時の勇者に成り代わったがオチを知らねぇ【完】   作:はしばみ ざくろ

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エポナGOGO。次回から海へ。

感想読んでます!ありがとうございます!


鞍上人なく、鞍下馬なし

「一番いい装備を頼む」

「お、おう」

「ウゴ・・・」

 

ゴン!とけたたましい音がなる。カウンターの上に砂金入りのビンが置かれた音だ。

それを見て山里の鍛冶屋――ズボラとガボラが戸惑った声を上げたのは、それを置いた客の目が据わりきっていたからである。

えっ怖・・・・・・キレてる・・・?ウゴ・・・。師弟のアイコンタクトが空中で交わされる。茶ァだせ茶!ウゴ!

 

「というかどうせなら刀とかないのか?刀がほしい」

「あっああ!刀!あるぜ!」

「ウゴ~」

 

さてこの目つきの怖い客――リンクは別に機嫌が悪いわけではない。むしろ良くなった方だ。

ぽかぽかとした春の陽気は神殿で冷えた体を温め、ゴロンの姿の時に食したロース岩はなかなか美味であった。ガボラが差し出したこのお茶もうまい。ならなぜこんなに目が据わっているのかというと――――。

 

「ならこの砂金をつかって拵をつくってくれ。刀身にも必要なら使っていい。なるべく早く」

「明日の朝まではかかりますね・・・」

「明日・・・・・・。まあいいだろう。それで頼む」

「まいどあり!」

 

ただ単におさまりが悪くてぶすくれているだけである。

剣士が剣を壊したのだから、もう少ししおらしくしてほしい。むくれていても美しい貌の威圧が増すだけである。しかし残念ながら指摘できる存在はこの空間にいなかった。残念な話である。

 

「では100ルピー先払いで・・・」

「ん。ではまた明日」

 

ようやく手に入れられる目処が立ち空気が和らぐ。礼を言って客人は去っていった。一安心。

 

「・・・よし!働くぞ!」

「ウゴ~ォ!」

 

だがあの客は怒らせたらヤバい!

ズボラとガボラはかつてないレベルで真面目に仕事をした。その結果――後世に『時の勇者』の愛刀を作った伝説の刀鍛冶師弟としてうっかり祭り上げられちゃったりするのだが。

当然、今は知らない話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何者かの手によって、大岩でロマニー牧場への道は塞がれていた。

つるはしの作業員は、硬質な音をリズミカルに響かせる。この道が開通しないとあの若い牧場主が困ってしまうだろう。

懸命に働くその背中に声をかける影があった。

 

「作業員さん。お手伝いしますよ」

「ん?兄ちゃん気持ちは嬉しいが、道具はこれしか・・・」

「大丈夫ですよ。ほら」

 

振り返ると青年の隣に樽が置いてある。いや、よく見ると上部から縄が出ており、側面にはゴロンの顔を模したマークが着いていた。これは確か・・・。

 

「これで爆破できますから」

 

ピッ、と立てた指に炎が揺らめいている。そうだ、これはゴロンの大バクダン!なぜこの青年が持っているのかはわからないが、ここにいては確実に巻き込まれる!

慌てて後ろに下がった作業員を見送ってから、導火線に火が点けられる。しばしの燃焼音。大爆発。

 

「・・・やはり爆発・・・。爆発は全てを解決する・・・」

 

作業員には大バクダンの破壊力より、隣でぽつりと呟かれた言葉の方が怖かった。何・・・?どういう意味・・・?

共に爆発を見守ると、青年は会釈をしロマニー牧場へ向かっていった。作業員はつるはしを肩に担ぐと、無言でクロックタウンへ帰った。寝て忘れよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛の刀を作るためにゴロンレースに3回出た話する?あれクッソ難しくない?

