個性使ってヒーローのラブドール作ってみた   作:マイティP

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くっ、爆轟ママはヒーローじゃねえから登場は無理だ……すまねぇ!


第3話 招かれざる客

 ビデオ撮影を三日後に控え、作間はビデオ会社『RoD』の社長である夜見という男から送られてきた今回のビデオの企画書に目を通していた。

 ヒーローのそっくりさんモノという強みを、このビデオ会社が持つ特色を生かして仕上げる、かなりハードなものになる予定である。

 

「裏に流してもかなり売れそうだな。義爛が喜びそうだ」

 

 ヴィランになってるような連中がただイチャイチャするような作品を好むことはない……というのは流石に偏見ではあるが、ヒーローを辱め虐げる内容の方が売れるのは事実である。

 今回のビデオではヒーローランキング上位で活躍しているヒーロー、つまり多くのヴィランに周知され憎まれている存在を使う予定であるため、この内容はより大きな効果を生むだろうと作間は踏んでいた。

 

「しかし、随分と遅いな……何やってるんだあいつは」

 

 腕時計に目を向けてそう呟くと、作間はタブレットの電源を落としてその場に立ち上がる。

 店員、憑城庵が給料として渡された金を持って買い物に出かけて既に数時間が経っている。

 ネットやラジオをチェックする限り女子高生ヴィランが捕まったなんてニュースはないから心配はしていないが、何か面倒な事になったんじゃないかと作間は思っていた。

 そんな時、店の扉についている鐘の鳴る音が響いた。

 

「いらっしゃ」

「ただいまでーす!」

「なんだお前か」

 

 入ってきたのは大量の買い物袋を腕に下げた庵だった。

 よほど楽しんできたのか、満面の笑みを浮かべた彼女は全身から喜びのオーラを振りまいている。

 

「そうでーす。お前でーす。でもその反応は酷くない?」

「店員なら裏から入れ。買いたいものは買えたのか?」

「それはもう! いやーもうこれだけお金貰えちゃうとコンビニバイトなんて二度としたくないですね!」

 

 買い物袋を見せつけるようにくるりと回る庵。

 しかしその時、彼女の背後の扉が勢いよく開き、何者かが彼女を羽交い絞めにした。

 

「おい、金を出せ!」

 

 そこにいたのは巨大な熊の姿をした強盗だった。

 毛深い手からは鋭い爪がのぞいていて、それを庵の首筋に突き付けている。

 まさかの展開に作間は深くため息を吐く。

 

「……このあたりにまだこんなバカがいたのか」

「あぁ!?」

「うわぁ。店長、あんまり挑発しないでくださいよ。捕まってるのは私なんですよ?」

 

 既に裏社会において『理想郷のヒーロー人形』はそれなりに知られたものとなっている。

 当然、店があるこの町の裏社会における知名度はかなりのものだ。

 そんな場所に殴り込みをかけるのは色々な意味で命知らずなのか、まだヴィランとなって間もないか、情報を得て突発的に動いたのだろうという事が伺える。

 

「なんでこんな路地裏の小さな店に金があると思うんだ?」

「こんなガキがこんだけ高いもん買いまくってりゃすぐわかるんだよ! 金はあるはずだ!」

「あぁそういう……でもやめといたほうがいいぞ。いろんな意味で。俺もやめてほしい」

 

 強盗が何も考えずに行動していると判断し、作間は少し宥めてみる気がした。

 なんとなく金に困っている雰囲気は察しているため、今なら血迷ったというだけで見逃してもいいつもりだった。

 もちろん強盗を起こすほどに追い詰められた人間がそれで引くわけがない、というのも作間はわかっていたが。

 

「うるせえ! さっさと金をよこせ! さもないと……!」

「この女を殺す! っていうつもりでしょ! 絶対そうでしょ!」

「なんだこのガキ!? 舐めてんのか!」

「……熊個性の人のは舐めた事ないですねー」

「あぁ!?」

 

 強盗と庵のアホみたいなやり取りの中、自分への意識が切れたのを見て、作間は動いた。

 やる事は簡単、自らの個性を発動させながら、右手を素早く振りぬくだけだ。

 相手が引き際を間違えた以上、こちらが譲歩する必要はない。

 拘束した庵に気を取られていた男が作間に目線を戻した時には、既に()()()()()()()()()を持った作間が腕を振り切った後だった。

 

