個性使ってヒーローのラブドール作ってみた   作:マイティP

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区切るタイミング的にちょっと追記


断章 悪意満ちる塔
A-0 プロローグ


 I・アイランドへと向かう飛行機の中で、作間は席に座りながら眼下に見え始めた島の様子を眺めていた。

 その隣に座っているのは今回作間に仕事を依頼してきた気月置歳。

 『集瑛社』の専務という表の顔、『異能解放軍』の幹部という裏の顔という二つの顔を持つ、青い肌と薄紫のロングヘア―が特徴的な女性である。

 

「まさかまたこの島に来ることになるとはね」

「あら、嫌だった?」

「別に嫌ってわけじゃない。こうも短期間で二回も来ることになるとは思ってもみなかっただけだ」

「そうなの? I・エキスポの内容に興味は?」

「ないね」

 

 つまらなそうに言う作間の姿は、既に別のものに変わっている。

 今回は気月と共に潜入するため、『集瑛社』における彼女の部下の『坂上』という男の姿を借りたのだ。

 上司である気月と共にI・エキスポ内で取材をしていても、レセプション・パーティに同伴者として出席していても不自然ではない、最適な姿であると言えるだろう。

 

「別にいいけど、島ではちゃんと私の取材を手伝ってね? でなきゃ怪しまれちゃうもの」

「わかってる。その代わり、そっちも俺が依頼をこなせるよう協力しろよ? 上手くやらなきゃそっちも困るんだからな」

「わかってるわよ」

 

 今回、作間は気月の依頼とは別にAFOからも依頼を受けている。

 その依頼の内容やAFOの存在については気月に教えていないが、テロリストによる襲撃がある事とその襲撃に乗じて作間が動くという事は共有済みだ。

 それを聞いた気月は襲撃事件についてかなり興味深そうにしていたが、流石に首を突っ込むには危険が大きいと感じたのだろう。

 作間の同行者である気月が怪しまれないようにするための準備も含めて、お互いに協力する事で同意していた。

 

 そうして二人が到着後の予定について改めて確認し合っていると、機内に到着を知らせるアナウンスが流れた。

 

『――当機はまもなくI・アイランドへの着陸態勢に入ります』

「8時15分、予定通りね」

「そろそろ到着か。もうちょっと寝てたかったんだが」

 

 スッキリした顔で腕時計を確認する気月と違い、作間は若干眠そうにしていた。

 早朝からプライベートジェットで出発した上、気月に話しかけられるせいでロクに眠れなかったのだ。

 ちなみに何故そんな朝早くに出発したのかというと。

 

「夜に襲撃があるなら明日以降の一般公開が遅れる可能性もあるでしょう? なら今日中になるべく取材を済ませないと」

 

 と言う気月がプライベートジェットを用意したためだ。

 協力をすると言った手前作間もあまり強くは言えず、結局朝早くの出発となったのである

 

 

 

 それから無事にI・アイランドの入国審査をくぐりぬけた作間たちは、まず荷物を持ってホテルへと向かい、それからすぐにパビリオンへと向けて歩き出していた。

 

「さぁ、島は広いから急いで行きましょう」

「別に楽しむつもりはありませんでしたが、本当に忙しくなりそうですね……」

 

 実際に彼女の言う通り、島の総面積は8000ヘクタールもあり、エキスポは島全体が会場なのだ。

 移動用の設備も充実しているとはいえ、かなり急がなければ今日中に目的のパビリオンを全て回り切る事は難しいだろう。

 もちろん明日からの一般公開以降も取材を続けられれば問題はないのだが、それは言っても仕方のない事である。

 

「事前に情報は仕入れておいたから今日中に見ておく場所は決まってるわ。ちゃんとお願いね」

「まぁ……できるだけの事はやりますよ」

 

 気月に協力してもらう条件の一つが彼女の仕事を手伝う事だったのだ。

 で、ある以上は商売人として手を抜く事はしない。

 元気溌剌とした気月の後ろを、作間は面倒くさがりながらも遅れずついていくのだった。

 

 

 

「少し休憩にしましょうか。お昼でも食べましょ」

「助かった……」

 

 気月がそう言いだしたのは時刻が正午を回って少しした頃だった。

 既に作間はぐったりとしている。

 いつの間にかアポを取っていたらしい気月と共に島に在住の科学者のインタビューを行うことになったのだが、その研究内容はさっぱり理解不能で、それでもある程度の受け答えができないと不自然だろうと脳をフル回転させ続けていたのだ。

 それでも危ないところは幾つもあったのだが、気月によるフォローがあったおかげでなんとか乗り切っていた。

 

