個性使ってヒーローのラブドール作ってみた   作:マイティP

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ちょっぴり短め
次回からI・アイランド編


幕間 熱狂明けて

 作間が依頼を受けて再びI・アイランドへと出発する少し前。

 死柄木たち『敵連合』のアジトとなっているバーには、新しく三人の客が訪れていた。

 

「よう嬢ちゃん、分倍河原の奴は元気にしてるか?」

「うん! 仲良くしてるよー。すっごい仲良しだよ。今は店でお留守番」

「そうかい。まぁその調子で仲良くしてやってくれ」

 

 一人は庵も良く知る裏社会の大物ブローカー、義爛(ギラン)

 今回、仲介役として二人のヴィランをここに連れてきた張本人である。

 本人は連れてきた時点で仕事を終えたつもりなのか、男女二人のヴィランに自己紹介をさせた後は暇そうな庵と駄弁っていた。

 しかし『敵連合』との接触には少し慎重になっているらしく、庵と話しながらもその目は注意深く死柄木の方へと向いている。

 

「ステ様が死んじゃって残念だけどピンクちゃんが羨ましいです! あと私もヒーローかじってみたい!」

「……最近の女子高生ってのはこんなんばっかりかよ」

「ねぇねぇヴィラン連合入れてよ弔くん!」

「ハァ……」

 

 もう一人は義爛が連れてきた女子高生、渡我被身子(トガヒミコ)

 まだ年若い少女でありながら、連続失血死事件の容疑者として追われる立派なヴィランである。

 最初の自己紹介からそのイカれっぷりを露わにしていたトガの前で、死柄木はうんざりした顔をしながら溜め息を吐いていた。

 最初、『憑城庵ほどイカれたガキじゃないだろう』なんて事を思っていた彼だったが、僅かな会話のみであっという間にその評価は覆されたわけである。

 

「………」

「ねぇねぇ暇なら話さない? 義爛さん電話があるって外行っちゃったんだよね」

「うぜぇな……」

 

 そして最後の一人、全身に焼け爛れた皮膚を繋ぎ合わせたような跡のある男、荼毘(だび)

 自己紹介で『ヒーロー殺しの遺志を全うする』と宣言した彼は他に言いたいこともなかったのか、イラつく死柄木にトガが話しかけるのを傍観しながら壁際に佇んでいた。

 しかし、暇になった庵が初対面の荼毘に興味を抱かないはずがなかった。

 いきなりそんな絡まれ方をされれば荼毘でなくても怒りそうなものだが、実は荼毘の方にも庵に聞きたいことがあった。

 

「お前、さっき個性は『憑依』だって言ってたよな?」

「そうだよー。あと、『お前』じゃなくて『ジェスターちゃん』か『庵ちゃん』にしてね」

「………」

「無視しないでよ!」

 

 ぷんすか怒るフリをする庵を冷めた目で見ながら、荼毘は先ほど彼女が言った言葉を頭の中で整理する。

 義爛に連れられたトガと荼毘の紹介が終わった後、死柄木と黒霧、そして庵もまた自己紹介を行っていたのだ。

 まぁ死柄木は不機嫌そうに名前を言い捨てただけだったが、とにかくその時に庵は自分の個性や『理想郷』の事についても口にしていた。

 

「『理想郷』ってのはヒーローの人形(ドール)を売る店だったよな。憑依ってのはその人形相手にも通じんのか?」

「うん。そうだよ。なんで?」

「最近流通してる偽ヒーローのビデオってのもお前らの店の商品かと思ってな」

「え? 見たことあるの!? そうそう大正解! アレ全部主演女優私なの! すごくない!?」

「見てねぇよ」

 

 実は以前から荼毘は『理想郷』の事を調べていた。

 『憑依』という要素一つで理想郷とビデオが結びついたのもそのためだ。

 その目的はとあるヒーローの人形(ドール)を手に入れる事だったのだが……そこに『憑依』を持つ庵がいて、人形(ヒーロー)を自在に動かすことができるとなると話は変わってくる。

