個性使ってヒーローのラブドール作ってみた   作:マイティP

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体育祭前のちょっとした話。


幕間 レアアイテムの行方

 USJ襲撃事件が起きた翌日、雄英高校の会議室では先日の事件の報告会議が行われていた。

 会議の場には事件の当事者である雄英高校の教師(ヒーロー)たちと、警察関係者としては刑事の塚内が出席していた。

 

「ヴィラン連合と名乗るものたちについて警察の方で洗ってみましたが、主犯格であろう死柄木弔、黒霧、ジェスターの三名に関する情報はあまり得られていないというのが現状です」

 

 塚内が手元の調査資料に目を落としながらそう言い、席についているヒーローたちも同じように資料を見る。

 彼らの手元にある資料には、対峙した生徒たちや三人のヒーローからの聴取から得たヴィランたちの情報が記されている。

 ただし、USJ内のセキュリティシステムが妨害を受けていた影響か、そこにヴィランの姿を映した写真などはない。

 

「死柄木とジェスター、この二名の個性は不明のままであるため、黒霧の持つ『ワープ』の個性について個性登録を洗ってみましたが、該当はありませんでした。おそらくは無戸籍、かつ偽名の個性届を提出していない裏の人間でしょう」

 

 本来なら義務教育である小学一年と中学一年時に個性の一斉診断が行われるため、その際に『個性届』を提出して、国にその情報が保管されているのが当たり前だ。

 その個性届がない以上、戸籍などがなく義務教育すら受けていない裏の人間である事が考えられる。

 これは非常に厄介な事だ。

 ある程度の年齢になってからヴィランとなった人間と違い、あらゆる情報を得る事が難しくなるのだから。

 

「厄介だな……結局奴らにはロクに怪我も負わせられなかった。ジェスターと名乗った女は膝を撃てたが、死柄木とかいう主犯は腕だけだ。またすぐに動いてもおかしくないぞ」

 

 そう言ったのは優れた射撃能力を持ち、敵連合へ銃弾を浴びせた張本人であるスナイプだった。

 元々逃げ腰だった相手とはいえ、不意打ち気味の射撃でそこまでダメージを負わせられなかった彼は責任を感じていた。

 とはいえ、そこは仕方がない部分もある。ワープという侵入・撤退に最適な個性を持つヴィラン複数への対処なんて、そう簡単にできる事ではないのだ。

 

「スナイプが膝を撃った、そのジェスターというヴィランの事だけど。資料によると、まるで他の人間の体を繋ぎ合わせたように見えたらしいね。これは本当なのかい?」

 

 続いてそう疑問を呈したのは校長の根津だった。

 調査資料のジェスターの項目について、幾つか気になる事があったらしい。

 そんな疑問に対し、塚内はすぐに答える。

 

「はい。意識を取り戻したイレイザーヘッドから少し、彼との戦闘を横から見ていたという生徒からも聞き取りができました」

「この資料がそうだね。顔の肌色が左右で違う、腕の太さが左右で違う、指が一本一本太さがバラバラ……うん、これは異常としか言いようがないね」

「聞くだけでもうゾーっとしちゃうわね……いや、ちょっと待って? それって……」

 

 根津が読み上げた資料の内容を聞いてミッドナイトは露骨に嫌な顔をするが、途中で何かに気付いたように資料に目を走らせた。

 そんな様子を見て頷いた根津は、きっとミッドナイトが気付いたであろう懸念について口にする。

 

「問題はジェスターの戦闘能力と、そこから予測できる個性さ」

「と、言いますと?」

「資料に書いてある相澤くんの所感では、『間違いなく素人だが身体能力で押された』とある。となれば、その容姿から考えても体を組み替えるなどの個性を持っていることが考えられるね」

「確かにそれは予想できましたが、それが……あっ!」

 

 根津が自分の考えを明らかにすると、隣に座るオールマイトも何かに気付いたかのように声をあげる。

 同様に他のヒーローたちが何かに気付くような様子を見せる中、オールマイトはついにその懸念を口にした。

 

「まさか、イレイザーヘッドの眼を自らに!?」

「……可能性はないとは言い切れないね」

「シット! なんてことを!」

 

 資料では、ジェスターは脳無に捕まったイレイザーヘッドへと執拗に攻撃を繰り返し、意味不明な言動をしながら彼の眼を奪ったと書かれている。

 その行動が衝動的なものかそうでないのかは不明だが、予測される個性の通りなら非常に危険だ。

 

「もちろん目を移植しただけで個性を使えるようになるとは思えない。でも、そうやって気に入った体の部位を奪っていくようなヴィランなのだとしたら非常に危険だよ」

「確かに……ただ、危険度で言うならあの死柄木という男の事が私は気になります」

 

 その危険度を言葉に表して注意喚起をする根津に続いて、オールマイトもまた資料を手に主犯として考えられている死柄木の事を口にする。

 

「死柄木自身は結局個性を使うことはなかったが……それは結果論。この大胆な襲撃そのものも、そして死柄木が見せた言動や行動も、あまりに感情的な部分が多い」

「確かに。対ヒーロー戦でわざわざ脳無とやらの個性を明らかにしたのは、ただ自分の駒を自慢したかっただけのように思えるね」

「それでいて思い通りにならないと露骨に苛立ち、気分を悪くする。以上の事から考えるに、死柄木という人物像は……幼児的万能感の抜けきらない『子ども大人』だ」

 

