ガールズ&パンツァー 鉄血のオルフェンズ   作:砂糖多呂鵜

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二話目、無事投稿できました。
本作の阿頼耶識システムですが、流石に原作のような人体改造では戦車道で使えないと思ったので、人道的にもルール的にも。
かなりのオリジナル設定になっていますが、ご了承ください。元動画最終回でアッガイが登場してたので、宇宙世紀のバイオセンサーを基にモンターク氏と共に練り上げました。今回は簡単に触れてるだけですが、今後詳しく描写します。

それでは、どうぞ。


第弐話 戦車、乗ります!

遂に始まった、戦車道の授業。

しかしそんな彼らの前に、早くも大きな課題が降りかかった。

 

最早言わずもがなだろう。決定的な、戦車の不足である。

 

「こんなボロボロでなんとかなるの?」

 

「多分………」

 

「『男と戦車』は新しいほうがいいと思うよ?」

 

「それを言うなら、『女房と畳』では……?」

 

「同じようなもんよ。それにさ、あの三つ足のやつ含めても、二両しか無いじゃん?」

 

「えっと、この人数だったら………」

 

沙織の指摘に、生徒会副会長、小山柚子が全員に必要な戦車数を数える。

すると小山が答えるより前に、河嶋が答えた。

 

「モビルワーカー含めて、全部で九両必要です」

 

「じゃあみんなで、戦車()()()()()

 

河嶋に続くように出た会長、角谷杏の言葉に、一同が騒然となる。

 

「探すって?」「どういう事ですか?」

 

「我が校に於いては、何年も前に戦車道は廃止になっている。だが、当時使用していた戦車が何処かにあるはずだ。いや、必ずある。明後日、戦車道の教官がお見えになるので、それまでに残り七両を見つけ出すこと」

 

「して、一体どこに?」

 

後ろにいた赤いマフラーが特徴的な女生徒から、当然の質問が飛び出る。

 

「いやー、それが分かんないから探すのよ」

 

だが会長は両手を開くと、あっけらかんとそう言ってのけた。

 

「何にも手かがりないんですか?」

 

「ない」

 

「マジかよ………」

 

「では、捜索開始!」

 

河嶋の言葉をきっかけに、全員が解散し戦車を探しに出向く。

やる気無さげなものや、宝探し気分でいそうなものまで、反応はまちまちだった。

 

「聞いてたのと何か話が違うー……。戦車道やってるとモテるんじゃ……」

 

「明後日カッコいい教官来るから」

 

「ホントですか?」

 

「ホントホント。紹介するから」

 

「行ってきまーっす!」

 

会長の言葉に乗せられ、やる気なさげに残っていた沙織も倉庫を後にする。

オルガ達もその様子を見やってから、歩み始めた。

 

「ま、どの道戦車がなきゃ話にならねえ。探さなきゃいけねえんだ」

 

「そうだね。俺たちも行こうか」

 

「ああ。行くぞ、みほ」

 

「うん」

 

オルガが声をかけると、残っていた面々も次々と戦車を探しに出て行った。

 

 

 

 

「とは言ったものの………どこにあるって言うのよーーーっ!」

 

「マジで何も手がかりがねぇんだもんなぁ………」

 

探し始めてしばらく。早くも捜索が行き詰まりかけていた。先程までやる気に満ち満ちていた沙織が脱力している事からも、それが伺えるだろう。

何しろ会長が言っていた通り、本当に何の手がかりもないのだ。付近を捜索しても見つからず、あてずっぽうに駐車場までやってきたのだが。

 

「駐車場に戦車は置いてないかと……」

 

「だって一応は車じゃない……」

 

「まぁ間違っちゃいねえが………こんな所にはねえだろ」

 

一応付近を見渡すが、当然戦車どころか、モビルワーカーすら一台も置いていない。あるのは普通の車だけだ。

 

「じゃ、裏の山林行ってみよ!何とかを隠すには林の中って言うしね!」

 

「それは森です……」

 

「うん。木を隠すなら森の中、だよ」

 