「一応聞くが、大丈夫か?」

「ぎゃー! 買い物袋に血が! ひどいです店長! この熊さんの()()()()()なら先に言ってくださいよぉ!」

「問題なさそうだな。あぁ、面倒なことになった」

 

 頭から真っ赤な血液を浴びる羽目になった庵だが、自分が捕まっていたことなど覚えていないかのように、せっかく買ってきたバッグや化粧品がおじゃんになった事に嘆いている。

 しかし嘆きたいのは作間も同じだった。

 血液という汚れは落ちにくい。血塗れになった店内を掃除するとなると、憂鬱な気分になるのも仕方がないことだろう。

 

 それでもいつまでも嘆いているわけにもいかず、二人は片づけを行うことにした。

 そんな中、庵は買い物袋内の無事な商品を発掘しながら、ちょっと気になることを作間に聞いてみることにした。

 

「ところで店長。いつの間にそんな物騒な武器みたいなもの持ってたんです?」

「事前に記憶しておいた『骨の剣』だ。それなりに知られるまでは強盗も結構多かったから、色々準備が必要だったんだよ」

 

 先ほど作間の掌から出現し、熊男の首を一刀両断した後、今は壁に立てかけてある『骨の剣』。

 それは作間が事前に作り出して記憶しておいた、人体加工武器の一つだ。

 特に『骨』は強度も高く、研げば凶器にもなるため重宝しているのである。

 

「へぇ~。じゃあもっと色々あったりします?」

「あるが……面倒だから見せはしないぞ。それよりさっさと手を動かせ。お前には次に床を拭いてもらうからな!」

「えぇ~!」

「そもそも後を尾けられたのはお前の責任だ。もっと警戒するんだな」

「はーい。気を付けまーす」

 

 本当に反省しているのかしていないのかわからないような庵の声を聴きながら、作間は男の死体を袋に詰めて店を出た。

 そこに人の姿がないのを確認して死体袋を担ぐと、作間は普段は利用しない『特殊なゴミ捨て場』へと向かう。

 市のゴミ収集車が回収しに来るような場所ではない、裏社会の人間が後ろ暗いものを捨てに来る場所だ。

 誰にも見つからないように素早くそこに死体を捨てた作間は、急いでその場から店に戻った。

 

 

 

「あっ店長。お客さんです」

「どうも。お邪魔しています」

 

 作間が戻った店にいたのは、ソファでくつろぐ庵と、店の中央に立つ新しい客だった。

 その客の口調は丁寧で、来ている服もスーツとまともであるが、しかし。

 頭部が黒い霧状の、異様な姿をした客だった。

 

「ウチの商品を買うようなタイプには見えないが、本当に客か?」

「えぇ。黒霧と申します。今回は仕事の依頼に参りました」

「おっとそうか。そりゃ、見た目で判断して悪かったな」

「お気になさらずに」

 

 そう言いながらも作間は警戒を解かない。

 色々なヴィランに触れ合ってきた作間は、今回の相手はなかなかにヤバい相手である事を感じ取っていた。

 それでも仕事を依頼する以上は客であるため、表面上はにこやかに接客を行う。

 

「で、ウチの商品の事を知ってるみたいだから聞くが、誰が欲しいんだ?」

「ウチの商品は素晴らしいですよ! なんだったら私が一緒に体験コースであいたぁっ!」

「今真面目な話してるからちょっと黙ってろ」

「はーい。ごめんなさーい」

 

 割と真面目に庵を叱りつつ、頭を叩く作間。

 黒霧にはそのやり取りを見て軽く笑い声を零し、そして依頼内容を告げた。

 

「オールマイトを」

「……何だって?」

「オールマイトの人形を作っていただきたいのです。本物と全く同じの。それがこの店の商品なのでしょう?」

「おーっと、こいつは驚きだ。ホモかよ」

「いえ、私は純粋に彼の肉体に興味があるだけです」

 