というかなぜレースに出ないといけないんだ!?ついさっきまで冬で炭鉱の仕事も止まってたからそこでしか手に入らなかったからです。はい。

あと絶対ギミックで必要になるだろ~って感じの大バクダンを見つけたので資格を手に入れてきた。案の定先ほど使う場面があったが、あの程度なら魔力を纏って壊せたな・・・。(勇者特有の脳筋)

 

「ハロー、レディ。この牧場の子かな」

「そうよ、おにいさまは?わたしロマニー。この牧場とおんなじ名前!」

「リンクだよ。こっちはチャット。あの馬を迎えに来たんだ」

「お馬さんの迎え!よかったわね!今出してあげる」

 

ロマニーによって柵が開けられ、エポナがリンクの元に帰ってくる。

機嫌の良さそうに鳴いた愛馬を、掌でゆっくり撫でてやった。

 

「ロマニー、エポナを預かってくれてありがとう」

「エポナっていうのね。いいのよ。すごく懐いてるのね」

「なにかお礼を・・・。そうだ、馬に乗ったことはある?」

 

首を振ったロマニーを許可を得てから抱き上げる。エポナの鞍に座らせてやり、リンクも後ろに跳び乗った。

ロマニーを腕の中に収め、手綱を大きく振るう。

 

「わあ!」

 

体がうずうずしていたのか愛馬は軽快に走り出した。広大なロマニー牧場を風を切って走る。

それでも普段よりは幾分か控えめだ。今日は背に幼子がいるからだろう。

牧場をぐるりと一周し牛小屋の前に戻ってくる。振り返った少女の瞳は輝いていた。

 

「すごい!はやい!」

「そうだろう?楽しんでもらえたかな?」

「うん!」

 

少女をそっと地面に降ろすと、牛小屋の扉がふいに開く。

出てきたのはクリミアだった。客の姿を確認すると、目を瞬いて近寄ってきた。

 

「いらっしゃいませ!お客様がいるってことは・・・ミルクロードが開通したんだ!『シャトー・ロマーニ』の里ロマニー牧場へようこそ。ゆっくりしていってください」

「お邪魔しています。愛馬を引き取りに来ました」

「あ、その子・・・。よかったわねお馬さん」

 

微笑んだクリミアは、当然リンク達のことを知らない。

時を遡るとはそういうことだ。全てがやり直される。

 

「こほん。うちのミルクは先代が私たちに残してくれた神々の遺産・・・ロマーニ種なんです。禁断にして至高のミルク『シャトー・ロマーニ』の源!飲むと体の中から魔法の力がわいてくるフシギなミルク。幻のミルク『シャトー・ロマーニ』をお求めの方はクロックタウン東、バー『ラッテ』にぜひお立ちよりください。・・・・・・私の営業トークどうでした?ちゃんとマニュアルどおりにできたかな?」

「ふふ、バッチリですよ。流石ですね」

 

少し照れた笑みを浮かべてクリミアは会釈をした。それからロマニーのほうに向き合い、姉の顔になる。

 

「ロマニー。弓の練習もいいけどお客様をよろしくね」

「大丈夫よおねえさま。おねえさまはお仕事してて!」

 

えへんと胸をはった妹の頭を撫でて、クリミアは母屋に戻っていった。見送った後、リンクはロマニーに向き直る。

 

「ロマニー、弓の練習をしているのか?」

「そうよ。だって今夜ね・・・こんや・・・あいつらがくるの・・・」

 

毎年カーニバルが近くなった夜。牧場にオバケがやって来ると少女は言う。

ボウッと光る玉に乗ってきてたくさん降りて来た後、一晩かけてこちらに近づいてくるらしい。

年々距離を縮めてくるそのオバケは、昨年とうとう牛小屋の前まで迫ってきた。今年はきっと扉をあけるだろう。

 

「おねえさまは信じてくれないから・・・ロマニーがウシたちを守らなきゃ!ねえおにいさま、ただいま助っ人募集中なの!男だったらやってみない?」

「――――もちろん。俺でよければ力になるよ」

「やった!さすがおにいさま!今夜の2時に作戦スタートよ。ウシ小屋でまってるから遅れないでね!」

 

