どうやら俺の親友は主人公らしい   作:湖森生気

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高校生だけで旅行するのは主人公の特権

旅行出発の当日。

移動時間を考えて朝一番の電車に乗る事になった俺たちは駅で待ち合わせしていた。

していたのだが…

 

「何で三人が一緒に来るんだよ、家の方向別々だったよな?」

「い、色々あってな」

「そう言う景さんも早いですね」

「私たちも早く来たつもりなのだが…」

「勇希たちの場合、どんなトラブルが有るか分からないから念の為にな」

 

本当は楽しみで早めに目が覚めたとか恥ずかしくて言えない。

遊びに行くのに遠出とか、勇希ともした事なかったからな。

多少浮かれても仕方ないと思う。

 

「待ってる間に切符は貰っといから、絶対に無くすなよ…振りじゃ無く」

「わ、分かってるよ」

「絶対に無いと言えないのが辛い所ですね…」

「安心しろ、婿を支えるのがいい嫁の務めだ。無くさせんさ」

 

地華さん、まだ結婚して無いでしょうとツッコミたいが流石に慣れてきた。

海未さんが抗議の視線を向けるだけで何も言わないのは珍しいけど。

何はともあれさっさとホームに入ってしまおう。

 

「トイレや忘れ物は無いな、特に勇希」

「名指しされなくても大丈夫だよ」

「……修学旅行の時のあの事、未だに忘れて無いからな」

「あの時は本当にすいませんでした」

 

本当だよ全く。

海未さんと地華さんの二人も気になってるだろうし移動中の話題にさせてもらおう。

とは言え、勇希が切符無くしたりホテルに忘れ物したりと班の予定が滅茶苦茶になっただけなのだが。

それが最終的に人助けに成るあたり本当に勇希だよな。

 

「駅弁も調べといたし、向こうに着いても移動ルートも完璧だから任せろ」

「……珍しくテンション上がってるな景のやつ」

「気持ちは分からなくは無いですけどね」

「思う所は有るが…それとして楽しまなければ損か」

 

行先の確認、荷物の確認、着いてからの予定の確認。

それら最終的な確認を終わらせた頃に電車が到着した。

横に二つ並んだ座席が向かい合う様になっている席が俺たちの席だ。

となれば案の定、勇希の隣をめぐる争いが始まる。

 

「そんじゃ、席はグッパで決めるか」

 

なので、先手を打つ。

せっかくの旅行、無駄にする時間など1秒も無い!

何より、電車が動き出す前には座りたいしな。

 

「……分かりました」

「……負けられないね」

 

まるで決闘の様にお互いに視線を交わし片手を出す二人。

いや、たかがグッパでそこまで本気にならなくても…。

……まあこれも旅行の醍醐味か。

 

「それじゃ…行くぞ!」

 

結果的に席順はこうなった。

勇希と俺が隣同士。

海未さんと地華さんが隣同士。

勇希と海未さんが窓側だ。

 

「流石に予想外です」

「まさか、最大の敵が君とわね」

「悪いとは思うが結果は絶対。曲げる事は許されない」

「こういう所は頑固だからな景は」

 

グッパの結果は絶対だ、これを曲げればグッパした意味がない。

けど有る意味これで良かったかもしれない。

少なくとも、二人がぶつかる可能性は減っただろう。

丁度電車も動き出したし、楽しい旅の始まりだ!

 

「じゃあ早速…トランプで勝負だ!」

「勝負か、当然受けて立つよ」

「面白そうですね、私も負けませんよ」

「けど何やるんだ? 七並べや神経衰弱は場所が無いぞ」

「それは旅館でやるとして、ババ抜きでいいだろう」

 

ババ抜きで肝心なのはポーカーフェイス。

駆け引きも重要だがポーカーフェイスが出来なければ話にならい。

そう言った意味で予想外だったのは海未さんだ。

勇希の手が当たって顔を赤くしたり、一発でババを引いたと分かるリアクションをしたり。表情が豊かだった。

 

「げ、ババかよ景! 引いた素振りなんて無かっただろお前!」

「長年お前の友達やってるとな、大抵の事には動じなくなるんだよ」

「すごい説得力ですね…」

「さぞ色々有ったのだろうね…」

「納得いかない!!」

 

結果的に一位は俺。

最下位は勇希との接戦の末に海未さんとなった。

その後もゲームで遊んだり、景色を見たり、駅弁を食べたり、くだらない話で笑ったりと。

久しく出来ていなかった普通の楽しみを満喫した。

そして、楽しい時間とは直ぐに過ぎてしまう物だ。

 