沙織に続くように、三日月と華が付いていく。

みほとオルガもここいらには見切りを付け、彼女らに着いて行く………その前に。

 

「…………」

 

「じー……………」

 

先程から木陰でこちらを見つめる人影に、そろそろ声をかけるべきだろうか。さっきからずっとこちらを見るばかりで、中に入って行こうとはしていない。

もしかしたら、一緒に探したいけど参加しづらいのかもしれない。そう考えたみほは、後ろに振り返って話しかけた。

 

「あ、あの!」

 

「はいっ!?」

 

「良かったら、一緒に探さない?」

 

「いっ、いいんですかっ!?あ、あのぉ……普通二科、二年C組の、秋山優花里といいます……。えっと……不束者ですが、よろしくお願いします!」

 

少しおどおどしながら秋山優花里と名乗ったその女生徒は、記憶に間違いがなければ先程生徒会に戦車の種類について質問をしていた子だ。

三日月達も戻ってきて、挨拶を返す。

 

「おう、よろしく頼むぜ」

 

「こちらこそお願いします。五十鈴華です」

 

「武部沙織!」

 

「三日月・オーガス。よろしく」

 

三人が順に自己紹介をする。

オルガ達も自己紹介をしようと、名乗ろうと____

 

「あ、私は……」「俺は……」

 

「存じ上げてます!西住みほ殿と、オルガ・イツカ殿ですよね!?」

 

「「………は、はい」」

 

_____するより前に、優花里が名前を知っていたようだ。

先に言われた事に驚いてしまい、オルガも思わず敬語になってしまう。

 

「では、よろしくお願いします!」

 

何となく、子犬っぽい印象を受けるその子。秋山優花里は、挙手の敬礼をして、皆の仲間に加わった。

 

 

 

 

秋山優花里を仲間に加えて、オルガ達は学校の裏手にある山林に来ていた。ちなみに三日月は優花里が加わった後、『分かれたほうが効率が良い』と言って、一人別の方向に向かっていった。大丈夫かと聞いたが、どうやら学校とその周辺のマップはある程度頭に入っているらしい。心配はないだろう。

 

地図を頼りにしばらく林の中を歩いていると、華が立ち止まり、鼻をスンスンと嗅いだ。

 

「どうしたの?」

 

「あっちから匂いが………花の香りに混じって、ほんのりと鉄と油の匂いがします」

 

その匂いを辿るように、華が嗅覚を頼りに前へと歩き出す。

 

「華道やってるとそんなに敏感になるの!?」

 

「凄えな、華さんは」

 

「私だけかもしれませんけど……」

 

華に続くように、オルガが進み出す。

その後ろで優花里はきゅっと拳を握ると、力強く言い放った。

 

「では………パンツァー・フォー!!

 

「ぱんつのあほー!?」

 

直後に聞こえた沙織の盛大な空耳に、全員が思わず溜息をつく。

 

「パンツァー・フォー……戦車前進、って意味なの」

 

………なんとも気の抜ける感じではあったが。

 

そこからしばらく華の嗅覚を頼りに歩いていると、林の影に鈍色に光る影を見つけた。

 

「あれって……もしかして!」

 

沙織が近くに行って確認すると、それはまごう事無く戦車だった。かなり錆び付いているものの、まだ使えそうな戦車だ。

 

「やった!あったー!」

 

「おお、探せばあるもんだな」

 

オルガが感心したように言うと、ポケットに入れていた携帯から着信音が鳴った。

三日月からだ。何かしら探索で進展があった場合に、連絡するよう言い含めていたのである。携帯を取り出し、繋ぐ。

 

「ミカ、そっちはどうだ?なんか見つかったか?」

 

『うん。白いモビルワーカーが一機。そっちは?』

 

「奇遇だな。こっちも一つ見つけたぜ」

 

 

 

 

「_____ご苦労。運搬は自動車部に依頼しておくので、引き続き捜索を続行せよ」

 

河嶋は電話を切ると、後ろで座りながら干し芋を食べている、会長に報告した。

 

「戦車とモビルワーカー、一両ずつ見つかったそうです」

 

「やればできるもんだねぇ……はむっ」

 

