時の勇者に成り代わったがオチを知らねぇ【完】 作:はしばみ ざくろ
嵐の歌はさんざめく。風車はぐるぐる。ぐるぐるぐる。
水の引いた井戸の底には、この世の混沌が詰まっている。
虚像の壁をくぐり抜けた。石造りの迷宮にたどり着く。
この部屋に漂うたましいの声。
「まことの目を求めよ――――――」
意気揚々と神殿に行ったら詰んだんですけど?先に井戸に行くって教えてくれや・・・。嵐の歌ってここで使うのか・・・。
「・・・この壁も通れるね。手が透ける」
「じめじめして嫌だワ・・・。早く出ましょう」
磔の刑場は物言わず。ただ事実だけを伝えてくる。
牢屋にうずくまる骸骨は、リンクの顔を顰めさせた。
「・・・うわっ!?」
「リンク!?」
異質な雰囲気が集中を削ぐ。
見えない穴に落ちるという、己でも驚くミスをした。
――――叩きつけられると思った体は、洞窟の隙間に受け止められる。
しかし木造の隙間から見える景色は、決して安堵を感じなかった。
「・・・これはもしかして池というやつ?なら生えてるのは蓮かしら」
「現実逃避はだめよリンク。どう見ても人間の両手だワ」
「どうしてかなぁ・・・・・・」
現場猫も呆然とする設置である。
おどろおどろしいグリーンをベースに、差し色のショッキングパープルが目に痛い。
地下を照らす青い灯を振り切って、はしごを足早に登った。
「ここから水が流れてるのね」
「トライフォースのマーク・・・。子守歌かな」
もう吹きなれたララバイ。地下から水が引いていく。
隠された通路を這って進み、金網の壁を登った。扉が一つ。
「いや・・・なん・・・何・・・?」
「デドハンドの両手よ!捕まれないように気をつけて」
行きたくねぇ~・・・。嫌だわ・・・。
両手の囲いにしぶしぶ入っていくと、足下から気配がする。
「ウワ・・・・・・(気持ち悪いよ~~やだよ~~)」
なんか白くて大きくてうねうねした奴が地面から出てきたんだが。
やだ・・・。絶対触られたくない・・・。
「ァ・・・ァ・・・」
(なんか言ってる~~)
切りつけたら地中に逃げられ。また出てきたら切りつけ。
地中に逃げられ。
また出てきたので面倒になって全力で刺した。
「見た目がちょっと・・・。やる気が削がれるというか・・・」
「でも倒したから・・・。あっ、何か出てきたわヨ」
光と共に宝箱が顕現する。
中に収まるのは、真実を見る目。
まことのメガネを 見つけた!
一階に戻ってメガネを使う。
まやかしを見破る真実の目は。忘れられた感情さえも。
「なぜ頭蓋骨が壁に展示されてるのか」
「趣味が悪いわ・・・」
「・・・・・・む?」
メガネは楽しいが場所が悪い。
もう出ようかな。とあちこち見ながら思っていると、奇妙な頭骨を発見する。
土壁に並べられたそのされこうべは、黒い涙を流していた。
レンズ越しにしか見えぬのが、より一層リンクの心に、感情の波を起こした。
闇の神殿 それはハイラルの血塗られた闇の歴史 欲望と怨念の集まりしところ
嗤う壁をすり抜け、死神の鎌を通り過ぎる。
ギロチンの廊下は生者を阻む。研ぎ澄まされる刃物の音。
「足場が見えないな。とことん進んで欲しくないみたいだ」
「落ちないように気をつけてね」
ホバーブーツはつるつる動く。
てか飛んでるっていうか滑ってるよね。急に落ちそうになるのやめてほしい。
ビーモスは爆弾で倒せるのだが、頭だけ吹っ飛ぶのでちょっと可哀想になる。
一つ目が可愛いので欲しいんだけどな。家の門に番として置きてぇ。
“真実の目を持つ者だけが 剣の雨をしのぐ 石のカサのありかを 知るであろう”
看板の導きに従い、壁に隠された岩を押して進む。
棘やら足場やらが見えないのはだいぶ神経をつかう。メガネを使えばいいのだが、魔力がごりごり減っていくのを感じるのだ。こんなに長時間魔力を使い続けたことはないかもしれない。
強風をヘビーブーツでくぐり抜けたら、白骨の山からカギを見つける。
「くわばらくわばら」
「リンク、船があるわ」
「ん?これは、
船と霊は関連深い。
あの世とこの世を分ける境界にあるのは、往々にして川だからだ。
(ここにもトライフォース。この船は王家のもの・・・?)
