個性使ってヒーローのラブドール作ってみた   作:マイティP

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第9話 U・S・J襲撃 後編

 理不尽な強さを発揮して脳無を撃破してしまったオールマイトの前で、死柄木は恨み言を呟きながら喉元を掻きむしっていた。

 

「確かに衰えてる……そのハズなのに。よくも俺の脳無を……チートがぁ……!」

 

 『超再生』と『ショック吸収』という対オールマイト特化と言っていい個性を備えた、素の力も怪物級の脳無。

 その脳無を失うという想定外のせいで、死柄木は判断を迫られていた。

 もう無理だとさっさと諦めて黒霧のワープで逃げるか、諦めずにオールマイト殺しにチャレンジするかである。

 

「どうした? 来ないのかな!? クリアとかなんとか言ってたが……出来るものならしてみろよ!!」

 

 そんな死柄木の迷いを見て取ったのか、オールマイトはそう言ってプレッシャーを掛けてくる。

 既に限界であることを悟らせるわけにはいかない彼にとっては、これが時間を稼ぐための精一杯の虚勢だった。

 そんな煽りを受けて更に苛立ちを募らせる死柄木だが、彼の横に立つ二人は至って冷静であった。

 

「あんな事言ってるけど……どうするの? それなりに楽しめたし、もう撤退でもいいと思うけど?」

「ジェスター、確かにあなたの意見にも一理ありますが、オールマイトが脳無からダメージを受けていることは明らかです。我々が連携すればまだ殺すチャンスは充分にあるのでは?」

「なら……ゴニョゴニョ

「なるほど。それでは……死柄木もいいですね?」

「ハァ……いいよ。それでいこう」

 

 何事かを小声で話したヴィランたちの中から、ジェスター一人だけがオールマイトに向かって歩み出る。

 オールマイトはその彼女に対して注意を向けつつも、ワープを持つ黒霧からも目を離さない。

 既に満身創痍、ロクに動く事すらできない彼には、そうやって注意を向けるしかできることはなかった。

 しかしジェスターがゴキブリ顔負けの地を這うようなダッシュで近づいて来た瞬間、オールマイトは黒霧たちから目線を切ってしまった。

 そして、後ろから全てを見た緑谷出久の叫び声が放たれた。

 

「オールマイト上だぁ!!」

「ぬっ!?」

 

 声を聴いてオールマイトが地を這うジェスターから視線を戻すと、死柄木が黒霧の背中に向けて右腕を突き出していた。

 彼らはちょうどオールマイトからは死角となる位置でワープゲートを開いていたのだ。そしてそのワープゲートの先は、緑谷の言葉の通りオールマイトの頭の上に開いている。

 そしてゲートを通って現れた死柄木の右掌は今にもオールマイトに触れようとしていた。

 現状を維持するので精一杯のオールマイトの回避も、彼を救おうと飛び出した緑谷出久の助けも間に合わない……そう思われた時である。

 

「案外あっけな……ぐっ!?」

「あいたァッ!?」

 

 その時、USJの入り口方向から飛んできた銃弾が、オールマイトの頭上に現れた死柄木の右腕と、這い寄る様に接近中だったジェスターの右膝を撃ち抜いた。

 ついに雄英高校の誇る教師(ヒーロー)陣が救援へとやってきたのだ。

 その中でも遠距離からの銃撃を得意とするヒーローであるスナイプは、次々に銃撃を行い、ヴィラン達の行動を縛ろうとする。

 しかし、その足止めが上手くいくことはなかった。

 ヒーローたちの姿を確認するなり、黒霧は即座に己の体をワープゲートに変えており、ジェスターは膝を撃たれているにもかかわらずそちらに向かって全速力で駆けだしていて、死柄木に至ってはもう体半分がゲートの向こう側に消えている状態だったからだ。

 

「ほら! ()()()()ダメだったじゃん! 逃げよ逃げよ!」

「そうだな。今回はゲームオーバーだ。帰ろう」

「しかし驚きました。『いつでも逃げられる状態で嫌がらせをしよう』とは、意外と考えが回るのですね」

「いや~それほどでも~」

「……喋ってないでさっさと走れ」

 

 死柄木は一足早く姿を消し、それを追うようにしてジェスターもまた飛び込むようにして黒霧のワープゲートの中に姿を消す。

 最後に一人残った黒霧も、まるで霧散するかのようにその場から姿を消した。

 

「逃げられた……」

 

 誰かが呟いたその一言が、妙に大きくその場に響き渡っていた。

 

 

 

「いやー楽しかった!」

 

 死柄木たちが拠点とするバーにて、元の姿に戻った憑城庵(ジェスター)はオレンジジュース片手に満面の笑みを浮かべていた。

 オールマイト殺しは失敗したわけだが、それはそれ。

 作間に用意してもらった『特別製の体』を全力で動かし、ついでに視線を集める中でヒーローを虐めるという体験ができたため、概ね満足していた。

 とはいえ、もちろんそれは彼女だけだ。

 

「ヘラヘラ笑うなよ……手下どもは子供相手に瞬殺。脳無は弱くなってるはずのオールマイトに吹っ飛ばされた。どうなってるんだよ先生」

『そうだねぇ。一言で言うなら聊か見通しが甘かったかな』

『うむ……舐めすぎたな。(ヴィラン)連合なんちうチープな団体名で良かったわい』

 

 死柄木は痛む右手を抑えながら、テレビ越しに『先生』と『ドクター』に報告を行っていた。

 その顔は苛立ち、不満、様々なネガティブなものに満ちているが、それでもきちんと報告するのは彼が報告相手を慕っているが故だろう。

 そしてオールマイト並にパワーのある少年の事や、庵がイレイザーヘッドの目玉を抉り取った事まで話したところで空気が変わった。

 

