時の勇者に成り代わったがオチを知らねぇ【完】   作:はしばみ ざくろ

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1話~21話全て加筆修正しました。取っていきたい!整合性!

あとそろそろ完結するので感想の返信しますね。別に「やっべこれ終わる気しねぇわいつでも逃げれるようにしとこ」なんて思ってないよ!
てか久しぶりに感想欄覗いたらメッチャ長文きてて笑う。(そして傷に響く)


そしてきみは眠りについた

雷雲が鳴っている。

少女のか細い嗚咽のような、胸が締め付けられる夜だった。

レンガのような素材で作られた城はもうずっと無言を保っている。

鈍い靴音たちが地下への階段を降りていた。音は幾つも重なり合い、やがて重厚な扉を開く。

カンテラの明かりが室内を彷徨う。やがて鎖に繋がれた、一人の男の前で止まった。

 

「リンク・・・」

 

声に反応して伏せられた顔が動く。

青い瞳が眩しそうに瞬き、尋ね人を認識した。

 

「・・・ああ、我が(ともがら)か」

「災難でしたね。貴方を陥れたダギアニス卿ですが・・・、魔王に殺されました」

「・・・法的に裁かれたとかではなく?」

「貴方を冤罪で投獄した時点で、上からも民からも顰蹙を買っていましたし・・・。そも、魔王軍に対する危機感のなさを貴方に指摘されておいてこの結果です」

 

両手の錠が外される。

腱に異常がないことを確認し、男は体を伸ばした。ついでにため息も漏れる。

 

「・・・流石に疲れた」

「リンク、剣と服はここに。そして明日で構いませんので、民の前に出てもらえませんか」

「まあ、俺が出ないと収まらなさそうだしな・・・」

 

いつの間にか夜は過ぎている。

男はプラチナブロンドの髪を整え深緑の衣を身に纏う。

赤いマントを羽織ったならば、獅子がようやく帰還する。

 

「騎士リンク!」

「ハイリアの誉れよ!」

「勇者さまー!」

 

男は城下を見下ろす。

新しい朝は人々を優しく向かえた。

雲をかき分け、太陽が地を暖める。マントが鮮やかにたなびいた。

 

(愛しきハイリアの地よ)

 

 

突如地の底から湧き出た魔の者たちは、人々に恐怖と絶望を植え付けた。

 

 

(お前がこの俺を必要とするなら、騎士の誇りにかけて戦おう)

 

 

しかし折れぬ者もいた。ハイリアの地を守る騎士たちは、ギリギリのところで魔王軍をせき止めている。

 

 

(再び共に戦おう。ハイリアの子供たち。我が同胞よ)

 

ふと、大地に影がかかった。

大きな生き物はこちらを目指して降下してきている。

 

「おい、なんだあれは?鳥か?」「こっちに向かってくるぞ」

「魔物か!?」「矢を構えろ!」

 

ざわつき出す民衆。顔を顰める兵士たち。

リンクも目をこらして空を見上げた。赤い翼が白き光と共に地上に近づく。風が吹き始める。

 

「・・・待て!うつな!人が乗っている!」

 

それは立派な赤い鳥だった。

騒ぐ人々など眼中にないと言いたげに優雅に地上に降り立って、背に乗っている麗人を降ろす。

 

「わたしは白き女神、ハイリア」

「!!」

「これは神の鳥ロフトバード」

「女神!?」

「ハイリアの守護女神だ!」

 

白き衣を纏い、女神はその日地上に降り立った。

仰天する人々をかき分けリンク達も前に出る。背後の神鳥はそれを見て呆れたように鳴いた。

 

『フン、無駄骨だったなハイリアよ。恐怖の余り神と魔物の区別もつかぬ!人間などその程度のとるに足らぬ存在。下界に私が求める者がおるわけないのだ』

「とるに足らない存在だと?」

 

リンクが一歩前に出る。騎士達も真っ直ぐに女神と神鳥を見た。

 

「我らは必ず魔王を倒す!神の目から見れば人間は小さき者かも知れぬが、ここには勇気ある者たちもいるぞ!」

『ほう、貴様何者だ?』

「ハイリアの地の騎士リンクだ。私と共に戦ってくれる者達を、侮辱するのは許さぬ!」

『ならば人間に、どれほどの価値があるか見せてみよ』

 

そう言い残しロフトバードが飛び立つ。風を巻き込んで天に消えた。

女神はただじっとそのやりとりを見ていた。蒼穹を閉じ込めたような、美しい瞳で。

 

