個性使ってヒーローのラブドール作ってみた 作:マイティP
体育祭が開幕し、第一種目が始まった。
第一種目は障害物競走ということで、様々な障害物が設置されたスタジアムの外周を走る種目であるとのこと。
そのため生徒たちはスタジアムから外へ向かって駆け出していき、観客たちはスタジアム内にある巨大なモニターを眺める事になった。
そのモニターの中では、前方に現れた巨大ロボットの群れと戦う生徒たちの姿が映っている。
「あんだけの巨大ロボ準備すんのにどんだけ金かかんだろうなぁ。そんでそれを惜しげもなくぶっ壊す生徒は何考えてんだろうな」
「知るかよ。少なくとも金の事は考えてねぇだろ」
「そりゃそうだ! ははは……ん?」
死柄木から思いのほかマトモなツッコミを返されて笑い声をあげる作間。
しかしそんな時、彼のポケットに入れてあったスマホがブルブルと振動し始めた。
「……変だな」
「なんだよ。ただの電話だろ」
「それはそうなんだが……」
マナーモードで振動を続けるスマホを手に怪訝な顔を浮かべる作間。
このスマホは今回の潜入を決めた時に用意したもので、その電話番号を知っている人間なんていないはずなのだ。
知っているとすればスマホを用意した裏の売人くらいだが、彼らはわざわざ電話を掛けてくるなんて事はしない。
また面倒な事になりそうだと感じた作間は、仕方なく通話ボタンをタップしてスマホを耳に当てた。
「もしもし」
『あら、随分と時間がかかったわね』
「そりゃ悪かったな。いきなり電話がかかってきたもんでね」
『そうなの? それはちょっとだけ悪かったわね』
作間が耳に当てたスマホから聞こえてきたのは、聞き覚えのない女の声だった。
理由は不明だが声からはその楽しそうな様子が透けて見えるほど。
そんな女の目的を探るため、作間は口にする言葉に注意をしながら問いかけた。
「もしかして間違い電話だったりしないか? 俺はこのスマホを買ったばかりでな。あんたみたいな美人の声に聞き覚えはないんだが」
『あらありがとう。でも間違い電話じゃないわよ。私はあなたに用があるんだから』
「……なんで俺だと?」
『簡単よ。あなたがここに来る前に色々と準備していたでしょう? その準備を手伝った人間の一人が私の仲間だったの』
どうやら相手も雄英側に会話が漏れる可能性を考えているらしく、電話でマズい単語を出す事はしなかった。
それにほっと安堵しながらも作間は相手の言うことについて考える。
作間の事を認知しているのはもちろん、彼が顧客に身分証を用意させたことについても知っている可能性が高い。
更に言うなら、その顧客たちの内の誰かが彼女の仲間か、もしくは顧客の部下に仲間がいるのか。
そんなところであり、自分の情報はかなり筒抜けだろうと作間は確信した。
『でもそんなに警戒しないで。今回は私の個人的な取材のために接触しただけだから』
「取材?」
相手の出した唐突な言葉に作間が驚いていると、女は畳みかける様に言葉を並び立てる。
『そう。取材よ。昔から私はずっとあなたと話してみたかったの。ここにきたのは体育祭の取材もあるけど、本命はあなたなのよ』
「そりゃ……ありがたい事だが。俺なんか取材してもつまらないだろ?」
『そう? とてもそうとは思えないけれど……とりあえず電話越しじゃあ話したいことも話せないわね。私は今あなたのずっと後ろ、最後列の所にいるわ。そこで会いましょう』
「俺は取材を受けてもいいなんて言ってないんだが?」
『今後のあなたに色々と不都合な事態になってほしくないなら、私の言葉に従った方がいいと思うわよ』
間違いなく作間の商売の事を知っていて、そのことで脅迫を仕掛けてくる女。
この手の脅しは同じ裏社会の人間同士で使うと泥沼の争いになりやすいため使われることは少ないのだが、当然作間だってもしも脅された時のためのコネは持っている。
だが、今回はそれを判断するには難しい状況だった。
何より相手が自分の事を知っている事、知らないはずの電話番号を調べられている事、そして相手の事を未だ知ることができていないのが厳しい。