『ふむ……子供……オールマイト並ねぇ』

『目玉じゃと!? ワシはそっちの方が気になる! 見せてくれんかジェスターちゃん!』

「うわーおじいちゃん大興奮。はいこれ」

 

 既にジェスターとしての肉体から目玉を回収していた庵は、小瓶に入れていたそれをポケットから取り出すと黒霧に手渡した。

 黒霧がその小瓶を懐にしまうのを見て、ドクターは急かす様に声をあげる。

 

『黒霧! 早くそれを持ってこっちに来るんじゃ!』

「わかりました。ジェスター、あなたはどうしますか? 先にあちらの店に戻した方がよいでしょうか」

「え? ん~と……」

 

 現在、理想郷には作間がいないため、ぶっちゃけ戻ったところで暇でしょうがない。

 それでも一応自室に行けばゲーム機などで時間を潰せるのだが……ここで死柄木の方を見た庵はある提案をすることにした。

 

「じゃあ店に戻って死柄木さんの手当てをしてあげますよ」

「……は?」

「ほら、私誰も殺せなかったしそこまで役に立ってなかった感じでしょ? だからその掌の手当てをしてあげますよ!」

 

 憑依した状態で膝を撃たれた庵と違い、死柄木の怪我は今も死柄木の体に残っている。

 死柄木としてもさっさと先生のところに戻って治療させてもらおうと思っていたことであり、わざわざなんで庵に手当てしてもらわないといけないのかと思っていたのだが、ここで予想外の所から彼女の発言を後押しする言葉が放たれた。

 

『そうだね……せっかくだ。お世話になるといい、弔』

「先生!?」

『ジェスター。理想郷にある手術室か何かを使うのだろう?』

「え? はい。よくわかりましたね」

『わかるとも。弔、きっと面白いものも見れるはずだ。ここはジェスターの招待を受けるといい』

「……わかったよ、先生」

 

 何かの思惑があることを匂わせる先生の言葉を聞いて、死柄木は黙ってそれに従うことにした。

 黒霧がワープゲートを作り出し、それをくぐる前に死柄木はジェスターに言う。

 

「おい、マトモな手当てくらいできるんだよな?」

「もちろん! 人の体を切ったり繋いだりはもう何百回もやりましたから!」

「……ジェスター、切るのはやめてください。死柄木をお願いしますよ」

「はーい」

 

 あっという間に理想郷の店内に到着した庵と死柄木。

 黒霧がワープゲートを通って消えていくのを見送ると、庵は先導するように地下への階段を下りていく。

 庵の部屋を通り過ぎて更に奥へと進むと、そこには厳重な扉に守られた()()()があった。

 

「到着でーす!」

「……へぇ、こりゃおもしろい」

 

 死柄木は部屋の中を見回して、思わずそう口にしていた。

 最初に彼の目を引いたのは、壁際に設置された装置の中に並ぶ()()()()()()

 エンデヴァー、ベストジーニスト、ミルコ、エッジショット、リューキュウ……ランキングに載っている者たちの姿があるが、どれも片腕を切り取られたり皮膚を剥がされた無惨な姿を晒している。

 逆側の壁には死体安置所のキャビネットのようなものがあり、引き出しの一つ一つにヒーローの名前が書かれている。中身を見ずとも想像ができるというものだ。

 そして部屋の中央に設置された手術台に置かれているのは――

 

「オールマイト、か」

「あ、ごめんね。すぐにどかすからそこに座って……」

「いや、俺がやる」

「あっ」

 

 USJでは結局個性を使う機会に恵まれなかった死柄木は、手術台に横たわるオールマイトの人形を掴むことで個性を発揮した。

 五指が触れたその瞬間から、鍛え抜かれた肉体に崩壊が広がってボロボロと崩れ落ちていく。

 そして幾らかもしないうちに、手術台の上に存在していたオールマイト人形の姿は消え去っていた。

 

「思ったより気分がいいな。これ」

「わかったから手当てしましょうよ死柄木さん。そこ座ってください」

 

 邪魔なものを片付けた手術台に死柄木を座らせ、庵は死柄木の右腕に雑に巻かれた包帯を解いて治療を開始する。

 撃たれたとはいえ、銃弾は骨からは逸れており、傷跡は肉が抉れて深い切り傷のような状態になっていた。

 そんな傷を、庵は手際よく処置し、縫合を行っていく。

 

「なんだ。ただの馬鹿じゃなかったのか」

「うっわ酷い! そんなこと思ってたんです!? こう見えてできる子なんですよ私!」

「ハハハ、そりゃ悪かったな」

 

 機嫌がよくなった死柄木とお喋りをしながら手を動かした庵は、二十分もしないうちにその治療を完了させた。

 そして消毒を行って包帯を巻いている最中、ふと大事なことに気付いた。

 

「……死柄木さんがオールマイトの人形を壊しちゃいましたけど、これ私が後で怒られるんじゃないですか?」

「そうだな」

「えぇ~!? ちょっと理不尽すぎません!? 壊したのはあなたでしょ!」

 

 怖いだけでなく面白い印象を死柄木に見た庵は、その後も部屋で行われた実験についてなどをネタに楽しくお喋りをして時間を過ごした。

 しばらく経って黒霧が迎えに来てお開きになるのだが、そこで庵はカレンダーを見て何事かの確認を行う。

 そして最後に、死柄木へと一つの提案を行うのだった。

 

 

 




原作においても死柄木は傷が全然治らなかったので、AFOは治癒個性を持っていないと思っています。


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