個性使ってヒーローのラブドール作ってみた 作:マイティP
ビデオが発売して一週間ほどが経ったある日。
顧客の一人から新たな女性ヒーローが活動を開始するという情報を得た作間の姿は、『田等院駅』という都心から少し離れた駅の中にあった。
「頼むから騒ぐなよ。遊びに来たんじゃないからな」
「え? でもせっかくだから美味しいレストランとか良さげなカフェとか探しましょうよ! もったいなくない?」
「……やっぱり置いてくればよかったか」
そして彼の隣には以前買ったブランド服を着た庵の姿もあった。
当初、作間は一人で行動するつもりだったのだが、ビデオ発売以降テンション高めな庵が何をやらかすか見当がつかないため、自分の目の届くところに置いた方がいいと判断したのだ。
しかし移動中もずっと喋りかけてくる庵のせいで、既に作間はうんざりとした表情を浮かべていた。
朝早くに始発電車での移動だったため、本当なら移動中にも仮眠を取るつもりだったのだ。
「まぁ、いい。情報によれば、ここらで何か騒動が起きないか張ってるらしい」
「じゃあトラブル待ちってこと?」
「そうだ。それまでは適当に時間を潰してもいいから、絶対に騒動になるような事はするなよ」
「やったぁ! それじゃあ行きましょう!」
かくして折れた作間が妥協した事により、二人は買い物をしながら街を歩くことになった。
しかしそれも長くは続かない。
というのも、二人が町の方に向かって歩き始めて幾らかもしないうちに、ついさっきまでいた田等院駅に巨大な人影が出現したからである。
おかげで彼らはUターンして駅に戻ることになった。
「タイミング最悪すぎますよー。空気読めませんよねーヴィランってやつは」
「それをお前が言うのか……」
既に集まっていた野次馬の後ろにつくと、戦闘が始まっていた。
ただし、お目当ての女性ヒーローの姿はない。
そこにいたのはシンリンカムイという若手のヒーローを始めとする数人のヒーローたちだった。
「……巨体の相手には慣れてないのか? まぁ好都合だ。これだけの騒ぎならその新人ヒーローとやらも姿を現すだろう」
何かしら巨大になる個性を持っているらしいそのヴィランは、ヒーローに囲まれながらも周囲の建物を破壊したりして多くの被害を出し続けている。
上手く止めなければ更なる被害が出る可能性があるため、ヒーローたちはなかなか思い切った行動に出ることができないようだ。
暴れている駅では当然ながら電車が止まり、しばらく帰れなくなった事を悟った作間はその場にいるサラリーマンたちと同じようにため息を吐いた。
「お目当てが現れても帰れそうにないな。しばらくは買い物に付き合ってやってもいい……ぞ? あれ?」
そこで振り返った作間は、いつの間にか庵の姿が消えていることに気付いた。
周囲に目を向けるが、そこにあるのはヒーローとヴィランの戦いに目を向ける民衆の姿だけだ。
焦りながらもスマホを取り出した作間だが、そこで電話の邪魔をするように周囲から歓声があがる。
非常に目を引く、新たなヒーローがその場に現れたのだ。
「キャニオンカノン!」
必殺技の名を叫びながらヴィランに飛び蹴りをかましたそのヒーローは、作間が事前に得た情報通りの『巨大化』個性を持つ女性ヒーローだった。
そのスタイルの良さがよくわかるタイツ型のヒーローコスチュームを身に纏っており、ビジュアル面での受けを狙っているのは誰の目から見ても間違いないだろう。
そんな彼女は巨大化した状態で尻を強調するようなポーズを取り、カメラを構える民衆たちに向けて自己紹介を行った。
「本日デビューと相成りました!
巨大なヴィランを更に巨大化して倒すという鮮烈なデビューを飾ったマウントレディ、そんな彼女の姿を作間はしっかりと捉えていた。
間違いなく人気が出るだろう。実力は不明だが、巨大化の個性はそれだけで強力だ。それはつまり、『理想郷』においても良い商品になりうるということである。
予想以上のアタリを引き当てた喜びに笑みを浮かべながら、作間はその場をさっさと離れて庵を探そうとした。
そんな時である。
「わぁ~お姉さんかっこいいです! ファンになっちゃいます!」
「ホント? ありがとーっ! これからも応援してね!」
「ーーーっ!?」
興奮が一気に吹き飛んで、作間は声のした方向へ――巨大化を解除したマウントレディがいる方向へと振り向いた。
聞き違いであってくれと願った作間だったが、そこにはマウントレディへと話しかけている庵の姿があった。
「何やってんだあのバカ!?」
幸い、二言三言交わして軽く握手しただけですぐに会話は終わった。
安堵するのもつかの間、会話を終えた庵がまっすぐに駆け寄ってきたため、作間は怪しまれない程度の早足でその場を離れるのだった。
「頼むから勝手な行動をしないでくれ。寿命が縮んだ」
その後、もうこれ以上ヒーロー絡みのごたごたに巻き込まれたくない作間は、庵と共に近場のファミレスに避難していた。
当然作間が問いただすのはさっきの勝手な行動の事だ。
庵がメニューに目をやっていたため答えは期待していない作間だったが、そこで返ってきたのは割とマトモな返答だった。
「え~。でも、どうせなりきるんだから知っておきたいでしょ? 直接話したらだいたいわかるよ?」
「たとえば?」
「ほら、何考えてそーとか、なんとなくの性格とか」
行動自体は突飛だが、一応考えての行動ではあったようだ。
