時の勇者に成り代わったがオチを知らねぇ【完】   作:はしばみ ざくろ

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100年前のインパ様かっっわ・・・・・・・・・・・・。
いやこんなのずるくないですか!?かわいい・・・彼女と青春を過ごしたい・・・。



メロドラマは終わらない

グレートベイの海岸は、タルミナ平原の西に位置する場所である。

普段は空の青さに溶け込みそうな清き海は今、未曾有の災厄に襲われていた。

 

「これは・・・」

「・・・禍々しいな。ゾーラの住処とは思えん」

 

燦々と降り注いでいるはずの陽光は黒雲に閉ざされ、沖は濃霧で覆われている。

トトさんの言っていた通りだ。

砂浜に出ると弱々しい風が頬を撫でた。まるで海が悲鳴を上げているようだ。海水に触れると顔を顰めるほど生温かい。これでは魚も生きられないだろう。

浜には漁師の家が点在しており、浅瀬にも一つ建物が建っている。リンクは少し考え、海の方に足を向けた。

 

「魔法って便利ねぇ」

「わざわざ濡れることもないしな」

 

甲高い音を立てて海面が凍る。

建物まで一本道を作ると、青年はその上を悠々と進む。入り口には海洋研究所と書かれていた。

 

「ハロー、お邪魔します」

「ん?なんじゃコゾウ。お前もゾーラのタマゴが孵るのを見にきたのか?」

「・・・。ええ、そうなんです」

「ワシも楽しみにしておるんじゃが、かんじんのタマゴがまだ届かんのじゃ・・・。ゾーラたちは何しとるんじゃ?ゾーラホールで何かあったのかの~?」

 

博士いわく、ゾーラのタマゴは生まれてから孵るのに一日から三日ほどかかる。

しかしゾーラのタマゴは温度の変化に弱い。最近の異常気象で海の温度が上がってしまったため、今の海では孵ることができないという。

現在タマゴを孵すことができるのは海水が汲んであるこの水槽だけだ。 しかし――――。

 

「遅い!ゾーラたちはナニしとるんじゃ。急がんとタマゴは死んでしまうぞ」

「俺、探してきますよ。卵は全部でいくつですか?」

「おお、そうか。なら頼む。タマゴは7つあるそうじゃ。早めに頼むぞ」

 

そういえば歌姫が大変だって言っていたな。岬を直接訪ねた方がいいだろう。

ハシゴを飛び降りる。空気は変わらず淀んでいる。

海上でカモメが鳴いていた。クゥークゥー。クゥー、クゥー。

 

「・・・ん!?」

 

なにか浮かんでいる!?

驚きつつも両手は即座に外套と刀を外している。髪を魔法でまとめ海に飛び込んだ。泡のはじける音と妖精の焦った声が混じって耳に届く。

浮かんでいたのはゾーラ族の男だった。ひどく衰弱しているようだ。リンクよりもすこし大柄な体を、片手で抱えて岸まで泳ぐ。

 

「・・・うぐっ、キミは・・・。・・・ぐふっ・・・」

「喋るな。舌噛んでも知らないぞ」

 

砂浜に男を横たえる。いつから浮かんでいたのかは知らないが、この海の様子ではじわじわと苦しみに苛まれていて辛かっただろう。

目立った出血はないがやけにボロボロだ。どこで何と戦ってきたんだろう。

 

「ううっ・・・オレはゾーラ族のミカウ。・・・ゾーラバンドのギタリスト。オレはもうダメだと思う・・・」

「諦めるのがちょっとばかし早いな。ほら、取りあえずこの薬を飲め」

「すまない・・・。・・・親切なキミ、どうかオレの歌を聴いてくれないか」

「歌?いま?・・・まぁ聴くくらいなら」

 

するとミカウはおもむろに立ち上がり、ギターを構えた。何が始まるんです?

 

「ワン トゥー スリー! oh ベイベェー!」

「!?」

「!?」

 

滅びかけているグレートベイにギターの軽快なサウンドが響く。

男の歌声が追いかけて反響した。灰色の空をバックにかき鳴らす。

 

「もうすぐごきげんなカーニバル みんなオレたち待っている

 だけどボーカルのあの娘はヘンなタマゴを産んで 声をなくしちまったのさ~ oh

 

 oh 近頃グレートベイで何かが何かが起きている~(そうなの?)

 oh ベイベェー 聞いておくれ そしてあの娘のタマゴはみんな海賊に盗まれた

 

 すぐにオレは~ みさきを飛び出し海賊を追いかけたが のされちまってこのザマさ~ oh

 oh このままくたばっちゃ死んでも死んでも死にきれね~(そりゃそうだ!)