「民よ。聞きなさい」

 

瑞々しい唇が開かれる。

 

「恐ろしき魔王は、まもなく地上のすべてを災いの炎で焼き尽くすでしょう。このままわたしの地と民が滅びるのを見過ごせません」

 

女神の掌に光が広がり、やがて一振りの剣が顕現した。

 

「民よ、空へ逃れるのです。ロフトバードが水先案内人をつとめます」

「空へ!?」

「女神よ、我らは鳥ではありません。それにロフトバードは行ってしまった」

 

女神が剣を人々に見せる。

青い柄をもつそれは、まだ無垢な光を放っていた。

 

「この退魔の剣マスターソードが大地を切り取り、同時に空へと浮かぶ大地を支える柱となります。しかしこれは神が作りし神が使うための剣。地上に力を及ぼすために、人間の手で鍛え直さなければなりません」

 

女神がリンクの前に立ち、マスターソードを差し出した。

 

「地上で最も信あつき英雄よ。この剣を振るって戦うか?それとも国と共に滅びるか?」

「意地の悪い質問だな。神というのは随分勝手な連中のようだ」

 

 

「今さら言うまでもない。私の魂はいつでも・・・、友と共にある!」

 

 

そして時は動き出す。

マスターソードはリンクの手によって振るわれ、戦いを重ね、彼の手足となっていく。

人々は再び奮起する。この暗黒の時代を越えるために、光を目指して生き続ける。

 

 

それでも邪悪な欲望は襲来する。地平をどす黒く染め、山々平地清き流れのすべてを無慈悲に焼き尽くした。

 

 

「世界の終わりだ・・・」

「いいや、まだだ!」

「祈りで魔物が消えるものか。死んでもここは通さぬ!」

 

女神は見ている。ロフトバードは空を泳ぐ。

 

「亜の者よ、女神(ハイリア)のしもべたち。人間達が戦っている、彼らを助けるのです!」

 

 

魔王軍と女神軍の壮絶な戦いは七日七晩にも及び、おびただしい数の人間が殺された。

しかしわずかながら勇敢な民たちは、ひるむことなく戦い続けたという。

 

 

「だめだ、時間が足りない・・・!このままでは追いつかれる」

 

この犠牲者の数では、魔王が城にたどり着くのも時間の問題だ。

血と亡骸にまみれた大地はリンクの足を鈍らせる。地上は地獄と化していた。

・・・風が吹いている。

 

『私の背に乗るがよい』

「ロ・・・、ロフトバード!?」

『お前の戦いをとくと見せてもらったぞ。―――共に戦おう、永遠に!!』

 

風が吹いている。

ロフトバードはリンクを乗せて大空を駆けた。

 

「ロフトバードよ、我らの民を空へ迎え入れてはくれまいか。そのための道案内を頼む」

『おまえがこれからも私の背に乗るのなら』

「ああ、約束しよう!」

 

 

――――――その時、なにかを祝福するかのように、三匹の龍が2人の周りを飛んだ。

 

 

「龍・・・?この印は・・・!?」

 

マスターソードが輝き出す。

聖三角の文様が剣に刻まれた。そのきらめきを、女神も遠くの空から見ている。

 

 

神の遺産はマスターソードに宿りし。勇者よ、剣を女神のもとへ!

 

 

「わたしの国、愛するハイリアの民よ、人間よ。生きて子孫を繋げよ、魔の手の及ばぬ遠い雲海の彼方。高き空の果てに。―――そして邪悪なる者から神の遺産(トライフォース)を守るのです・・・!」

 

 

女神ハイリアは剣の一振りで大地を切り取った。

 

 

「空に行くぞ!城に集まれ!」

「乗り遅れるな!急げーっ!」

 

大地が動き出す。

まもなく暗黒の時代が終わる。

 

「リンク!剣を受け取って!」

 

リンクが剣に願いを込める。

マスターソードよ。柱となりて人々を支えよ。そして――――お別れだ。

 

「リンク!光に飛び込んでください!」

「何をしている!?早くしろ!」

 

そういうわけにはいかないんだ。誰かがあいつを足止めしないと。

お前たちの幸せを心から祈るよ。

 

「不快な・・・。天に逃げようとは」

 

悪意が追いつく。牙をむく。

生きることに執着はしない。ただ、これが運命かと思うだけ。

 