口から出まかせを言って誤魔化している可能性もあるが、とりあえず作間はそれを信用することにした。
作間たちにとってヒーローは避けるべきものだが、別に接触するだけで一気に危険になるわけでもないのだ。
「……わかった。確かにそうかもしれないが、一言くらい言ってから行動しろ。いいな?」
「了解でーす! じゃあ好きに頼んでもいいですか?」
「じゃあってお前……たかがファミレスでの注文くらいで遠慮するな。俺が普段何万の商品売ってると思ってるんだ」
「それもそうですね! じゃあ……」
モーニングセットだけを頼んだ作間の前で、メニュー表を眺めながら好き勝手に注文し始める庵。
朝からそんなに食べて腹は大丈夫なのかと思いながら、作間はコーヒーを口にするのだった。
それからしばらく経ち、正午を過ぎた時間になっても二人は田等院を離れていなかった。
とっくに再開している電車が問題なのではない。
庵が歌いつかれるまでカラオケに籠った後でショッピングに付き合っていたところ、この町でオールマイトが発見されたという話を聞いたからである。
黒霧という怪しげな男からの依頼ではあるが、これを機会に達成してしまおうというわけだ。
問題は、ある理由によって駅から離れられなくなってしまった事である。
「おなかいたい……」
「朝にあんだけ食っといて昼にパフェ食えばそりゃ腹も壊すだろうよ」
「正論言ってないでなんとかしてくださいよぅ!」
見た目だけは完全に美少女かつお嬢様っぽい服装の庵だが、お腹を押さえながらよたよたと歩いていては台無しだ。
別に見た目なんかどうでもいい作間ではあるが、そんなのと並んで歩いているのは周囲からの視線が面倒な事になっていると感じ始めていた。
「胃薬やるから。それ飲んで駅のトイレにでも行っとけ。俺はまだ探すから」
「うぅ……店長がいつになく優しい」
「いいからもう黙っとけ。そこまでは送るから」
漏らされでもしたら溜まったもんじゃないと駅のトイレまで庵を送り届け、作間は再び町へと繰り出した。
そうしてなるべく人の多い方に向かって歩いていると、どこかで爆発音が聞こえたような気がして作間はそちらに足を向けた。
もしもまだ町にいれば、№1ヒーローなら騒動を見過ごさないはず。
そう思っての行動だった。
そして作間が辿り着いた田等院商店街は、戦場さながらの荒れっぷりとなっていた。
その中心にいるのは目玉のついた泥のようなものに覆われた学生らしき子供で、藻掻きながら周囲に爆発を振りまいている。
既に何人ものヒーローが到着しているが、子供を気にして誰も有効な行動をとれていない。せいぜいが周囲の人間の避難誘導だけだ。
マウントレディも駆けつけていたが商店街が狭くて入ってこられないらしく、入り口で待機するにとどまっている。
オールマイトがいない事に落胆した作間は、しばらくは頭上にあるマウントレディの尻が揺れるのを眺める事にした。
「流石に胸や股間部分は生地が厚いか……」
そんな事を呟きながら待機していると、民衆の中から子供が飛び出してきて泥ヴィランに捕まっているらしき子供へと駆け寄った。
それには大して興味を抱かなかった作間だったが、次の瞬間マウントレディの尻ではなく商店街の中央に目を向けることになった。
「やっぱりきたかオールマイト!」
それからはあっという間だった。
誰も手出しできなかった泥を拳を地面に叩きつけて起こした風圧だけで子供から剥がし、劇的勝利を決めてしまったのだ。
天候まで変えるほどのパワーはもはや反則だ。初めてオールマイトを生で見た作間はそんな事を思った。
「ただまぁ、目的は達したしな。庵を回収してさっさとこの町から離れよう」
作間はオールマイトの全身をしっかり目撃した。これで後は店に帰ってオールマイトを作れば黒霧からの依頼は達成だ。
慣れないことをして疲れた作間は、まっすぐに駅に向かって庵を回収すると、飛び乗るようにして電車に乗ると目を閉じようとした。
「店長、眠いんですか?」
「見りゃわかるだろ……」
「私、お腹痛いのは治りましたけど、今度は普通に気分が悪いんですよね」
「……なぜそれを俺に言う?」
眠そうに片目だけ開けて言う作間に、本当に少し顔色を悪くしながら庵は言う。
「何か気分をよくするような話してくださいよー! お願いしますよー!」
「無茶苦茶かお前……次に撮るビデオの内容マウントレディに決めたからそれで妄想でもしてろ。俺は眠いから――」
「ほんと!? やったー! 一目見てティンッと来てたんです! へっへっへーこいつは次のビデオにいただきたぜーみたいな!」
「………」
「やっぱりあの人はあのお尻がいいですよね! 私ちょっとお尻中心でやってみたいんですけど……ねぇ店長! 聞いてますか?」
「言うんじゃなかった……頼むから寝かせてくれ」
黙らせようとした結果もっと騒がしくなってしまった庵のせいで、帰りの道中でも眠ることができなかった作間。
彼が安らかな眠りにつけたのは、夜になって帰り着いた店でベッドに倒れこんだ瞬間であったという。
第一回アンケートのマウントレディとミッドナイトが超接戦でなんか感動した。
最終的にマウントレディがぶっちぎって更に感動した。
そんなわけで現在のアンケートは投票終了です。
後で活動報告に結果とか載せておきます。
新しいアンケートは明日また何か考えて加えときます。