 それは荼毘にとって、『敵連合』という組織に対する不安を補って余りあるほどのメリットがあるように思えた。

 

「ジェスター、後でお前のとこの店長と話がしたい。会わせろ」

「店長? いいよ! トゥワイスさんにも会わせてあげる! 友達できたら喜ぶと思うよー。あんまり外で歩けなくて寂しそうだから!」

「トゥワイス?」

「もう一人の店員で私の後輩のおじさん。いい人だよ?」

「は……?」

 

 トゥワイスの紹介を聞いた荼毘が思い切り顔を顰めるが、庵はそれに気が付かない。

 そんな彼女にいい加減うんざりしながらも、荼毘は最後に一つ聞いておくべきことを聞くことにした。

 

「ヒーロー殺しについてお前はどう思っていたんだ?」

 

 死柄木の態度からは、ヒーロー殺しについてあまり良くない感情を抱いているのが目に見えていた。

 リーダーである死柄木がそうなら、当然庵もそうだろう。

 なんなら『憑依』という個性から一つの可能性が荼毘の頭に浮かんではいたが、それは彼にとってあまり重要ではない。

 大事なのはこれから先、荼毘自身が何を為すかの話なのだから。

 

「私は嫌い」

「やっぱりな」

「うん。だって私の事遊び半分の子供だって言ったんだもん! 酷いよね!」

 

 何一つ間違っていない評価だ。

 心の底からそう思った荼毘は、ぎゃーぎゃーと喚く庵を無視して深くため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 過酷な期末テストを乗り越えた雄英高校ヒーロー科、1年A組の生徒たち。

 彼らはテスト明けの休日に集まり、みんなで県内最大規模のショッピングモールへとやってきていた。

 そして夏休みに行われる林間合宿に備えて各自がバラバラに買い物へと向かう中、緑谷出久は一人モール内を歩きながらつい先日にオールマイトから告げられた事を思い返していた。

 

 

 オールマイトに呼び出された緑谷が教えられたのは、ワン・フォー・オールにまつわる秘密と、オール・フォー・ワンという巨悪の存在について。

 そして、もう一つの懸案事項だった。

 

『……USJに現れた脳無の事、覚えているね』

『え、はい! もちろんです!』

 

 悩みに悩んだという表情のオールマイトは緑谷にそう言って話を切り出した。

 USJの脳無の事は、緑谷も良く覚えている。

 何しろあの事件が敵連合との初めての邂逅だったのだ。そう簡単に忘れられるものではない。

 そう思って何を言われるかと身構えた緑谷だが、そこで告げられたのは完全に予想外の言葉だった。

 

『あの後、捕まえた脳無の事を検査してね。その肉体が私と全く同じものだったことがわかったんだ』

『え!?』

 

 曰く、脳無の体は薬物や手術によって変えられてはいたが、その肉体のDNAはオールマイトと完全に一致しただという。

 何かの間違いかと再検査を行っても結果は同じで、その脳無の肉体が間違いなくオールマイトと同一のものであると認めざるを得なかったようだ。

 

『クローンなのか、それともそういう個性なのか……どちらにせよ、奴がそんな力を手に入れたとなれば脅威だ』

 

 オールマイトを探る為か、ワン・フォー・オールを調べるためか、それとも単なる挑発なのか。

 こうして新たな力の証拠となるようなものを残したオール・フォー・ワンの狙いはわからない。

 しかし間違いなく何か仕掛けてくる。

 オールマイトはそう確信し、緑谷に注意を促したのだ。

 

 

 思えば、ステインに血を舐められてしまったせいでオールマイトを余計に心配させてしまったのかもしれない。

 これからはできるだけ心配をかけないように頑張ろう。

 緑谷出久はそんな事を考えながら目的の店へと向かうのだった。

 

 




劇場版ヒロアカのベロスさんエロ過ぎない?
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