報告を聞いた会長は感心したように言うと、手にした干し芋をまた口に運んだ。

 

 

 

 

「ミカ、どうしたんだ?こんなとこまで呼び出して」

 

その後も探索を続けていたオルガ達だったが、その途中、三日月から『見てもらいたいものがある』という連絡を受け、今は学園艦の底までやって来ていた。その道中は穏やかではなく、横道には有刺鉄線のバリケードまで張ってあった。

メールに送付されていたルートを頼りに向かうと、ある鉄扉の前に三日月は立っていた。扉はすでに開けられており、中からはほんのりと光が差し込んでいる。

 

「うん。学園艦の構造で気になるところがあったから、そこを調べてたんだけど……」

 

「ここか?」

 

「そうだね。それで、さっき明かりをつけて調べてたら、()()を見つけて」

 

「アレ?」

 

三日月が扉の中に入り、真正面を指差す。

オルガも続くように入り、三日月が指差した方を向いた。

 

「なっ___________これは……!?」

 

そして、目の前に鎮座していた()()を見た瞬間、オルガは戸惑いの声を隠しきることができなかった。

そこにあったのは_______

 

 

 

 

その翌日。

集合した一同の前には、各々が発見した戦車、そしてモビルワーカーが揃い踏みしていた。

 

「結局、見つかったモビルワーカーは全部同じタイプか」

 

「ああ。色が違うのもあるが、全部【TK-53】だな。結構古いやつだが……まあ使えるだけマシか」

 

「でもよぉ、戦車の方はバリエーション豊かだぜ?」

 

同じタイプのみだったモビルワーカーと違い、戦車の方は全部が全く違う戦車だった。

軽戦車や中戦車、突撃砲など………素人目に見てもそれらに統一性がないことは明らかで、如何にも『寄せ集めた感』が滲み出ていた。その通りなのだが。寧ろ、モビルワーカーだけでも全て同じタイプだった事が奇跡に近いだろう。

 

左から、【89式中戦車甲型】【38(t)軽戦車】【M3中戦車リー】【Ⅲ号突撃砲F型】【Ⅳ号中戦車D型】だ。物の見事にバラバラである。

 

「どう振り分けますか?」

 

「見つけたもんが見つけた戦車に乗ればいいんじゃない?」

 

「そんな事でいいんですか?」

 

「38(t)は我々が。お前達はⅣ号だ」

 

「え?あ、はい」

 

前で話し合っていた生徒会が、みほに命令する。

みほは訝しみながらも、特に迷うことなく返事した。

 

最終的に、Ⅳ号はみほ率いるAチームが乗ることになり、他の振り分けは89式が元バレー部のBチーム、Ⅲ突が将軍や武将のようなコスプレをした、所謂歴女で構成されたCチーム、M3は一年のみで構成されたDチーム、38(t)は生徒会のEチームが乗ることになった。

 

そしてモビルワーカーの方は、オルガ達五人のFチームがそれぞれ分かれて四機のTK-53に乗ることに。その中の最初倉庫で発見された指揮官機は、オルガとユージンの二人で乗ることになった。

 

「明日はいよいよ教官がお見えになる。粗相のないよう、戦車を綺麗にするんだぞ」

 

「どんな人なんだろう〜」

 

河嶋のその言葉を締めに、それぞれのチームがそれぞれの戦車の元へと向かった。

その日はそのまま、長年放置されていた戦車の洗車をすることになり、皆思い思いに戦車を綺麗にしていったのだった。それが終わる頃にはすっかり夕暮れ時になり、始業と同じく河嶋の号令で解散と相成ったのであった。

 

 

 

 

その翌日。

 

「おいやべえぞ!このままじゃ遅刻だ!」

 

「は、早くっ、行かなきゃっ……!」

 

前日の疲れが溜まってか、みほとオルガは完全に家を出る時間を遅れてしまった。お陰で通学路をダッシュで行かねば間に合わない状況まで追い込まれてしまっている。

と、そんな感じで全力疾走していた、その途中。

 

「あっ……」

 

「……なんだありゃ」

 

