王様候補の番剣達   作:ケツアゴ

9 / 9
修業 下

 問題です。貴方は友人である女子高校生の下着姿を偶然目にしてしまいました。相手は自分のミスだとして怒っていません。では、次に取るべき態度は?

 

「すいませんでしたぁ!」

 

 謝ります。いや、だって年頃の女の下着姿を見てしまったんだぜ? しかも一瞬つっても王具による強化でハッキリと見えていたし、開き直らず謝るのが一番だと思うんだよ。友達だしな、紫苑さんって。友達でなくても謝るけれど。

 

「いえ、私のミスなのは明らかなので頭を下げられても困るのですが。早く頭を上げて下さい。と言うか、口調が変わっていますよ?」

 

「だったら何か着てくれ!」

 

 最初に言っておこう。俺は雫の下着姿なら是非見たいが、他の女の下着姿を見たいとは思わない。だから高校生でも買える程度のエロ描写の漫画だって買わないんだ。寧ろ買ったら雫の奴が、自分が同じ事……いや、それ以上をしてあげる、とか言って来る。頻繁に下着姿の画像を送って来るしな。

 

 だが、見たいとは思わないのと何も感じないのは別だ。紫苑さんは美人だし、スタイルも雫の奴が胸が大きく色気が分かりやすいセクシー系なら、長身スレンダーで腰だって括れている。俺、実はスタイルに対してどっちが好きかとかは無いんだ。雫のスタイルだから好きだって感じでな。だからスレンダーな長身に清楚な下着姿の紫苑さんに色気が無いとは思わない。

 

 だから着ぐるみパジャマを脱いで下着姿のままで居られると非常に困る! 雫に誤解……は俺を信じてくれるのは確定だが、紫苑さんが下着姿で居た時間の倍を下着姿の雫と過ごす事になるだろうからな。……いや、別にそれは良いのか?

 

 そんな風に困る俺と違い、紫苑さんは羞恥心など見せずに困った風な声を出す。困っているのは俺だけどな!

 

「そう言われましても他に着替えを……臣具を着れば良いだけでしたね」

 

「……最初からそうしてくれ」

 

 ああ、駄目だ。流石に友人の下着姿をモロに見ちまったし、何か話題を探さないと。話すなら雫についてだよな? 雫が良いよな? 他に選択肢無いから雫にしよう。

 

 

「そう言えば雫はどうやって臣具に目覚めたんだ? 昨日は色々……あって訊けずにいたんだ」

 

「ああ、儀式で肌を合わせてキスをしたのですよね。迅さんが眠った後、雫さんが電話をして来ましたよ。このままズボンもパンツも脱がして朝から一発やるべきかと相談されたので、脱がし合うのも楽しみの一つではないかと提案しました。……余計なお世話でしたか?」

 

「いいえ、助かりました」

 

 彼奴、話したのかっ!? いや、流石に恥ずかしいな。つい敬語になりながら感謝する俺だが、紫苑さんもとんでもない事を提案するな。

 

「雫さんが目覚めた切っ掛けですが、あれは中学三年の夏、雫さんの部屋で女子会をやったのですが、私と雫さんとマリーちゃんが猥談で大盛り上がりしていた時です」

 

「猥談!?」

 

「卑猥な談義と書いて猥談ですがご存知で有りませんでしたか? ああ、それとも私が猥談をするのが意外で?」

 

 少しだけ楽しそうに笑う紫苑さんは成る程、ヴォルテクトの他にも実はファンが多いからな。彼奴は嫉妬なんかしないタイプだが、流石に最強無敵の生徒会長様が公然と口説いている相手にアタックする猛者は居ないけれど。

 

「……まあ、堅物なイメージが有ったからな。友人でも分からない事は有るもんだ」

 

「では、今日は更に二人の絆が深まったという事で。……話を戻しましょう。猥談の途中、雫さんが貴方にどうやって襲われたいのか言い出しまして、最終的に目隠ししたメイドとご主人様というシチュエーションについて熱く語っている途中でくしゃみをしたらポロッと」

 

「そんなのでっ!?」

 

「切っ掛けは人それぞれですので」

 

 それぞれにしても程が有るだろっ!? まあ、俺との事に興奮した結果だというのは嬉しいけれどな。

 

「まあ、王具やら臣具といった訳の分からない物について此処まで知識が有る時点で予想されているでしょうが、ヴォルテクト様の家は代々番剣を支援していまして、十万円課金したのに欲しいSSRキャラがすり抜けばかりで来ない事に落胆した時に力に目覚めた鳥阿先生共々訓練を受けていただいていました。……迅さんに黙っていた理由ですが、この様な異常な力が広まれば混乱を生みますので」

 

