ヒーリングっどプリキュアvsジュウオウジャー ~歓迎! 動物戦隊御一行様~   作:runguri

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第3話

 ■ ■ ■

 

 

「オデ達……手を組まねえかだど?」

 にたりと品の無い笑みを浮かべながら、金剛石と剛腕の巨人、モンド・ダイヤはダルイゼンへと手を差し伸べた。

 ダルイゼンはその無骨な掌を乾いた瞳でしばらく見つめた後、

「断る」

「そうそう、オデとお前が手を断ればあんな小娘やジュウオウジャーなど、って話を聞く前から断るんじゃねえど!?」

 憤慨するモンドにダルイゼンは、ふん、と鼻で返し、

「いや、唐突すぎるし、昼寝邪魔されたし、外見が全く信用できないし、そもそも仲間内でもめんどくさいのに他の誰かと組むなんてだるくてやってらんないし、……昼寝邪魔されたし」

「昼寝を邪魔したのは謝るし信用できない見た目なのは百歩譲って認めるにしても、話くらい聞いてくれてもいいんじゃねぇかだど!?」

 無理やり腕にすがりつき食い下がってくるモンドを心底面倒くさそうに見下しながら、ダルイゼンは問い返す。

「そもそも、どうしてオレがお前と組まなきゃいけないわけ」

「わかんねぇかだど? オデはあのジュウオウジャーを倒したいけど、あのプリキュアとかいう娘っ子どもの妙な術を喰らうと頭がほわほわして戦いになんねぇだど」

「術て」

「それに、お前だってあのジュウオウジャーには苦労したんじゃねぇかど? どういうわけか知らねぇが、あいつらが手を組んでる今、こっちも手を組んだ方がいいのは明白だど!」

「……別に、あれくらい、次は何とかするし」

 ダルイゼンは少し言いよどんだ。

 正直、痛いところを突かれた。実際、メガビョーゲンを浄化する能力はなくとも、ジュウオウジャーのあの圧倒的な攻撃力は脅威だ。彼らがプリキュアと手を組めば、メガビョーゲンによる地球侵略は難しくなりそうだ。

「その何とかの部分について話し合い、対策し、協力しようという、至極真っ当で建設的な提案だど! ささ、まずは話し合いを……」

「…………やっぱり嫌だ」

 押し問答、いや一方的な押し売りと全く受ける気のない不毛なやり取りをしばらく繰り広げていると、突如二人の傍に二つの影が降り立った。

 ダルイゼンと同じく深い赤のコートを身にまとった、妖艶な女性と筋骨隆々な男性のアンバランスな二人組だった。

「だ、誰だど?」

「ちょっと、ダルイゼン。なにそのやたらピカピカしたデカブツは。アンタが生み出したメガビョーゲン……なわけないわよね」

「プリキュアとの戦いの報告もせずに、こんなところで何をやっとるんだ貴様は」

「シンドイーネ、グアイワル……。え、ていうか何でここがわかったのさ」

 ダルイゼンは、彼には珍しく驚いた様子で、ビョーゲンキングダムの同胞二人に尋ねた。

「俺たちも、地球を蝕むのにちょうど良い標的はないかと偵察に来ていたのだが……。急に尻尾がいまだかつてない反応を見せてな」

「尻尾が反応……そんなことある?」

「あるのよそれが。もう急にピーンッ! って! 根元からちぎれるかと思っちゃったわよ!」

 シンドイーネは不機嫌そうに尻尾の付け根をさする。

「で、その反応が強い方へと向かってみたら、お前とそのデカブツがいたというわけだ」

 三人の視線を集めたモンドは、うーんとしばらく何かを考えこんだ後、何かを思い出したようにポンと手を叩いた。

「そういえばあのジュウオウジャーどもも、オデ達デスガリアンの気配を尻尾で感知しているらしいと聞いたことがあるど」

「つまりアンタが発生源、てか、元凶ってわけね……。でもダルイゼン、なんでアンタの尻尾は反応してないわけ?」

「フン、持ち主と同じで、尻尾までやる気がないのだろうよ」

「ま、そういうことでもいいよ。……持ち主っていうか、体の一部だけど」

 グアイワルの皮肉も柳に風のダルイゼンを呆れた目で見つつ、シンドイーネは問いかける。

「で? ダルイゼン、結局このピカピカゴリラちゃんは何者なの? 只者じゃないみたいだけどなんでアンタと一緒にいるの? そのデスガリアンとかジュウオウジャーとか一体なんなわけ?」

「いや、だからオレも知らないんだって」

「ほいほい、ちょっと待った! シンドイーネとグアイワル、だっただど? それはオデの方から説明するど! こんなガキよりよっぽど話のわかりそうな奴らが来てくれて助かったど!」

 ダルイゼンとの間に割って入ってきたモンドに、シンドイーネとグアイワルは顔を見合わせ、しぶしぶ彼の話を聞き始めた。

 

 

「……なるほど、戦隊とな……」

「そんなパワフルな奴らが、今はあのプリキュアたちと一緒にいるわけ?」

 モンドから、デスガリアンと彼らに仇なすジュウオウジャーの詳細、そして先ほどの戦闘の話を聞き、二人は神妙な面持ちになった。

「そう! だから今こそ、オデ達デスガリアンとお前らビョーゲンズで手を組み、やつらをコテンパンに叩きのめしてやるど!」

「コテンパン、って久しぶりに聞いたわね。……グアイワル、どう思う?」

 ふむ、とグアイワルはしばらく考え込んだ後、

「確かに、そのジュウオウジャーという連中の戦闘力は侮りがたいものがあるようだ。浄化能力がなかったとしても、プリキュアと組まれれば厄介であることは間違いない」

「……ということは!」

 話くらいは聞いてやろう、とうなずくグアイワルに、モンドはぐっとガッツポーズを取った。

「よし! 一時はどうなることかと思ったけど、これで今回のブラッドゲームの勝ちは見えただど! むしろ、もっともっと盛り上がってジニス様にもお喜びいただけるだど!」

「ゲーム、ねぇ」

 自分のネイルの艶を気にしながら、シンドイーネは退屈そうに息を吐いた。

「では、貴様の作戦とやらを聞かせてもらおうか、モンド・ダイヤとやら」

「よくぞ聞いてくれただど。まず手始めに……」

 

 

「「断る」」

「な!? どうしてだど!? 完璧な作戦だど!?」

 先ほどまでの好意的な態度から一転、眉をへの字に曲げてNOを突き付ける二人の顔を、モンドは交互に見やる。

「あのねぇ、『その辺の子供を誘拐して人質にする』なんて陳腐な作戦のどこが完璧なのよ!」

「まったく下劣で不愉快極まる。所詮、お遊びで地球を侵略する連中の言うことなど、聞く価値はなかったという事か」

 呆れ顔でそっぽを向く二人に、モンドは慌てふためきながら食い下がる。

「んぐぐぐぐ、お、オメェら、地球まるごと病気にするなんてオデ達よりとんでもねぇことしようとしてるくせして、人を攫うくらいなんだってんだど!」

「あのねぇ、アタシたちは地球をビョーゲンズが住みやすい環境にするっていうのが目的なの。メガビョーゲン使って地球を蝕むってのはそのための手段なわけ。それでニンゲンがどうなろうがアタシたちの知ったこっちゃないわよ。でもね、だからと言って、目的のためならそれ以外のことでも何だってするってわけじゃないわよ! どこぞの暇人エイリアンと違ってね!」

