個性使ってヒーローのラブドール作ってみた   作:マイティP

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活動報告更新しました。
アンケートやタイトルについてとか書いてるのでよかったらどうぞ


一章 狂気の坩堝
第6話 狂える少女


「ふあぁ~、よく寝たー」

 

 朝、憑城庵はいつも通りに『理想郷』の地下にある一室で目を覚ました。

 その部屋は元々は倉庫として使われていた部屋で、それなりの広さがある室内には、まだ箱詰めにされた幾らかの荷物が置かれている。

 彼女が眠っていたのは、そんな部屋の中央に置かれた季節外れの炬燵の中だった。

 

「ちょっと夜更かししすぎちゃったかなー」

 

 眠そうに眼をこすりながら立ち上がった庵は軽く身だしなみを整えると、シャワーを浴びるために階段を上がる。

 そしてさっぱりとした気分になって『理想郷』の店内に行くと、そこには既に作間の姿があった。

 いつも通りのスーツ姿で、タブレット片手にソファで寛いでいる。

 

「随分と遅かったな。何かあったか?」

「最近の撮影を思い出すと胸が高鳴って寝れなかったんですよねー。プッシーキャッツの人たちって全員性感帯違うからもう楽しくて楽しくて」

「そうか、いつも通りみたいだな」

 

 春になり、庵が出演したビデオの数は5本に増えていた。だいたい一か月に一本のペースである。

 おかげで彼女の欲望はほどよく満たされており、今ではビデオ撮影以外の退屈な仕事もきちんとこなすようになっていた。

 それでも、現在の彼女にとって一番の楽しみがビデオ撮影である事に変わりはない。

 

「だから次のお仕事も気になってしょうがないんですよねー。次の企画はまだなのです?」

「ビデオはまだまだ先だ。我慢しろ」

 

 そう言って再びタブレットに目線を戻した作間を前に、庵はむぅと腕を組みながら考える。

 庵が『理想郷』の店員として任されている仕事は留守番と掃除だ。接客には未だ不安があるということで殆ど任せてもらえていない。

 それ以外には体験コーナーで客相手に()()()()()()()()()を行ったりもするが、基本的に彼女は暇なのである。

 幸い多額の給料はもらっているため娯楽用品やファッション用品には事欠かないが、生憎と彼女はそれで満足できるような人間ではなかった。

 だからというわけではないが、いい機会だと思った庵は少し前から考えていたことを作間に頼んでみることにした。

 

「店長! 私、ボーナスが欲しいです」

「はぁ?」

「ほら、私がここにきてもう半年くらい経つわけじゃないですか! ボーナスが欲しいです!」

 

 あまりにも唐突な申し出に驚く作間に、庵は畳みかけるようにボーナスボーナスと連呼する。

 最初は流していた作間も横に座って耳元で喚かれ続けるのを嫌がったのか、庵を押しのけながら口を開いた。

 

「わかったわかった! 何が欲しいんだ? お前の事だしどうせ金じゃないんだろ?」

「あれ? わかっちゃいますか」

「金で買えるようなもので満足する奴じゃないだろう。何が欲しいんだ?」

「えっとですねー。実は―――」

 

 そうして庵が言った言葉を聞いて、作間の表情は驚愕に変わった。

 庵の願いはとあるイベントに参加するにあたり、作間の許可とバックアップを願うものだったのだ。

 

「それについてお前には話してなかったはずだが?」

「……えっへへー」

「笑ってごまかすな。まったく……」

 

 元々、そのイベントについての参加依頼は作間に来ていたものだ。

 どうやら庵はそれを盗み聞きしていたらしい。

 作間はその事実に少しだけ悩む様子を見せたが、すぐに結論を出した。

 

「まぁ、そうだな。別にいいだろう」

「おぉー! まさかオッケーが出るとは」

「どのみち情報を集めるつもりではあったからな。だが、お前が直接見てくるのならそっちの方が早いだろう」

 

 どうやら庵の『ボーナス』は作間の思惑と合致する内容だったようだ。

 庵はそうと決まれば話は早いとばかりにスマホを取り出し、作間に向かってもう片方の手を差し出した。

 彼女が何を求めているのか察した作間は、ため息を吐きながら立ち上がり、その手にメモを握らせる。

 

「電話番号はそれだ。くれぐれも無理はするなよ」

「りょーかいでーす」

「……自分の身と店の秘密は守れよ。わかったな? ()()を使えよ」

「わかってますって!」

 

 生返事しか返さない庵に辟易しながらも、作間は再び手元のタブレットへと視線を落とした。

 そんな作間の隣で浮かれる庵は、すぐさまメモにあった電話番号へと電話をかける。

 数回の着信音の後、庵は電話に出た音が聞こえるなり話しかけていた。

 

「こんにちは黒霧さん!」

「あなたは?」

「店長にお話しして断られてたお話、私が受けます!」

「……は?」

 

 電話を受けただろう黒霧が困惑する声を聴きながら、それに一切構うことなく庵は浮かれた声で宣言する。

 

「オールマイト殺しとかすっごい面白そうじゃないですか! 私もご一緒させてください!」

 

 

 

 遡ること一週間ほど前。

 黒霧は作間に対して電話をかけ、自分たちの『オールマイト殺し』計画への参加を依頼した。

 以前に依頼していた雄英ヒーローの人形(ドール)作成もきちんとこなしてくれたため、作間の()()も調べた結果、雄英に行くなら役に立つだろうと判断されたのだ。

 作間にとっては雄英生徒を記憶(メモリー)する機会になり、黒霧たちにとっては生徒の人形を有効利用したり、単純に戦力になるだろうと交渉を行ったのだが、結果は失敗。

 どうせ雄英体育祭で見る機会なら幾らでもあると言われてしまえば、黒霧には何も言えなかったのだ。

 