結局作間はその女と直接顔を合わせる事になった。
モニターの中の生徒をじっと見つめる死柄木と庵に一言告げて、作間は通路を最後列に向けて上り始める。
そうしてやたらと長い通路を歩ききって最後列にたどり着いた作間に声がかけられた。
「こんにちは。『理想郷』の店長、作間さん」
声をかけてきたのは、青い肌に薄紫のロングヘアーを持つ目の色が反転している女性。
作間にとっては見覚えのない女性だった。
「俺をよく知ってるようだが、俺はあんたを知らないんだ。いい加減に自分の名前を言ったらどうだ?」
「あらごめんなさい。私は
聞き覚えのない名前に首を傾げつつも、作間は終始嬉しそうな表情を浮かべる女の隣に腰を下ろした。
警戒を解いたわけではないが、少なくとも危険はなさそうな事が女の雰囲気から感じ取れたのだ。
周囲がモニターの中の生徒たちの様子に一喜一憂して声をあげる中、先に口火を切ったのは作間だった。
「まず聞きたいんだが……なんだってこんなところで会おうなんて思ったんだ? 連絡を取る方法なんていくらでもあるはずだろ?」
「それはそうね。でも、こんなところでもないと何されるかわからないもの。流石に雄英の敷地内で口封じはできないでしょう?」
「……俺がそういう事をする奴だと思ってるのか?」
「気を悪くしたらごめんなさいね。でも、あなたは人を殺す事を面倒だとは思っても必要なら躊躇わない人でしょう?」
作間が今回用意したスマホの電話番号を調べられるなら、直接理想郷に連絡をつける方がずっと手間がかからない。
そう思っての作間の問いだったが、返ってきた言葉は予想以上に作間の事を理解してのものだった。
確かに、理想郷にきた初めての客が作間の事を知り尽くしているかのような発言をすれば、きっと作間はそいつの事をタダではおかないだろう。
殺すというのは流石に言いすぎな気もするが、個性を使って脳組織をちょっとイジるくらいはやりかねない。
気月の言ったことはかなり的を射たものだった。
「不思議かしら。あなたの考えが読めてしまうことが」
「あぁ。不思議に決まってるだろ。初対面の人間がちょっと俺の考えを読んだくらいで、俺の事を随分と訳知り顔で語ってるんだからな」
「フフ……酷い言われようね。でも、私があなたの事をよく知っているのは事実。まぁ、女の子を店員に雇ってあんな事をやり始めた時は驚いたけどね」
そう言いながらも、作間が庵を雇ってアダルトビデオを売り始めたことを楽しそうに喋り続ける気月。
どうやらヒーローに対しあまりよくない感情を持っているらしい彼女の口からは、アダルトビデオのネタにされた女性ヒーローに対する侮蔑の感情が見え隠れしていた。
そんな彼女を見ていて、ついに我慢ができなくなったように作間が口を開いた。
「ちょっと気になるんだが……」
「あぁ、別にここでは禁止用語を口にしても大丈夫よ。近くにマイクはないみたいだから」
「そんな事聞きたいわけじゃない。俺が気になってるのはお前の事だ」
「私の事を?」
「あぁ。なんでそこまで俺の事を知っている風なんだ? 流石に気になる」
先ほどからずっと、作間の事をよく知っているように話す気月。
しかし気月とは今日が初対面である作間にしてみれば、そんな風に話される謂れはない。
なのになぜ、内面まで知り尽くした知人であるかのように彼女が話しているのかが気になったのだ。
「そう。気になってもらえたなら嬉しい。でもそんなに大した理由じゃないわ」
「というと?」
「あなたは私の
「はぁ?」
「あなたの『初めての事件』を目にして以来、そこで偶然あなたの姿を見て以来、ずっと私はあなたと話してみたかった。そのためにあなたの情報を集め、分析してきた。あなたの事をよく知っているのはただそれだけの事よ」
そう言い放った気月の言葉を聞いて、作間も彼女に対する認識を改めた。
彼女は決して何かの思い違いではなく、正しく作間の過去を知っている者だ。
この時点で、今後関わられないように距離を取るという方針は彼の中から消えた。
「ところで、私も一ついいかしら?」
「なんだ?」
「あなたの名前なんだけど……」