 ふん、と胸を張って言い放つシンドイーネに、モンドは言葉に窮してたじろいだ。

「……ん? だがシンドイーネ、お前以前、水族館でプリキュアの妖精を人質にしていなかったか?」

「だからあれは一人でいたから保護していただけだっつってんでしょ、本編第5話をちゃんと観返しなさいよ」

 妙な剣幕ですごまれ、「お、おう」とグアイワルは引き下がる。

「と・に・か・く、そんなダッッッサイ作戦には付き合えませーん。キングビョーゲン様には、もっと美しく完璧な勝利を捧げてみせるんだから!」

「まあ、キングビョーゲン云々はどうでもよいが同意する。そんな狡い手を使わずとも、我らビョーゲンズが本気を出せばプリキュアだろうが戦隊だろうが造作もない」

「ぐぬぬぬぬ……。オイ! そっちのガキはずっと黙ってるけどどうなんだど!」

 三人の言い争いから全く蚊帳の外に身を置き、木の幹にもたれて目を閉じていたダルイゼンは、あくびまじりに立ち上がった。

「正直オレは、さっさとプリキュア倒して地球を蝕めるならどんな作戦でもいいけど」

「あら、見解の相違」

 肩をすくめるシンドイーネの傍らを通り過ぎ、ダルイゼンはモンドへと詰め寄る。

「ただ……、デスガリアンだかなんだか知らないけど、さっきからオレたちビョーゲンズを随分ナメた態度なのは気に喰わない、かな」

 身長も体格も一回り以上大きいモンドだったが、眼下の少年の底知れぬ迫力に気圧され、思わずたじろいだ。

「うぬぬぬぬぬぬ……! も、もういいだど! オデ一人で勝手に作戦進めてやるだど! 後で混ぜてほしいって泣きついてきたって遅くはないかも知れないだどー!!」

 そう捨て台詞を吐きながら、モンドは林の中へと走り去っていった。

 

「……結局、薄く望みを残して去っていったわね。そんなにあいつらにとってもプリキュアって脅威なのかしら」

「かも知れん。ああして啖呵は切ったものの、そのジュウオウジャーとかいう連中と本格的に手を組まれたら、何らかの対策は打たねばならんだろうな。……実際戦った者としてはどう思う、ダルイゼン」

 グアイワルの問いに、ダルイゼンは少し考え、

「向こうは向こうでこっちの攻撃に弱いみたいだから、そこまで深刻に考えなくてもいいと思うけど。ま、一旦ここは様子見でいいんじゃない。あの宝石ゴリラが首尾よく作戦とやらを進めたら、それに乗っかればいいんじゃないかな」

「……自分の手は汚さず、かつ何もせずに休んでいるだけというわけか」

「実にアンタらしいわ、ダルイゼン」

 ふっ、と不敵に笑うダルイゼンに、いや褒めてないから、とツッコミを入れる声が二つ重なった。

 

 

 □ □ □

 

 

「じゃあタスクさんたちは、デスガリアンと戦いながら、ジューランドに帰るための王者の資格? っていうのを探してて……」

「ちゆ達は、ビョーゲンズの侵略から地球を守っているということか……よし、レオ、これで直ったはずだ」

 おう、と返事をしたレオは、タスクが補修した竹垣を歯抜けになった箇所へと運んでいく。

「てゆーか、何なんですかブラッドゲームって! 遊び感覚で色んな星壊して回るなんてサイテー! あたしもう絶対に許せない! ……あ、ニャトランちりとり取って」

「でも、地球まるごと病気にしようだなんてそっちも相当ヤバいでしょ。地球も不運よね、最高に厄介な相手に二つ同時に絡まれるなんて……ちょっとアム、あなたも少しは手伝いなさいよ」

「えぇ~、ちょっと待ってねセラちゃん、大和君に貼る湿布がくっついちゃってぇ。でも、ちゆちゃんたちって本当にすごいよね、私たちは五人いるけど、たった三人の女の子だけで地球を守ってるなんて」

「ありがとうございます。……ていうか、すみません。皆さんはお客様なのにこんなことを手伝わせてしまって……」

 メガビョーゲンとデスガリアンの猛攻を退けたプリキュアと戦隊の面々は、戦いによって荒れ果ててしまった足湯スペースの後片付けをしていた。

 ちゆが申し訳なさそうに頭を下げると、タスクは首を水平に振って答えた。

「いや、こちらこそ申し訳ない、君と、君のご家族の大切な温泉を破壊してしまうところだった。普段はなるべく冷静に振舞っているつもりだが、戦いとなると周りに目がいかなくなってしまうのは反省すべきところだ」

「た、タスクさん、そんなに思い詰めないでください……」

「んー、このすごくドマジメな感じ、ちゆちーと通じるものがあるねー」

「え、えぇっ? わたし、そこまでマジメなんかじゃ、……いや、言われてみればわたしって融通利かないところあるかも……こないだの大会の時とか……」

「いや言ってるそばから思い詰めちゃったよ……」

 俯いてしまったタスクとちゆの二人に、ひなたは呆れつつも励ましの言葉をかけた。

「ちなみに、王者の資格ってこんなのなんだけど、知らないよね……?」

 大和は、車椅子の背もたれにかけたカバンから、普段配り歩いているチラシをのどかに見せる。

「いえ……すみません、見たことないです。ラビリンは何か知らない?」

「わからないラビ……。この小さな石の力で、そのジューランドと行き来ができるラビ?」

 ラビリンの質問に、大和は静かに首を振る。

「いや、王者の資格は鍵のようなものなんだ。これを、リンクキューブっていうもっと大きな石に嵌めると、ジューランドへの扉が開くんだ。なんていうかこう、キラキラ光る虹色のトンネルみたいなさ」

「虹色のトンネル……。まるで、ラビリンたちが地球にやってきた時みたいラビ」

 そのラビリンの一言を聞きつけて、ひなたがブラシ片手に駆けてくる。

「そうそうそれだよそれー! ヒーリングガーデンとジューランド? 地球と繋がっている異世界でー、言葉が通じるアニマルさんたちが住んでてって、なんかそっくりすぎじゃない?」

 確かに、とジューマン、ヒーリングアニマルの面々はお互いの顔を見合わせる。

「その事だが、僕はそのヒーリングガーデンのこと、実は以前に文献で読んだことがある」

「マジかよタスク」

「大和が説明した通り、リンクキューブとはジューランドと人間界を結ぶ転送装置だ。だが、正確には人間界だけではなく、地球を起点としたありとあらゆる異世界と繋がっているらしい」

 タスクの話に何かを閃いたアムは、満面の笑みでニャトランの元へと駆け寄った。

「じゃあさじゃあさ! そのヒーリングガーデンに私たちを連れてってもらって、そこからそのテアティーヌ様に頼んで、ジューランドに送ってもらう、なんてできないかな!?」

「ニャ……、そ、それは……」

 期待に鼻を膨らませるジューマンたちの視線を集めるニャトランだが、眉をへの字に曲げてペギタンと顔を見合わせる。

「……きっと、無理だと思うペェ。確かに、ボクたちも地球と繋がってる別の世界のことは少し聞いたことがあるペェ。でも、ジューランド、っていう具体的な名前は聞いたことないし、そこに繋がる門のことなんて……」

