王様候補の番剣達   作:ケツアゴ

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儀式

 俺と雫の関係は赤ん坊の時から始まっていた。まあ、祖父母の代から幼馴染だそうだし不思議でも何でもないんだけれどな。只、俺達の出会いは必然であり運命だったと思っているよ。

 

 どっちが先に好きになったとか、どっちの想いが大きいかなんて議論には興味は無い。幼稚園児の時にはキスを済ませていたし、小学校の時には既に恋人だって認識していた。まあ、そんな年頃の男女が仲良くしていたら弄くって来る連中も出て来るよな。

 

「成上と剣谷って結婚してんだろー!」

 

「未だしてないよ? 大人になったら絶対するけど」

 

「……そ、そうか」

 

 あの時のガキ大将は今では友人だし、披露宴には絶対招待する予定だ。まあ、雫と俺は小さい頃から恋仲で、その関係は愛が深まる以外は特に変わらない。まあ、高校生になった頃辺りで後ろから抱き締めながら胸を揉んだり、抱き合ってキスをしながら添い寝はしたけれど、それ以上には踏み込んでないんだ。絶対に娶るって決めているけれど、勢いとかで手を出すのはちょっとな……。

 

 雫も雫で冗談なのか本気なのか誘っては来るけれど、俺が乗らなかったら簡単に引き下がる。俺が手を出さない理由に納得しているし、嬉しいとも言われているよ。

 

 ……そんな風に雫の誘いに乗らなかったら俺だが、今正に雫に乗られてしまっていた。俺は上着のボタンを外されて前を露出しているし、雫はほぼ裸だ。顔を赤らめながら微笑む雫は手で胸を隠していて谷間しか見えない。腰の辺りに辛うじてバスタオルが巻き付いているけれど、今の手が自由な俺なら簡単に外せるだろうな。雫だって抵抗しないだろう。

 

 本当だったら止めるべきなんだろうが、王具の覚醒に必要な儀式だって言われている事が抵抗を鈍らせる。要するに手を出す理由を与えられて喜んでいるんだよ、結局。

 

「……ねぇ、女の子だってエッチな事に興味が無い訳じゃないって知っているよね?」

 

「……」

 

 興奮からか息が荒い雫だが、俺も同様に緊張と興奮を感じていた。惚れた女が半裸で自分に跨がって、手を出す事を正当化する理由をくれているんだ。胸の鼓動は早鐘の如く鳴るし顔だって熱い。全身の体温が上がるのを感じる中、雫は遂に覆い被さって来た。

 

「ま、待てっ!」

 

 今の雫は俺よりも力が強い。臣具の力を引き出すってのが俺より上なんだ。だから抵抗になるのは言葉だけで、儀式ってのが何処まで進める物なのか不明だから最後の理性が保ってている。だが、多分限界近い。覆い被さった時、腕を広げて俺に抱き付いたんだが、そうしたらモロに見えた訳だよ。今は俺の胸板に押し当てられている柔らかい物が。

 

「じゃあ、キスをしてくれ。……抱き締めてね」

 

 俺から自発的にする様に頼んだ癖にキスをしたのは雫から。それも唇を合わせるだけじゃない濃厚な奴だ。頭が蕩けそうな快感に最後の理性も崩壊間近な時、急に体が熱を発した。

 

「熱っ!?」

 

 興奮で体温が上がるとかじゃない異常な温度。こりゃ火傷したんじゃないかって驚いて叫んだ俺だが、熱は直ぐに収まって、まるで錯覚だったみたいに何も感じない。いや、違うな。何故か知らないけど凄い眠気だ。……雫の存在を感じていたいのに、それ以上に睡魔が俺を誘惑する。

 

「さて、儀式が終わったし、ゆっくりお休み。私も君を抱き枕にして眠らせて貰うから……明日から頑張ろうか」

 

 どうせなら俺が抱き締めたいが力が入らない。……何か最後に嫌な予感がするんだが、雫と一緒だったら絶対どうにでもなる。何せ俺の恋人で未来の嫁さんで女神様だからな。

 

 

「じゃあ、お休み。愛しい未来の旦那様」

 

 今度は軽いキスをされた辺りで俺の意識は完全に途絶える。体はクタクタなのに最高の気分で眠る事が出来た。

 

 

 

「……朝か」

 

 目覚まし時計が何時もと違う音を騒がしく鳴らす。どうも頭が上手く働かないな。目を開けるのも億劫だった俺は目覚ましのスイッチを切ろうと目を閉じたまま手探りして、何か柔らかい物を掴んだ、布に包まれているっぽいその物体には触った覚えがあって、何だろうかと揉んでみる。何か揉み心地が良いな。

 

「……朝から大胆だね。誘っているって事で良いんだね?」

 

 聞こえた声にまさかと思い目を開ければ最愛の恋人である雫が俺の隣で寝転がっていて、俺の手が揉んでいるのは雫の胸だ。分かってからも三回位揉んでから俺の頭に昨日の記憶が鮮明に蘇って来た。

