どうやら俺の親友は主人公らしい   作:湖森生気

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謎生物は主人公の特権…だよね?

「おはよう景」

「おはようございます景さん」

「おはよう二人とも、一緒に登校とはお熱いね」

 

そんな軽口を言いながら二人を出迎える。

そしてやはり、勇希は怪我をしていた。

 

「また怪我したのか勇希」

「ま、まあな」

 

個人的には確信してるけど取り合えず揺さぶっておこう。

 

「そう言えば昨日、解体予定の廃ビルで爆発事故があったらしいな。何でも解体用の火薬に引火したとか」

「そ、そうなんだ」

「事故が有ったのは深夜だし二人には関係ないだろうけどね」

「そ、そうだな」

「そうですね」

 

うん、海未さんは兎に角。

勇希は分かりやすく動揺してくれた。

爆発って、どんな事に巻き込まれたらそうなる。

やっぱりバトル物か?

 

「ところで景、図書委員のお前に聞きたいんだけど」

「なんだ改まって」

「狐についての本無いか?」

 

…狐と来たか。

またフィクションではお馴染みな動物が来たな。

 

「伝承? 生体?」

「生体の方で」

「分かった、良さそうなの見繕っておく」

 

予鈴が鳴ったので口を閉じる。

にしても狐か…また何か面倒事に巻き込まれてるんだろうな。

探しているのか、飼っているのか。

どちらかの線で本を見繕っておくか。

そんな事を考えながら授業を受ける。

………ん?

何か勇希は落ち着無いな、何か…そわそわしてる?

気になって顔を向ける。

 

 

狐が居た。

 

 

正確には鞄から狐の頭だけ出てた。

 

「………、な……こ…に」

 

勇希が狐に向って何か言ってる。

何その狐、人の言葉分かるの?

 

「家…おと……く」

 

あ、狐と目が合った。

とりあえず会釈しておく。

 

「ど…見…、え? 景?」

 

今度は勇希と目が合った。

 

「…」

「…」

 

とりあえず授業中なのでノートに文字を書いて見せる。

 

『狐の飼い方で本探しとくわ』

 

勇希の顔は引きつってた。

とわ言え、ばれる可能性を考えれば見て見ぬふりもできない。

バレれば間違いなく揉みくちゃにされる…狐が。

本当の狐は病気とか怖いんだぞ本当に。

何より、先生に怒られる勇希が不便だ。

仕方ない、普通じゃない狐で知性が有ると仮定して…居心地がそれなりに良くてバレにくい場所。

再びノートに書いて勇希にみせる。

 

『図書準備室開けてやるから休み時間になったらすぐに移動開始な』

『すまん』

 

さて、今日の当番は俺だけだから他の人が来る可能性は無い。

先生は下校後以外はめったに来ないので問題ない。

流石に話を聞く時間は無いかな、今日の昼もどうせ海未さんともしかしたら狐も。

一緒だろうし。

 

「良…から、…いわ…か…な………に」

 

また狐に話しかけてる勇希を他所に授業は進み。

ほどなくして、授業が終わる。

 

「よし、勇希と海未さん付いて来てくれ」

「すまん景」

「よろしくお願いします」

 

うん、確認せず海未さんの名前呼んだけど関係者なのね。

そんでやっぱり付いて来るのね。

図書準備室。

基本的に当番の生徒。下校後は先生が作業する場所だ。

鍵は図書室の鍵と束になっているため、今日は朝、昼、放課後と当番の俺が持っている。

 

「念の為聞いとくけど、その狐おとなしいか?」

「それは大丈夫」

 

OK、普通は鞄に潜り込んだ狐に即答は出来ないと思うが。

普通の狐じゃ無いんだろうな。

 

「昼までに本は用意しておくから、放課後になったらすぐに迎えに来いよ」

「分かった」

「思ったより快適なんですね…ソファーに本に、ポットやコーヒーも有る」

「下校後は先生がここで作業するからな、先生が積極的に快適にしてる」

 

勇希は鞄から狐を取り出し、また何か言ってる。

傍から見たら変な人だな。

あ、尻尾でしばかれた。

 

「それじゃ、二人は先に帰ってくれ」

「景さんはどうするんです?」

「他の図書委員が入らない様にちょっと細工する」

「分かったよろしく頼む!」

 

さて、出て行った二人を確認して狐に向き直る。

不服そうにソファーで丸くなっているが俺の視線に気づいたのかこっちを見た。

 

「コップはここ、ポットとコーヒーは自由に使ってくれ。本も読んでもらっていい、高い本はあの台を使ってくれ」

 

俺が指を指すと狐もそちらを向く。

もしこれでただの狐だったら俺恥ずかしいな。

 