「だよね……」

 アムだけではなく他の三人も、一瞬膨れ上がった期待が脆くもはじけ、がくっとうなだれた。その様子に、大和は慌てて声をかける。

「まあまあ、みんな! これも何かのきっかけになるかもしれないんだから! ね?」

 のどかもうんうんと頷きつつ大和に続く。

「そうですよ! 今まで全く繋がりのなかった三つの世界のわたしたちが、こうして出会えたってことは、お互いの世界の隔たりなんて、実はそんなに大したものじゃないのかもしれません! …………た、たぶん」

 のどかの力説にしばらくぽかんとしていたジュウオウジャーの面々だったが、やがて声を上げて笑い始めた。

「いいこと言うわね、のどか。確かに、偶然にしちゃ出来すぎているものね」

「そう考えた方が前向きになれるわな! 案外、王者の資格になんて頼らねえ方が早ぇかもな!」

「はい! わたしたちも、大和さんたちが早く元の世界に戻れるように、できることは何でも協力しますから!」

 うんうんと頷き返していた大和だったが、途中できょとんとした顔に変わり、何かに気づいて大きくかぶりを振った。

「あっ、のどかちゃん! 違う違う違う! 俺は普通の人間! 地球人!」

「…………えっ、そうなんですか?」

 今度はのどかがきょとんとした顔をする。

「いや、のどかっち。ぶっちゃけあたしも同じ勘違いしてたわ……」

「そっかそっか、そこもちゃんと説明してなかったね。俺はジューマンじゃない……んだけど、レオたちがこの世界にやってきたときにデスガリアンとの戦いに巻き込まれて、一緒にこの地球を守りたい、って強く思ったらなぜか変身できちゃって」

「あん時ゃびっくりしたよな、ジュウオウジャーに変身できるのはジューマンだけだと思ってたからよ」

 のどかはしばらく面食らった顔をしていたが、やがておずおずと大和に尋ねる。

「じゃあ、大和さんも、ある日突然ジュウオウジャーに変身したんですか……?」

「そう、それまでは本当にただの動物学者」

「そう……、だったんですね」

 少しうつむくのどかに、ジューマンたち四人は顔を見合わせてにやりと笑うと、そそくさと彼女の元へと詰め寄った。

「へ? な、なんですか??」

「そう、そして、私たちこそが~~~」

「本物の~~~、ジューマンだ!!」

 アムとレオの掛け声とともに、四人は一斉にジューマンの顔へと戻る。

 その変わりっぷりにのどかは白目を見開き、そしてその瞳はやがてきらきらと輝き始めた。

「ふ…………、ふわぁぁぁっ、すっごーーーい!! 本当に動物さんだー! ち、ちゆちゃんひなたちゃんすごいよ!」

「「いや、わたしたちはもう済ませました……」」

「ふわぁ、ふわぁぁ! 牙かっこいい! 鼻が長い! すごいすごーい!」

 鼻息を荒くしてジューマンたちの顔を四方から見つめるのどかに、ジューマンたちはどこか自慢げだった。

「のどか、ラビリンたちに会った時はもっとリアクション薄かったラビ……」

「むしろかなり遅れて反応してたペェ」

「やっぱ妖精のナリだと迫力足らねえよナ」

 

 

「す、すみません皆さん、はしたないところを……」

 のどかの興奮が収まったところで、一同は今後のことについて話し始めた。

「コホン。あのデスガリアンは、どうもここを狙っているようだった。痛手を負わせたから、しばらくは来ないと思うけど……。明日からは俺たちで、この辺一帯を監視してみようと思う」

「そんな、せっかく湯治に来てくださってるのに」

 申し訳なさそうにするちゆに、気にしないで、と告げながら大和は続ける。

「俺たちの宿泊先にアイツが現れたのも、まあ結果的にいい偶然だったってことで。ちゆちゃんがプリキュアになれるとはいえ、デスガリアンを相手にするなら俺たちの方がいいはずだし。いいよね、みんな?」

 聞かれるまでもない、とばかりに大きく頷くジュウオウジャーの面々に、ちゆはすくっと立ち上がった。

「……わかりました、そこまでおっしゃっていただけるなら、旅館沢泉の娘である権限を最大限に利用して、皆さんの今日の夕食に、伊勢海老をつけさせていただきます!!」

 拳を固めて言い放たれたちゆの宣言に、ジュウオウジャー一同から歓声が上がる。

「ほ、本当にいいのかい、ちゆちゃん?」

「もちろんです。ですから、せめて今日の夜は、当館自慢の料理に舌鼓を打って、ゆっくりとごつくろぎください」

「うおおお、マジかよ! いっせえび! いっせえび!」

 肩を組み合ったジューマン四人から巻き起こる伊勢海老のシュプレヒコールに、思わずのどか達も笑いだしてしまう。

「よし、じゃあ話もついたところで、片付けさっさと終わらせちゃいましょ。私もすぐに温泉入りたいし」

 セラの言葉に、ジューマンたちは威勢よく返事する。

「で、大和は部屋に戻って体を休めること! いいわね?」

「は、はい……」

「まったく、大和くんの腰を治すために遠路はるばるすこやか市まで来たっていうのに、まさか悪化させちゃうとはね」

「いや、絶対その目的の優先順位、もう三番目くらいに格下げされてるよね?」

「す、すみません。わたしのせいで……」

 申し訳なさそうにするのどかに、ジュウオウジャー一同揃って首を振る。

「いーや、のどかは悪くねぇ」

「そうとも。デスガリアンが出たからといって、何も慌てて来ることは無い。こんな時くらい、僕たちに任せておけばいいんだ」

「いや、そうも思ったんだけど、どうもじっとしていられなくて……」

「と、に、か、く! 今は休むことが先決! はい、早く部屋に戻って!」

 セラとタスクに急かされ、半ば逃げるように大和は車椅子を漕いで足湯を離れようとした。

「あ、じゃあわたし、手伝います!」

「うう、ごめんねのどかちゃん、正直、これ漕ぐのも痛くて……」

 のどかは、ちゆやセラたちに会釈をして、足湯を後にした。

 

 

 □ □ □

 

 