みほそオルガの前に、今にも倒れてしまいそうなほどフラフラな人がいた。

制服からして、恐らく自分たちと同じ大洗の生徒だろう。そのままぐったりと項垂れると、それっきり動かなくなってしまった。

 

「大丈夫ですか?」

 

みほが声を掛けると、ようやくその女生徒が口を開いた。

 

「………辛い」

 

「え?」

 

「……生きているのが、辛い。これが夢の中なら……良いのに……」

 

「あ、あのっ!?」

 

今にも消え入りそうな声で独り言のように呟きながら、その生徒はそのまま座り込んでしまった。

 

「しっかりしてください……!」

 

みほが持ち上げると、その生徒は顔を前に向けた。

 

「……だが、行く。行かねば…………」

 

_____が、すぐにまたフラフラになってしまった。さながら仕事帰りに呑んだくれたサラリーマンのようである。

 

「………ったく、しゃあねえな。ほら」

 

オルガは溜息をつくとその生徒の前に立ち、背中を差し出した。

 

「………?」

 

「送ってってやる。今のあんた、危なっかしくて見てらんねえからな。そんな千鳥足じゃ学校に着くどころか、車に衝突して事故っちまいそうだ」

 

「………すまない」

 

そう一言呟くと、その生徒は全身の力が抜けたように倒れ、オルガの背中に収まった。一瞬屈しかけるも、そのままおぶるような形で、立ち上がる。

 

_____よくよく考えたら、男子高校生が同年代の女子(恐らく)をおぶって学校に連れて行くのは、それはそれで問題のある気がして来たが………まあ今は非常事態だ。致し方あるまい。

 

そう心の中で自分を納得させると、オルガはみほの方を振り返り、苦笑した。

 

「みほ、行くぞ。どうせ遅刻だろうけどな」

 

「あはは………」

 

みほは困ったような笑みを浮かべつつも、特にオルガを責めるようなこともせず、そのまま学校へと三人で向かっていった。背中では、先の生徒が気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 

「ったく、呑気なやつだな………」

 

 

 

 

学校に着くと三日月と、おかっぱ頭の女子の二人の風紀委員が、名簿を片手に立っていた。

 

「冷泉さん。これで連続245日の遅刻よ。……って、聞いてるの?」

 

「zzz…………」

 

「おーいあんた、もう着いたぞ。起きろって」

 

「zz……むっ……もう学校か………短い楽園だった…………」

 

何やらよくわからない事をぼやきながら、冷泉さんと呼ばれた生徒がオルガの背中から降りる。その時の足取りも、かなり怪しいものではあったが。

 

「駄目だよオルガ。遅刻しちゃ」

 

「悪いなミカ。でも仕方ねえだろ、今日は」

 

「駄目。いくらオルガでも、そういうのは特別扱いしちゃいけないと思うから」

 

そう言って、名簿に記入をする三日月。あくまでも実直に、風紀委員としての責務を果たしていた。

その態度に驚きながらも、オルガは真面目だな、と感心する。昔から三日月は、自分の与えられた役割は最後まできちんとこなす真面目なやつだ。

 

「……ていうか、やっぱり麻子だったんだね」

 

「知り合いか?」

 

「まあちょっと。………朝起きるのが辛いのも分かるけど、何度も遅刻するのはダメだよ、麻子」

 

「……三日月か……。私の方が一個学年上なんだから、もっと敬ってくれても良いんじゃないか……?」

 

「そういうことは、一回でも遅刻しないで来れたら言ってね。いくら頭が良くても、こんなに遅刻ばっかしてたら、留年するよ」

 

「………小生意気な奴め……」

 

慣れたようなやり取りを繰り広げる三日月と麻子。先程『連続245日の遅刻』というパワーワードが聞こえたが、恐らくそのせいだろう。麻子の方が一年上、即ちオルガ達と同学年という事だが、今のやり取りではどっちが上級生が分かったもんじゃない。

 

「えーっと、西住さんとイツカくん?もし途中で冷泉さんを見かけても、今度からは先に登校するように」

 

「え?あ、はい」

 

