個性使ってヒーローのラブドール作ってみた 作:マイティP
第1話 アダルトショップ「理想郷」
都心のどこかにある路地裏にて。
日が落ちかけて薄暗い通路を、二人の人間がキョロキョロとあたりを見回しながら歩いていた。
一人は牛のような角が生えた大柄な男で、もう一人は眼鏡をかけたひょろりとした風貌の少年だ。
牛男の先導で歩き続けていた彼らは、しばらくすると一つの店に行きついた。
彼らが辿り着いたその店の看板には、『理想郷』と書かれていた。
「ここ? なんかあんまり……」
「見た目は気にしなくていいんだよ。とにかく中に入ろうぜ。ここらはそれなりに物騒だからな」
男に言われて見るからに怪しげな雰囲気を発するその店に入った少年は自らの目を疑った。
店内に立ち並ぶガラス張りの陳列棚の中には、ヒーローに興味がある人間なら誰でも知るであろう有名な女性ヒーローたちの姿があったのだ。
もちろん作り物のはずではあるのだが、ヒーローコスチュームを着たその姿はとても本物の人間以外には見えない。
そんなありえないほどに完成度の高い
「ミ、ミッドナイト……」
「いらっしゃいエロガキ」
「うわっ!?」
背後から声をかけられた少年が飛び上がるようにして振り返ると、そこには嘲るような笑みを浮かべる一人の男がいた。
だらしなくスーツを着崩したその男は、少年に一枚の紙を押し付けるとすぐに背を向け、近くにあった椅子に腰かける。
「えっと、その……」
「おっと質問は待て。まず紙を見ろ。お前の知りたいことはそこに書いてある」
「え?」
「そしてそっちの……牛山だったか。またの来店ありがとう。今日は紹介か?」
「あ、あぁ! こいつの家は金持ちだから、いい客になるはずですよ!」
「へぇ……」
二人の大人が話をする中、少年は手元の紙に視線を落とす。
そこにあったのは『注意書き』と『料金表』だった。
注意書きの部分には、紹介目的以外で他人に店の事を知らせない事や、買った後の保存方法などが書かれている。
そうして幾つもの注意書きに目を通した少年が料金表に目を移すと、そこには目を疑うような金額が書かれていた。
「て、店長さん! これ、一体百万って!」
「あ? 間違えんなよ最低百万だって書いてあんだろ」
「いやそうじゃなくって……そんなに高いの?」
料金表の内容は実に大雑把なものだった。
無名、低人気のヒーローなら百万、新人や人気好調なら三百万、誰もが知ってるレベルなら時価で交渉に応じると書いてあるのだ。
事前に高いと聞いてはいた少年ではあったが、全ての商品がそんな値段設定であることに驚愕していた。
「当たり前だろ。どんだけリスク高いモン売ってると思ってんだ? この値段に文句言うような客はいらねぇからさっさと出てけ」
「ご、ごめんなさい。文句があるわけじゃないんです。買いに来たんです」
「素直に謝れるガキは好きだぜ。ま、ちゃんと買う気があるならそれでいいんだよ」
少年が鞄の中をゴソゴソ漁って分厚い封筒を取り出したのを見て、店長は相好を崩した。
そのまま気分よく立ち上がると少年と肩を組み、上機嫌に話しかける。
「さて、それじゃあ金はあるようだし。商品を買う前に自分がどれだけ価値のあるものを買おうとしてるのか確認しといてもらおうかな」
「え?」
「奥に体験コーナーがあるんだよ。どうだ? 見ておきたいだろ?」
「お、お願いします!」
「オーケー、いい返事だ。それじゃ奥に行こう」
金があると知るなり機嫌がよくなった店長に連れられ、客の二人は店の奥へと進む。
そして重厚な作りの扉を開いた先には、巨大なベッドとその上に横たわる何体もの裸の女性が転がっていた。
店長は無造作にその女性の腕を掴んで引っ張ると、興味深そうにしていた少年の方に突き飛ばした。
「うわっ!?」
「おぉ。こいつぁ確かどっかのサイドキックの……」
「そ。バブルガール。店を注文制にする前に見た目可愛いから作ってみたんだけど、売れなかったんだよねぇ……」
「知名度微妙っすからねぇ。俺もなんかの雑誌で見ただけです」
「だからとりあえず体験コーナーにでも置いとこうと思ったのよ」
「なるほど……」
大人二人がそんな事を話す間、少年の方は心臓をバクバクさせながら体を硬直させていた。