 ロビーへと向かう廊下、のどかは思わずくすくすと笑いだしてしまう。

「いやもう、本当にみんな騒がしくて、お恥ずかしい」

「あ、いえ、違うんです。みなさん、本当に仲が良いんだなあって。でもまさか、『一緒に戦ってきた仲間』っていうのが本当の戦いのことだとは思いませんでしたけど」

「ごめんね、隠してて。ちゃんと説明してれば、あの時あんなにゴタゴタしなくて済んだのに」

「いや、でも信じてもらえると思わないですもんね……」

「お互いに、ね……」

 振り向いた大和と目が合い、お互い苦笑する。

「いやー、でも俺は見てないから未だに信じられないなー。のどかちゃんや、ちゆちゃん、ひなたちゃんが変身して怪獣と戦う女の子だなんて」

「そ、そんなこと言ったら大和さんだって、……いえ、そんなことないですね。大和さんはなんだか、すごくヒーローって感じがします」

「え、ど、どこが? 今の俺なんてただの腰痛を患う成人男性だけど……」

「そ、そこは置いといてですね」

 微妙にしょぼくれる大和を気遣いつつ、のどかは続ける。

「ジューマンの皆さんも、すごく大和さんのこと信頼してるんだなあって、伝わりますよ」

「そう……、なのかな?」

「それに、四人もの人をみんな一緒に匿ってあげようなんて、なかなかできないですよ」

「まあそれは、セラたちがこっちの世界に来ちゃったのは微妙に俺のせいでもあるし……のどかちゃんだって、ラビリンやラテと一緒に住んでるんでしょ?」

「ラビリンとラテは小さいですし、セラさんたちを連れてきて一緒に住まわせてください、なんて、とてもお父さんやお母さんに言えないです……」

 それもそうだね、と大和は苦笑する。

「でも、俺がヒーローならのどかちゃんたちもヒーローだよ」

「そんな、わたしは、別に……」

 のどかの、車椅子を押す足並みが次第に遅くなっていき、

「本当に、わたしは、全然違ってて……」

「……どうしたの、のどかちゃん?」

 やがて、タイヤの空しい音とともに、車椅子の動きは完全に止まってしまった。

「あの……、大和さんって、初めて変身したとき、どう思いました?」

「どう、って……?」

「わたしはこう思ったんです。『わたしの体じゃないみたい』って……。ラビリンたちとずっとお手当してきたけど、その感覚はいまだに変わらなくて。……わたし、体力がなくて、自分の力じゃうまくいかないことが色々あって、それでも頑張ろうって、思ってるんです。でも……」

 大和は、車椅子をゆっくり反転させ、声を震わせ言葉を紡ぐのどかへと向き直る。

「時々、ふと考えちゃうんです。『キュアグレースになればこうじゃないのに』って」

「のどかちゃん……」

「そんなこと考えても、キュアグレースじゃないわたしがどうにかなるわけでもないのに」

「……ちゆちゃんとひなたちゃんと、そういうこと話したことはある?」

 大和の質問に、のどかは静かに首を振った。

「こんなこと考えてるの、わたしだけじゃないかって。聞いて、もしそんなことないって言われたらって……」

 少し震えるのどかの声に、そっか、と大和は答え、しばらく考え込み始める。

「ご、ごめんなさい、こんな話いきなり……」

「…………ぶっちゃけさ、」

「……はい」

「ギャップ、すごいよね! 変身前と後の!」

 真剣な表情から一転、ぱっと目を見開いて言い放つ大和に、のどかは呆気にとられて生返事を返した。

「俺さー、ジュウオウイーグルに変身すると、空飛べるんだよね! 誰にも言ったことないし言えないけどこれ、もうすっごく気持ちよくって! もう満員電車乗ってる時とかに空見ると『飛びて―』って思うもん!」

「わ、わかります……! わたしも、キュアグレースになるとすごい力持ちになって、家みたいに大きな岩でも持てるようになるんです! でも、変身前は漬物石がやっとです……」

「ケンカもろくにしたことないのに、体はもうモーターでも入ったみたいにギュンギュン動いて、テレビの格闘家みたいにパンチもキックも決まるしさ。でも、戦い終わった後に自分の体動かすと『あれ、どう戦ってたっけ?』ってさ、こう」

 腰の入っていないへなっとした正拳を繰り出す大和に、のどかは思わず吹き出してしまう。

「や、大和さんでもそうなるんですね……」

「いや、なるでしょ! 俺、最初に変身した日、興奮して夜眠れなかったもん!」

「わたしもです! ラビリンたちをお家にかくまったり色々あって疲れたのに、もう目がらんらんとしちゃって……」

 わかる、と大和はうんうんと頷く。

「でもさー、他のみんなはジューマンだからさ。元々パワフルだし、ジュウオウジャーのことも前から知ってたみたいだから、そこまででも無い感じで。『あれ、俺だけ?』みたいなさ……」

 苦笑するのどかに、大和は少し声色を落として続ける。

「……てな感じで、俺はそのうち何となく割り切っちゃったけど、のどかちゃんの中ではそうじゃないんだね」

「……はい。強いキュアグレースもわたしだし、強くないわたしも、わたしで……。だからその、うまく言えないんですけど……」

「確かにさ、ジュウオウイーグルは強いよ。人間の俺じゃできないことが色々できるようになる。でもさ、落ち着いて考えてみるとさ、それってそんなに沢山あるわけじゃないんだよね」

「……え?」

「ジュウオウイーグルは空も飛べるし、力は強いし、デスガリアンと戦う事が出来るけど、動物の研究ができるわけじゃない。料理ができるわけでもないし、お風呂の掃除ができるわけでもない。だから、キュアグレースじゃないとできないことなんて、実はそんなにないんじゃないかな。のどかちゃんが、のどかちゃんのままでできるすごいことって、もっといっぱいあると思うんだ」

「わたしのままで、ですか?」

「そう! 特別な事じゃなくてもいいんだ。例えば今日、デスガリアンの方に向かおうとする俺を心配して止めてくれただろ?」

「あれは、でも、そのせいで大和さんの腰が悪くなっちゃって」

 まあ一旦それは置いといて、と大和は箱を運ぶジェスチャーをする。

「それに、落ち込んだ俺の仲間を励ましてくれた。キュアグレースだからじゃない。あれは、のどかちゃんが、のどかちゃんだからできたことなんだ。今は無理なことでもいつかはできるようになって、キュアグレースじゃなくても、ヒーローみたいなのどかちゃんになれるかもしれない」

「……なれるんでしょうか、わたしに」

 もちろん、と大和は力強く頷いた。

「今度、ちゆちゃんやひなたちゃんにも聞いてみなよ。きっと、のどかちゃんと同じことを考えていると思うよ」

「……はい!」

 

 そして二人はエレベーターの前へと到着した。

「ありがとう。ここまで来れば、後は自分で戻れるよ」

「大和さん、あの……、突然お話聞いてもらって、ありがとうございました」

「全然全然! 俺なんかでよければ、相談に乗るよ」

 謙遜する大和に深々とお辞儀をし、のどかはちゆ達の元へと戻っていった。

 その姿を笑顔で見送ると、大和は車椅子のタイヤを漕ぎ、エレベーターのボタンを押そうとし、……ふとその指を止めた。

 車椅子をくるりと反転させて、誰もいなくなったロビーの片隅へと声をかけた。

「そこにいるのはラビリン……かな」

「! ど、どうしてわかったラビ!?」

 のどかが曲がっていった角の足元から、長い耳を揺らしてラビリンがおそるおそる顔を出した。

「俺は『鷲の目』を持っててね。すごく遠くまで見渡せるし、動くものにも敏感なんだ。……ごめん、話の途中から、後ろについてきていることに気づいてた」

「ごめんなさいラビ。そんなつもりじゃなかったんだけど、……のどか、なんだかずっと元気がないから、手伝おうと思ってついてきたら……」

「まあ、出てきにくいし、立ち去ることもできないよね。パートナーなら余計に」

「……ラビリン、のどかがあんな思いを抱えてたなんて知らなかったラビ。のどかが、ラビリンと一緒にプリキュアをやりたいって言ってくれて、だから、のどかの中で、プリキュアになることは当たり前のことになってるんだって、思い込んでたラビ……」