 動揺を隠すためにふざけるもマジで返され、作間は黙り込んだ。

 オールマイトは現在のナンバーワンヒーロー、正義の象徴とも称されるムキムキの男性ヒーローだ。

 おそらく本当の意味で『誰でも知ってる』レベルの有名人である。

 これだけ怪しい雰囲気の人間がそんなヒーローの肉体を欲しがるなんて、絶対にマトモな目的じゃない。

 作間はそのことを察しつつも、首を横に振って応えた。

 

「残念だが、今は無理だ」

「……何故でしょうか」

「落ち着けよ。今はって言ったろ? 実は俺、直接オールマイトを見たことがないんだよ」

 

 訝しむ黒霧を信用させるため、作間は正直に理由を説明する事にした。

 

「ウチの商品は俺の個性で作ってる。それは知ってるんだろ?」

「えぇ……素晴らしい個性ですね」

「だが、人をそのまま作るならそいつを直接見たことがなきゃ無理なんだ。俺が一度も直接見たことがないオールマイトは……」

「作ることはできない、と」

「その通り。だって男のヒーロー欲しいなんて事言うのは相当珍しい客だけだし、今まで需要なかったからな。仮に見ててもとっくに忘れてるよ」

 

 『理想郷』にやってくる客はある程度の金を持つヴィランや金持ちが大半で、そういった連中はほとんど女性ヒーローを目当てにしている。

 一応男性ヒーローの人形を買いたいという客もいるが、それにしたってイケメン系狙いの金持ちババアだけ。

 そんなわけでわざわざオールマイトの姿を記憶するような機会に、作間は恵まれなかったのである。

 

「だから今は無理なんだ。だが、ちゃんと金を払ってくれるなら依頼は受ける。なんとか姿を見つけて作成してやるよ」

 

 黒霧はヤバい相手ではあるが、それでも作間にとっては客である。

 元々、男性ヒーローもそのうち目にしておく必要もあると思っていた作間は、仕事を受けることを黒霧に告げた。

 そして黒霧もまた、作間の話に納得したらしい。

 

「……わかりました。いいでしょう。依頼させていただきます」

「連絡先は?」

「こちらに」

 

 そう言って渡されたメモ書きには、いずこかの電話番号が書かれている。

 作間はそれをポケットにしまい込むと、仕事にかける日数を考える。

 オールマイトは神出鬼没だが、彼の情報網はそれなりに広い。見るだけならそこまで時間はかからないだろうと思えた。

 

「ちょっと忙しいから二週間は貰うぞ。文句ないよな?」

「えぇ。それくらいがちょうどいいでしょう。期待していますよ」

「うぉっ!?」

 

 黒霧が言葉を言い終わると同時だった。

 彼の頭部の霧が一瞬で広がったかと思うと、その姿が店内から消えたのだ。

 まだ近くにいるかもと警戒した作間だが、ワープのような個性を用いたと当たりをつけると、ようやく安堵の息を吐くことができた。

 

「あー、もう。なんでいきなりああいう客来るかな。疲れた。本当」

「言われた通り私空気に徹してましたよ! というか隠れてました!」

「知ってるよ! さっさとソファの裏から出ろ!」

 

 一度作間に叩かれて以降、ソファの裏でじっとしていた庵がのそのそと出てくる。

 その手には開封済みのお菓子の袋が握られていた。

 

「………」

「あっ。食べますか? あとちょっとだけですけど」

「……いや、なんかもう疲れた。ちょっと休憩してくるから、お前も片付け終わったら自由にしていいぞ」

「えぇ~! 私が片付け!?」

「頼んだぞ」

 

 一気に気が抜けた作間は全ての片づけを庵に任せ、二階にあるベッドに倒れこんだ。

 下の階では片付けを任された庵が騒いでいるが、それもすぐに聞こえなくなる。

 疲れからあっという間に意識を手放した作間は、しばしの間仮眠を取ることにした。

 




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とはいえ、決まってもそんなに影響するわけじゃありません。今回はあくまで初めてアンケート機能使うお試しです。

次回はビデオ撮影だ!

作中でAVに出たら盛り上がりそうなキャラは?(ミルコ以外)

  • ウワバミ
  • マウントレディ
  • バーニン
  • マンダレイ
  • ミッドナイト
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