「あ、ああ。分かった」

 

オルガとみほをみて、おかっぱ頭の風紀委員が忠告してくる。その様子を、麻子が恨めしげに見つめた。

 

「……そど子………」

 

「何か言った?」

 

「……別に」

 

その後解放され、三人は教室へと向かった。あいも変わらず、麻子はみほとオルガに支えられながらだったが。

 

「……二人とも、悪かった」

 

「あ、いえ」

 

「良いんだよ。どんな事情であれ、困ってる奴は助けんのが筋ってモンだ」

 

「……いつか借りは返す」

 

 

 

 

「オルガー、遅えぞ」

 

「悪いな。ちと色々あってよ」

 

校庭に向かうと、当然ながら既に全員が揃っていた。皆昨日組み分けられたチームに分かれて、それぞれ談話している。

 

「遅いから心配しました」

 

「寝過ごしちゃって……」

 

「教官も遅いー……焦らすなんて大人のテクニックだよねー」

 

そう。今日はいよいよ戦車道の教官がこの学園に来る日なのだ。昨日洗車を終えた戦車とモビルワーカーは、既に自動車部の手によって修理が施され、いつでも走れる状態になっている。

 

沙織が退屈そうにぼやいていると、オルガの隣にいた三日月が、何かに気づいたように上を見上げた。

 

「ん?どうしたミカ」

 

「………何アレ」

 

三日月が視線を向けた方向を見ると、上から何かが降ってくるのが見えた。

 

「………なんだありゃ」

小さな飛行機の後ろから、パラシュートのようなものが展開する。そしてパラシュートに引っ張られ、飛行機から滑り落ちるように、何かが下へ落ちて来た。

人かと思ったが、違う。あまりにもデカすぎる。というか、その四角形状のフォルムと、前面に大きく突き出た円筒は、どこからどう見ても_____

 

「…………戦車!?」

 

空から戦車が降って来た。しかもただの戦車ではない。明らかに普通の戦車とは一線を画す巨大さだ。遠目からでも分かる。

 

「あ、あの巨体はもしや、YMT-05、ヒルドルブではないですか!?あんなレアな機体を、この目で見ることができるなんて!!」

 

その戦車を見て、真っ先に興奮した声を出したのが優花里だ。形式番号まで述べて、うっとりとした表情をしている。

 

「……ヒルドルブ?なにそれ」

 

「大昔、【厄祭戦】時代に開発された、超弩級試作可変戦車ですよ!!主砲は大口径の30cm砲で、使われなくなった戦艦の砲門が再利用されたとか!!他にも色々あるんですけど、特徴は何と言ってもその破格の巨体と、モビル形態と呼ばれる形態への変形機構ですね!!あ、ヒルドルブっていう名前は、北欧神話に登場する神オーディンのあだ名である、『戦の狼』から採られたらしくて……!」

 

「ストップストップ!また暴走しちゃってるから!」

 

「ハッ……!」

 

三日月の質問に答えた優花里がだんだん熱を帯びて来たので、沙織が急いでセーブに入る。優花里はハッとなると、一気にカァッと、頰を赤らめた。

 

「すいません。また熱くなってしまって…………」

 

「……よく分かんないけど、凄い戦車って事?」

 

「そう!そうなんですぅ!」

 

「……ところでさ、厄祭戦ってなんだったっけ」

 

「それはですね武部殿。今から数百年前に起こった______」

 

そんなやり取りを繰り広げていると、先ほどのヒルドルブが柵越しにオルガ達の前までやって来た。

すると機体のハッチが開き、中からゴーグルヘルメットを被った()()が現れた。

 

「こんにちわー!」

 

『…………』

 

流石にあのインパクトが溢れすぎた登場の後では、誰も返事を返すことはなかった。

 

 

 

 

「特別講師の戦車教導隊、蝶野亜美一尉だ」

 

「………女?」

 

「………騙された」

 

「でも、素敵そうな方ですね」

 

生徒会の言葉から、てっきりイケメンが来るものだと思ったのだろう。沙織ががっくりした様子で呟いた。なお一応言っておくと、生徒会は嘘はついていない。『カッコいい教官が来る』と言っただけで、それが男だとは一言も言っていないからだ。

