Dreamer -My Imaginary Irelia's brother- 作:Moa
怪我も治ってきたある日、俺は散歩に誘われた。バイロン曰く村の人に紹介も兼ねてだって。
家を出るとすぐ近くに広場が見えた。広場で遊んでいたらしい子供たちが駆け寄ってくる。
「バイロンさん!その人だれ?」
「拾った」
「海から流れてきたの?」
人を何だと思ってるんだろう。
「俺は流れてきたわけじゃ……あるのか?」
何も知らないし違うとは言い切れないなと気づく。
「そんな感じだよ。奇跡的に拾ったのさ」
「そっか!ぼくも拾われたんだ。よかったね」
「あたしも!」
「ちなみに彼は我が部隊の仲間だ」
「えー?ぼくまだ『ぎしき』してもらってないのに!」
「アレ少々時間かかるんだ。許しておくれ」
「……はーい」
子供は少々寂しがりながらも納得したようだけどちょっと気になって聞いてみる。
「儀式って何してるんだ?」
「部隊の者には魔法を授けてるんだ。手の甲に刻まれた文様がその証さ。まあ君にかけたのは目覚める前の事だから覚えていないのも当然だが」
「どんな?」
「説明するのは難しいね。だがあえて言うなら誰もが持つ力。敵に恐れず立ち向かう意思を強めるもの」
「ありがとう」
「だから別に礼を言われるようなことじゃないんだが。しかしそこまで言われてしまうと私としても笑みが抑えられなくなる」
うーん、喜んでるならいいかな。
「この村はヨードルの街と繋がっている。だがその場所へと開くポータルが開いたのはただ一度きりだ」
ヨードルって何、と聞くとバイロンは愛らしく気まぐれな小人だと答えてくれた。ソフィアは曖昧な記憶で返す。
「なんでしたっけ。……草むらに隠れた丸眼鏡の魔王?」
「それ別人だよ。キノコを愛する毒矢の暗殺者と格下を有無言わせず葬る邪悪なる魔術師。丸眼鏡も大方別のヨードルだろう」
「あー、どこかで混ざっちゃったかもしれませんね」
三人で話しながら浜辺へとたどり着く。
俺はそこで海に不自然な穴が開くのを目にした。まるで渦を巻いているように海の一点だけが凹む。その窪みから、巨大な魚が飛び出してきた。
浜辺の上にどさりと落ちてぴちぴちと跳ねるそれは横たわっているのに俺の頭以上の高さがある。もはや魚というより怪物と呼ぶに相応しい生き物は俺達の方に凄い速度で飛び掛かってきた。
危ない。避けるにも間に合わない。俺は反射的にソフィアの前に飛び出した。
「なっ……お兄ちゃん」
だけど魚はどうやら俺達に当たることはなかった。
再度巨大魚が俺に向かってくるけど虚空に不自然にぶつかって落ちた。まるで透明な壁があるかのように。
「どういうことだ、これ」
魚の動向を見る。何度も飛び掛かってはいるが魚は俺達の所にたどり着くことはない。まるで見えないものに阻まれている様子。しばらくすると地上に耐え切れなくなったのか動きを止めた。
「これが君の魔法か」
バイロンは満足げに空間をぺたぺた触り始める。俺も同じように触ってみるとそこには本当に透明な壁があった。
「強度も十分だ。素晴らしい才能だよ」
やたらと褒められて照れる。これは敵に回したくないね、そんなのあり得ないけれどとバイロンは笑う。
後ろから軽く手を引かれた。振り返るとやわらかな茶髪が揺れナユタを見上げてきた。
「お兄ちゃん。さっきは、その、守ってくれてありがと」
「当たり前だろ」
ソフィアは純真に見える微笑みで尋ねる。
「これからも守ってくれるってこと?」
「だからそう言ってるだろ」
ナユタの言葉にソフィアは安堵した様子だった。
「えへへ。なら安心だね。お兄ちゃんの魔法があれば」
さて、バイロンは突然今日は魚料理にしようと言い出した。
「食べれるのこれ」
「適切に捌けばね。ビルジウォーター付近の固有種のひとつで微量な魔力を持つ。それでいてジョールフィッシュほど凶悪じゃないから乱獲で減っていたんだけれど珍しいものを引き当てたね」
手伝ってくれと言われてナユタは魚を捌く。村の皆で食べて余ったら干物にすることになった。