「内側からなら鍵は開くからトイレは授業中に。昼休みに様子見に来る。後は………俺が来た時はノック2回を3回する」

 

言うべき事はこれで全部かな。

次ここに来れるのは昼休みだろう。

因みに、細工などしなくても今日は誰も来ない。

 

「じゃ、またお昼に」

 

狐は返事をするように鳴いた。

その後はお昼まで特に無し、せいぜい勇希が頻繁に図書準備室に視線を向けてた位だろうか。

そして昼休み。

お昼の図書当番は基本的に図書準備室で食べる。

この学校の貸し出し処理はセルフなので問題は無い。

因みに勇希と海未さんは購買部に食べ物を買いに行った。

多分あの狐の分はお昼用意して無かったのだろう。

 

「えっと、ノックは2回を3回と」

 

念の為打ち合わせしたノックの後扉をひらく。

 

「む、来たか」

 

幼女が居た。

油揚げ色の髪、狐耳に尻尾。

うん、あの狐だ。

 

「………分かってたけどさー」

 

狐耳幼女が現実に居た事も驚きだけど、勇希のやつこの子と一つ屋根の下って事か?

あいつはロリコンじゃないから問題ないだろうけど。

 

「これ苦いぞどうにかならぬか?」

「……ミルクと砂糖の場所も教えとくべきだったか」

 

ミルクと砂糖を加えカフェオレに作り直してから狐幼女に渡す。

せっかくだから話でもしよう。

購買は混む、まだ時間は有るだろう。

 

「そう言えば名前は?」

「うむ、玉と申す」

「玉ね、了解。俺は三木景、景で良いよ」

「承った、よろしくの景」

 

どうやら機嫌は直ったらしい。

せっかくだから勇希について聞いてみよう。

 

「で、勇希は何やってるんだ」

「む………」

 

俺の質問に玉は少し考え、口を開く。

 

「知らぬ方が良い、勇希が関わるは陰の事件。聞くだけで縁が結ばれかねん」

「聞くだけで巻き込まれる可能性が上がるのか…玉はセーフなの?」

「わらわは土地神ゆえ、せーふじゃ」

 

あいつ土地神様まで巻き込んでるのか。

いや、巻き込まれたのか。

どちらにしろ主人公確定だな。

 

「海未さんについても聞かない方が良いですか?」

「うむ、事象を聞くだけなら問題ないが。これは本人に聞くべきじゃな」

「分かりました」

「………敬語でなくても良いぞ?」

「宜しいのですか?」

「うむ、供物と快適な場所への返礼じゃ」

「…分かった、もうすぐ勇希と海未さんが来るから俺は外に居るよ」

 

もう時間も無いだろうし。

最低限知るべき事は知れた。

そう思ったのだが、玉様が口を開いた。

 

「勇希がお主に話さぬのは巻き込まれる怖さと痛みを知る故じゃ。悪く思わんでくれ」

「分かっては居ます。しばらくは気づいてない振りしときますよ」

「そうか…ならば、わらわも何も言うまい」

 

その後、無事に購買部での激戦を乗り越えたらしい二人が来たので図書準備室に通しておいた。

ついでに、今回のように俺が一日中当番の曜日なら。

言ってくれれば図書準備室を開ける事を伝え。

狐についての本も無事に渡した。

流石に狐の飼い方だけではアレなので生体の本も渡しておいた。

そして放課後、無事に勇希は狐を鞄に入れ下校した。

 

「さてと…放課後の時間を有意義に使いますか」

 

得られた情報は少ない。

だが、狐の土地神が関わるとなれば必要な情報は絞られる。

 

「妖怪関係、呪術関係、都市伝説に噂。大雑把にオカルト関係だな」

 

幸い俺は図書委員だ。本の場所も種類も大雑把に把握している。

何時頼られても良い様に、巻き込まれても良い様に。

主人公にはなれなくても、せめて何か手助けしたいよな。

可能な限り情報を集めなければ。

 

 

 

余談だが、その日勇希が教室に忘れていった宿題を届けに行った時。

完全に幼女に化けた玉様に出迎えられ。

勇希に親戚の子と紹介された時は中々に複雑だった。

何時か、土地神様を紹介してくれる日を信じて待つとしよう。

 

 

 

次の日。

もう一人、新しく転校生が来るのだが。

それはまた別の話。




今回登場した玉ですが、意図的に振り仮名は振ってません。
貴方は何と読みましたか?

因みに、景くんは『たま』と呼んでますし。
勇希くんは『ぎょく』と呼んでます。

しかし、二人は元より周りも違和感を感じません。
土地神パワーです。

そして先は兎に角、現時点で名前が出た登場人物の名前には意味があります。
見たままだったり、読み方だけだったり。

景くんだけは変則的ですが。
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