王様候補の番剣達   作:ケツアゴ

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番剣

「ずっと黙っていてゴメンね。でも、関係者以外を巻き込むのは御法度だったんだ。それに……」

 

 流石に両親まで関わっていたのに何も知らなかった事でショックを受けた俺だが、そんな俺の姿にショックを受けたのは雫だ。少し心配そうな様子で俺に抱き付いて目をのぞき込んで来たから抱き締めて安心させてやった。

 

「俺が愛するお前を心配して無茶をやりかねないから、だろ? 大丈夫だ。お前を責めたりするかよ」

 

 ったく、何を無駄な心配しているんだか。俺がお前の意図を察せず怒るとでも思ったのかよ? いや、思ってないな。俺が分かってくれるって理解して、それでも俺が好きだから心配だったんだ。これは俺の落ち度だ。もっと俺がしっかりと想いを伝えていれば雫を不安にさせずに済んだのに……。

 

「おい、話の続きだ。そういう事は私が居ない場所で目障りにならない様にしていろ」

 

 あっ、自分が邪魔になるのは気が咎めるから二人っきりで楽しみなさいってか。まあ、そうするか。じゃあ、本題だ。

 

「雫、教えてくれ。どうして俺や桃ちゃんが襲われる事になったのかを」

 

 俺は巻き込まれた。そして俺には戦う力が宿っている。なら、知らなければならない。俺の問い掛けに雫は真面目な顔になり、少し離れる。惜しい気もするが、今は他事に気を取られている場合じゃ無いからな。何せ雫だって戦っているんだ。

 

 

 

「じゃあ、剣王についてだけれど、武勇が誉れとされた古代と違って今じゃそれ程でも無いってのは分かるよね? いや、世界チャンピオンとかは憧れるだろうけどさ。……簡単に言うと剣王になると願いが叶うんだ」

 

「例えば俺ならお前と幸せになりたい、とかか? まあ、俺の力で幸せにしてこそだけれどな」

 

「是非幸せにしてね。っと、話が逸れたね。まあ、君が言ったみたいに王具や臣具の使い手は相手が使える状態なら宿しているか何となく分かるんだけれど、宿していない人を殺しても微量だけれども力は貯まってしまうんだ。そしてその方法で力を得る事を選んだ奴を堕落した剣と書いて堕剣と呼ぶ。それに対抗する者達こそが番の犬じゃなく番の剣と書いて番剣なのさ」

 

「……成る程な。大体理解した。身体能力や治癒力の向上は使い手に与えられる者なのか?」

 

「正解! 因みに宿した物にどれだけ力を蓄えたかで上限が決まるし、力を引き出す努力をしなくちゃ上限の力を得られない。えっと、何に例えたら分かりやすいかな?」

 

 説明の途中、例として何を挙げるか迷う雫だが、鳥阿先生が口を挟む。その内容は意外な物だった。

 

「……ソーシャルゲームでキャラのレベル上限を上げるシステムが有るだろう。あれが力を蓄える事で、力を引き出すのはレベル上げだ」

 

「鳥阿先生、ソシャゲするのか?」

 

「……気晴らし程度でな。流石に今月は爆死続きでガチャを回せん。生活費が不味いからな」

 

「いや、それって……」

 

 少し課金廃人の疑惑が出て来たな、おい。他人と話すのが苦手だからってゲームに逃げてるんじゃ……。

 

「でさ、面倒な事に偶然目覚めた力に調子に乗って力を振るう馬鹿も居るんだ。願いを叶える為に一般人を襲うゲスもね。……ぶっちゃけ願いが叶うとか胡散臭いと思わないかい?」

 

 確かにな。周りを見れば雫の両親も似た反応だ。

 

「……そうなのか? 欲しいSSRが絶対出せるのではないのか?」

 

 あっ、絶対廃課金者だな、鳥阿先生。

 

「……さて、残りは王具と臣具の違いだが」

 

「それは私が話すよ。戦う道を選ぶにしろ選ばないにしろ、中途半端な状態は危ないからね。契約を結ぶついでに説明するさ……じっくりとね」

 

 鳥阿先生の言葉を遮った告げた時、雫は何かを企んでいる時の顔だった。あの顔を見たのは去年、俺の誕生日の事だった。

 

 

 

「プレゼントの準備が有るから待っていろって言われたけど遅いな」

 

 この日、俺は家にやって来た雫の頼みで自分の部屋の前で待たされていた。家に来る時にバックを一つ持って来たが俺の部屋に飾り付けでもしているのか? 気持ちは嬉しいけど、俺は一緒に過ごす時間が長い方が良いんだがなぁ……。

 

「も、もう入っても構わにゃ、構わないよっ!?」

 

 何か何時もと違って上擦った声、不信に思いながらも扉を開けた俺は固まってしまう。何せ扉を開けた時、目の前には女神様が光臨していたからだ。

 