青い肌とクセのあるショートカットの女性ヒーロー。その限りなくリアルな裸の人形に抱き着かれただけ……しかしその人形はあらゆる意味で人間に近すぎたのだ。
感触も、重さも、匂いも、そして体温までもが人間だった。
まるで生きている本物の女性に抱き着かれたかのようで、少年は動揺が抑えられなかったのだ。
「こ、これ本当に人形なんですか!? まるっきり本物の――」
「ただの人形が最低百万で売れるわけないだろ?」
「いやっ、それは、そうなんですけども!」
「わかるぜその気持ち。俺も初めて買ったときは同じ気持ちだった。とても信じられなかったぜ」
驚愕する少年に牛山は自分の経験を語る。
一度目の来店時、同じグループの兄貴分から店を紹介された牛山はこの店の商品を購入した。
購入したのは、かつて自分を個性の不正利用で捕まえたヒーローの人形。
ただの偽物に何をしても……そう思っていた牛山だったが、眠っているだけの人間にしか見えないその人形にあらゆる鬱憤をぶつけることで、最近は毎日すっきりとした毎日を送っているらしい。
「しかもどういうワケか知らないが、普段世間からは見えないコスチュームの下の肉体まで完全再現って話だ。以前、『透視』の個性を持ってる奴に本人と比較してもらったら黒子の位置まで完全再現だったってよ」
「やり方は企業秘密だ。ま、個性のおかげとだけ言っとくよ。あと、そういう探るような真似は勝手だが口には出すな」
「す、すんません」
女性ヒーローの肉体を完全再現した、消滅も腐敗もしない生きた肉人形。
それがこの『理想郷』の商品である。
本当の女性ヒーローと完全に同じ肉体のそれを好きにできるため、客は牛山のような
そしてそれ故にこのような商売をしているにも関わらず、逮捕を免れているのである。
「とにかくだ。そんな本物同然の肉人形を、客が好きに楽しめるってのがウチの売りなんだよ。わかったか?」
「僕の……好きに……」
「……そうだ。つっても注意書きにあった通り、『過度な欠損を行うと腐り始める』から、もし最初から欠損した状態のが欲しい場合は要注文だ」
少年は何やら妄想を始めたのか、ぼうっとした表情で抱え込んだバブルガールの人形を弄り始めた。
それを見た店長は少し気味悪がりながらも、商品の説明を続ける。
「あと保管場所だな。そこは自分でもわかってるだろう? こんなもん見つかったら色々ヤバい。ちゃんと隠せ。いいな?」
「え? は、はい! それはもう!」
「処分したくなったらウチに来い。引き取ってやる。変な場所に勝手に捨てるなよ」
「はいっ!」
妄想から戻ってきた少年に注意事項についてきちんと言い聞かせた店長は、小声で牛山を呼び寄せた。
そして喜ぶ少年から隠れるように、小声で話し合う。
「何すか?」
「本当に大丈夫か? 親に見つかって通報なんて事にならないだろうな?」
「大丈夫っすよ。こいつ一人暮しっすから。毎月何百万も貰ってるって自慢してました」
「嘘だろお前」
「マジです」
少年の信じ難い生活環境を聞いて驚きながらも、いい客になりそうだと感じた店長はニヤリと笑みを浮かべる。
既に上客は何人もいるが、そういう客は何人いても嬉しいものだ。
「じゃ、どうする少年。一発体験してくか? それとも本命買って帰るか?」
「買います! 本命買って、ゆっくり……家で……!」
「そ、そうか。わかった。さっき見てた『ミッドナイト』でいいんだよな?」
「はい! お願いします!」
ビシッと頭を下げて言ってくる少年に背を向けると、店長は店の更に奥へと入っていった。
そしてしばらくすると、人が入りそうなほどの巨大なバッグを持って戻ってきた。
そのバッグを少年の前に下した店長は、少年に中身の確認を促した。
「どうだ? 確かに『ミッドナイト』のはずだ。ちゃんと確認しろ」
「すごい……! コスチュームもそのままだ!」
「そっちは見た目だけの偽物だけどな。代金は二百万だ」
「匂いも……想像してた通りだ! ありがとうございます! こちらをどうぞ!」
「お、おう、まいどあり」