 オールマイトの出した結論を聞いて皆が納得するように頷いた。

 調査資料に載っている死柄木の情報を見れば、教師でもある彼らにもそれが間違っているとは思えなかったからだ。

 そして同時に、ジェスターもまた同じような子ども大人だろうと誰もが思っていた。

 終始楽しんでいるような口調に笑顔、他者を痛めつける事にまるで躊躇いのない様は、ある種残酷な遊びをする子供を思わせるものだ。

 

「問題なのはそんな連中に賛同するヴィランが多い事だ。どれも路地裏に潜んでいるような小物ばかりでしたが、72名ものヴィランが今回その『子ども大人』について来たという事になる」

 

 ヒーローが飽和した現代、抑圧された悪意はそういう無邪気な邪悪に惹かれるのかもしれない。

 そんな塚内の言葉はある真理をついていたのか、その言葉に反対するヒーローの姿はない。

 もしかしたら、彼らは今回の事件が始まりでしかない事に気付いていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「おぉ……これは素晴らしい! こんな実験材料(サンプル)を手に入れてくれるとは! 全く期待以上の働きじゃ!」

 

 液晶画面の光だけが辺りを照らす中、老人の歓喜する声が響く。

 カタカタとうるさいくらいにキーボードが鳴り、せわしなく体を揺らす老人はこれ以上なく上機嫌であることを全身で表していた。

 そんな老人の背後に現れた男は、それを気にせず画面に没頭する老人に声を投げかける。

 

「随分と嬉しそうだね。ドクター」

「先生か! そりゃそうじゃろう! かねてから欲しいと思っとったサンプルじゃ。超再生なんか目じゃないほどのレア個性じゃからな!」

 

 ジェスターの持ち帰ったイレイザーヘッドの眼球。

 視界に映った対象の個性を抹消するという個性の大本であるそれを手に入れたドクターは、それからずっとデスクに噛り付きで研究を行っていた。

 現在彼が行っているのは、なんとかして眼球に個性を発動させるための電気信号のパターンを把握する実験だ。

 

「やることは脳無と同じじゃ! 目だけというのは難点じゃが、既に人工頭脳に視神経を繋いで信号を送れるようにはしてある! そう長くはかからんわい!」

「あとは発動させるために脳からどのような信号が送られているかの割り出し、といったところかな?」

「その通りじゃ! その他にも解明すべきことが多すぎる。複製して脳無に組み込むのもまだまだ先になるじゃろうな!」

「ふむ……それなら間に合いそうだね。その調子で頼むよドクター」

 

 先生からのその言葉を当然のように受け止めて、ドクターは更に目の前の研究へとのめり込もうとし……その前に何か思い出したかのように振り返った。

 

「そういえば先生に一つ言っとくことがあったわい」

「何かな?」

「このプレゼントを持ってきてくれたジェスター、その上司の作間の事じゃ。生意気にも黒霧を通して報酬を要求してきおったわ」

「へぇ……」

 

 オールマイトの肉体を始め、数多くの検体を提供してきたドクターのお気に入りの事は、当然先生の記憶にも残っている。

 その男が報酬を要求した……となればあまり良いイメージはないが、ドクターの顔が喜色に溢れているのを感じた先生はその考えを撤回する。

 

「僕に言う前にもう対応したんだろう? どうしたんだい?」

「その報酬の内容がアドバイスが欲しいなんてかわいいもんじゃったからな。二言、三言だけ改善点を書いて送ってやったわい」

「それはまた珍しいねドクター、キミのお眼鏡に適う何かがあったのかな?」

「うむ。今回ジェスターの体じゃったものを貰ったからのう。まだまだ技術不足とはいえなかなか面白いものを見せてもらったわい」

 

 そう言って右を向いたドクターの視線の先には、数日前にジェスターの肉体として使用されていたツギハギの体がカプセルに保管されていた。

 その体には早くも解剖した跡があり、ドクターの興味をそれなりに引いた事が窺える。

 そうして解剖することによって得た改善点をあっさりと教えるあたり、ドクターも『次』を楽しみにしているのだろう。

 

「これで進歩が窺えるようならなかなか使えるヤツじゃと認めてもいいんじゃがな」

「思ったよりいい子みたいだね。これで弔とも仲良くしてくれるなら僕としても文句はないかな」

 

 ドクターの言葉に同意するかのように、先生もまた頷く。

 彼らの考える未来図において、死柄木弔は衝動を持て余す様々な人間を統括する立場になる事が確定している。

 だからこそ、それを支えるための『力』が一つでも多く必要だ。

 その力の中でも特に、自分にとってのドクターのような協力者が彼にもできるのならば――

 

「いずれ確かめよう。今はまだ……」

 

 かつての悪の支配者は、死柄木弔を中心とした未来を思い描く。

 その未来が確かにやってくることを彼は確信していた。




こんなにドクターとの好感度を高くするつもりはなかった

個人撮影ビデオに出たら売れそうな1-A生徒

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