 きめ細かい肌触りの良い肌、艶の有る黒髪。普段の余裕綽々な態度を装っているけれど実は限界ギリギリだ。目が泳いでいるし顔が真っ赤だからな。どうしてそんな風になっているかと言うと……裸エプロンだったんだ。俺もちょっと直視出来ない。

 

「ど、どうかな……?」

 

「俺の語録じゃお前の魅力を言い表せ切れない……」

 

 二人して沈黙のまま相手から顔を背ける。その時、結んだ布が擦れる音がしてエプロンが床に落ちてしまう。一矢纏わぬ姿に……はなっていない。エプロンの下はビキニだった。少し面積の少ない黒ビキニだ。……惜しい。

 

「ふふふ、ビックリしたかい? 見事に引っ掛かってくれたね。ドキドキしたかい?」

 

「……した」

 

 こ、此奴、全部演技だったのかっ!? 自分がいざという時になれば照れてしまうって俺に認識されているって分かった上で……。

 

「さてと……今日は君にこの格好で世話をしてあげよう。……襲ってみたくなったかい?」

 

 悪戯を企む時の笑顔を浮かべ、前屈みになって谷間の紐を指先で引っ張る。肝心の部分が見えそうで見えなかったのが残念。理性持つかな……?

 

 

 

 

 

「……あの日は良かったな。ちゃんと理性が持ったのが不思議な位に雫は魅力的だから……」

 

 この日、俺は詳しい説明をするからって雫の部屋で待たされていた。ベッドに腰掛け、あの時と同じ笑顔を見た事であの日の事を回想していた時、自分の部屋なのにノックをして雫が入って来たんだが女神様だな、マジで。

 

 風呂上がりなのか火照った体にバスタオルを巻いただけの体。あの笑顔を浮かべながら俺ににじり寄って来る。さ、流石に凄い色気だ。……きっと下に下着を着ているんだろうが。そう思わないと理性が持ちそうにない。胸の高鳴りを感じ、必死に真顔を装うが絶対バレている。

 

「さてと、君に私の王になって欲しいと言ったよね。実の所、剣王になれるのは王具の持ち主だけでね。私は臣具だから……まあ、別に構わないんだけれど」

 

「お前は叶えたい願いが無いのか? 胡散臭いと思ってるとはいえよ」

 

「いや、私の願いは君と一緒に幸せになる事だし、それは君が叶えてくれるじゃないか。でさ、王具持ちの勧誘がウザいし、君が私の王になってくれたら助かるんだ。ちょっとした契約で良いんだけれど」

 

「よし、なろう!」

 

「速攻だなぁ。まあ、君が思ってくれている証拠だし、嬉しくて堪らないよ」

 

 何が目的かは分からないが、口説く目的で雫を勧誘してるなら殺……許せない。雫は俺の彼女だ。俺は雫の方を抱き寄せ、雫は嬉しそうに抱き付いて来た。バスタオル越しに胸が押し当てられるが、この感触はまさか……。

 

「な、なあ、雫。そのバスタオルの下って……」

 

「当然裸さ。さて、君はどうする? バスタオル一枚の湯上がりの恋人とベッドの上で並んで座っている。据え膳食わぬは何とやら。私は君に恥を掻かせたくないなぁ」

 

 俺に抱き付き、そのまま力で押し倒す。え? ちょっ!? 力が強過ぎないか!? 抵抗しようにも俺の力じゃ敵わない。俺の上にのし掛かり、器用にボタンを外しながら俺に顔を近付けていた。俺の鼓動が高鳴っているのと同じで雫の鼓動が高鳴っているのも伝わって来る。

 

「いや、あのだな、雫」

 

「大丈夫大丈夫。私も君と同じで経験皆無だから」

 

「そうじゃなくって!」

 

 何度も思うが、此奴に手を出したいが勢いで出すのは嫌だ。だから耐えるが、向こうがグイグイ来て勢いで押し切られそうだ……。

 

「まあ、君の気持ちも分かるんだ。でもさ、君にとって必要な事なんだ。実は王具ってのは目覚めただけじゃ力が中途半端でね。王無き民は居ても、民無き王は居ないって事さ」

 

「……把握した」

 

 王になってくれってのは契約の事だったのか。まあ、それは良い。だが、この状況は何だ? この状況が契約ってんなら、契約を持ちかけて来た奴は……。

 

 

「おい、お前に契約を持ち掛けて来たのはどんな奴だ?」

 

「私の従姉妹の遥ちゃんだけれど……」

 

「なんだ、あのレズか」

 

 男じゃないのは一安心だな。って言うか、何やってるんだ、あの馬鹿。っつーか彼奴まで関係者かよっ!?

 

 

 

 

「はいはい、じゃあ契約を進めようか」

 

 俺の上に跨がったまま上体起こした雫はバスタオルをはだけさせ、胸を手で隠しながら妖艶に笑っていた……。

 

 




ストックも残り二つ  やる気の投下を!
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