Dreamer -My Imaginary Irelia's brother- 作:Moa
「次の所で最後だよな」
「うん」
話している間に偶然手が触れあってしまった。熱い?ナユタはソフィアの手についてそう感じた。
「あれ、熱い」
「え?」
「ソフィア、身体は大丈夫か?それにちょっと顔が赤いような」
「だ、大丈夫だよ。なんでもないから」
そういってソフィアは自分の頬をぺたぺた触る。
「でも」
「大丈夫!わたしを信じて?」
そう言われると弱いのがナユタだった。
「……体調辛くなったらすぐ言えよ」
「うん」
紆余曲折の旅を終えたナユタ達。この先だ。
辿り着いた先でナユタ達はこんな話を聞く。元々はごく普通の辺境であったはずだが妙な話を聞く。死んだ人間が生き返るとか。ただの噂だし、信じていない人の方が多いけど。
気にせず遊びまわっている子供もいるくらいだ。
「そんなことあるのか?」
「時の塔とは違うよ。多分こっちはは死霊術。蘇生が不完全なの」
死者を何らかの形で繋ぎとめる黒魔術だ。だが、あまり表舞台に使い手が出てこないため詳しく知る者は少ない。
「前の『刻印持ち』も死霊術が得意だったんだよ」
「どんな感じなんだ?」
「動く骨を召喚してた。ただの骨だから痛いとか感じないで魔力がある限り戦えるんだよ。すごいよね」
すごい。ソフィアが言うなら凄いんだろう。
「他の国から来た人はあんまりそういう魔法好きじゃないみたいだけど、わたしは力の種類に良いも悪いもないって思うし」
ノクサス人にとって大事なのは力があるかどうかだから。そう言ってソフィアは笑った。帝国が求める典型的な力を持たないように見える彼女だが、それでもノクサスで生きている。
そのまま二人は森の奥へ向かおうとする。
川を渡ろうとしたそこでナユタは女の子が遊びまわる声を見つけた。見つけた。少し遠く、川の少し上流で二人の少女がはしゃいでいるのを。彼女たちは川の上で飛び跳ねている。恐らく飛び石を渡っているのだろう。
ナユタが少女たちの運命を変えてしまう事を、誰も知らない。
「ん……あいつら危なくないか?あんなにはしゃいだら。あっ」
少女の一人が落ちた。もう片方が少女を助けようとしているのは間違いないけどこのままだと両方流されるんじゃないか。
今にも走り出そうとしたナユタの服の袖をソフィアが軽く掴んで制止する。
「待ってお兄ちゃん、お兄ちゃんまで溺れたらわたし」
「大丈夫、溺れないから」
ソフィアはそっと指を離す。ナユタは川にまっすぐ向かっていった。二人は引き離され片方の少女は川に流されていく。それを見たナユタは、決めた。
ナユタは走り、川に飛び乗った。それが当たり前かのように川の上に立った。
ナユタは魔法の盾を床にして川の上に立ったのだ。そのまま上を歩き少女が流れてくる場所へ先回りする。
「ナイスキャッチ、俺」
そのまま壁(存在する位置を考えると床と形容する方が正しいかもしれない)を飛ばしてナユタは上流の方の少女へ飛んでいく。彼女の方も空中を舞う板(船と呼ぶにはあまりにも簡素すぎる)に乗せてソフィアの方へ戻る。
「えっと、助けてくれたの?」
「ん。まあ、そんなとこ」
「どうして?」
「理由がないと助けちゃ駄目?」
赤い髪の少女は不思議そうな顔でナユタを見つめて、それから無邪気に微笑んだ。
「ありがと!」
さっき掴んだ下流の少女はデイジー、上流の方がアニーというらしい。アニーはクマのぬいぐるみを大事に抱えている。
「ティバーズっていうの。あたしのともだち」
「どこから来たんだ?帰った方がいいんじゃ」
そう聞いたナユタだったがアニーはその言葉を素直に受け入れなかった。
「帰りたくない」
ティバーズをぎゅっと抱きしめてアニーはそう言った。
「なんで?」
ナユタは理由を聞く。あまり話したがらない様子だ。
「えっと」
「誰にも言わないから」
しばらくしてからアニーはぽつぽつと話し始める。
「いじわるするんだもん。ママのことなんて忘れなさいって」
ソフィアは息をのんだ。
「……ねえ、アニーちゃん。それはどんな人?」
「パパが連れてきたの」
「ひょっとして新しいお母さん?」
「うん」
話を終えたソフィアはナユタに尋ねた。アニーの事を助けられないかどうかと。
「子供をいじめるの、よくないと思うの。だからなんとかできないかなって」
「それってノクサスの為になる?」
ナユタはそう聞いた。
「ずいぶん『刻印持ち』らしい言葉が出てきたね。そっか、そうだよね。皆そうなる。……わたしの中で考えてることがひとつあるから、その通り行けばいけると……きゃあっ!」
叫び声の理由。それは、彼女の足元にあった。
地面から生えた白い骨が、少女の足を掴む。既に掴まれているこの状態では壁を出しても効果がない。ならばとナユタはその骨を蹴飛ばした。骨は飛んで行って川に落ちる。続けてもう片方も蹴飛ばす。こちらは川の近くの石にぶつかって甲高い音をあげた。
ソフィアは何かに気づいたようで皆に叫ぶ。
「あ、これ、わたし知ってるかも!みんな落ち着いて」
だが白い影はそれひとつだけではない。別の骨、それも複数が今度はアニーに飛び掛かる。ナユタは壁を出そうとしたが間に合わなかった。
視界がスローモーションになる。このままだと彼女は骨達に叩きつけられて怪我を負うだろう。即死ってことは流石にないだろうけれど。
一瞬魔力が渦巻く。ナユタのものではない。ソフィアは嘘を見破る為にこんな魔力の渦巻き方はしない。何だ。
目の前に巨大な熊がいた。熊によって骨たちは皆動きを止められる。アニーを守るように熊は骨を投げ飛ばす。そして骨は熊が触れた所から燃えていった。
「なあ、何が起こってるんだ」
戸惑うナユタ。
「ティバーズ!ティバーズだ!」
アニーはそう言った。確かによく見ると面影がある気がする。
「いっけえ!」
アニーが指をさすと指の先から火が沸き上がる。それは骨へとまっすぐ飛び焼き尽くした。
その様子を見て、木の陰から白銀の髪をした青年が現れた。白骨を引き連れている。
「やっちゃえ!」
すかさず炎を飛ばそうとするアニーだがそれを止める声が聞こえてきた。
「やっぱり!待ってアニーちゃん。攻撃止めてもらえるかな。わたし、あの人のこと知ってる」
「え?」
「あの!わたしです!ソフィア・ミュラトール!」
男は敵意はないと示し手を振ってこちらに向かってきた。