合いをしながら、ジュウオウジャーの四人も変身を解除した。そのマスクの下から現れたのは、荒々しい獣の顔。そしてその顔はまたすぐに、元の人間の顔に戻る。

「ま、秘密にしていたのはお互い様だったということで、おあいこね」

「ふふっ、そうですね」

 微笑み合うセラとちゆに、アムも笑顔で続く。

「改めまして、私たちは動物戦隊ジュウオウジャー。残念ながら、ヒーリングガーデンって所じゃなくて、ジューランドからやってきた迷子のジューマン四人組です。もっとお互いのこと、きっちり話し合ったほうがよさそうだね」

「ええ、もちろん。こちらも改めて紹介します。この子はわたしのパートナーのペギタン。そして、」

「オレはニャトランだ! よろしくな、アニキ!」

 ぴょんとひなたの肩に飛び乗ったニャトランは、レオに向かって威勢よく言い放った。

「あ、アニキぃ? ニャトランどうしたのいきなり?」

「だってよ、ライオンっつったらオレたちネコ族のトップであり憧れだぜー? しかも超強いし!」

「おう、いいぜ! アニキでもなんでも好きに呼べニャトラン!」

「じゃ、じゃあ、セラさんのことは、是非アネゴと呼ばせていただきたいペェ……」

「いや、悪いけどそれは勘弁してほしいわ……」

 

 

 □ □ □

 

 

「ありがとう、のどかちゃん。車椅子まで持ってきてもらってしまって」

「い、いえ。強情を張って、大和さんの腰を悪くさせてしまったのはわたしですし……」

「ああもうそんな、申し訳なく思う必要はないから! ね?」

 しょぼくれながら車椅子を押すのどかを、大和は必死に慰める。

「と、とにかく、お互い向かう場所は一緒なんだから、とにかく今は急ごう!」

「はい……!」

 のどかは駆け足気味に車椅子を押した。足湯はもうすぐ目の前だ。

(ごめんね、ちゆちゃん、ひなたちゃん! ラテもエレメントさんも、どうか無事でいて……!)

 足湯へと続く扉の前に到着すると、のどかが体の支えとなり、大和はなんとか車椅子から立ち上がった。

 扉の向こう、先ほどまで遠くに聞こえていた喧噪もすっかり治まっている。戦いは終わったのだろうか。

 二人は足湯をそっと覗き込んだ。すると、

 

「えー!! うっそ本当にしっぽだ超ーかわいいぃ~~~! あたしも欲しい~~~!」

「そうかなぁ。ひなたちゃんこそ、キュアスパークルの服すっごく可愛かったよ! ジュウオウジャーのスーツもああいうのだったらいいのになぁ。あれって誰デザイン?」

「なぁなぁ、アニキみたいに強くなるにはどうすればいいんだ?」

「そうだなあ、まずはとにかく肉を食え! そんでとにかくケンカに明け暮れろ!」

「うわっ、ゾウさんやめるペェ! 鼻からお湯を吹きかけるのは!」

「キューブエレファントも、すっかりここの温泉が気に入ったみたいだな」

「ふふ、キューブシャークもすっごく気持ちよさそうに泳いでる。あー、私も泳ぎたくなってきちゃった。ちゆ、女湯はあっちだっけ?」

「いえ、温泉は遊泳禁止です、セラさん……」

 

「「すっかり打ち解けてるーーーー!!??」」

 足湯を取り囲む和やかな雰囲気に、すっかり置いてけぼりになった二人の声が、旅館沢泉の空へと遠くこだましたのだった。

 

 

 ■ ■ ■

 

 

「……結局何だったんだ、アイツ」

 旅館沢泉から少し離れた、雑木林の中。ビョーゲンズの使徒、ダルイゼンは、先ほどの戦いの後の出来事を思い出し、旅館の方を振り返った。

 使役していたメガビョーゲンが敗れ去ったのでとっとと帰ろうとしていたその時、突如現れた埒外の怪物、デスガリアン。どうやら、ジュウオウジャーとかいう、プリキュアたちとは別の勢力と敵対しているようだった。

 そう言えば、あのジュウオウジャーという連中も謎だ。メガビョーゲンを浄化する力こそ無いようだが、その技の純粋な攻撃力で言えば、一人でメガビョーゲンにも匹敵するレベルだった。あんな連中がなぜ今まで姿を見せず、急に現れプリキュアたちと一緒にいるのか、その目的は。

「……めんどくさ。適当に時間潰してから帰ろ」

 そう独り言ちて、ダルイゼンは枝に寝そべるのにちょうどよい樹木を見つけて飛び乗り、幹にもたれかかって目を閉じた。

 プリキュアに敗れたところで本人は大して気にも留めないが、ビョーゲンキングダムに帰れば他二人の幹部が『あら、お早いお帰りで~』だの『鍛錬が足りない証拠だな!』だのとにかくうるさい。

 地球の澄んだ空気を吸い込みながら寝るのは不快ではあるが、面倒ごとよりはマシだった。

 

 …………目を閉じて、まぶたの裏にまどろみが少し顔を覗かせたその時だった。

「おーい、そこのしっぽ小僧ー! ちょっと降りてこいだど!」

 ……真下から、つい先ほど聞いたような気がする野太い声が響いた。だが、ようやく眠くなってきたところなので、無視することにする。

「せーの、どすこーい!」

「おわっ!?」

 突如、轟音とともにもたれかかっていた木が飛び跳ねるように揺れ、ダルイゼンはカブトムシよろしく地面へと叩き落された。そこには、先ほどダルイゼンと入れ替わりにプリキュアたちに戦いを挑んだ、丸太のような剛腕を持つ怪物、モンド・ダイヤが幹に向かって張り手を突き立てていた。

「痛てててて……何すんだ!」

「人が話しかけてんのに寝てるフリする方が悪いんだど。それよりお前、さっきあのプリキュアとかいうのと戦ってた小僧だど……?」

「だったら何」

 したたかに打ち付けた後頭部を押さえながら、憮然とした態度で問い返すダルイゼン。

 すると、モンドはにやりと笑い、ダルイゼンに再度問いかけた。

 

 

「オデ達……手を組まねえかだど?」

 

 

 第3話へつづく

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