「どうした、神に頼れ臆病者。貴様を殺してあの大地を撃ち落としてくれる」

「それは困るな。・・・なぁ黒き者よ」

「?」

「神の遺産を手に入れてもきっと、お前の欲しいものは手に入らないよ」

 

何百年、何千年もたてば、大地は豊かさを取り戻すだろう。

そしていつかまた、雲の上から降りられる時がくるかもしれない。そんな未来を願っている。

 

「俺の勘はあたるんだ」

「・・・戯言を」

 

・・・人の潰れる音がする。

 

天に浮かぶ魔王の前に女神が立ちふさがった。風はもう止んでいる。

 

「黄金の三角をどこへやった!」

「おまえの手の届かぬところへ逃がしました。絶対に魔に侵されぬ聖なる場所で、わたしの忠実な民によって守られています」

「人間の手にだと!?」

 

封印の光が広がる。

女神が権能を振るう。あの邪悪を封印する力を。大地にどうか静寂を。

 

「おのれ女神・・・!これですむと思うな。あの万能の力を必ず我が手にしてみせる。そのときこそ、我ら魔族が世界の支配者となるのだ・・・!」

 

沢山の犠牲を伴って戦争はおわる。

力を使い果たした女神は地に降り立ち、彼の元にたどり着く。

 

「リンク」

 

返事はない。

 

「・・・リンク」

 

ハイリアの瞳からこぼれ落ちた涙が、リンクの服を濡らしていく。

 

「天の意志、星の意志はあなたという魂に目を付け強くしようとした。槌でうたれ鍛えられ、決して折れない剣ができあがるように」

 

人の亡骸がこんなに冷たいことを、ハイリアは初めて知ったのだ。

 

「そしてこの先の未来も、あなたによく似た勇ある魂が産まれたならば、世界はその者を試すでしょう」

 

 

「でも、もうわたしには見ていられない・・・。あなたが苦難に陥るたびに身を切られるような痛みがある。悲しみを感じるたび心が冷えていく。もうわたしは機構(かみ)としては壊れてしまった」

 

 

「わたしは・・・わたしは・・・」

 

苦しい、とハイリアのバグ(こころ)はいう。

天に帰れ、とハイリアの存在意義(システム)がいう。

この感情が恋と呼ぶことを、彼女はまだ知らなかった。

 

「天に帰ることで、この気持ちを捨てなくてはいけないなら。わたしはもう・・・女神でなくていい。次は一人の人間としてあなたの前に立ちたい・・・」

 

そして女神は人になった。魂は巡り、未来に生まれ変わるだろう。

 

「そして必ず、あなたを起こしに行くから」

 

勇者の魂もまた巡る。約束と願いを抱えて、遠い未来に生まれ変わる。

 

「そうしたら・・・あなたとともに生きていきたい・・・―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

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――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それから数千年の月日が流れ、空の都(スカイロフト)に女神と勇者は生まれ変わる。そして今度こそ魔王を滅するために戦いに身を投じていくことになる」

 

壮大すぎてびっくりするわ。

なんか・・・すまんな・・・雰囲気で勇者やってて・・・。

 

「さて本題はここからだ。勇者たちは時の扉を使い『過去と未来』を行き来しながら魔王と対峙していく」

「・・・時の扉?」

「そうじゃ。お主の生まれた世界は勇者が勝利した世界。そしてここは――――敗北した世界だ」

 

・・・・・・・・・・・・。

 

「マジで言ってる?」

「大真面目だ。時の扉を使ったことによって時間の逆説(タイムパラドックス)が起こった」

 

説明しよう。タイムパラドックスとは!

タイムトラベルした過去で現代に存在する事象を改変した場合、その事象における過去と現代の存在や状況、因果関係の不一致という逆説が生じることである!

 

「魔王に勝ったかもしれないし、負けたかもしれない。だからなるべく矛盾のないように世界は並行世界(パラレルワールド)を増やしていく。そしてそれを担当しているのは時の女神じゃ」

 

 

スカイウォードソード →勝利→ふしぎのぼうし→4つの剣→時のオカリナ

           →敗北→     ~~     →ムジュラの仮面

 

 

「言っておくがお主もそうだぞ。時の扉を使っただろう」

「マジか~・・・」

 

 

時のオカリナ →勝利→風のタクト

       →敗北→神々のトライフォース

 

 