 

「よろしくね!戦車道は初めての人が多いと聞いていますが、一緒に、頑張りましょう!……あら?」

 

皆を見渡していた蝶野が、みほとオルガの所へ目を向け、そこで視線を止めた。そして、二人に近づいてくる。

 

「西住師範のお嬢様とご子息じゃありません?師範にはお世話になってるんです。お姉様もお元気?」

 

「あっ、えっと……」

 

「……まあ、ぼちぼちってとこです」

 

急に振られたみほとオルガは、苦虫を噛み潰したような表情で答える。蝶野はここで二人に会えたことが嬉しいのか、その様子に気づくことはなかったが。

 

「西住師範って?」「有名なの?」「ていうか、あの二人って兄妹だったんだ」「でもでも、名字が違うよ?」

 

蝶野の発言に、周囲がにわかに騒めき出す。それに答えるように、蝶野が他の生徒の方を向いて答えた。

 

「西住流って言うのはね、戦車道の流派の中でも、最も由緒ある流派なの」

 

「……もういいでしょう、この話は。それで、今日はどういう練習を行うんですか?」

 

オルガが話題を切り替えるように訊くと、蝶野は笑って答えた。

 

「そうね!本格戦闘の練習試合、早速やってみましょう」

 

「「えっ!?」」

 

蝶野の述べた練習内容に、またも周囲が騒めき出す。

 

「いきなり実戦練習かよ」「燃えて来たぜ!」

 

「でもいきなり、大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫よ。何事も実践実践!戦車とモビルワーカーとモビルスーツなんて、バーッ!と動かしてダーッ!と操作してドーンッ!と撃てばいいんだから!」

 

随分とアバウトな、しかし妙に頼もしい声音で蝶野が話す。しかしそれを聞いてもなお、多くの生徒の顔は晴れなかった。

蝶野は目印がいくつか付いた地図を広げると、指示をした。

 

「それじゃ、戦車とモビルワーカーと、モビルスーツ………は流石に無いか。に、乗り込んだら、それぞれスタート地点に向かってね」

 

その言葉を皮切りに、全員がそれぞれ乗る戦車、モビルワーカーに向かっていった。

 

 

 

 

「これ、どうやって動かすんだろ〜」

 

「知ってる人に聞いてみたら?」

 

「ネットで聞いた方が早いんじゃない?」

 

 

「ここで頑張ればバレー部は復活する!あの廃部を告知された日の屈辱を忘れるな!ファイトーッ!」

 

『オーッ!!』

 

 

「初陣だー!」

 

「ここはパンツァーカイルで」

 

「一両しかないじゃん」

 

 

「はい!みんな早く乗り込んで!」

 

蝶野の指示で、バラバラになっていた全チームが、それぞれの戦車、モビルワーカーに乗り込んだ。

 

ほぼ全員が慣れない手つきで動かそうとしている中、少なくはあったが慣れた手つきで始める者もいた。

 

「へっへ〜、確かこうしてこうやってぇ〜、っと……」

 

「あん?なんだシノ。お前動かし方知ってんのか?」

 

「へへっ、ガキの頃に少しな。あと、ヤマギとかに色々聞くからよ………あん?」

 

その中の一人であるシノが、鼻歌交じりだった調子の良い声を止め、疑問符を浮かべる。

オルガはそちらに向かうと、中を覗き込んだ。

 

「どーしたー?シノ」

 

「おぉオルガ。いやそれが、なんかシートに見たことねえ機械があってよ……なんだこれ」

 

そう言ってシノが示したのは、シートの上部に設置された機械だった。中央部に丸い形状があり、その中に緑色の球状のセンサーの様なものが埋め込まれている。

オルガはそれを見て確認すると、思わず感嘆の声を漏らした。

 

「こいつぁ………阿頼耶識システムだな」

 

「アラヤシキシステム?なんだそりゃ」

 

シノ再び疑問の声が上がる。だが、それも当然だろう。何しろこのシステムは、オルガですら分からないことの方が多いからだ。

 