 

「取り敢えず言っておこう。そのパジャマ可愛いな。おはよう、愛しい雫」

 

「おいおい、それだけかい? いただきます位言って襲い掛かっても良いと思うよ? おはよう、大好きな迅」

 

 雫が着ているのはピンクで花柄のパジャマなんだが、身長に合わせたサイズ選びなせいで胸が窮屈そうだ。……昨日の事を思い出しちまったよ。結局ハッキリ見えたのは少しだけだったのは惜しいよな。確かに此処で押し倒せば昨日よりもしっかり見えるんだろうが止めておこう。だったら今まで手を出さなかったのはどうしてだってなるからな。

 

 俺が理性を何とか制御していたんだが、雫は何を思ったのか俺の両手を掴んで自分の胸に触れさせる。もしかしてと思ったが……ノーブラだ、

 

「ねぇ、パジャマを左右に引っ張ってみてよ。軽くで良いからさ」

 

「まあ、軽くだったら……」

 

 流石に少し力を入れただけでパジャマがどうにかなるとは思えないし、それでも本当に軽く力を入れて引っ張っただけなんだよ。なのにボタンが弾け飛んで雫の胸が丸見えになった。急に解放されたもんだから揺れていたんだが、ついつい視線を向けていたのに気が付いて慌てて雫の顔に視線を戻せばしてやったりって笑顔だ。畜生、可愛いな!

 

 

「迅、今日は学校お休みね。風邪って事に……したら大勢の友人がお見舞に来るだろうから親戚の法事って事にしてさ。……君がすべき事は分かっているだろう?」

 

「ああ、そうだな」

 

 胸が丸見えの状態で雫の腕が俺の首に回されて、顔はキスが簡単な距離まで近付けられる。そう、俺がすべき事は明白だ。だから静かに頷いた。

 

 

「王具の効果で上がっちまった力の制御訓練だろ?」

 

「違うよ?」

 

「へ?」

 

 いや、絶対そうだと思ったんだけどな。……いや、そうだったな。

 

 

「おはようのキスが未だだったか」

 

「正解! 私は学校に行くけれど、ちゃんと昨日の内に訓練相手を用意して有るからさ。じゃあ、彼女との朝食に行こうか。先ずは着替えてから」

 

 雫は俺のキスを上機嫌で受けた後で着替えを始める。ついつい着替えを見てしまっていたが待たせているってんなら急がないと悪いよな。俺も用意された下着と服に着替えたんだが、雫の方はガン見だったな。

 

 しかし、訓練って何処でするんだ? 俺には訓練場所が思い浮かばなかった。少なくても近所にはそれらしい建物が無いからな。

 

「じゃあ、こっちね。新規一名様ご案内!」

 

 雫は俺の手を取ると壁に飾ってある絵に向かって歩き出す。あれって確か鳥阿先生が描いた絵だったよな? この時、俺はまさかと思ったよ。そして現実はそのまさか、伸ばした雫の手は絵の中に沈み、表面に波紋が発生した絵に俺達は吸い込まれて行く。おいおい、まさか此処まで非現実的な光景を目にするとはな。

 

「すっげ……」

 

 ただただ、そんな感想しか出て来ない。俺達は何時の間にか草原の中に立っていて、目の前には巨大な円形闘技場。海外の歴史ドキュメントや映画でしか見た事の無い光景に目を奪われる中、多分そうだろうって思っていた人の声が聞こえたので顔を向ければ、人数分の朝食を用意して俺達が話し掛けるのを待っていたらしい紫苑さんの姿があった。

 

 

「お早う御座います、迅さん、雫さん」

 

「紫苑さん、お早う」

 

「お早う、紫苑」

 

 挨拶を返せば鉄仮面みたいに殆ど変わらなさそうな顔の口元が僅かに緩む。彼女はクールビューティなんだけれど、心を許した相手には途端にガードが下がるからな。……ヴォルテクト相手には例外だけど。

 

 

「しかし、私が此処に居る事を疑問に思わないのですね。流石は私の親友…友人です」

 

「ま、まあ、杉林さんに会ったしな」

 

 その時から何となく紫苑さん達も関係者かなって思っていたんだ。だからその事には疑問は無い。有るとしたら別の事だ。

 

 

「なあ、その格好はどうしたんだよ? どう見てもライオンの……着ぐるみパジャマだよな?」

 

 そう、紫苑さんが着ているのは子供が喜びそうな着ぐるみタイプのパジャマだ。全身を雄ライオンのデフォルメされたみたいなので覆い、顔の部分だけ出している。何というかギャップで可愛いとさえ思ったんだけどな。……まあ、雫には劣るが失礼なので口には出さない。

 

 

 

 

「どうしたって、これが私の臣具ですが?」

 

 ……マジでかっ!?

 

 

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