 とぼとぼと大和の元へと歩み寄っていくラビリンの声に、少しずつ嗚咽が混じり始める。

「でも、当たり前ラビね、のどかは、本当に普通の女の子だったんだから……」

「戸惑うよね。……俺も実は、まだ迷う時がある。本当に俺は、この力を継ぐべき人間だったのかなって」

「継ぐ……?」

「俺はただの人間だけど、小さな頃にある人からジューマンパワーを授かったんだ。だから今、ジュウオウジャーとして戦えているんだけど、何者でもない俺が、そんな重大な責任終えるのかなって、たまにふと、思うことがある」

「……大和さん」

「だから、のどかちゃんの気持ちもわかるんだけど……だからこそ言える、そんなに心配することないよラビリン」

「え……?」

「だって、のどかちゃんはちゃんと悩んでるんだから」

「悩んでるから、大丈夫ラビ……?」

 首をかしげるラビリンを、大和は両手を広げて招き入れる。掌の上のラビリンを自分の目線まで抱え上げ、その目をまっすぐ見つめて大和は言った。

「悩んで、ちゃんと自分の言葉で考えてる。向き合ってる。だから、のどかちゃんは、のどかちゃんなりの答えをきっと出せるはずだ。それに、頼れる仲間や、パートナーのラビリンがいるじゃないか」

「……その通りラビ! ラビリンも今度、のどかとちゃんと話してみるラビ!」

 うんうんと頷く大和に、ラビリンは花が咲いたような笑顔を浮かべる。

「大和さん、改めてラビリンからもありがとうラビ! のどかが元気になったのは大和さんのおかげラビ!」

「いやいや! 俺なんてそんな大したこと!」

「あ、ついでに、大和さんのこと、ずっと危ないケンキューシャだと思っててごめんなさいラビ! いいケンキューシャさんもいるラビね!」

「えっ、う、うん? そ、それは、どうも……?」

 

 

 □ □ □

 

 

 翌朝。

 のどかは、自室のカーテンにそっと小さな隙間を開けてのぞき込んだ。雲一つない空はほんのりと明るくなり始めているが、日はまだ山の向こう側からまだその顔を覗かせていない。

「わたしが、できること……」

 ラビリンもラテも、布団の中で静かに寝息を立てている。その様子に柔らかな笑顔を浮かべ、のどかは静かに身支度を始めた。

 深く深呼吸をし、よし、と頷くと、のどかは部屋を見渡した。

 

「本当に、無理しなくていいのよ? 昨日も一日大変だったんだから」

「ううん、大丈夫! いつものジョギングの代わりだと思えば! 少し時間がかかっちゃうかもしれないけど、がんばりたいの!」

 ようやく太陽が顔を覗かせ始めた早朝。のどかはえんじ色の和服に再び身を包み、旅館沢泉の足湯スペースにいた。鼻息荒くガッツポーズを取る彼女に、ちゆは苦笑しつつ、

「わかったわ。でも約束。必ず三十分に一回は休憩を取る事。無理はしない事。いいわね」

「うん!」

 大きくうなずくのどかに手を振りながら、ちゆは朝食の配膳の手伝いへと向かっていった。

「……よし、やるぞー!」

 拳を振り上げ高らかに声を挙げたのどかは、早速ホウキを手に取り、岩盤の床をせっせと掃いていく。

 ちゆの言いつけ通り、時折休憩を挟みながら、岩盤の掃き掃除を終えると、次にペット用のお風呂の掃除に取り掛かった。

 全面をブラシで磨き上げ、水で流し終えたところで、背後に妙な気配を感じ後ろを振り向いた。

「あっ、キューブシャークさんに、エレファントさん、タイガーさんも!」

 とことこと連れ立って歩いてきたのは、セラ、タスク、アムの相棒のキューブアニマルたちだった。めいめいに、はしゃいでるような、何かをおねだりするような高い鳴き声を上げている。

「ふふ、みんな、ちゆちゃんの旅館のお風呂、気に入ってたもんね。勝手に抜け出してきちゃったのかな?」

 頷くように鳴き声を上げる三匹に、のどかはくすくすと笑いながら、

「待っててね、足湯の掃除が終わったら、お湯を張ってもらうようにちゆちゃんに頼んでくるから」

 キューブアニマルたちは飛び跳ねて喜びを表した。その様子にのどかはさらに笑みを深め、足湯の湯船へと降り立った。

 しっぽを振りながら待つ三匹を横目に、のどかはデッキブラシで浴槽を磨いていく。

「…………よし、オッケー!」

 流れる汗の球を裾で拭い、水を流して掃除を終えようとした時だった。

「……あれ、キューブタイガーさん、どうしたの?」

 突如、先ほどまでうきうきと尻尾を振っていたキューブタイガーが、唸り声を始めた。すぐに、他の二匹も同様に唸り始める。

 ただならぬ様子に、のどかが顔を上げたその先。

 異常の元凶は、のどかの気づかぬ間に目と鼻の先まで接近していた。

「ぐふふふふ、ここの足湯はまだ試してねぇと思って来てみたら、ちょうどいいところにちょうどいい小娘がいたど」

「あ、あなたは……!」

 肩と上腕が大きく肥大した逆三角形の体型。その体をまだらに覆う水色のダイヤモンドの結晶。ちゆやセラたちから聞いた情報と完全に一致する。

「まさか、デスガリアン……!?」

「の、モンド・ダイヤだど。……ん? なんでオデのこと知ってるんだど?」

 煌びやかな剛腕の怪人は、のどかより少し高い位置で不思議そうに頭を掻いた。

「ジュウオウジャーたちのお供も連れているし……。お前、あいつらの関係者だど?」

「……っ。そんなことより、何しに来たの。これ以上、ちゆちゃんの温泉を傷つけようっていうのなら……!」

 モンドを真正面に見据え、のどかは懐のヒーリングステッキに手を伸ばし――すぐにその手を止めた。

 

 ラビリンがいない。

 今ののどかは、変身できない。

 

 心臓がどくんと脈打ち、さっと血の気が引いていく。

 そんなのどかの動揺と裏腹に、モンドは気の抜けた様子で続ける。

「誤解するなだど。ここの温泉はオデのものだから、壊す気なんか全くねぇど」

「そ、そうなの?」

 動揺を気取られないよう、なるべく平静を装いながら答える。

「ただ……、今は人質にちょうどよさそうな、か弱い小娘を探していたところだっただど。お前なら話も早そうだど」

 モンドの語気が強まり、のどかの背中にぞっと冷や汗が流れる。

 逃げ出すか、声を上げるか。どちらにしても、この距離ではどうにかなりそうもない。そんな刹那の逡巡の間に、のどかの足元から三匹のキューブアニマルがモンド目がけて飛び掛かった。

「あァ? しゃらくせぇんだ、ど!!」

 しかし、無慈悲に振るわれるパワーショベルのような腕に、彼らはあっけなく地面へと叩き落とされる。

「みんな!!」

 駆け寄ろうとするのどかだったが、彼女の目の前にすっと差し出された剛腕の圧力は、いともたやすく彼女の動きを制する。

 おそらく、この怪人の気まぐれ一つで自分の頭は簡単に潰されるだろう。背筋を通り抜ける恐怖に、のどかはすっかり立ちすくんでしまった。

「ちょうどいい、こいつらも何かに使えるかもしれないから連れていくど。……で、お前も抵抗しても無駄だってことはわかるだど? おとなしくついてきたら痛い目には会わせねぇど」

