個性使ってヒーローのラブドール作ってみた   作:マイティP

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お待たせしました。
R18版一章完結しました。


第20話 新たな始まり

 保須市での騒動から数日。

 ある男によって呼び出された作間は、黒霧の作ったゲートを通ってどことも知れぬ場所へとやってきていた。

 そこで作間を待っていたのは、顔の上半分が醜い瘢痕で覆われた男だった。

 

「やぁ、こうして会うのは初めてかな。今回は弔が迷惑をかけたね、作間」

「……いや、気にしてませんよ。実害は出てませんから」

「そうかい? ならよかった。君には今後も弔と仲良くしてもらいたいからね」

 

 転移してすぐに男に話しかけられた作間はまず周囲の状況を把握した。

 現在作間がいるのは、男に繋がれた何らかの装置が発する光だけが部屋の中を照らす、窓のない薄暗い密室。

 つまり、どこにも逃げ道のない空間である。

 しかし目の前の男の正体の予想がついている作間にとっては、その事はあまり大した問題ではなかった。

 もしも男の正体が作間の考える通りの人物だった場合、こうして手の届くような距離にいる時点でどうせ逃げられはしないのだから。

 

「僕の自己紹介は必要かな? 作間」

 

 緊張して身構える作間に対し、口を開いたのはやはりその男だった。

 まるで作間が当然知っているだろうと、試すかのような口ぶり。

 ()()()()()()()()()()()()と感じ取った作間は、できれば口にせずにすませたかったその言葉を口にした。

 

「あなたは()()オール・フォー・ワン(AFO)、でいいんですよね?」

「……やっぱり優秀だね、見込み違いではなくてよかったよ。君の言う通り、僕が()()オール・フォー・ワンだ」

 

 作間の答えを聞いて、AFOは嬉しそうに自分の名前を口にした。

 そもそもそれが名前なのかどうか、作間は知らない。

 しかし裏社会に生きていてその名前を知らない人間はモグリだ。そう言われるほど、裏社会では未だにAFOの伝説は語り継がれている。

 かつて義爛の下にいた頃に、作間もよくその名を聞かされたものだった。

 

「さて、君が僕の事を知っているように、僕も君の事を知っている。話を本題に戻そうか」

 

 そんな相手に()()()()()()と言われて作間は内心ぎくりとしたが、顔には出さずにAFOの話に耳を傾ける。

 

「実を言うとね。先日の保須での騒動、僕は弔があそこまでやるとは思っていなかった」

「あそこまで……っていうと、それはヒーロー九人死亡の方とヒーロー殺し死亡の方のどっちです?」

「もちろんヒーロー殺しの方だよ。弔がちゃんと計画立てて彼を殺しにかかるとは、嬉しい誤算さ」

 

 誤算と言いながらも、AFOの声はかなり上機嫌だった。

 どうやら本当に死柄木弔が予想以上の成長を見せたことが嬉しいらしい。

 

「特に、警察官に撃たせたのはいい手だった」

「まぁ……今じゃ世間がえらい騒ぎになってますからね」

 

 保須での事件は作間が先ほど言ったように、大きく二つに分かれる。

 

 四人の凶悪なヴィランによって保須市の中央広場が破壊され、大勢の市民が怪我をし、そしてヒーローが九人も殺された事件。

 最初の内は特に凶悪なヴィランを取り逃した事に対するヒーローへのバッシングが多少はあったのだが、ヒーローが必死で頑張ったからこそ市民の死亡者が出なかったのだと、今ではその場にいたヒーローを評価する流れになっている。

 もちろんヒーローの力不足を嘆く声もあがっているが、亡くなったヒーローのファンによる追悼メッセージに覆い隠されている形だ。

 

 そしてもう一つ、ヒーロー殺しが警察官に射殺された事件。

 撃たれたヒーロー殺しがいくら凶悪犯であるとはいえ、既に気を失っている相手に何発も撃ちこんだのは大きな問題として取りざたされた。

 特に問題なのは、その一部始終を収めた動画がネット上にアップされてしまった事だ。

 ヴィランの主張やその死の瞬間が収められた動画という事で動画はすぐに削除されるが、その削除という行為そのものが警察の失態を隠すための隠蔽工作なのではないかと大炎上を生んだ。