「…そろそろ到着する頃だな」

「ここに来るのも久しぶりですね」

「確かに、空は元気にしてるかな?」

「そう言えば二人は何度か来たことが有るって言ってたな」

 

俺は初耳だけどね。

それにしても、結構な田舎だな。

ビルは勿論の事、民家も余り見かけなくなってきた。

到着した駅も、無人駅で誰も居ない駅に少し不安を覚えてしまったのはナイショだ。

 

「それで景、この後はどうすれば良いんだ?」

「仮にもお前に届いた旅行券だろうに…えっと、もう直ぐ来るバスに乗って旅館のある山の麓まで移動して、その後は徒歩だな」

「この時間なら…山を登る時間を考えても夕食には余裕をもって着けると思う」

「流石に長旅ですから、荷物を降ろした後は夕食までゆっくりしたいですね」

 

この後、バスの席をめぐってひと悶着有るかと思ったが。

二人も疲れが有るのか、別の事に意識を向けていたのかは分からないが、何事も無かった。

俺と勇希は見慣れない田舎の景色を楽しみながら、少しレトロなバスでの旅を楽しむ。

視界いっぱいに広がる田んぼや、その先の山など。

見慣れない俺からすると十分に興味を惹かれる景色で退屈はしなかった。

短くも有意義なバスの旅が終わり、次はいよいよ山道を登る事になる。

 

「この道を登って行けば宿泊場所に到着する…はずだ」

「海未と地華は来た事有るんじゃ無かったのか?」

「ごめんなさい勇希、ここから先は私たちも行ったことが無いんです」

 

山道を登りながらそんな雑談をする三人を他所に、俺は内心少し焦っていた。

何故なら…

 

(やばい、ペース配分間違えたかも。思ったより傾斜がキツイ)

 

荷物を持ったままこの坂を登るのは結構疲れる。

勇希に負けるのは良い、そんなの今更だ。

だが、海未さんと地華さんにまで心配されるのは男としてのプライドが…。

なるべく喋らずに体力を温存して…後は宿泊先が近い事を祈るしか無いな。

にしても三人とも結構鍛えてるんだな、汗の一つも掻いてない。

 

「そう言えば来る前に言ってた空って?」

「喜納家の一人娘です、私達と同い年なのもあって何度か会ったことが有るんです」

「本当に何度か、程度だけどね。初めて会う二人は少し驚くかも」

 

驚く?

何にだろうとは思いながらも、聞く余裕が無い俺がだが。

どうにか体力の限界が来る前に目的地である旅館…と言う名の喜納家本家に到着した。

 

「……でっけー」

「これは…思ったより立派だな」

「これが喜納の本家…負けて無いとは自負してますが噂以上ですね」

 

喋る余裕が無い俺も思わず呆然としてしまった。

勇希の言った通りでかい。

これが家? 本物の旅館を買い取ったと言われても信じるぞ。

 

「皆様、ようこそ御出で下さいました」

 

建物の大きさに目を奪われて、玄関に立っていた女の子に気づけなった。

薄青い髪に整った顔立ちが着物でさらに映えている。

そして…色々と小さい少女だ。

 

「本家の一人娘が直々に出迎えとは…こちらこそよろしく頼む」

「お久しぶりです空さん、お元気でしたか?」

「空…って事はこの子が!!?」

 

なるほど、これは驚いた。

勇希が派手にリアクションしてくれたおかげで声を上げる事は無かったが、十分驚いた。

どう見てもしょ…中学生位にしか見えない。

 

「お二人とは初対面ですね、初めまして喜納 空です、空とお呼びください。この度はよろしくお願いいたします」

「初めまして、日名田 勇希です。招待いただきありがとうございます」

「勇希の友達の三木 景です」

「それではお部屋に案内します」

 

玉様の狙い通り、俺と勇希は同じ部屋だった。

夕食の時間になったら呼びに来るとの事なので、その間に荷物を降ろす事にする。

 

 

 

余談だが。

荷物を降ろす時に勇希の荷物の中に立派な刀が見えたが、スルーしておいた。

隠すつもりならもう少し気を付けてほしいと心底思う。

 

 

 

無事に喜納家に到着した俺たち。

美味しい料理に温泉、観光を満喫する。

それらの案内は全て空さんがやってくれた。

そんな彼女だが、どうやら悩みがあるようなのだが…其れはまた別の話だ。

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