 多分な、と付け加えて下品に笑うモンドに、のどかは大きく息を吸って早まる鼓動を何とか押しとどめて言い返す。

「……わかった、一緒に行く。でも、その子たちも連れていくなら、わたしと一緒にいさせて。おとなしくするよう言い聞かせるから」

「まぁ、いいだど。せいぜい言う事聞かせるんだど」

 くくくと笑うモンドを睨みながら、のどかは三匹のキューブアニマルを抱き上げる。苦しそうな鳴き声を上げる彼らを、のどかは優しく撫でる。

「ごめんね……今はおとなしくしてて。きっと、ちゆちゃんとひなたちゃん、大和さんたちが、何とかしてくれるから……!」

 次の瞬間、巨大な掌がのどかの体を胴ごと鷲掴みにし、人を攫う波のように容易く奪い去っていった。

 

 

 

 

「のどか、掃除は終わった? こっちは終わったからわたしも……。…………のどか?」

 

 

 □ □ □

 

 

「さーて、もう少しで合流場所に着くだど!」

「ご、合流って誰と? ……ここって」

 モンドの肩に担がれたのどかが連れて来られたのは、彼女がよく見知った場所だった。

 のどかが、すこやか市に来て初めて訪れた場所。街全体を一望する、丘の上にあるハートを象った展望台だった。

 まだ朝早い時間だからか、辺りに人けはない。モンドはのどかを担ぎ上げたまま、意気揚々と階段を上っていく。

 テラスへと続くドアを開けた先に待ち受けていたのは、意外な人物たちだった。

「……まさか、本当に攫ってくるとはな」

「んー? げっ、ていうかこの子、キュアグレースの子じゃないの!」

「グアイワル、シンドイーネ……!」

 肩から降ろされたのどかをまじまじと見つめるのはのどか達の、いや、地球の宿敵、ビョーゲンズ幹部の二人だった。

 プリキュアに変身する前の姿でここまで接近するのは初めてだ。完全に無防備な姿の今、その言い知れぬ圧力に思わずたじろいでしまう。

「おおっ。ということは、コイツが例のもう一人のプリキュアだど? オデってば勘がいいど!」

「妙な運の良さを見せる奴だな……」

「しかも見た感じ、ヒーリングアニマルはついてきてない? だから連れて来れたのかもしれないけど。にしても、ふーん……」

 シンドイーネはつかつかとのどかに詰め寄り、おののく彼女を下から上まで嘗め回すように見つめる。

「な、何……?」

「別にぃ。アタシたち普段、こんな乳臭い子にしてやられたんだって思うと、ね」

「ち、ちちくさ……。そ、そりゃ、貴女みたいに美人で色気は無いかもしれないけど……」

「あら何、褒めて助かろうって作戦? そんな言葉くらいでほだされるシンドイーネ様じゃないけどぉ」

「いや、めちゃめちゃほだされてんでしょ」

 目じりの下がった仲間にツッコミを入れながら、柱の陰からもう一人の人影が現れた。

「ダルイゼンまで……!」

「おやおや、キュアグレースじゃん。昨日サボってた分、今日は勇敢にも変身すらせずに一人で攻め込んできたってわけ? おっと、攫われてきた、の間違いだっけ?」

 皮肉を交え嘲笑するダルイゼンを、のどかは毅然と睨みつける。

「ほう、この状況でもなかなか肝が据わっているではないか。流石はプリキュアといったところか」

「こっちまで敵のこと褒めなくていいのよグアイワル。で、これからどうするわけ、ピカピカゴリラちゃん?」

 他四人の注目を一点に集めたモンドは、高笑いしながら答える。

「そりゃもう決まってるだど。ジュウオウジャーとプリキュアを呼び寄せて、コイツを盾にして身動きとれなくした後、全員嬲り殺しにしてやるんだど……クックック」

「却下よ」

「却下だ」

 高笑いの中、にべもなく二人からNOを突き付けられ、思わずモンドはつんのめる。

「なんでだど!? お、お前らそれでも悪の手先かだど!? 勝利のためには手段を選ばねえんじゃねぇのかだど!?」」

「だぁからぁ、そんなダッッッサいマネしたくないわけこっちは! 手段なんて選ぶわよ、選びまくりよ!」

 シンドイーネの言葉にうんうんと頷き、グアイワルも続く。

「キュアグレースはこちらの手の内。そしてその、キューブアニマルだったか? を奪えたのだから、戦力ダウンという意味では十分だ。あとはプリキュアたちをおびき寄せられればそれでよい。それが嫌だというのなら、やはり協力は無しだ」

「ぐぬぬ……」

 口惜しそうに地団太を踏むモンドを一瞥しながら、ダルイゼンがそっと挙手をする。

「あのー、オレは卑怯な手でも何でも、プリキュア倒せるならそれでいいんだけど?」

「ちょっとぉ! だからビョーゲンズ内での方向性を合わせなさいよ!」

「だってその方が楽だし」

「それはそうかも知れん。しかしダルイゼン、お前にはプライドというものがないのか?」

「あるよ。でも物事には優先順位ってものがあるでしょ」

 平然とのたまうダルイゼンに、シンドイーネとグアイワルの両名は肩をすくめた。その二人を掻き分けるように、モンドはダルイゼンの手を取り詰め寄った。

「ガキンチョ! 会った時から生意気だし言う事聞かねえしクソ面倒くせぇヤツだと思っていたが、こんなときだけは頼りになるだど!」

「…………やっぱり、こいつの作戦通りに進めるってのも気に喰わないかな」

「なんで褒めた途端掌返すだど!? お前は妖怪天邪鬼かだど!?」

「天邪鬼、ねぇ。そうだな、それなら、いっそのこと……」

 ダルイゼンはつかつかとのどかへと詰め寄り、身構える彼女ののどかの腹部にそっと手を当て、

「ドン」

「っっ!?」

「……って、確実に頭数減らしちゃうのも一つじゃない?」

 立ちすくむのどかを他所に不敵に笑うダルイゼンに、モンドはぶるぶると首を振って慌てだす。

「な、何言ってるだど! そんなことしたらお前らはいいかもしれないけど、こっちは折角の人質作戦がおじゃんだど! ジュウオウジャーが倒せなくなっちまうど!」

「知らないね、そんなこと」

「はいはいそこまで! ダルイゼンも無意味に煽らないの。ピカピカゴリラちゃんも、とりあえずこっちの作戦で進めましょうよ。大丈夫、アンタたちデスガリアンとアタシたちビョーゲンズが組むんだから楽勝よ」

 うんうん、と自信ありげに頷くグアイワル。

 モンドはまだ何か言いたげだったが、ぐっとそれを飲み込むと、

「……わかっただど。じゃあ、まずは作戦会議でもするだど」

 オッケー、と朗らかに笑うシンドイーネを複雑な表情で見つめながら、モンドはシンドイーネ、グアイワルと共にドアをくぐり階下へと降りていった。

 

 

「……あなたは行かなくていいの」

「別に、お前に関係ないでしょ。どうせ大した作戦でもないだろうから面倒くさいだけ」

 そう言ってダルイゼンは、のどかから数歩離れたところで、手すりにもたれて退屈そうに空を見上げている。

「後はまあ一応、監視? どうせその姿で逃げ出したところですぐに捕まえてやるけどね」

「……」

 くやしいが、その通りだ。プリキュアになれない今、この展望台から飛び降りることなど不可能だし、ドアから飛び出し三人をくぐり抜けて突破することなど無謀どころの話ではない。

