Chapter2 (非)日常編
5日目
朝、食堂に向かうと籠森と弓長が相変わらずいないものの、メイビーも含め、『12人』か集まった。
空気は重く沈んでいた。
岩田「よし!みんなでトレーニングと行くか!」
上条「なんだよいきなり……」
岩田「辛いことがあった時は何かに打ち込むのが一番だ!」
香月「トレーニングしすぎで脳味噌まで筋肉になってしまったのですね」
監原「そうだ、香月、アロマとかないのか?少しはリラックス出来るかもしれない」
香月「あるばすぐに使いますよ、あれば」
つまり無いってことか。
モノクマ「やあ」
加賀美「じゃあもう一度探索する?気が紛れるでしょ」
上条「そうだな、行こう」
モノクマ「無視するなーーー!せっかく良い情報を教えに行こうと思ったのに」
絵馬「どうせロクなことじゃないでしょ!」
モノクマ「ロックなことだよ」
式野「ロックなことだと?どう言うことだ?」
いきなり食いついたな、式野。
モノクマ「旧校舎に行けるようになりました。そして新しいルールが適用されまーす」
監原「旧校舎?」
モノクマ「はい。それと君たちを2つのグループに分けまーす!B班は旧校舎に泊まってもらいまーす」
上条「B班ってどういうことだよ!」
モノクマ「いつも通り寄宿舎に泊まる、A班は、監原クン、知念クン、絵馬さん、佐藤さん、岩田クン、式野クン、弓長さん。B班には上条クン、将口クン、星野さん、加賀美さん、香月さん、籠森クン、メイビークン」
岩田「俺たちをそんなグループに分けてどうするつもりだ!」
モノクマ「簡単です。夜時間はA班は旧校舎に、B班は本校舎に入ってはダメということだけだよ。校則に追加するね」
12. 夜時間はA班が旧校舎に、B班が本校舎に入ることを禁じます。
監原「なんでそんなことをするんだよ」
モノクマ「学級裁判を勝ち抜いたご褒美に行ける場所を増やしてあげたのに酷いなぁ」
加賀美「行ける場所を増やしたのはおいといて、なんでグループを分けるのかな?」
絵馬「優子と離れ離れじゃない!」
香月「何か意図を感じますね」
モノクマ「あと魅才学園の2階も開放したからね。僕ってシンセツなクマだなぁ。きっと僕のような優しいクマはどんな人でもリラックスさせられるね」
加賀美「もし夜時間にA班が旧校舎に、B班が本校舎に入ったらどうなるの?」
モノクマ「ブンブンな巣だよ」
メイビー「ようは蜂の巣か」
知念「従うしか……ないよね」
モノクマ「旧校舎にも寄宿舎があるから安心してね」
加賀美「わかったわ、行けばいいんでしょ。もうどっか行って!」
モノクマ「はーい」
式野「待て、ロックの話は!?」
監原「お前指揮者だろ、何食いついてんだ?」
式野「……」
加賀美「そうね、B班は旧校舎を探索してA班は2階を探索しようか。終わったら本校舎側の寄宿舎の食堂に集まろうか」
監原や知念とは別か。いつも監原や知念と話してたしな。残るは将口とメイビーと籠森か。一番話しやすそうなのは将口くらいだな。
上条「将口!一緒に探索しないか?」
将口「構わない」
電子生徒手帳の地図で調べてみる。
将口「っ……!娯楽室!?娯楽室に行ってみないか!?」
上条「あ、ああ……」
将口は駆け足で娯楽室に向かった。俺はその後を追う。間に合わないことはないが、俺が早歩きしなきゃいけないくらいのスピードだ。どうしたんだ、将口……。
俺たちは渡り廊下を通った。渡り廊下はガラス張りで外、青空が見える。
上条「すごい!外が見える!」
脱出出来るかもしれないという、俺の希望を粉々に打ち砕いた。
壁、壁壁壁壁。
とにかく高い壁が学園を覆うようにそびえたっていた。
上条「……」
監原「上条、空を眺めてるところ悪いけどさ」
上条「あ、ぁぁ……うん」
監原「渡り廊下の半分は本校舎で残り半分は旧校舎だから夜時間には気をつけた方が良いぜ?ガトリングガンされる」
相変わらず、ガトリングガンがあるのか……。
監原「将口は追わないのか?」
上条「そうだった!」
娯楽室に向かうと既に将口の姿があった。
将口「やはりあった!将棋が!」
上条「将棋?ああ、それを探していたのか」
将口は超高校級の棋士だもんな。
将口「個室に持っていっても構わないか……?」
上条「いいんじゃない?」
やりたいの多分、将口ぐらいだし。
将口「上条もやらないか?将棋」
上条「い、いや。ルール分からないし……」
将口「教える。私が一流にしてあげよう」
将口めちゃくちゃ迫ってくる!お前そんなキャラか!?