 

 頼む あの娘のタマゴをとりもどしておくれ~ 頼む オレの魂をいやしておくれ~」

 

ジャガジャッ、ジャ~~ン!

 

「ありがとう!」

「・・・・・・」(パチパチパチ)

「・・・・・・」

 

リンクは取りあえず拍手をした。

歌の上手さに驚けばいいのか。ギターの素晴らしさに感動すればいいのか。内容を気にすればいいのか。これもうわかんねぇな。ていうかこいつ瀕死じゃなかった?

 

「ぐふっ」

「ミカウーーー!」

「倒れたーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海賊の砦は巨大な鉄の扉で閉ざされている。リンクには関係ないことだが。

魔力跳躍で断崖の上に降り立つ。重々しい雰囲気の赤い旗は、二本の剣が交差したマークが書かれている。

廃墟というには迫力のある建物を、小舟を漕ぐ部下達が見回っていた。

先ほど外した外装と刀をカバンにしまい、後ろの腰に下げていた小刀を前に付ける。この小刀はハイラルを旅立つ際インパから餞別に貰ったものだ。

過去に戻った時彼女との出来事もなくなってしまったが、明らかに隠し事をしている子供にも旅の無事を祈ってくれるあたり、本来はもう少し穏やかな人なのだろう。

 

「あの左の入り口から入れるな」

「気をつけなさいよ。・・・まぁアンタなら大丈夫か」

 

金網の足場を通り砦の内部に入る。中央に大きな見張り台があり、地上を海賊達が見張っていた。

通路正面には入り口。足音を消して滑り込む。

ここは武器庫だろうか。整然と並べられた大砲が物々しい。

二本の剣を握ったマークは扉にも描かれていた。随分長いことここに住み着いているようだ。

 

(・・・誰か居るな)

 

数ミリ開かれた扉の向こうは巨大な水槽が設置されていた。その前には見張りだろう海賊が一人。

リンクは海賊の立ち位置から死角になる場所に移動すると、あえて音をたててドアを開けた。

金属の錆びた音に反応して海賊が目を向ける。

しかし誰も居ないことに困惑し――――激痛に意識を飛ばした。

縮地で接近し鳩尾に拳を叩き込む。骨が折れてなきゃセーフである。

水槽には魚と白いタマゴが入れられていた。おそらくこれがゾーラのタマゴだろう。

網ですくい上げあきビンにいれる。リンクの掌にちょうど収まるくらいの大きさだ。残りは六つ。

右の通路を抜けると再び外に出る。階段上の扉には鍵が掛かっていたので、一度下におり、中腹にある部屋に入ることにした。

ここにも見張りが立っている。背後にはやはり巨大な水槽があった。

 

「ハロー、ご機嫌いかが?」

「・・・なっ!?いつからそこに・・・!?」

 

気配遮断を解除し声を掛ける。

肩をびくつかせて反応した海賊をリンクのハイキックが襲う!顎の先端を強打された男は、ぐりんと白目をむいて気絶した。あと五つ。

ワインや酒樽の置いてある部屋を抜けると外に出る。そのまま正面の通路を進むと、見張りの姿を確認する。

 

「う、」

 

小刀の柄でこめかみを強打。うっかり漏れ出たような声をあげて部下は沈黙した。樽の隙間に隠して先を急ぐ。

次の部屋にも海賊が一人。小刀を構え一歩前進。一閃。

 

「峰打ちでござる」

「タマゴはあと四つよ!」

 

うめき声もなく海賊は崩れ落ちた。たわいもない。

タマゴを回収し、ドアを開けると外に出る。

見張り台の上に海賊が一人、そこから伸びる吊り橋の先に錨のマークがついた扉があった。

 

「ふむ・・・。浮遊魔法」

 

ふわりとリンクの体が上昇し、ドアの前に降り立った。見張りが後ろを向いている間に部屋に潜り込む。

明かりのともる先に進むと男達の話し声が聞こえた。換気窓からのぞき込む。

 

「――――それで、残りのタマゴは見つかったのか」

「・・・すみません、それがまだ・・・」

「はぁ?」

 

ソファーに座る大柄な男が船長だろう。いかにも偉そうな感じだ。

 

「海賊様が盗んだお宝なくしちまったなんて、人に聞かれたら大笑いだぞ!」

「ですが船長。オレたちが海ヘビのヤツラに襲われた海は、変な霧が出ていて・・・」

「だからゾーラ共も手が出せないんだろ!急がないとゾーラ共に先を越されるぞ!海ヘビのヤロウに食われる前に早く残り三つを探してこい!!」

「は、はい!」

 