 胸元に抱えたキューブアニマルたちも、先ほどモンドに叩きつけられた時のダメージがまだ残っている。不用意には動けない。

 八方ふさがりの状況に、のどかはただ遠くに見下ろす街並みを眺めるしかなかった。

 こんな状況だというのに、海の方角からは緩やかで気持ちのいい風が吹いてくる。ふと見渡した先、旅館沢泉の建物が目に入った。今頃、ちゆが異変に気付いて大騒ぎになっているところだろうか。

 横に目をやると、ダルイゼンは手すりに寄りかかり、ただ目を閉じて突っ立っている。まるで、のどかがいることも忘れて寝こけているかのようだ。

「……さっき、本当に殺されるかと思った」

 その横顔を見つめていて、ふと、口をついた言葉に、目を開けたダルイゼンはきょとんとしつつも、乾いた笑みを浮かべながら答える。

「そうだね。オレはあの筋肉バカみたいに、プリキュアの時に倒してこそ、なんて思っちゃいないし。なんなら、今からでもいいんだけど、さ」

 少し目を細めてのどかを見据えるダルイゼン。しかしのどかはその視線を、逸らすでもなく、真っ向から応えるでもなく、戸惑いながら見つめ返す。

「……何?」

「殺されるって、そう、思ったんだけど、でも、あまり本気で言っていないようにも見えて」

「……馬鹿にしてんの? それとも、マジで殺されたいわけ?」

「ち、違うよ! どっちも! ただ、なぜそう感じたのかわからなくて、」

「で、本人に聞いてみようってわけ? 誘拐された身のくせして、ずいぶん余裕があるもんだね」

 うう、と恥じ入るのどかを冷めた目で見据えながら、ダルイゼンは嘲るように続ける。

「ま、どう感じようとご自由に。そんな下らないことを考えるくらいしか、今のお前にはできない」

「……そうだね、その通り。だから、待つよ。仲間を信じて、待つ。」

 遠くを見つめるのどかの瞳を横目で見ながら、ふん、とダルイゼンはつまらなさそうに頬杖をついた。

 

「……ところでさ、何なのその格好」

「え? ああ、これ? 着物だよ、ちゆちゃんの旅館の」

「ふーん」

「へ、変?」

「別に」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「はぁ、はぁ……。の、のののどかっちが攫われたって本当!!??」

 旅館沢泉のとある客室。ちゆからの知らせを見て慌てて来たのだろう、寝癖が天を突きブルゾンも両肩からずり落ちた姿で駆け付けたひなたが目にしたのは、神妙な面持ちで立ち尽くすジュウオウジャーのメンバーと、座敷でうずくまるようにうなだれるちゆとラビリンの姿だった。

「ひなたちゃん……。一応、私たちもこの旅館の周りは探したんだけど、たぶん間違いないと思う。それに、私の相棒のキューブタイガーも、シャークもエレファントまでいないの」

「な、なんで……?」

 疑問符を浮かべるひなたに、セラが代わって答える。

「あの子たち、ここの温泉のことすごく気に入ってたから、こっそり抜け出したんだと思う。で、お風呂掃除をしていたのどかと一緒に……」

「キューブエレファントたちがのどかちゃんと一緒にいたのなら、普通の人間がのどかちゃんを攫えるはずがない。ということは間違いなく、あのデスガリアンの仕業だ」

 セラとタスクの分析に、全員の表情がこわばる。そんな中ちゆが、思い詰めた顔で立ち上がった。

「……ごめんなさい、わたしの責任です。昨日、あんなことがあったばかりなのに、のどかを一人にするなんて……!」

「ちゆ、それは違う。僕たちの方こそ、明らかにあいつは狙いをこの旅館に絞っていたのに、相手が痛手を負ってるからと悠長に考えすぎていた」

「そもそもあの時、わたしがタスクさんを止めなければあいつを倒せていたかもしれないのに……のどかが危ない目にあうくらいなら、うちの温泉の一つや二つ、派手にぶっ壊れてしまえばよかったんだわ!」

「いや、ちゆ、その言い方は僕が破壊魔みたいに聞こえるからやめてくれ……」

「違うラビ、一番悪いのはラビリンラビ! ラビリン、のどかのパートナーなのに、のどかが大変な時にぐーぐー寝てたラビ。パートナー、失格ラビ……う、うええぇぇぇぇん!」

 とうとう、大声を上げて泣き始めてしまったラビリンに、一同の表情がさらに暗く落ち込む。

 と、その時、まだ痛む腰を引きずりながら、大和はふさぎ込むタスクとちゆの肩をポンと叩いた。

「二人とも、今は自分を責めたり、仕方がない。それに、ラビリンも」

 大和は、泣きじゃくるラビリンを優しく掌で抱える。

「パートナーなら、今は泣いてる場合じゃない。そうだろ、ラビリン?」

「大和さん……。うう、そうラビ。一刻も早く、のどかを探さないと……!」

「そういうこと。みんな、とにかくまずは、手分けして探しに行こう……ん?」

 突如部屋の中に、カンカンカンと乾いた音が響き始めた。全員が、その不審な音の出所を探りきょろきょろと辺りを見渡す。

 すると、レオが片隅の窓にかかったカーテンにぼんやりと映る影を見つけ、勢いよくそのカーテンを開いた。

「うぉい、キューブシャークじゃねぇか!?」

 外の窓辺にいたのは、尾っぽで力なくガラスを叩き続けるいなくなったはずのキューブシャークの姿だった。レオは急いで窓を開け、彼を掌へと向かえる。他のメンバーも慌ててレオの元へと駆け寄ってきた。

「なんだこれ……手紙か?」

 キューブシャークは、その大きな口に一枚の紙きれを咥えていた。レオはそっとその紙を手に取り、その裏に書かれている文字に目を通そうとした。

「……ダメだ、読めね。大和、パス」

「えっ、何、漢字が難しかった? ……あ、読めないってそっちの意味?」

 そこには、日本語の体をぎりぎり成し得ていない、毛虫が這い回って書いたような汚い文字が羅列されていた。

「えーっと、目を凝らせばなんとか読めるかも、『ぐれーすは あずかった はーとの てんぼうだいで まつ』……。これって」

「脅迫状……だよね」

 大和から手渡されたキューブシャークを愛おしそうに抱きしめながら、セラは大和とうなずき合う。

 タスクも、逸る気持ちを抑えきれず、急いた様子でちゆに尋ねる。

「ハートの展望台とは、この近くにある建物なのか?」

「はい、歩いて行ける距離です。あそこにのどかが……!」

「キューブシャークちゃん、エレファントとタイガーも、のどかちゃんと一緒にいるの……?」

 力なく頷くキューブシャークに、アムとタスクだけでなく、部屋にいる一同の視線が自然と大和へと集まる。 

「みんな、こうして向こうからわざわざ呼び寄せてきたってことは、向こうは間違いなくこちらを待ち伏せし、罠を張っている。それでも……」

「聞くまでもないわよ、大和。こっちは相棒を傷つけられて、もう背びれがビッキビキなんだから……!」

「売られたケンカは即買うのが鉄板だぜ!」

「僕とアムは、大事な相棒を奪われたままだ。何が何でも取り返してみせる……!」

「……私、久しぶりに本気でキレてるから。あの宝石ゴリラの体、ずたずたに斬り裂いてやるんだから……!」

「のどか、必ず助けてあげるから待ってて……!」

「あたしたちプリキュアと、ジュウオウジャーの皆さんの力を合わせれば絶対できるよ!」

「大和さん……、みんな……、お願いラビ! のどかを、ラビリンのパートナーを助けてほしいラビ!!」

 言われるまでもない、とばかりに七人は頷き合う。

「よし、みんな。行くぞ!」

 大和が先陣を切り、一行は颯爽と客室を後にした。

 