上条「い、今は探索だろ!報告会もあるし!」
将口「そうか……」
そんなしょんぼりしなくても……。
上条「食堂があるみたいだ、行ってみようぜ」
将口「ああ……」
わかりやすくテンションが……。
加賀美「狭いけどここにも食堂があるんだね。たまには気分転換に利用するのも良いかも」
上条「加賀美はここを調べてるのか?」
加賀美「うん。でも食堂だってのにあまりにも埃っぽいよね。いくら旧校舎って言っても誰も手入れしてないのかな」
将口「確かに、娯楽室も埃っぽかったな」
加賀美「うん!掃除が捗るわ!モノクマはあたしへの挑戦してるのよ!ピカピカにするから待っててね!」
将口「探索はどうした!?」
お前もさっきそんな感じだったけどな。
上条「ここは加賀美が見るみたいだし、俺たちは別の場所を探索しようぜ」
将口「そうだな」
保健室には包帯やベッドが置いてあった。その中に医療用キットがあった。
上条「風邪薬、胃薬、頭痛薬、睡眠薬……ビタミン剤も。しばらく病気には困りそうもないな」
将口「睡眠薬か。ここ5日最近眠れないから助かる」
確かに寝れる環境じゃないしな。
上条「消毒薬に……」
上条「これ……」
将口「どうした?」
上条「輸血パックだって」
将口「輸血パック……。使うような事態にならないといいな」
上条「そうだな」
将口「それにしても、薬も薬剤師が必要だし、輸血パックで素人が輸血できるものだろうか」
上条「どういうことだ?」
将口「ここは魅才学園ではないんだろうな。学校なら薬や輸血パックは置いていないし」
上条「裁判所がある時点で魅才学園じゃないと思う」
将口「確かに」
上条「うわっ、棚にびっしり輸血パックがある」
将口「血液型に対応してるな」
上条「……使う事態にならないでくれ」
メイビー「君たちも保健室の調査してるんだ」
上条「メイビーもか?」
メイビー「今回は本校舎も二階を含めてかなり行ける範囲が広い。つまり誰かが殺人を実行した時、証拠が掴みづらくなる」
上条「殺人!?もう殺人なんか起きたりしない!」
メイビー「どうかな。君は深沢が殺されたのにまだそんなこと思うの?そんな甘い考えだから深沢は殺されたんじゃないの?」
上条「な、こいつ!」
俺がおもわず拳をふるいあげた。しかし将口に腕を掴まれる。
将口「やめろ上条。私たちが争っていてはなんの解決にならない」
上条「でも!」
メイビー「……忠告しただけだよ。殺人が起こらないのならばそれで良いんだから。でも君だって信頼出来ない人がいるはずでしょ?それで殺人は起きないという過信は……命取りになる」
メイビーはそれだけ言って去ってしまった。
上条「クソ……」
将口「メイビーの意見に賛成するわけではないが、なるべく2人以上で行動しないか?」
上条「将口……!?」
将口「なるべく一緒なら殺される心配もないだろう。仮に殺されたら1人が怪しまれる」
上条「将口!」
将口「私は色々な手を読んでいる。私の最善手が相手の最善手とは限らない。あらゆる可能性や手を考えた上で自分の手を打つ。これは私の主義だから同調して貰おうと思ってはいない」
上条「……」
将口「探索を続けようか」
一方。本校舎2階
監原「2階、広いが教室ばっかだな」
知念「弓道場があるみたいだよ」
監原「行ってみるか」
弓道場には桜が舞っていた。
知念「すごい!桜だ!」
監原「ニセモンだけどな」
弓長「アンタらここに何かようでもあんの?」
監原「弓長か。やっぱり嬉しいだろ、ここ。超高校級の弓道家にとっては」
弓長「うるさいんだけど、消えてくれない?」
監原「ひぇー、分かりましたよ。全く」
知念「怒られちゃったね」
監原「仕方ないな。別の場所探索するか」
2人は化学室に来た。
知念「化学室だって」
