召喚した式が強すぎて僕のやることがない   作:セパさん

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テグレクト一族〝秘伝〟の伝授

「うむ、召喚まで4秒 還付まで7秒か…流石だ思ったよりも上達が早い。では今日はもう一度錬成の修行を行う。マリーさんを使わず調伏に成功したらテグレクトの秘伝を教えよう。」

 

 フィリノーゲンさんは僕が魔司祭(プリーストン)を錬成したときと同じ材料と魔方陣の準備をしてくれた。

 

「では、君のセンスで選んでくれ。僕は口をださない。」

 

 …2度目の1からの魔物の錬成。仮に成功してもその後は調伏のための戦いが待っている。

 

 

 僕は緊張ながらも 芥子2:魔鉱石1:肉実の木の種2:黄麻の粉3:一角獣の角2 を魔方陣に置きありったけの魔法を掛ける。

 

 

 魔方陣が青く光り出し、徐々に錬成の元は集まり姿を変えていく。そして魔方陣が今度は真っ赤に光り出した。光りが止み錬成された魔物が姿を現す。僕は思わず腰を抜かしてしまう

 

「マッドブル……。」

 

 僕の錬成した魔物はよりにもよって、精密に操れさえすればガーゴイルなどの高位の魔物に匹敵する力をもつとされる。敵味方関係無く攻撃する狂い牛、マッドブルだった。

 

「ほう、マッドブルか。狂気を操るマリーさん、回復を操る魔司祭(プリーストン)。君に欠けていた物理攻撃を担当するには丁度良いじゃないか。」

 

「ですが、僕だけでマッドブルに挑むなんて…」

 

「とにかくやってみることだ、剣をとれシオン君。」

 

 僕は剣をとり血走った目のマッドブルと対峙する。マッドブルは一直線に僕に突進し、僕がそれをよけた後魔方陣の中をグルグルと回り始める。

 

 そうだ、マリーの力を借りさえしなければいいのだ。そう考え魔力を集中させプリーストンを召喚する。

 

 ランタンを片手に持った神に仕える魔物が姿を現す。僕はマッドブルが混乱している隙にこめかみに剣を一差しし、マッドブルはブオオオォオォォオと怒りの鳴き声を上げ僕に向かって来る。

 

 大振りな突進と角での攻撃。剣で防いだつもりだったが当然のように吹き飛ばされた。瞬間プリーストンが呪文と同時にランタンをかかげる、吹き飛ばされた時の擦り傷や打撲は回復して疲れが取れたように感じる。

 

 

 そうだ、これを繰り返せれば…そう考え突進を避け剣の一撃を食らわせる行動を繰り返す。攻撃をモロに食らわないようにだけ気をつけ吹き飛ばされたらプリーストンに回復してもらう。もう半刻以上それを繰り返していたときだった。

 

ブオオオォオォォオォォォォォォォォオッォォォオォォォォォオォォ

 

 マッドブルは断末魔のいななきと共に淡い光りを放ちだした。魔司祭(プリーストン)の時と同じだ、僕は還付に似た吸収の魔力を使う。マッドブルは完全に光りとなり魔方陣と共に僕の魔力の一部となった感覚。成功だ!

 

 

「フィリノーゲンさん!やりました!」

 

「挑むよう促しておいてなんだが…本当にマリーさんの助力なしにマッドブルを調伏するなんて。」

 

 フィリノーゲンさんは魔司祭(プリーストン)の時のようにマリーが介入すると思ったのだろう。信じられないといった顔をしていた。

 

「約束は約束だ、テグレクト一族の〝秘伝〟を教えよう。まずマリーさん以外の魔物をすべて還付してくれ、この技は調伏した魔物が2体以上いないとできない。」

 

 そう言われ、僕はプリーストンを還付した。

 

「君は不思議に思わなかったかい?僕たちが魔力を高めるわけでもなく、一瞬で魔物を召喚することに。」

 

 思えば、アムちゃんといいフィリノーゲンさんといい魔力を高めるのは一度召喚をしてからで、アムちゃんに至ってはそんな気配もなく一瞬で魔物の群れを出している。

 

 

「それは〝圧射出(トップショット)〟という技術を使うんだ。このように……」

 

 

フィリノーゲンさんは魔力を高める様子もなく一瞬で体から飛び出すようにハーピーを召喚してみせた。

 

「今はわかりやすいようにゆっくりやったが、熟練すると相手には一瞬で魔物を召喚したように見える。魔物の同時召喚は知ってるね?」

 

「はい、もちろんです。」

 

「これは、その技術の応用だ。同時召喚ができなくても出来る。シオン君無理でも良いから魔司祭(プリーストン)とマッドブルを同時召喚してみてくれ」

 

「は、はい」

 

 僕は魔力を高め、2体の僕の中にいる魔物を同時に召喚しようとする。しかしお互いの魔力がぶつかり合い魔力が暴走し始める。

 

「もういい!」

 

 暴走を察したフィリノーゲンさんの声で僕は魔力を弱める。

 

「さて、次はマッドブルだけに意識を注いで同時に召喚してみてくれ」

 

「は、はい」

 

 再び魔力を高めマッドブルを召喚させるイメージを強く持ち、ついでに魔司祭(プリーストン)にも召喚の術をかける。

 

 その瞬間だった。

 

 ポンと飛び出すように勢い良く魔司祭(プリーストン)が召喚された、かかった時間は2秒弱。

 

「え?あれ?」

 

「これが〝圧射出(トップショット)〟、調伏している一番力の強い魔物の魔力を借りて、下位の魔物を押し出すように召喚する技術だ。初めてにしては上々、訓練を積めばまるで相手は何の魔力も使わず式を召喚したように錯覚するだろう。素晴らしい。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「あはは、何だか釈然としない顔だね。そう、秘伝というのは、案外タネは簡単なものなんだ。だが王立学園でこんな技術は習わなかっただろう?本当に我々にしか出来ない、誰にも真似できない事ならば秘する必要なんてないものさ。」

 

「そういうもの……なのですかね。」

 

 少なくとも【継承の儀】は誰にも真似できそうになかったけれど……。かくして僕はテグレクト一族の〝秘伝〟の一つを教わった。

 

 マリーはそれを祝福してくれたのか、自分の出る幕がなく寂しかったのか僕を抱擁した。

 

「もっと、修行を重ねないと……」

 

 〝秘伝〟をより学べるよう僕は改めて修行の決意をした。

 

「やはりマリーさんが君を選んだのは偶然ではないのかもしれないな。素晴らしい。では何度か、といいたいところだがまずは休憩だな。2時間ほど休息してまた開始としよう」

 

 フィリノーゲンさんがそう言ったときだった。

 

 コンコン  とノックの音がする。同時に執事が入った

 

「鍛錬中失礼致します。お客人が見えているのですがどうも見覚えが無く確認に参りました。」

 

「客人?予定はないが、名前は?」

 

「はい、レイチドと名乗る緑の髪を束ねた少女でした。」

 

 思わず僕が固まる。レイチドは僕の一個年上の同級生にして王都実習のパートナー……。つまり王立召喚術校の生徒だった。

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