 その場にいたヒーローや撃った警察官本人からの証言を得た警察はすぐに『ヴィランの個性による洗脳を受けて発砲させられたのではないか』との会見を開いたのだが、拡散された動画を見た人々からは未だに激しい非難に晒され続けている。

 まぁ、動画が公開された後からヴィランの個性のせいだなんだと言っても言い訳にしか聞こえないのは当然だろう。

 

「今ごろ警察は血眼になって洗脳系の個性について探っているだろうね。憑城庵(ジェスター)が探られる対策は取っているのかい?」

「もちろん。じゃなきゃ従業員として雇えませんよ」

 

 AFOに尋ねられ、作間は庵を雇った時の事を教える。

 元々彼女は作間の元に来た時、ちょうど高校二年生だった。

 かなりいい家に生まれていた事もあり、突然の失踪という形にするには作間にとってかなり危険な存在だったのだ。

 だから作間は憑城庵を『理想郷』の従業員として迎えるにあたり、人体創造によって庵の死体を用意し、警察とのコネを使って彼女が自殺した事にしたのである。

 

「なるほど、死んだ事になっていれば個性届から探る際にも基本は除外されるからね」

「というかあいつの場合、そもそも個性届を出していないらしいんですよ」

「ほう?」

「あいつが自分の個性に気付いたのは高校に入ってから、らしいんですよね。まぁ本人の言葉なんでどこまで信憑性があるかわかりませんけど」

 

 実際それを聞いた時、作間はかなり驚いた。

 個性なんて小学校に入る頃にはだいたいの奴に発現しているのが普通で、自分の個性の使い方だって成長と共になんとなく気付いていくものだ。

 しかし実際に調べてみれば庵の個性届は提出されておらず、戸籍にも無個性と記されていた。

 おかげで作間は楽をすることができたのである。

 

「ふむ……個性の発動条件のせいかな? 確か、意識のない人間と手を繋ぐ事だっただろう」

「えぇ。どうやら高校生になるまで一度もそんな状況に遭遇しなかったようです」

 

 そして初めて行った憑依で、庵はクラスメイトを一人自殺させた。

 それが作間の聞いた庵の初憑依の話だ。

 庵はその後も憑依の事を誰にも話さず、一年間大小問わず幾つもの犯罪を犯した末に『理想郷』へとやってきたのである。

 

「いずれにしろ、警察がジェスターの正体へ辿り着くことは無いというわけだね。それはよかった」

「えぇ。あいつには今後も役に立ってもらわないと困りますから……それはそうと、一つ聞きたいことがあるんですが、いいですか?」

「いいとも。遠慮せず聞きたまえ」

「それはよかった。ヒーロー殺しの死体についての事なんですが――」

 

 

 

 

「ところで作間。また今度、I・アイランドに行くらしいね」

 

 その後もピンク脳無の後継機についてや今後の敵連合の事についてなどを話し、一段落したところでAFOは作間にそう言った。

 どうやら庵が黒霧や死柄木に言いふらしたらしく、それがAFOの耳にまで届いたようだ。

 

「えぇ。また新しい依頼が来たので」

「内容は?」

 

 当然のようにそう問いかけてくるAFO。

 普通なら依頼の内容を他人に漏らすような事をしない作間だが、こんな状況で隠すほど愚かではない。

 

「依頼人は『キュリオス』。内容は『【I・エキスポ】のプレオープン中に開かれるレセプションパーティに出席して著名人のドールを作成し引き渡す事』ですね」

 

 作間はAFOが聞き入る前で、今回の依頼について詳細に口にしていく。

 日時、潜入方法、報酬……そうして口にしていると、いつの間にかAFOが笑みを浮かべている事に気付いた。

 