どうやらタマゴは離ればなれになってしまったらしい。海ヘビに食べられてしまってはこちらも困る。早く探しに行かないと。

 

「ゾーラのタマゴはあの沖に浮かぶ竜神雲の唯一の手がかりなんだ。あの変な仮面をかぶったヤツの言うことが本当なら、雲の中の神殿に眠っているお宝を手に入れれば、俺たちは一生遊んで暮らせるんだ!だから気合い入れて探しな!」

「イエッサー!」

 

変な仮面・・・。ムジュラとスタルキッドか?こんな所にも来ていたなんて・・・。

部屋から部下が退出し男一人になる。戻ってこない事を確認すると、一階に飛び降りた。

 

「失礼」

「・・・あ?」

 

小刀の柄が男を襲う。首の後ろ、脊椎を容赦なく打撃。間抜けな声を上げて海賊は気絶した。

タマゴを回収し、ついでに宝箱を見つけたので覗く。フックショットじゃん!損害賠償として貰っていきますね。

あとは再び息を潜めて脱出すれば完了だ。ミカウの所に戻ろう。

 

「ミカウ、タマゴを半分取り返してきたぞ」

「・・・うう、ありがとう。キミは強いんだな」

 

下手に動かしても危なそうなので、海岸に寝かせておいたゾーラの所に戻る。

少しは回復したか?顔色・・・ゾーラは肌が青いからよくわかんねぇな・・・。

 

「でもあと3つは海ヘビの住処にあるらしい。ミカウ、それってどこだかわかるか?」

「トンガリ岩だな・・・。海岸の沖合いに岩がいくつか見えるだろう。でもあそこは・・・」

 

ミカウの視線を追うと、確かに海面からそびえ立つ岩群が見える。

もしかして潜るかんじか?潜るかんじか~・・・。どうしよっかな・・・。

 

「・・・キミ、まだ名前を聞いていなかったな」

「む?俺はリンクだ。こっちはチャット」

「リンク、頼む。キミにオレの力を託す。オレの代わりに皆を助けてくれ」

「え?どういう・・・」

 

堅く手を握られる。思わず顔を見ると、真っ直ぐな目をしたミカウが光に包まれた。

魂は形をなし、友に力を与えん。

 

「友よ!・・・あの娘のコト・・・頼んだぜ・・・」

 

ゾーラの仮面を 手に入れた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・いやちょっと」

「仮面があるなら仮面になる方法もそりゃあるわよね」

「ちょっと待って・・・・・・」

 

勝手に託していくなァ!!!怒るぞ!!!

折角フラグを折ったと思ったのに!!自分からきりもみ回転で突っ込んでいくなよ!?

 

「でもこれで海底にいけるんじゃない?早くタマゴを探しにいかないと」

「そうだね・・・。食べられたら困るからね・・・」

 

ちくしょう!どうしてこうなる!今のは俺のせいじゃないです!

ミカウの仮面を拾い、しぶしぶ波打ち際で身につける。

――――――装着。

魔力の奔流がリンクを包む。

背丈がぐんと伸び、皮膚は青く変化する。手足には水かき、肘にはヒレ、頭部にも魚の尾のようなものがつく。

腰のカバンはそのままに。すらりとした泳ぎに適した体になる。

 

「う゛」

 

ウワーーッ気候が悪い!海がぬるい!

確かにこれはキッツイわ。ミカウマジでしんどかったんだな・・・。

・・・じゃあしょうがねぇな!うん!あっ泳ぐのメッチャ早い。すげぇ!

すいすいと岩群に向かっていき海底に降り立つと、金色の生き物が近づいてきた。

 

「初めまして、リンクさん。あなたがゾーラの方を助けるところを見ていました」

「タツノオトシゴ?」

「そうです。あなたにお願いがあるんです。・・・まずは海ヘビの住処まで案内しますね」

 

タツノオトシゴに案内され海を進む。

やがて一層深い場所にたどり着く。横穴が幾つも点在する不気味な場所だった。

 

「このトンガリ岩の縦穴にはそれはもう恐ろしい海ヘビがたくさんいて・・・。ワタシのパートナーが捕まっているのです。リンクさん、どうかワタシのパートナーを助けてください・・・」

「まあ案内してもらったしな。ちょっと待ってろ。しばいてくる」

「ありがとうございます・・・!」

 

海ヘビ(ディープパイソンというらしい)をちぎっては投げちぎっては投げ。

無事3つのタマゴとタツノオトシゴのパートナーを救出した。やったね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホーホッホッホ。その歌を知ったか」