「大昔に造られたインターフェースシステムだ。ここの機械が搭乗者の脳波を検知して、その意思を機体に直接伝えるシステム、だったか。……まあ簡単に言や、自分の思い通りに機体を動かすための、中継器ってとこだな」

 

「へぇーっ!よく知ってんなオルガ!いやー、洗車ん時に見逃してのかもなぁ、俺」

 

「昔同じやつを見たことがあってな。しっかし、まさかシノのモビルワーカーにも搭載されてたとはな……こいつは色々不安定なもんが多いとかで、今じゃ殆ど載せてる機体は無かった筈だが」

 

「も?てことたぁ、オルガのやつにもか?」

 

「まあな。しかもご丁寧に、運転席と指揮官席に二つずつな」

 

昨日の洗車の段階で発見したが、確かに最初倉庫に置かれていた指揮官機の物にも、同様に阿頼耶識システムが搭載されていた。元々はモビルスーツ用に開発されたという話だったが、恐らくはインターフェースのみモビルワーカーに移植したのだろう。

 

さらに他のモビルワーカーも確認してみると、なんと全部の機体に阿頼耶識システムが搭載されている事が分かった。これはどちらかと言えば嬉しい誤算だ。このシステムは搭乗者の空間認識能力や、反応速度に依存した不安定なシステムだが、使い熟せば大きな武器になるだろう。

無論それだけで勝てるほど甘くはなく、あくまでも補助の役割なので、ちゃんと練度を上げなければあまり意味は無いのだが。

 

そうこうしているうちに全員が戦車やモビルワーカーに乗り終え、戦車の方は役割である【車長、砲手、操縦手、装填主、通信主】を決め、いよいよ戦車を動かす時がきた。

 

「……鉄臭いです……」

 

「狭い上に暑苦しい……。こんなんでドライブすんのー?」

 

AチームのⅣ号に乗り込んだ、華と沙織が苦言を呈す。ちなみに役割は車長が沙織、砲手が優花里、操縦手が華、装填主、通信主がみほという構成だった。

すると戦車内に、蝶野の声が響いて来た。

 

『それでは。全戦車、パンツァー・フォーッ!』

 

「ふへへ……ついに戦車を動かす時が………!」

 

「あのー、どうやって動かせばいいんですか?」

 

操縦手になった華が、みほに操縦方法を求めてくる。

 

「まず、イグニッション入れて」

 

「これですか?」

 

前面にあったボタンの一つを押すと、戦車がブルルッ、と震えた。エンジンがかかり、背面から排気ガスが噴き出す。

 

ひゃっほーぅッ!最ー高だぜぇッ!!

 

「……………人が変わった」

 

「……………パンツァー・ハイ………」

 

「ハッ……!すいません………」

 

______同時に、優花里のエンジンも掛かったようだった。

 

「あのー、それからどうすれば……」

 

「後はアクセルを踏んだら前進。前のレバーが操縦桿で、右がシフトレバー」

 

「分かりました」

 

『みほー、先行ってるぜ!』

 

「あ、うん!」

 

外を見ると、既にオルガ達モビルワーカー勢や、他のチームは外へ戦車を動かし始めたようだった。モビルワーカーの方は戦車と比べると幾ばくか軽やかな動きで、外へと走り出す。

 

みほ達も皆に続くように、外へと戦車を前進させていったのだった。

 

 

 

 




いよいよ戦車を動かす時………はぁぁ、楽しみですぅ……!

それにしても、戦車ももちろんですが、モビルワーカーもいいですよね!あのスマートな三つ足に、どこかスラっとしたフォルム!ロマンですよねぇ………!

それとそれと、やっぱりモビルスーツですよね!ゲイレールやグレイズ、ランドマン・ロディ、それに獅電!そして幻の………あぁっ!どれもこれも素晴らしい機体ばかり!一度でいいからお目にかかりたいものです!見つけた戦車みたいに、どこかに転がったりしてないですかねぇ………!

次回!ガールズ&パンツァー 鉄血のオルフェンズ!

第参話『試合、やります』!
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