 そんな失敗に終わった話だったはずだからこそ、その作間の部下である庵から計画への参加を持ちかけられるのは意外だった。

 しかし、協力してくれるというのなら願ってもない事だ。

 ()からの指示で『理想郷』の関係者を歓迎するように指示を受けていた黒霧は、快く憑城庵を拠点であるバーへと転移させた。

 

「うわぁ~! ウチのお店も結構暗いんですけど、こっちのお店はまたなんか違う雰囲気ですね!」

「ありがとうございます。死柄木弔、こちらの方があの『理想郷』の店員の方です」

「うっわ超すっごいファッション! 私は憑城庵です! よろしくお願いしゃーす!」

 

 店内を見回しながら、いつも通りに満面の笑みを浮かべながら挨拶をする庵。

 そんな彼女に対し、大量の掌を纏ったような姿(超すっごいファッション)をした男――死柄木弔の返事は不満と苛立ちに満ち溢れたものだった。

 

「おい黒霧、このバカをさっさと放り出せ」

「いきなりバカなんて酷くない?」

「黙れ。だいたい何しに来たんだ。何しにつれてきた黒霧」

「落ち着いてください死柄木弔。彼女は前に言った『理想郷』の者です」

「『理想郷』……?」

 

 見るのも嫌だとばかりにしっしっと腕を振っていた死柄木は、黒霧の声を聴いてようやく庵の方を見た。

 他人の事なんて微塵も興味がない彼も、その店の事は自らの師との会話の中で何度か聞いたことがあったのだ。

 

「あぁ! 今までにないやり方でヒーローを虚仮にしてる店だな。話は聞いてる。笑わせてもらったよ」

「え? ただ単にラブドール売ってるだけだよ?」

「それは結果的にヒーローを貶めている事に変わりはありませんよ。あのビデオも同じです。胸がすく思いをしたヴィランは多いでしょう」

 

 店長である作間の思惑が何であれ、店の趣旨を死柄木や黒霧の言う通りの方向で捉えている人間はかなり多い。

 というか実際、下卑た目的で人形を買っている客が大半なのだから間違ってはいないのだ。

 

「先生から聞いた。本物と同じオールマイトの肉体を提供したのもお前らなんだろ?」

「あー。店長がそんなことやってましたね。そういえば」

「お前みたいなガキは大嫌いだが、あの店のやり方は面白いと思ってる。だから参加を許してやるよ」

「やったー! ありがとうございまーす!」

 

 きゃーきゃー飛び跳ねて喜ぶ庵を見ても、死柄木は何も言わない。

 そんな珍しい姿を見て、黒霧は思わず口を出した。

 

「よろしいのですか死柄木。まだ個性の確認もしていませんが」

「参加したいならすればいい。『理想郷』とはつるんでおいて損はないだろ……それに」

「それに?」

「有象無象の雑魚ばっかじゃつまらないと思ってたんだ。ちょうどいいだろ」

 

 そう言って黒霧を見る死柄木の目には有無を言わせぬ光があった。

 実際、この計画に際して黒霧が集めたヴィランは数を多く見せるためだけの雑魚ばかり。

 目の前の少女がどの程度使えるかが不明でも、数合わせ以上の役に立つならそれでいいのだ。

 二人がそうやって話している間、暇そうにしていた庵は二人の注意を引く様に大げさに手を叩くと、腰に手を当てて二人の前に立った。

 

「それじゃ改めて自己紹介しますね。憑城庵、個性は憑依! 趣味は憑依した後で取り返しがつかない事をする事!」

「憑依……ですか」

「そう! 他人の体で自殺とか! ドラッグやったり指落としたりとか! 色々できちゃいますよ!」

 

 お得なセールスポイントを紹介するサラリーマンのように言う庵に対し、二人の反応は案外冷めたものだった。

 黒霧はその個性の有用性について考えているようだし、死柄木に至っては既にそっぽを向いて聞こえないふりをしていた。

 

「無視しないでくださいよ!」

「お前の紹介になんて興味はない。本番当日にちゃんと役立つことを証明しろ。それくらいできるだろ」

「あぁなんだ! それくらいならお安い御用ですよ。なんたって……いやまぁ準備は万全ですからね!」

 

 何かを言いかけて口ごもりつつも、庵はそう言って胸を張った。

 そんな彼女を一瞥して、死柄木は黒霧に合図を出した。

 個性発動のために霧に包まれていく庵に、機嫌がよかった死柄木は一つだけ問いかけた。

 

「最後に聞いとこう。オールマイト殺しに参加するのはなんでだ?」

 

 死柄木は本当に、なんとなく気まぐれでそう聞いた。

 黒霧から電話の時の事は聞いていたが、それが全てなのかという事に少しだけ興味があったのだ。

 そしてそれを聞いた庵の答えは、果たして死柄木の期待通りのものだった。

 

「楽しそうだからってこと以外に理由っているの?」

 

 なぜそんなことを聞くのかわからない。

 霧の中へと消える刹那、そんなきょとんとした顔の庵が出した答えを聞いて、死柄木はほんの僅かに唇の端を上げて彼女を見送るのだった。

 





なんか面白そうな話を聞いたぞ
参加おねだりしたらオッケーでたぞ

作間
今はちょっと忙しいからかまってられない

黒霧
利害関係を考えれば受け入れるのはやむなし

死柄木
ゲームのパーティ的にモブばっかりもアレだから
濃いパーティメンバーがいた方がいい

個人撮影ビデオに出たら売れそうな1-A生徒

  • 麗日お茶子
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