「じゃあえーと、なんで俺はこの世界に来たの?滅びそうになっているから?」

「そうだ。勇者の敗北を悟った時、女神(しょうじょ)の魂は悲鳴をあげた。その強い感情に反応してトライフォースが力を発揮した」

「・・・・・・」

「トライフォースは彼女の魂と勇者の魂を禊とし、魔王を無理矢理過去の世界に封印した。そして時の扉のある神殿は女神の遣いシーカー族によって封じられることになる」

 

フクロウが後ろを振り向く。リンクも立ち上がって扉に近づいた。

邪悪な気配はどんどん強くなっている。

 

「封印・・・。閉じることはできなかったの?」

「時の扉を動かせるのは3つ。神々の力、マスターソード、そして後世に作られた時のオカリナのみ。彼女には神殿ごと封印するのが精一杯だった」

 

そして長い年月がたち――――――ムジュラに乗っ取られたスタルキッドによって封印は壊されることになる。

 

「魔王の封印も解け始めている。このままいけば過去の世界を通じて、あらゆる時空を呪いと災厄が襲うだろう。そんなことになれば今度こそ地上から灯火が消える」

 

 

「リンク。―――いや、時の勇者よ。魔王を完全に滅し、時の扉を閉じてほしい。そのためにお主は時の女神によってこの世界に導かれた」

「・・・時の女神って、結構人類の行く末とかに興味ある感じ?」

「・・・・・・知らんのか?女神はずっとお主を見守っている。世界に興味はないが、お主が生まれないかも知れない未来は困る」

「何で???」

「本当に知らないんじゃな・・・。それはお主が時の女神に仕える一族の末裔だからだ。時の歌と時のオカリナを作り、時の神殿を守ってきた神聖なる一族」

 

初耳なんだが・・・??

くそっデクの樹さまに両親のこと聞いときゃ良かったな。全然その辺は気にしてなかったわ。・・・あっ!だから巫女とか言ってたのか!?

 

「しかしハイラル統一戦争に巻き込まれ一族は壊滅状態になる。戦後、神殿とオカリナの権利を王族に渡し一族は解散。お主の母も夫を亡くし心を病んでいたが、生まれてまもない子供だけは信頼できるものに託そうと森の精霊を訪ねる」

 

しかもこっちも戦争でめちゃくちゃになっとるんだが・・・?

やはり戦争は悪い文明。・・・ハイラル出たの正解だったかもな・・・。

 

「後はお主の知っているとおり。母君は森にきてまもなく過労で亡くなり、成長したお主もハイラルの運命に巻き込まれていくことになる」

「・・・そして魔王を倒して過去に帰ってきたらトライフォースが宿っていた。だな・・・」

 

はぁーなるほどしょうがないな。いやしょうがないっていうか・・・ハイラル王家ってもしかして俺が思ってるより愚か度高い?

 

「わかった。やろう。・・・トライフォースよ!」

 

声に反応してリンクの左手の甲が輝きだす。光はやがて聖三角の紋章となってあらわれた。黄金の三角は溢れんばかりの力を放出し主の言葉を待つ。

 

「いまもまだ残る邪悪な思念を、魔王の呪いを、災厄を招くだろう怨念を、完全に滅せよ!そして、共に封じられた魂たちを解放せよ!」

 

眩い光が広がった。

それは万能の力。全ての願いを、全ての欲望を叶えし神々の遺産。太古の祖から存在する究極の力。

その力は今、時の勇者によって振るわれる。

―――――光が収まると、もう悪しき魔力は感じなかった。

 

「・・・これでいいのかな?あとは扉を閉めよう」

 

青いオカリナを取り出す。

地の底であっても旋律は清らかさを失わない。美しい音色は厚い扉を閉ざしていく。もう二度と、開けられることのないように。

 

「ありがとうリンク。これで最悪は避けられた」

「いいよ。ところで・・・時の女神は俺のこと見てるんだよね?呼んだら来るだろうか」

「明確に意識を向けてることが分れば、まず話を聞こうとすると思うが・・・」

「うん、なら大丈夫だ。ありがとう」

 

このトライフォースどうすっかな・・・。今までは見て見ぬふりしてたけど。

俺が死んだらまた適任者のところに飛ぶんだろうが、そもそも封印されてたんだから聖地に返すのが道理だよな。うん、死にそうになったら女神を呼んで相談しよう。

 

こうして枯井戸の探索は終わる。

地上は明るいなぁ~~。

はー疲れた。えーとこの後はカーフェイに会いに洗濯場に行くんだったな。

「途中から話について行けなくなったんだけど」というチャットを宥めつつリンクは町に戻った。

 

幕引きは近い。

 

 

 

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