「午後はあまりインタビューはないんですよね?」

「えぇ。さっきのシールド博士で最後。一番の大物を午前のうちに終わらせられてよかったわ」

 

 午前の最後にインタビューを行ったのはデヴィット・シールド博士。

 個性研究の第一人者であり、今までに数多くのサポートアイテムを開発してきた事でも知られている、I・アイランドでも特に有名な科学者の一人だ。

 そして夜、テロリストの襲撃時に標的になるだろう人物でもある。

 作間はAFOからの情報提供から、以前にシールド親子の人形を作った時の依頼人が今回のテロの犯人である事を知っていた。

 そのため、テロリストたちが誰を標的にしているかすぐにわかったのだ。

 

「シールド博士の説明が一番わかりやすかったんだけど、まぁしょうがないか」

「何がしょうがないの?」

「いやいやこっちの話。それより飯にしましょう。本当にもう腹が減っちゃって」

「ふーん……まぁいいわ。私もお腹が減ったしね」

 

 怪訝な顔をする気月をなんとか誤魔化し、作間達は事前に見つけておいたレストランへと向かう。

 周りを海に囲まれたI・アイランドでは新鮮な海の幸を楽しめるらしく、気月が見つけたのも魚介系のメニューが充実したレストランだ。

 そこで適当にパスタを注文した作間はなんとなく窓の外を眺め、ピタリとその動きを止めた。

 

「どうしたの?」

「………」

「何? 指さして……あら」

 

 無言で作間が指をさす方向を見る気月。

 そこで彼女が目にしたのは、固まって歩く数人の少年少女たちだった。

 作間も気月も、彼らの姿には見覚えがある。

 

「雄英の1年A組の子たちね。それに……メリッサ・シールドだったわね」

 

 確認するようにそう呟く気月の声を聞いて、作間も諦めたように頷く。

 緑谷(みどりや)出久(いずく)飯田(いいだ)天哉(てんや)麗日(うららか)茶子(ちゃこ)八百万(やおよろず)(もも)耳郎(じろう)響香(きょうか)

 作間も気月も雄英体育祭で目にしているため間違いない。

 そこにいたのは、まさしく雄英高校ヒーロー科の1年A組に所属する数名の生徒たちだった。

 

「なんでこんな所にいるのかしら?」

「わからない。それより問題は、メリッサ・シールドが一緒にいる事だ」

 

 行動を共にしている金髪の少女、メリッサ・シールドはデヴィット・シールド博士の娘だ。

 今回のテロリストによる襲撃に無関係でいられるとは思えない。

 そんなメリッサとヒーローの卵たる雄英の生徒たちが仲良くしているとなると、一体何が起こるのか……

 

「なんだかおもしろい事になりそうね」

「いや全然面白くない。ぜんっぜん面白くない。マジかよ……」

 

 何が起きるかさっぱりわからなくなった状況にウキウキしだす気月を前に、作間は深くため息を吐いた。

 

 

 

 その後、嫌な予感をビンビンに感じながらも作間は気月と共にI・エキスポ中のパビリオンを巡った。

 

 そして日が暮れ始める17時頃、なんとか気月の予定していた取材を全て終える事ができた二人は、パーティ出席の準備をするためにホテルへと戻っていた。

 

「もう二度とジャーナリストに変装なんてしたくない……」

 

 愚痴を言いながらも素早くスーツ姿に着替えた作間は、部屋に備え付けの椅子に深く腰掛けて目を閉じた。

 今までの気月の手伝いは前座で、むしろこれからが作間の仕事の本番だ。

 それに備えて、少しでも休息を取ろうというわけである。

 

「少しは休めたかしら?」

 

 そんな作間に気月が声を掛けてきたのは18時頃。

 目を開いた作間の前には、高級そうなベッドに腰かけて優雅に足を組む気月の姿があった。

 彼女も既に着替えを済ませたようで、赤を基調としたドレス姿からは熟れた女の色気が溢れ出ている。

 しかしそれには全く反応せず、あくびを堪えながら立ち上がった作間は大きく伸びをしていた。

 

「十分休めた。計画通り頼むぞ」

「えぇ。ちゃんと計画通り動くわ。私はね」

「……私は?」

「さっき見かけた不確定要素も含め、色々と想定外が起こりそうだもの。あなたがそれにどう対処するのか、楽しみにさせてもらうわ」

 

 嬉しそうにそんな事を言う気月に苦虫を嚙み潰したような顔で応えた作間は、彼女の後についてパーティ会場へと向かうのだった

 




気月さん描写少なくてアレだけど、基本的にエンジョイ勢だと思ってます。
トガちゃん相手に余裕見せ過ぎって言うか、インタビュー優先しすぎっていうか。
たぶんそういう人だもの。
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