「ケポラ」

 

大翼の羽ばたく音と共にフクロウが降り立つ。

タマゴを水槽で孵化させ、ゾーラのみさきに向かう途中だった。

産まれたゾーラの子達はリンクに歌を教えてくれた。博士はこの歌を教えるために、子が生まれたのではないかと推測している。

 

「その歌は潮騒のボサノバ。海を目覚めさせるいざないの歌。歌姫が忘れてしまった記憶じゃ」

「歌姫・・・。やっぱりルルが神殿に関わってるんだね」

「うむ、彼女は神殿を守るゾーラの末裔じゃ。やるべきことは忘れていてもわかるとも。・・・ゾーラの勇者の魂は今やお前と共にある。リンク、この海を救ってやっておくれ」

「もちろんだよ」

 

ゾーラのみさきには大きなコンサート会場がある。海上には魚の半身を出し、海面では魚の口が入り口になっていた。

巨大な貝のステージに巻き貝のようなスピーカー。珊瑚の装飾。綺麗な会場だ。

すれ違うゾーラたちは、リンクのことをミカウだと思っているようだ。笑顔で素早く会場を通り抜け、ルルを探す。楽屋にいるんだろうか?

 

「ようミカウ。しばらく見かけなかったけど、どこ行ってたんだい?そういえばリーダーのエバンがお前を探していたよ」

「そうなのか。あとで訪ねるよ」

 

警備がどいてくれたのでこれ幸いと部屋に入る。誰の楽屋かはわからないが、まあなんとかなる――――。

 

「ミカウ?どこ行ってたんだよ~?ボク心配しちゃったよ~」

 

おいなんだそのドラム。

 

「なんかさ~もうすぐ町のコンサートだっていうのにメンバーのフンイキ最悪でさ~。とくにルルがさ~ず~っと口きいてくれないんだよ。いつもは元気いっぱいなのにね~」

 

だめだフグのドラムのせいで全然話入ってこねぇ!こっち見んな!そんでなんで下の奴だけ横向きなんだよ!

 

「これってやっぱり海が変になっているのと関係あるのかなぁ~?」

「そ、そうだな。ところでルルはいまどこに・・・」

「ルルなら裏の離れ島にいるよ~」

「わかった。ちょっと行ってくるな」

 

ぽよぽよ叩くな・・・!なんでそれでドラムの音がでてくるんだよ・・・ちょっと面白いだろ・・・!

だめだツボに入っちゃったもう無理。ルルの所にいこう!そんで早く神殿に行こうな!

会場を駆け上がって裏にでる。ルルは海を眺めながら黄昏れていた。

 

「ルル」

「・・・・・・」

 

青いドレスを纏ったゾーラが視線を上げて、しかしすぐに俯く。

ミカウでなくて悪いが、ミカウの魂を身につけた俺はもはやミカウそのもの。つまりジェネリックミカウと言っても過言ではないのでは?何言ってんだかわかんなくなってきたな。まあいいや聴いてくれ!ヘイギター!

 

「・・・!」

 

魚の形をした骨のギター。ギタリストミカウの一部であり、リンクが投影魔法で顕現させたものである。

海原にギターが響く。ルルが驚いた顔を浮かべ――――やがて歌声が混じり合う。

いざないのデュエットが海を、眠る神を呼び起こす。さざ波は大きくなり、海底から顕現する。

 

「ふわぁ~。あ~っ、よく眠ったぞ~い!」

 

カメだ。

島かと思ったものは巨大な亀の背中だったようだ。

 

「ついこの間目覚めたと思っておったが、月日がたつのは早いものじゃ。のう、ルルよ・・・」

「あ、あなたは・・・?ミカウ、コレはいったい?それに私の声・・・私どうしちゃったの?」

「・・・ふむ。どうやらルルは混乱しているようじゃな。まあムリもないが・・・。さてさて残念じゃがあまりゆっくり話をしている時間はないんじゃ。さあゾーラのほこり高き戦士の子よ・・・沖のグレートベイがお前の力を必要としておる。早くワシの背中に乗るのじゃ」

 

どうやらこのカメ様?が案内してくれるようだ。

ゾーラの体では魔法も使いにくいので、フックショットを使って背中に跳び乗る。

 

「ルル!少し留守にするけど、待っててくれよ」

「・・・うん、うん。ミカウ、気をつけてね・・・」

 

ゆっくりとカメが動き出す。太陽はもう真昼をさしている。

向かうは海上の聖域。霧と雲の中のグレートベイである――――――。

 

 

 

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