「そりゃそうだ。横を歩いてる奴が急に剣を取り出して暴れるかもなんて思われたら禄な事になりゃしねぇ。関係者以外には黙っておくべきだ。……しかし、本当にあの人って大丈夫なのか?」

 

 鳥阿先生、何やってんだよ。……あれ? そのマリーちゃんって奴も刀を出したの見てたんだよな? 例の記憶の改竄が出来るって人に任せたのか? しかしマリーね。雫の人間関係全てを把握したい訳じゃ無いぜ? プライベートは夫婦にだって必要だ。だから何時か夫婦になる俺達にも有るんだが……全く話題に出た事が無いな。精々が小学生の時に誕生日プレゼントでやった人形がそんな名前だっただけだが、人形と猥談ってのも妙な話だしな。……ネット通信か?

 

 

「あっ、そう言えば紫苑さんも……じゃなくて紫苑さんの臣具は結局何なんだ?」

 

 危なっ! あんな儀式を行ったのかって質問するとかセクハラだっての。友人関係に終止符を打つ気かよ、俺ぇ!

 

「ギリシャ神話の英雄であるヘラクレスに与えられた難行の一つであるネメアの獅子の皮です。雫さんが刃の腹に相合い傘を刻んでいるのと同じで、本人の意志である程度変えられるので変えました」

 

「え? じゃあ、着ぐるみパジャマなのって紫苑さんの趣味?」

 

「ええ、趣味なので。……流石にパンダには変えられませんでした。大熊猫と書きますし、ライオンだって猫科なのに意味が分かりません」

 

 す、拗ねてる!? あのクールな紫苑さんが本気で拗ねていやがる。いや、別にパンダとかの可愛い物好きなのは薄々理解していたけど、まさか此処までだなんてな。

 

「じゃあ、俺のは何なんだろうな? ……確か臣具持ちと契約すればその内名前が分かるんだっけか?」

 

「ええ、ヴォルテクト様も私との契約後の三日後に判明して大はしゃぎでしたよ。……正直鬱陶しい程に」

 

「えっと、紫苑さんって確か彼奴とは長い付き合い……いや、何でもない」

 

 俺は自分の王具である赤い棒を取り出して眺める。正直言って少しだけ予想って言うか、希望は有るんだがな。まあ、流石にアレのファンの俺が偶然宿しているとか……でも、そうであって欲しい。そんな俺の表情から読みとったのか、どうも紫苑さんだって俺の王具に予想が付いているらしい。

 

「私は一度破門された状態で助けに行くエピソードが好きですが、迅さんは?」

 

「義兄弟の契りを交わした相手との戦いだな。あの敵は特に有名だしな」

 

 どうやら同好の士は身近に居たらしい。互いに笑みを浮かべ、拳を合わせる。俺の周囲じゃ原作を元にした奴のファンばかりなんだよな。読めば良いのに、面白いから。

 

「じっくり語りましょう。……っと言いたい所ですが、私も夕方から用事が有るので失礼します。直ぐに雫さんが迎えに来ると思いますので出入りの仕方を教えて貰って下さい。……ああ、それと」

 

 どうやら予定ギリギリまで付き合って貰ったらしいな。こりゃ本当に世話になったし、今度何かお礼をするべきかと考えていた俺の耳元に紫苑さんの口が近付けられ、囁かれる。

 

「私もヴォルテクト様とは迅さん達と同じ方法で契約しております」

 

「んなっ!?」

 

 いや、急に何て事を教えるんだ、この人はっ!? 不意打ちだった為に俺は昨日の光景と二人の姿を重ね合わせてしまった。下着姿を見ちまったのも関係有るんだろうがな。

 

 豪奢な天蓋付きキングサイズベッドの上、上半身裸で寝転がるヴォルテクトに跨がった下着姿の紫苑さん。何時もみたいに冷静な態度で下着を脱いで、ジロジロ見て来るヴォルテクトに文句を言うんだが、誉め言葉に赤面した隙に引き寄せられて……いや、俺は友人を使って何を考えているんだよ!?

 

 

「ふふふふ。冗談です。片手の手の平を合わせて契約の文言を語るだけでも可能なので。雫さんにも教えたのですが、迅さんが王具を持っていた時の為にエッチな方法を知りたいと頼まれまして。……ああ、それと。折角ですし、私を使って感じた興奮は雫さんにぶつけてあげて下さい。迅さんに会えずに色々と溜まっているでしょうから」

 

 では、そんな風に言いながらお辞儀をした紫苑さんは凄まじい速度で遙か彼方に去っていく。……完全にからかわれたな、こりゃ。

 

 どうやら俺の友人は一枚も二枚も上手らしい……。




ストック尽きた  さて、頑張ろう
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。