召喚した式が強すぎて僕のやることがない   作:セパさん

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レイチドのシオン捜索

「ですから!王都が学生を受け入れられない以上、カリフなりコトボなり召喚術の盛んな町で召喚術師の仕事を肌で感じてもらえばいいではないですか!」

 

「王立魔導師育成校では、医療と薬学の街コトボや魔導や召喚術の街カリフへ学生が赴き魔導を研鑽することは珍しくないですが……。」

 

「あんな商売人に成り下がった術師を見てなんの学習になります!我々召喚術師は、魔導師なんていう自分勝手な人種と違うのです!王立の二文字をお忘れですか!?」

 

「だが、王都が受け入れ不可能な今実習を例年通り行うのは不可能だ、模擬的なものでは実習試験の意味がない」

 

「ですから私は先ほどから対案を出しているでしょう!それとも3期生56人全員を実習試験もなしに4期に上がらせる気ですか!?それこそ学園の恥です!それくらいならば3期を全員もう一度やってもらい王都が落ち着くのを待つべきです!」

 

 教員室では王都による学生の実習指導試験、召喚術師の仕事を肌で感じてもらうという目的の試験が行えなくなりそれに変わる対案を見いだせずにいた。

 

 

 

 ……そこに聞き耳を立てている一人の少女がいた。

 

「はぁ……何日同じ議論してるのよ。」

 

 レイチド=キャンドネスは王宮での〝九尾の狐騒動〟以来自習ばかりになった教室に嫌気がさし、教室を抜け出して職員室で情報収集をしていた。10日ほどたつが結論はでていない。このまま全員留年という意見まででている。

 

 それに気になることがある、シオンとアムちゃんの急な停学だ。みんなは〝九尾の狐騒動〟をもろに実感した張本人たち2人が召喚術師という職業が嫌になったのではないかと言っているが、レイチドはそうは思わなかった。元々好奇心と洞察力が強い彼女は、シオンという生徒の性格をよく見ていた。

 

 

 能力こそ平凡だが、召喚術師に対する憧れは学園で1、2を争うほど強い少年があんなことで心が折れるとは思わなかったし、なにより彼はマリーという異質な式によって危機を回避している。あの時の目はとても召喚術師が嫌になった目ではない

 

 そして飛び級で入ってきたアムという少年。かつて学園一と証されたマレインの遥か高見を行く少女のような彼もまた学園に入学する必要性がないのではないか、と思うほど既に立派な召喚術師だった。その2人が同時に学校を休学するということには違和感しか抱けない。

 

「2人で秘密の修行?そういえば、王宮で青い神鳥を連れたお兄さんがきてたわね。あれで皆混乱がおさまってた…ハルシオンといえばガルーダ以上の神鳥…どう考えても普通の召喚術師じゃないわ。」

 

 それからのレイチドの行動は早かった。学校に30日の休学届けを提出し、散策の旅に出た。シオンに対する恋心などは微塵もないが実習試験で苦楽を共にした仲、なにより違和感からあふれ出る好奇心を抑えきれなかった。

 

「カリフ、コトボ、王…都…どこからいこうかしら。」

 

 召喚術師として研磨を行える場所と言えば王国広しといえどこの3つくらいしか候補がない

 

「……そういえば、ハルシオンを連れたお兄さん〝弟が騒動に巻き込まれて〟って言ってたわ。シオンにお兄さんはいるけど召喚術師じゃない……アムちゃん?そういえば姿は似てないけど雰囲気はそっくりだった。」

 

 レイチドは長考し、仮説を組み立てる

 

「アムちゃんのお兄さんがハルシオンを呼べるほどの高位の召喚術師なら、アムちゃんのあの異常な能力も納得できる。もしかしてシオンの式……マリーが絡んでるのかしら……。」

 

 マリーの能力もまた異常なものだ、幻をみせる能力と他の学生や教師は認識していたがあの不気味さはそれだけではない。下手に近寄れば精神に異常を来すのではないかと思うほどの存在だ。彼女が絡めば自分の思考や考えすらねじ曲げられてしまうだろう。その能力をアムに使ったと考えれば、あの凄まじい召喚の能力と精神年齢の低さのアンバランスも納得できる。

 

 「兄弟揃ってあの召喚の能力……シオンとマリーの失踪……。もしかして?いやまさか!?」

 

自分の立てた仮説に信じられないとばかりにレイチドは一人大きく驚いた。

 

「テグレクト=ウィリアム?あの伝説の家系?」

 

 レイチドは地図を見直す。

 

「だとしたらまずはカリフの町で聞き込み、そこにシオンが修行してるかもと考えても私だけだと門前払いだろうし……。」

 

 そして3泊の野営の後カリフの町へ到着する。テグレクト邸の近くにあり召喚術と魔法の盛んな町だ。

 

「うわぁ、召喚術師や魔導師だらけねぇ。」

 

 町でテグレクト邸に関する情報を得る。弟子入りの志願者は執事によって門前払いされるということ、客として招待される方法はなにか功績を作ったときなどだということ。

 

「とにかく…いるかどうかまだ不明だけどシオンの姿さえ見えればなんとかなりそうね。」

 

 どうやら正攻法で入るのは不可能と判断したレイチドは搦め手で侵入することを決めた。

 

   ◇     ◇     ◇

 

 豪華な屋敷に門番としてガーゴイルが設置されたテグレクト邸の門の前に立つ。手に持つのは白紙の紙、しばらくまつと執事らしき男が尋ねてきた

 

「失礼、お嬢様。何ぞ御用時でしょうか?」

 

「はい、紹介状……、いえ手紙を頂いたので訪問したのですが、どう入って良いかかわらず……。」

 

「紹介状をお持ちでしたか、拝見させていただけるものですか……?」

 

 執事の柔和な笑みに、レイチドは急事に戸惑う少女の演技をみせ、紹介状という名目の白紙の束を後ろに隠す。

 

「すみません、この書類は直接フィリノーゲン様と〝例の客人〟に見せるよう仰せつかっております。紹介を受けた方についても〝そう言えば相手も理解する〟とも話されておりまして、わたくしも急な出来事の連続で恐々としているのですが、フィリノーゲン様に直接お話を願います。私はレイチドと申します」

 

 もちろんハッタリである。しかし、テグレクト邸……英雄の末裔たる術師に回ってくる仕事となれば一人の執事が手に負えるものではないであろうし、門前払いもできないだろう。下手を打てば首が飛ぶ博打だ。

 

「畏まりました。ただいま主人に確認してまいります。」

 

 そういって執事が出て行って半時もせず……

 

(ビンゴ!!)

 

 シオン、マリー、そして顔つきがなにやら精悍となった転入生アムちゃんが、かの有名なテグレクト一族長兄フィリノーゲンの後ろについてきた。

 

 かくしてレイチドはテグレクト邸の〝客人〟となった。

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