「……いててててて」

 が、部屋を出た途端、大和は腰に手を当てうずくまってしまった。

「ちょっと大和!」

「こんな時くらい最後までビシッと決めろよ!」

「そ、そんなこと言ったって……」

 セラとレオから檄が飛ぶものの、大和は駆け足すらままならない様子だ。タスクとアムも顔を見合わせる。

「どうする? 大和には休んでいてもらうか?」

「でも、今回なんか嫌な予感しない……? ちゆちゃんひなたちゃんがいるって言っても、こっちも万全じゃないと……」

 頭を抱える五人に、ちゆも困り顔で割って入る。

「でも、無理をしても仕方ないですし、今回は……ん? ラテ? 一体どうしたの?」

 ちゆの足元には、いつの間にかラテがおすわりし、何かを訴える様にちゆの足に頬ずりをしていた。

 ちゆはひなたと目を合わせると、聴診器を取り出し、ラテの心の声に耳を傾けた。

『雲さん、まだ近くにいるラテ。きっと、力を貸してくれるラテ』

「雲さん? …………あっ」

 

 

 一行は、昨日騒ぎのあった足湯スペースに再び集まった。ラテが空に向かってワン! と吠えると、昨日メガビョーゲンから救出した雲のエレメントさんが姿を現した。

『ラテ様、何か御用でしょうか?』

 ラテは、ワンワンと鳴き続け、エレメントさんはふんふんと聞き耳を立てている。おそらく事情を説明しているのだと思われるが、一同は成り行きを見守るしかない。

 しばらくしてラテの話が終わると、わかりました、と雲のエレメントさんは頷き、ちゆ達の方へと向き直った。

『事情はお伺いしました。そちらの方……大和さん、ですね。特別に、私の力をお貸ししましょう』

「で、でもいいの? エレメントさんが力を分け与えてくれるのって、ラテがヒーリングガーデンの王女様だから特別、とかじゃなかったっけ?」

 ひなたの質問に、雲のエレメントさんは頷きつつ答える。

『確かに、普段私たちが、人間の方に直接力をお貸しすることはありません。しかし、このお方、大和さんは、大空の王者様と伺いました。私たちが住まう空を守ってくださっている偉大なお方。今回は、そのご恩をお返しさせていただくという事で』

 ですって、とちゆを伝って聞いた大和は、照れ臭そうに頭を掻く。

「なんだか、気恥ずかしいな。そんな大それた人間じゃないんだけど」

「いいじゃねえか、もらえるもんはもらっとけば!」

「なっとくもんだね、大空の王者にも!」

 調子よく笑うレオとアムに苦笑する大和。すると、その体がぼんやりと淡く輝き始める。

「……ん? あれ? 痛みが無くなった! 腰が軽い! はは、すごい!」

 大きく腰をひねったり、その場で駆け足をしたりして、自分の体の回復を確認する大和。

『一時的なものですから、あまり無理はなさらないでください』

「はい、わかりました。ありがとうございます!」

 大和は深々と頭を下げると、雲のエレメントさんはにっこりと笑って空へと帰っていった。

「みんな、待たせてごめん。それじゃあ改めて、行こう!」

 おお! と全員声を張り上げ、駆けるように旅館沢泉を後にした。

 

 

「どう、何か見える? 大和」

 町外れの道を駆け、ハートの展望台へと続く丘の麓にたどり着いたところで、セラは大和に尋ねた。

 大和はまだ指先ほどの大きさの展望台に目を凝らす。

「……いた! のどかちゃんだ! キューブアニマルたちもいる!」

 大和の『鷲の目』は、展望台のテラスに不安げに立ち尽くすのどかの姿を捉えた。

「す、すごい。本当に見えるんですね……」

 舌を巻くちゆに、大和は誇らしげにぐっと親指を立てる。

「おーし、それなら……」

 肩を鳴らしながら一歩前に出たレオに、いち早く反応したセラが耳をふさぎ、大和タスクアムがそれに続き、ちゆとひなたはわけもわからず、そのただならぬ様子に右往左往した。

「おーいのどかあああぁぁぁ!! いま助けに行ってやるかんなああああぁぁぁぁ!!!!」

 空気をつんざく暴力的な、いや、破壊的なまでの絶叫に、ちゆもひなたも、ヒーリングアニマルの三匹も、目を白黒させてその場にへたり込んでしまった。

「あ、アニキ……、何なのニャその大量破壊兵器みたいなシャウトは……」

「……っ、ちょっとレオ!! だから大声出すんなら先に言えって何回言えばわかんのよ! みんなノビちゃってるじゃないの!」

「それに、敵にもこっちの動きが知られるだろうが!」

 憤慨するセラとタスクに対し、レオはどこ吹く風で飄々と言い返す。

「いや、のどかも不安だろうから先に知らせてやろうと思ってよ。それに、どうせ真っ向から突っ切るんだ。いつ知られようが一緒だろうが」

「やー、そのレオさんのわかりやすいところ好きっすよ……」

 頭をくらくらさせながら、か細い声で讃えるひなたに、おう! とレオは白い歯を見せて返す。

「ちょっと待ってみんな、少し静かに」

 セラは一転、聞き耳を立てて集中する。

「……のどかが言ってる。『お願いします!』って!」

 セラの報告に、ダウンしていたちゆもひなたも、目を見開き、立ち上がった。

「急ごう!」

 大和の号令に、一行は再び駆け出した。

「……ん? 何あれ?」

 しかし、展望台へと続く道の中腹に、突如異変が現れる。

 まるでアリの群れのように、うぞうぞと蠢く大群が、どこからともなく湧き出てきた。

「ひぃ~、なんかウネウネしたのがいるよ!?」

「しかもあの数……まずくない?」

 狼狽えるひなたとちゆに、大丈夫だ、とタスクが声をかける。

「デスガリアンの兵隊、メーバだ。あの程度、ものの数じゃない」

「そういうこと。よし、みんな、行くぞ!!」

 大和の掛け声とともに、五人はジュウオウチェンジャー、二人はヒーリングステッキを掲げた。

 七つの極彩色の光がつむじ風のように吹き荒れ、五人の戦隊と二人のプリキュアは変身を遂げる。

「俺が先行する。みんなは地上からよろしく!」

 両腕から羽を展開する大和に、ラビリンは声をかける。

「大和さん! ……よろしく、お願いしますラビ!」

 ああ、と大和は頷き、深紅の羽を羽ばたかせ、大空高く舞い上がった。

 

「大空の王者、ジュウオウイーグル!!」

 

 

 第4話へつづく

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