ロマニーと約束をし、一時牧場を離れた。

夜までに準備をしておかなくては。矢が沢山いるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付を越えた深夜零時。まもなく長針が6を越える。

リンクはクロックタウンの北門の上にいた。滑り台とポストを俯瞰する場所だ。

すっかり夜も更け静かな月夜。かすかな夜風。頭上に嗤う月がなければ、歌の一つでも歌ったかもしれない。

やがて東門から荷物をもった老婆が歩いてくる。バクダン屋のおふくろさんだ。

ゆったりとした足並みを見守り、滑り台の影から走ってくる男を見て眉を顰めた。衣擦れの音もなく立ち上がる。

 

「あいたた!アブナイじゃないか!・・・モッ、モノ取りじゃ!!ババの荷物返しておくれ!」

 

男が老婆から荷物をひったくる!卑しい笑みを浮かべながら逃げようとした体が、足が思いっきり浮き上がった。

 

「ヴッ!?」

 

掬われた足は抵抗もできずに体を地面から離す。すわ叩きつけられるかと思った身は、服の襟を掴まれて空に浮いた。重力が首にかかる。情けない悲鳴が口から飛び出た。

そのままぺいっと地面に捨てられる。地面に横たわる体からさっさと荷物を離し、追いついてきた老婆に差し出した。

 

「どうぞ。お怪我はありませんか?」

「ありがとよ。お兄ちゃんすごいねぇ。やっとウチでも大きなボム袋をあつかえるよ」

 

スリは騒ぎを聞きつけてやってきた町兵に引き渡された。これで然るべき罰を受けるだろう。

 

「そうそう、お礼をしなきゃね。ちょっとアブナイお面だけど、祭の花火だと思って使っとくれ」

 

バクレツのお面を いただいた!

 

「助けてもらっていうのもなんだけど、命を大切にね・・・」

「ありがとう。貴女も夜道には気をつけて」

 

一周目に情報収集をしていた甲斐があった。これであのスリも懲りただろ。

さて、急いで牧場に向かわなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜2時。草木も眠る丑三つ時。

ロマニー牧場にて、秘密の作戦が行われる。

 

「いよいよだね」

「ロマニーは牛小屋の中を守ってくれる?外は俺が見張っているよ」

「わかった!おにいさまも気をつけてね」

 

少女と別れ愛馬に跳び乗る。

―――――――天が点滅を始めた。妖しい光を纏った怪異達が、両目を光らせ狙いを定める。

円形の頭部、鋭い両腕、台形の胴体。まるでおもちゃのような簡易な異体が、この世の生き物でないことを知らしめている。

揺らめきながら近づく物の怪は、しかし即座に眉間を射貫かれて四散した。

 

「いくぞエポナ」

「ヒヒーン!」

 

エポナが円を描くように牧場を走り出す。わざわざ手綱を握らずとも、この程度なら意思疎通ができる。7年の旅路は伊達ではない。

光とともに浮かび上がる怪異をリンクの弓矢が射貫いていく。

四方を囲んでいた光がたちまち消え失せる。彼らはあまり考える頭はないようだ。同じように浮かび上がっては、リンクの正確無比な狙いで撃ち落とされる。

 

「こいつら、いったいなんなのかしら」

「ふむ・・・。理由もなく発生する訳はないし、どこかに原因があるんだろうが・・・」

 

腰の矢筒から矢を抜く。構え、引き、当てる。月夜にもかかわらずその腕がぶれることはない。

一時間、二時間。時間はどんどん経っていく。怪異は同じように生まれ、同じように四方から迫る。

 

「なるほど・・・。ロマニーにはしんどかっただろうな」

「ずーっと同じように攻めてくるわね!数が増えないだけマシかしら」

「矢が持てばいいんだがな」

 

三時間、四時間。午前六時。―――――ようやく夜明けが来る。

 

「――――ふう。なんとかなったな」

「もう疲れたわ・・・。私休むからね」

 

内ポケットに引っ込んだチャットを撫で、エポナを労う。

東の空から朝日が昇る。二日目の朝がきた。

 

「おにいさま!やった・・・勝ったんだね。ありがとう!」

「やったな!ロマニーもお疲れ様」

 

ぱちんと両手を合わせて喜びを分かち合う。これでひとまず安心だろう。

あとは早めに原因を探らねば。

 

「そうだ、これロマニーからのお礼。腰に手を当ててグイっといってね!」

 

ロマニーから ミルク入りビンをいただいた!