作間が気月への対処法を考えていると、その彼女の方から声をかけてきた。
別の事を考えていた作間は適当に答えを返し、そしてすぐに気月の口から聞きたくない言葉を聞くことになった。
「今後も作間と呼べばいいの? あなたの本当の名前は『
作間が取ったのは反射的な行動だった。
気月が言いかけた言葉を遮る様に、作間は肩を組むようにして彼女の頭を引き寄せる。
「そこまでにしておけ」
「――ッ!」
そして至近距離から濃密な殺気を浴びせかけながら声をかけると、気月は顔を青くして口を噤んだ。
とても言葉を発する事のできる雰囲気ではない状態がしばらく続くかとも思ったが、そこで第一種目の競技中だった生徒たちの一人がスタジアム内に入ってきて、周囲の観客が歓声を上げる。
気月はその歓声を聞いて、やっと再起動を果たした。
「あ……その、ごめんなさいね。こんな所で言うべきじゃなかったわ」
「その通りだ。少しデリカシーってものがないな」
「えぇ。本当に、そうだったみたい」
未だ少し青ざめた顔で頭を下げる気月を見て、作間も周囲の様子を伺いながら軽く言葉をかける。
幸い二人の方を気にしている観客はいない。どうやらあまり目立たずに済んだようだ。
それを確認した作間は、すぐにその場に立ち上がった。
「俺はそろそろ行く。ツレをあまり待たせるのもよくないだろうからな」
「えっ、そんな……もう?」
先ほどまで青ざめていた顔を、今度は焦りでいっぱいにして困り顔を浮かべる気月。
しかしスタジアム内に第一種目を終えた生徒たちが続々と到着し、もはや作間がさっさと立ち去りたいという雰囲気を露骨にしていたため、諦めたように顔を俯かせた。
「わかったわ。今日はこのくらいで潔く諦めます」
「
「今度はちゃんとお仕事として取材を依頼するわ。今回だけじゃあまりにも不完全燃焼だもの」
「なんて厚かましい……だが、仕方ないか」
気月が作間を取材対象として今後も付き合っていきたいと思っているように、作間にも思惑はある。
結局気月がどこまで作間の事を知っているかもわかっていないし、彼女の言う『仲間』が顧客関連のものなのか、もっと根深く手広いものなのかもわかっていない。
それを明らかにするまでは、作間は安心して今後の商売を続けることができないのだ。
故に、少なくとも気月の裏に誰がいるのかを探るか、彼女が作間を売れないようになるまでは取材に付き合う必要はありそうだった。
「よう。随分と遅かったな」
「ちょっと面倒な事になってな……というかシガ、お前どうした」
作間が最前列の席に帰ってこれたのは、第一種目を無事に通過した生徒たちが第二種目の騎馬戦のチーム決めを行っている真っ最中だった。
そこで作間が目にしたのは、もはや隠す気のない悪意に満ちた表情を浮かべた死柄木の姿だった。
ヤバいものを見たと作間が硬直していると、何も考えていない庵が解説を行った。
「いやー、さっきもじゃもじゃ君が一位でゴールしてからこんな調子なんですよ。お気に入りなんです?」
「お気に入りなんてフザけたこと言ってんじゃねえよ。ただ、一番イラつく奴が一番目立っててイラついてるだけだ」
「んん? あー、そういえばあのもじゃもじゃくん、見覚えがありますね。すごく邪魔だった子でしたか」
何やら納得するかのように頷いた庵は、死柄木のフォローもせずに再び前を向いてしまう。
それを見た作間は死柄木の隣に腰を下ろしながら、頬に指を立てようとした死柄木に急いで声をかけた。
「頼むからいつもみたいにガリガリ肌を掻くんじゃないぞ。変装してることは忘れないでくれ」
「……あぁ。わかってる。俺はこのバカみたいに間抜けじゃない」
「そうか。うん、頼んだぞマジで」
わかってると言いながらもふと気づけば頬に爪を突き立てようとする死柄木に冷や冷やしながら、作間はもう絶対に彼のそばからは離れないようにしようと思うのだった。
原作で退場済みのキャラって使いやすいですよね
今回登場したあの人も過去がすごく魔改造されてます
でもあの人、一体何歳なんだろう……たぶん結構いってそうだけど、美人なんですよね。
30代後半から40代くらいかなぁ