「何です?」

「いや、【I・エキスポ】か。そうか……そういえばそんなものもあったなぁ。今思い出したよ」

 

 うんうんと頷きながら、AFOは困惑する作間に話しかける。

 

「実は【I・エキスポ】で面白いイベントがあるのを思い出してね」

「……もしかしてヴィラン絡みで何か事件が?」

「正解だよ作間。ちょっとした襲撃計画があってね、僕も少し手を貸してあげたんだ」

 

 悪戯をしたかのような口調でそう告げるAFOに、作間は内心ため息を吐いた。

 絶対に()()()()()()襲撃ではないのだろうと予想ができてしまったのだ。

 これから行く島が戦場と化す様子が容易に想像できて、作間は一気に憂鬱になった。

 

「だから、僕も君に依頼をさせてもらってもいいかな?」

「その状況で俺に何を頼みたいんです?」

 

 襲撃計画があるのであれば、確かに作間にとっては動きやすくなるだろう。

 ヒーローたちは襲撃の犯人たちに目が行くだろうし、セキュリティに隙ができるのは想像できる。

 何でもできてしまいそうだからこそ、どんな事を頼まれるか気が気でないのだ。

 

「僕が頼むのは簡単な事だよ。ほんの少し、オールマイトの顔を歪めてやりたいだけだから」

 

 そう言って笑みを浮かべるAFOが口にした依頼に、作間は少しだけ拍子抜けしながら首を縦に振ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「……あー、残念だったね死柄木さん。テレビでもいっぱいあの人の顔見る事になって」

「いや、いい。確かにムカつくが……あいつはもう死んでるからな。そのうちスッキリするだろ。ハァ……」

(絶対根に持ってるよこれ)

 

 いつものバーにて。

 保須の事件を報道するニュース番組を前に、不機嫌さを隠しきれない死柄木の隣で、庵は死柄木の反応を面白がりながらオレンジジュースを飲んでいた。

 あれから数日が経って、ニュース番組はかなり詳細な情報を垂れ流す様になっていた。

 内容は専ら死んだヒーロー殺し、ステインについて。

 死んだヒーローに関しては悲しみをあまり蒸し返すのもよくないと、各ヒーローの活躍をまとめた番組をやって以来は落ち着いたものだ。

 暴れた脳無たちの仲間として見られているステインの主張などの方が視聴率が取れるという判断なのだろう。

 おかげでせっかく殺したというのに、死柄木も庵も、テレビをつけるたびに見たくもないステインの顔を拝めさせられていた。

 

「もっと私の活躍を映してほしいよね! こう、頭をプチュったところとか」

「何を言ってるんだお前」

「そんなものをテレビに映せるはずないのでは?」

「二人ともマジレスやめてよ! あぁ……こんな時トゥワイスさんなら面白いツッコミをくれるのに」

 

 一緒にふざけてくれない二人に文句を言いながらぶーたれる庵。

 しかし残念ながら、トゥワイスは『理想郷』の店番中である。

 今頃は一人でソファーに腰かけながらゲームでもやっている事だろう。

 

「あーあ。早くまた何か面白い事起きないかなー」

「I・アイランドには作間だけで行くのか? お前も行けばいいだろ」

「監視役が来るから連れていけないんだってさ。ずるいよね! 私も行って遊びたいのに!」

「作間は遊びに行くわけではないのでは?」

「わかってるけど暇なんだもん。だから死柄木さん、一緒に買い物とか付き合ってくれない?」

「ふざけんな」

 

 暇そうに体をぐらぐら動かしながら、黒霧と死柄木に言葉を投げかける庵。

 返ってくる反応は冷たいものの、それもまた新感触だと楽しみながら、庵は楽しい時間を過ごしていく。

 

 世間のざわめきとは裏腹に、敵連合は束の間の休息のようなものを満喫しているのだった。

 




そんなわけで作間とAFOメインのお話でした。
世間では大騒ぎですが、あくまで彼らは蚊帳の外からそれを眺めています。

まだ幕間ありますけど三章はこれで終了です。
来年もどうぞ読んでいってください
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