 

「おねえさまがそろそろ起きるころね。はやくベッドにもどらなきゃ・・・。おにいさま、またね」

「おやすみロマニー。ゆっくり休むんだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっどうも!いらっしゃいませ!その馬はダンナの馬ですか?」

「ゴーマン兄弟の馬の調教場へようこそ!見学ですか?レースもできますよ!」

「ほう、レースか」

 

この顔が三つあっても嬉しくなくない?まさかの三兄弟とは思わなかったぜ。

仮眠をとったリンクが次に向かったのは牧場の隣、ゴーマントラックである。

怪異の件について知っていることはないか聞きに来たのだが、向こうはいい金づるがきたと思ったらしい。揉み手をして近寄ってきた。

お前らなんかアコギな商売してないか??あの座長はわりとまともそうだったが。そういう精魂なんかね。

こういう輩は先制でかますに限る。ちょっとエポナに頑張ってもらおう。

 

「レースを是非。いくらでできるのかな?」

「では50ルピーになりやす。・・・へへ、まいどあり」

「俺たち兄弟に勝ったら商品がありますよ。へへ、勝てたらですが・・・」

 

お?舐めてんな?

 

「ではようい・・・スタート!」

 

リンクが指示を出す前にエポナが飛び出していた。気が強え~。そして速え~。

バック・ストレートの柵をあっさり跳び越え、スピードを保ったままゴール前のメインストレートに躍り出る。

すこし前に4時間ぶっ続けで走ったとは思えない勇姿である。負けず嫌いともいう。

勢いよくゴールを走り抜け勝敗は決した。お前って奴は・・・。あとでニンジンあげるからな。

 

「オレたちが負けるなんて・・・!」

「大アンちゃん、コイツ本物だよ。あっこれ商品です・・・」

 

ガロのお面を もらった!

 

「これなんかすごい珍しいものらしくて。・・・詳細は・・・知らないんですけど・・・」

「やりましたね旦那!ウチで一番の値打ちものっすよ!・・・たぶん」

「・・・まあいいだろう。ところで、少し聞きたいことがあるんだが」

 

多少視線に殺気を乗せてやれば、呆れるくらい即座に姿勢を正す。

・・・意外なことに二人は牧場の怪異の事について何も知らなかった。ふむ。

 

「じゃああの大岩がお前らか」

「「えっ」」

「アレ、どうやって壊したか知ってるか?・・・ここで実演してやろうか?」

「「いいえ!結構です!」」

「二度はない。欲をかくのは今日限りにしろ」

「「はい!申し訳ございませんでした!」」

 

直角にきっかり頭を下げた二人を見下ろし、エポナが呆れたように鼻を鳴らした。ぶるる。

 

 

 




ゴロンの仮面
能力:被るとゴロンに変身する。
お面屋のコメント:誇り高きゴロンの勇者の魂を感じます。これはいい仮面だ。アナタへの感謝と友情が溢れんばかりにつまっている。いい仕事をしましたね・・・。

バクレツのお面
能力:被って爆発!ハートが減るのがタマにキズ。
お面屋のコメント:これはいいお面だ。感謝のキモチがいっぱいつまっている。アナタはいい仕事をしましたね・・・。

ガロのお面
能力:ボス・ガロになりすませる。
お面屋のコメント:そのお面を持っているとは、なかなか勇気のあるお方だ。忍者に縁がおありで?


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