がらん、がらん、とベルが鳴る。
がしゃどくろのような渡し守が、ゆうらりゆらりと動き出す。
ひとまず腰を下ろし、息を落ち着けた。
―――――地獄の門が見えてくる。記された銘文は、この先の全てである。
“この門を過ぐる者は 一切の希望を捨てよ
我を過ぐれば憂いの都あり 我を過ぐれば永遠の苦患あり 我を過ぐれば滅亡の民あり
しかし義は尊き、暗闇の時を動かし 聖なる力、比類なき智慧
ただ1つの愛、我を捉える”
力、知恵、そして
奈落の底に落ちてもなお、失わずに居られるのなら。
暗黒幻影獣ボンゴボンゴ。
井戸から復活した、闇の神殿の怪物である。
天井に吊された人間のような姿。おそらく顔があった部分には、皮がめくれ、目玉らしき球体が露出している。
両手は肩から無く。手の平がリンクの立つ場所を、打楽器のように忙しなく叩き揺らす!
「う、おっ!?」
「周りは毒塗れよ!落ちないように気をつけて!」
不安定な足場を飛び回りながら、掴もうとしてくる手を撃ち落とす。
不気味な泣き声が平衡感覚を狂わせる。感覚遮断は残念ながら覚えていない。要訓練だ。心のメモに書き留めておく。
風切り音が反響し、斬撃が魔物を襲う。
あえて弾みを利用し、高く跳躍しながら張り手をよける。暗闇を舞う白刃が赤目に突き刺さった。
絶叫。怪物は呻きながら伏す。
「・・・・・・・・・」
破裂。黒い汚泥が広がり、魔物から魂が解放されていく。
オカリナを取り出したのは、ほとんど無意識だった。
歌は何も拒まぬ。神殿に響きわたり、青い魂たちを見送る。
賢者のメダルを手にして、二人は静かに立ち去った。
「オ~、イラッシャ~イ!!ワタシ世界中ノ珍品・奇品ヲ、皆様ニオ売リシテイマ~ス。今回ノ商品ハ・・・
芯材ハ不死鳥ノ羽根、ハナミズキ材、頑丈デ折レニクイ!魔法ノ杖デ~ス!」
「オ兄サンモ、コレガアレバ一流の魔法使イ!空ダッテトベルヨ~」
「1000ルピーキッカリ!マイドアリ~!!」
「アドバイス?ハナミズキノ杖ハ無言呪文ガツカエナイカラネ~」
○○月%日 晴れ
ドキドキ潜入ミッションinゲルドの谷。大工共は反省しような。
まさか大人時代でも忍び込むことになるとは・・・。いや男子禁制だからしょうがないんだけど。
今は砂漠の途中にある、無人の建物で一泊している。
また思わぬ所で魔法の杖を手に入れた。俺は無属性な上に独学なので、杖を手に入れても空を飛ぶのが精一杯である。たーのしーーー!!!
無言呪文が使えない。というのは杖からエフェクトが常に出る、という意味だったようだ。魔法少女じゃん。
使うとシャラーン!だのキラーン!だの鈴を鳴らしたような音が聞こえる。オシャレでいいと思います。
魔力を球体にして打ち出したり、杖に貯めてビームにしたり、勢いよく振るえば魔力の刃と化す。
これで投影魔法、剣術、杖による飛行術、体術、音楽の5つが使えるようになった。あとは大妖精様の加護。
俺の戦闘スタイルもだいぶ固まってきたな。
あとあの・・・なにもない空間から杖を取り出す奴をしたいんだけど、あれはどうやってするんだ。
魔法使いの知り合いでもいればなぁ。
次は魂の神殿だ。油断せずに行こう。
○○月*日 晴れ
ナボールにガノンドロフのことを頼まれてしまった。任せたまえよ。
あとはツインローバがぽろっと言っていた、虚数というものについてなのだが・・・。
有り得るが物質界に無いもの、らしい。なんかfateで聞いたことあんな。桜ちゃんじゃん。
平行世界ではなく、世界の“裏側”。生命の存在しない、虚の空間。
そこを四次元ポケットとして利用したい。しかしそのためにはアクセスする手段が必要だ。ないですね。
ツインローバが何か知ってる風だったが、居なくなってしまったものはしょうがない。
ようやくメダルも全て集まったし、そろそろ決戦も近いだろう。しっかり準備しておかなくては。
◆◆◆
闇の神殿を攻略し、魂の神殿に向かった・・・のだがシークに過去から行けといわれてしまった。おっす。
過去に戻り、魂のレクイエムで神殿に飛ぶ。
・・・あれは初めてあう人か。声をかけてみよう。
「ハロー、ゲルドの方。なにしてるの?」
「ん?見慣れないボーヤだねぇ・・・。アンタみたいなこどもが、こんな所になんの用だい?」
「ん~と、散歩?」
きょとん、とした後。赤い髪の女は快活に笑った。
「あっはっは!面白いボーヤだね。暇かい?」
「リンクです。こっちはナビィ。うん、暇だよ」
子供だから警戒されなかったのか、はたまた別の理由か。とにかく気を許してくれたようだ。
「アタイはナボール。ガノンドロフ様に任されて、この魂の神殿を管理しているものさ」
「この神殿は何を祀っているの?」
「砂漠の神様さ。ゲルドが代々信仰してきた、雷と太陽を司る神だ」
ナボール。この人が魂の神殿の賢者なのだろうか。
折角なので俺に頼みがあるらしい。なんだろう。
「このちっこい穴をくぐって、お宝を取ってきてほしいってことなんだ。アタシ達じゃ入れなくてね。単身こんな所にくるなんて、アンタはタダ者じゃなさそうだし」
「いいよ。何を取ってくればいいの?」
「銀のグローブっていう、べんりな道具さ。もし無事に手に入れたら・・・」
「・・・ら?」
「イイことしてやるよ!」
―――――って言われたから張り切って取りに行ったのに居ないんだが~??どこ行ったのナボール。このグローブ貰っていいんか?