監原「うわっ、毒とか色々あるじゃん。モノクマの奴、何がなんでも俺たちに殺人させる気だな」
知念「食事とかに混ぜられたらヤバイね」
監原「処分とかするか」
知念「そうだね」
監原「あっ、ストップ。ガスマスクとかしないと毒を吸い込むぞ。俺だって毒薬に完璧に詳しいわけじゃないんだからな」
知念「そうか。じゃあガスマスクを探すまで秘密にしようね」
監原「隠しておくか」
2人は薬品をダンボールに詰めて、棚に置いた。
監原「熱心に調べる奴がいたらアウトだけどな」
知念「そうだね」
2人は図書室に来た。
岩田「2人も図書室に来たか。小難しい本ばかりだぞ」
監原「別に難しい本なんかないけどな」
知念「なんだ?これ?誰かの日記みたいだけど」
知念は日記を広げた。
3月3日
我々の研究は遂に成功した
近いうちに実質的な人類の不老不死が可能になる
記憶をコントロール出来れば人類は死から解放される
人類は新たなステージに上り詰めたのだ。
監原「なんだこれ?」
知念「不老不死?何を言っているんだ」
監原「ふろーふしなんて無理で決まってるし、俺は不老ならともかく不死は嫌だね」
知念「きっとモノクマのいたずらだよ気にしないでおこう」
モノクマ「いたずらじゃありませーん!」
知念「うわっ!いきなり出てくるな!」
モノクマ「その日記は本物だよ」
監原「うるさいな。仮に本物だとしてお前や俺らになんのメリットがあるんだ。帰れ」
モノクマ「帰るよカエルじゃないけど帰るよ」
知念「さっさと帰れ!」
パッとモノクマが消えた。
監原「とりあえず、本校舎の食堂に行くか」
加賀美「報告ある人ーー?」
上条「俺たち旧校舎組は娯楽室と食堂と保健室を調べた!」
加賀美「食堂はここより狭かったし掃除しなきゃいけないところがたくさんあったわ。何より旧校舎は掃除しなきゃいけないところがたくさんあったわ!」
将口「娯楽室には将棋があったな。将棋は私が持っていくが異論はないか?」
監原「あ、ああ……異論はない」
みんな引いてるよ……。
上条「あと、保健室には風邪薬や胃薬やら色々置いてあったから使いたい人は利用した方が良いかな」
監原「俺たち2階組は図書室や弓道場とか見つけたな」
知念「あとは化学室くらいかな」
式野「つまり、脱出の手がかりはないと」
式野のそう言うとみんなの顔が暗くなった。
星野「良いことはあるよ」
加賀美「どうしたの?星野さん」
あまり喋らない星野が喋り出した。何か見つけたのか。
星野「外が見えた」
岩田「あの渡り廊下か?確かに外が見えたが……」
香月「外が見えるってだけで、出られないじゃないですか」
監原「強化ガラスだったし、ガラスを割ったところでまるで映画の世界みたいな壁に囲まれてたしな」
星野「違うよ?星が見えるよ?」
絵馬「へ?」
星野「これから綺麗なお星様がいっぱい見れるよ」
香月「能天気ですね」
式野「おい、僕らは必死に脱出の糸口を探してるんだ」
星野「お星様を見ればみんな元気になるよ」
香月「バカ言ってるの、この人?」
監原「お前は超高校級の天文部だから星が見れて嬉しいだろうが……」
加賀美「でも星野さんの言うことは一理あるよ?そんなに後ろ向きだったら深沢さんも報われないじゃない」
メイビー「また殺人が起きないようにするためにもあまりネガティブな考えはよくないよ」
上条「殺人なんて……!」
岩田「ま、脱出ももちろんだが、ここでの生活をより良くするのも悪くないんじゃないのか?」
式野「僕はさっさと脱出したいが……」
加賀美「今回はこんなところで解散する?各自で行動しようか?」
監原「そうだな。それぞれやりたいことは違うだろうしな」
その日は俺たちはA班B班が入れ替わりで探索したが、特に成果を得られずに終わった。