ハイテンションになった少年に少し引きながら、店長は彼が差し出した封筒を受け取った。その重さと分厚さにほくほくしながら紙幣カウンターに封筒の中身をセットした彼は、少し待つ間にドン引き顔で少年を見る牛山に声をかけることにした。
「おい、お前は何か買わないのか。どうせもうズタボロにしちまったんじゃないか?」
「え? いやぁ、そんなもったいないことしませんって。そんなんするのは捨てる前だけですよ」
「そりゃそうだ。お前の場合は百万だが、それだって十分大金だもんな」
「えぇ。しばらくは今のヤツを楽しませてもらいますよ」
一度、ひしゃげるまで人形をぶち壊した牛山だが、どうやら無駄な出費はもうしたくないようだ。
少し残念に思いながらも、店長はカウントの終わった250枚の紙幣から50枚を抜き出して少年に返却した。
「帰るときは気をつけろよ。絶対にヒーローには見つからないようにな」
「もちろんです! また来ます!」
「そりゃどうも。お前さん、名前は?」
「
「楽しみにしとくよ」
喜び勇んで出口に向かう白鷺少年を見送り、店長はその後を追う牛山に声をかける。
振り返った牛山に数枚の諭吉を差し出した店長は、驚く彼の手を取ってそれを握らせた。
「今日はいい紹介だった。これで美味い飯でも食ってくれ」
「え? いいんすか?」
「あぁ。あんな感じで金払いのいい、ついでに何度も利用してくれそうな性欲塗れのガキは大歓迎だ。だが、秘密をベラベラ喋るような阿呆を連れてきたらお前ごと殺すからな」
「き、肝に銘じます……あいつにも言っときます。
「それでいい。じゃあな」
完全に怯え切った様子で去っていく牛山を見送った後、店長の作間は紙幣カウンターに入れたままだった二百万を手に取った。
常連候補ができて内心はウキウキだ。
鼻歌を歌いながら自室のある二階へと上がった作間は、金庫へと金を入れるとゴミ袋を持って一階へと戻ってきた。
そして裏口を出てゴミ捨て場に向かう途中、それを見つけた。
「……なんだ? 行き倒れか?」
制服の上にコートを着た長い赤髪の少女が道端に倒れている。
生体も死体も見飽きるほどに見てきた作間は、その女がまだ生きていることに一目で気づき、足で蹴って仰向けにしてその顔を確認することにした。
「結構美人だな。連れて帰ろう」
即決した作間はその場でその少女を拾い上げると、ゴミをその場に投げ捨てて店に戻ることにした。
その頭からは既にどうでもいいゴミの事は消えている。
彼の頭は既に次の新しいプランの事を考え出していた。
「どういう人間かわからんがこんなところで倒れてるくらいだ。どこかの学校の生徒だろうとロクな人間じゃないだろう。顔もいいから雇って店員として使おう。金もあるんだ文句は言わないはずだ」
作間はそんな思惑をブツブツ呟きながら歩いていたが、自分の拾った女が色々な意味で騒動を引き起こす疫病神女だと知っていればこんな事はしなかっただろう。
しかし彼女の個性も含めて知っていたのなら、やはり彼女を雇おうとしたのかもしれない。
それほどに彼女の個性と作間の個性は相性が良いものだったのだ。
こうして、後に『最悪のコンビ』と呼ばれる二人は薄汚い路地裏で運命の出会いを果たしたのである。
牛山:どこかの
弟分から少年の事を聞いて仲良くしてやっている。
白鷺要少年:いいとこのおぼっちゃん。
金遣いが荒いが、その金に群がる子分は多い。
作間(店長)
ヤバいお店のヤバい店長
値段設定は割と適当
赤い少女(店員)
行き倒れてたら拉致られたなう
作中でAVに出たら盛り上がりそうなキャラは?(ミルコ以外)
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ウワバミ
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マウントレディ
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バーニン
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マンダレイ
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ミッドナイト