しょうがないので未来に戻り、また神殿を攻略することにした。やれやれだぜ。
「我らの忠実なる下僕よ・・・。我らにかわり、侵入者を殺せ!」
アイアンナックが立ち上がる。重々しい金属音が、威圧感を増幅させた。
大斧が振り下ろされるのを軽くよける。スピードは今までの敵と変わらないようだ。
「はっ!」
突き、右切り上げ。右薙ぎを避け背後から刺突!
柱を砕き突進してくる巨体を、バク宙で回避。兜もろとも脳天を砕く唐竹割り。たわいもない。
「・・・リンク!」
「ん?」
剣を収めながら、ナビィが呼ぶ声に振り向く。
先ほどアイアンナックが座っていた椅子に、青い光が見えた。
「あれは・・・魂?」
「闇の神殿で見送ったものに似てない?」
ゆれる人魂。
そっと近づき、まことのメガネを取り出す。見えたのは男の影。
リンクよりもずいぶん大人で、顔はよくわからない。腰掛けた姿は、なんだか様になっていた。
『――――――』
「えっ?」
『―――――ない―――が――――を』
「き、きこえないです」
笑われた、ような・・・。
『ありがとう―――白き森の民―――』
「い、いいえ・・・」
『ゲルドの―――託そう―――を――――』
伸ばされる手に一瞬戸惑う。
リンクの額に触れた指先からは、暖かい力を感じた。呆然としている間に、魂の男は薄れていく。
「えっ?あの、なにが・・・」
『影の加護を―――』
「影・・・?」
なにがなんだかわからないまま、男は満足して消えてしまった。
説明がないですね・・・・・・。
「・・・進もう」
「次こそあの二人ネ。気をつけて」
もうわからん・・・。知らん・・・。
「ちょこざいな・・・!アンタなんぞ虚数の狭間に送ってやる!のぉコタケさん!」
「それはいいがコウメさん・・・。そのアタマの上のモノはなんじゃ?」
「え?」
「え?」
「えっ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「バケてでてやる~!!」
・・・・・・はい。次に行こうか。
「ナボール!」
「へへへ・・・。七年前のあのチビすけが、もういっぱしの剣士じゃないか」
賢者の間は静謐を守る。
ようやく再会した二人は、しかし正反対の顔をしていた。
「そんなカオするんじゃないよ。魂の賢者、結構!まさかあの人と戦うことになるとはねぇ」
「・・・ナボール、貴女からガノンドロフに対する悪感情は見えなかった」
「ああ・・・」
わずかに顔を曇らせ――――。腹をくくった。もはや我らは一蓮托生。
「―――――リンク、ガノンドロフ様を止めておくれ。ゲルドは確かにハイリア王族に恨みがある。でも、恨みの連鎖はもうたくさんだ」
「・・・わかった。俺にできるかわからないけど」
「大丈夫サ。ボーヤ・・・いや、・・・時の勇者。あの時の約束のかわりに、このメダルをあげるよ」
魂のメダルを手に入れ、―――全ての賢者が目覚めた。
ついに、魔王との対決の時がくる。
「アンタがこんなイイ男になるってわかってりゃ・・・」
「む?」
「フフッ!なんでもないよ。――――そうさ、アタイはね」
ゲルド族もハイリア人も、共存できる未来を信じてるよ――――――。
入手:まことのメガネ ホバーブーツ 闇のメダル
ゲルドの会員証 銀のグローブ ミラーシールド 魂のメダル
魔法の杖
影の加護:?
誰かからの感謝の気持ち。