時の勇者に成り代わったがオチを知らねぇ【完】 作:はしばみ ざくろ
はじめてそれをみたのは、リンクが9歳の時である。
―――あ、これ夢だな。明晰夢というやつか?
気づいたら見知らぬ城門の前に立っていた。空には暗雲が立ちこめ、風が体に追突していく。
うずくまってしまうような陰雨が降る、嵐の夜だった。
とりあえず周りを見渡してみたものの、反対側には荒れる草原が広がっているだけだ。
(なんだこれは。何の暗示だ?)
ぼんやり草原を眺めていると、不意に後ろから音がする。鎖が鳴り、跳ね橋が軋みながら下りてきた。
そこを待つのも惜しいとばかりに白馬が駆けていく。リンクをあっという間に抜き去り、平原の向こうへ走って行った。
(女の子と、後ろは・・・?)
走り去る後ろ姿を見送ると、もう一つの音が迫ってきていた。黒い馬が闇から浮かび上がり、またがった男を視認する。
(・・・ん?こいつガノンドロフ?)
燃えるような紅い髪に巌のような体躯。俺の記憶が正しければ、勇者リンクの永遠の宿敵。魔王ガノンドロフである。
リンクの視線に気づいたのか、もしくはそれ以外の理由か。底知れぬ威圧を放つ金の目が、こちらを睥睨した。
――――――夢はそこで終わっている。
大木に踏み込んだのは、まだ幼いだろう人の子だった。
小さな背に剣を背負い、足取りは軽く先を目指す。金の髪が空気に揺れてふわふわと流れた。
こつ、こつ、こつ・・・・・・。
その足音を聞いたデクナッツは、怯えを隠さず草に潜る。
隠れ切れてない魔物には目もくれず、子供は先に進み、宝箱からパチンコを取り出した。
試し打ちを何度かすると、腰のベルトに差しこむ。
壁をよじ登ろうとすれば、スタルウォールは脇目も振らずにいなくなった。スタルチュラ達は天井に集まり、視界に入らぬように身を寄せあう。無駄なあがきだとはわかっていても。
黄金のスタルチュラにも視線をよこさず、ただ進んでいく人影1つ。
コンパスと地図を手に取り、ようやく子供は口を開いた。
「―――――広いな」
甲殻寄生獣ゴーマ。
デクの樹に寄生する魔物たちの親玉である。
寄生先に巣を張り、卵を産み付け繁殖する。殻を破って産まれた幼生ゴーマは、侵入者を食い物にしようと走り回る。
縄張りに踏み込む幼子を仕留めんと、目が赤く光り―――――。
そのまま一振りで殲滅された。
回転切り、と呼ばれる剣術は、デクの樹の体内に風の衝撃波をおこす。
音を聞き取った三つ子のデクナッツは、背筋が凍る感覚をはじめて味わった。
あの人間がたどり着く前にと、我先に姿を隠す。
リンクの歩みは止まらない。最後の部屋にたどり着き、カギを鍵穴に差し込む。
入るなり閉じた扉を気にもしない。
粘つく空気が鼻孔を通った。不快感に顔をしかめたリンクは、しかし冷たい蒼を上に向ける。
「SYAAAAAAAAA!!!」
二本足で地に降りたのは、一つ目の獣だった。配管のような尻尾と二本の触覚が、中途半端に蜘蛛を連想させる。節足の足が気味の悪さを増幅させ、襲いかからんと歩む。
今までと同じように、のこのこやってきた餌を喰らわんとして。
「――――――大将首だな・・・・・・?」
ただしそれは――――こちらも同じである。
ゴーマの動きが止まる。ようやく目の前の激情に気づいたのだ。
でも、もう遅い。
「首置いてけ――――――――!!」
一閃。
魔物には到底視認できぬ速度で、ただ剣は振るわれた。
斬撃は肉体を裂く。断末魔もなく生命は停止する。
過剰とも言える一撃の余波は、デクの樹の体内に埋め込まれた呪いをも断ち切った。
ははは、どうしてくれようかあの魔王。
虫に八つ当たりして怒りは収まったが、それはそれとして一発かまさないといけないな。
平原を行くのはリンクとナビィ。
デクの樹の一件を無事に治め、里の仲間に見送られて旅に出た。
リンクは滅多に負の感情を抱かない。それは呑気で楽観的な性格に起因するが、怒りを覚えぬ訳ではない。
加減をせずに振るった刃は、精霊を呪いから解き放つ。デクの樹は生きている。
まったく・・・俺が鳥好きでよかったな。あのなかなかモフり甲斐のあるふくろうが出てこなかったら、ダッシュで城下に行ってたぞ。俺の最速を舐めるなよ。
だんだん大きくなっていく城壁は記憶の中と大差ない。
リンクにとっては初めての都会である。気持ちを切り替えて観光を楽しむことにする。
いやもちろんちゃんと仕事はしますよ?
は~るば~るきたぜぇ~。
$月*日 晴れ
城下町、パンも米も売ってる。凄くいいと思います。
四次元・スゴイ=バッグにおにぎりやらサンドイッチやらを詰めておいた。これで小腹が空いても大丈夫。
今日はマロンちゃんという可愛い女の子とフラグを立ててしまった。
あとなんかニワトリの卵を貰いーの、お父様を起こしに行きーの、不法侵入してーの、ゼルダ姫に会いーの、子守歌を教えて貰いーのしました。
盛りだくさんか。
あとあの白馬に乗っていたのはインパという、ゼルダの乳母だった。
インパってあのおばあちゃんだよな。若いときはああなのか・・・知らなかった・・・。
そしてガノンドロフもいたよ。邂逅早いな。目が合っちまったよ。
まあ勇者なので顔には出しませんが。時の勇者はクールにいくぜ。
もうすっかり日が暮れてしまったので、今日は休んで明日から行動しようと思う。
$月◆日 晴れ
ニワトリ借りパクはよくないので、朝一番にマロンに会いに行った。
ロンロン牧場の牛乳すごいおいしい。絶対背が伸びると思う。伸びろ。
今日は~
墓場でシャープ&フラットに会い「太陽の歌」を教えてもらう。
にわとりのお姉さんを手伝って空き瓶をもらう。
門兵がお面が欲しいとか言うから買ってきてあげる。
墓場の子も欲しいって言うから買ってきてあげる。
ゴロンシティに行ったはいいがボスが引きこもっている。
やっと会えたらドドンゴの洞窟の掃除を頼まれる。
やることが・・・!やることが多い・・・!
勇者ってこんな多忙なんか!?いや元がゲームと考えればイベントが多いのはわかるんだが。
ゲームと違って移動に時間が掛かる。なぜならハイラルは広いので。
せめて馬がほしい・・・。てっきり牧場でもらえると思ったんだが。まだイベント来てない感じ?
$月◎日 晴れ
ドドンゴの洞窟に行って怪物を倒してきた。
溶岩なんてリアルで初めて見たな。結構熱かったです。
お礼にダルニアがゴロンのルビーをくれたので、これで精霊石も二つ目だ。
ゴロン達にここぞとばかりにわちゃわちゃされたので、ぞんぶんにちやほやされておいた。へへっ。
ついでにデスマウンテンについて聞いたのだが、あそこに行くには耐熱の服が必要らしい。
お店に売ってるのは大人用しかないそうだ。確かに普通子供は行かんわな。とりあえず今はいいか。
その後ゼルダに報告した方がいいと思ってお城に行ったのだが、ハイラル城に明らかにあからさまなところが遭ったので寄っておいた。
・・・・・・・・・大妖精ってああいう濃いめの人しかいないんですかね。もっとこう・・・なんか・・・・・・うん・・・。
$月★日 曇り
ブレワイでは鍋で一瞬・クッキングだったが、今は自力でケーキもパイも焼かなければいけない。
せめてクレープやプリンは作れるようになっておきたい!それがこちらです。
はじめてなので見た目が悪いのは許してほしい。味は!味はそこそこいいから!
昨日はディンの炎を試し打ちするために時間を費やし、結局ゼルダに会えなかった。
ので今日行きました。やはりこっそりと忍び込み、お褒めの言葉を貰いに行った。
ゼルダはまだほとんど城の外には出たことがないらしく、俺の話を嬉しそうに聞いてくれる。
ナビィともすっかり仲良くなったようだ。よかったよかった。
話の流れで俺が料理をすることや本をよく読むことを話すと、滅茶苦茶に興味を持ってきた。なぜ。
ナビィの速やかな報告により、バッグの中のサンドイッチとクレープを献上することになった。
お姫様にこんなの食べさせていいんですか?素人料理だぞ?あとでインパにしばかれない?それが一番怖いんだが???
喜んでくれたからセーフなのだろうか。セーフにしてほしい。
◆◆◆
夢を見る。世界が終わる夢だ。
ハイラルを黒い雲が覆い、全てを飲み込む太陽が落ちてくる。
わたしはなすすべもなく、空が飲み込まれていくのを見ているのだ。
悲しいのか、悔しいのか、寂しいのか、虚しいのか、それとも―――――。
――――――――だけど、その日は違った。
光が見える・・・・・・・・・。
黄金は膨らみ、大地を照らし、やがて一筋の線となった。
それは雲を切り裂き、やがて太陽に到達する。そして――――――。
初めて彼に会ったのは、そんな美しい光を見た日だった。
お父様は信じてくれない、黒い太陽の夢を信じてくれると言ってくれた。
リンク。森から来た彼。妖精を連れた不思議な人。
サファイアのような蒼い瞳が、まっすぐに見つめてくれた。
どうやってこんな所まできたの?と聞いたら、悪戯っ子のように笑って、「貴女に会いたくて」なんて!
ねぇ、わたし、そんなこと初めて言われたわ・・・。
「この手紙を渡しておきます。きっと役に立つはずです」
「ありがとう。お姫様」
「・・・あの、そんなにかしこまらないで。わたし、・・・」
顔を見ようとしたのに、なんだかドキドキして、上手く話せなくなってしまった。
わたしと同じ金髪なのに、やけにきらきら輝いて見える。どうしてかしら・・・。
「・・・・・・じゃあ、ゼルダと呼んでも?」
「!、もちろんです!」
インパが彼を見送っても、しばらく中庭に立ちすくんだままだった。
まるで、世界のとびっきりの秘密を知ってしまったみたい――――――。
◆◆◆
ん?
リンクはもう行ったのか?
もうちっとゆっくりしていけばいいのによ。アイツも忙しいな。
岩は食わなかったが、バクダン花を沢山土産に持ってった?ならいいゴロ。
ゴロン族たるもの、恩人に礼儀を欠いちゃいけねぇよ。また来るって?ならよし!
しかし本当にドドンゴの怪物を倒しちまうたぁ、オトコだぜ!
あのちっちぇ体にどんなパワーが溢れてんのか、わからないもんだゴロ。
ガノンドロフとは違って、オレたちのために危険を顧みず・・・。泣かせるじゃねぇか・・・。
それにあのオカリナ!オレにはわかるぜ。ありゃ音楽家ってやつゴロ。
おいオメーら!次リンクが来たときは、きちっともてなすんだぞ。
俺たちはもうキョーダイだからな!
そういえばデスマウンテンに興味があるみたいだったな。・・・子供用の耐熱服も作っておくか?
追加装備:ゴロンの腕輪 ボム袋 ゴロンのルビー