ガールズ&パンツァー 鉄血のオルフェンズ   作:砂糖多呂鵜

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3話目投稿です。
Twitterで行ったアンケートにより、ダー様とマッキーのカップリング描写をラストに少し、砂糖三粒分くらい入れております。嫌だという方は気にせずとも、お話にそこまで影響はないので安心してください。

それでは、どうぞ。


第参話 試合、やります

練習開始後、各々のチームは戦車を動かし、指定されたポイントまで移動していった。なお、モビルワーカーの方は全て1チームにするとバランスが悪いので、それぞれ一台を分隊とし、数えることになった。

 

『おお!この阿頼耶識って奴凄えな!本当に思い通りに動くぜ!』

 

『うん。操縦はマニュアル読んでるけど、自分が動かしたい方向に動いてくれてる気がする』

 

『あくまでも補助だから、あんまそれに頼りすぎんなよ』

 

「……なんか、あっちの方は運転楽そう」

 

「阿頼耶識搭載のモビルワーカーですかぁ……どんな感じに動くんでしょう!」

 

LCSのオープン回線から聞こえて来たモビルワーカー勢の声に沙織が不平を漏らし、優花里がまたも好奇心に溢れた声を出す。どうやら、守備範囲は戦車のみではなかったらしい。

そのまま走行を続けて、やがて山林の中のあるポイントで停止した。渡された地図によれば、ここが指定されたポイントのはずだ。

 

『みんな、スタート地点に着いたようね!』

 

ポイントで停止してから程なくして、回線から蝶野の声が聞こえて来た。どうやら、全員がスタート地点に着いたらしい。

 

『ルールは簡単。時間切れまで耐えるか、全ての車両を動けなくするだけ。つまり、ガンガン前進してバンバン撃って、やっつければいいわけ!分かった?』

 

随分とアバウトな説明だったが、全員が大体のルールを把握したようだった。

 

『戦車道は礼に始まって、礼に終わるの。一同、礼!』

 

『よろしくお願いします!』

 

蝶野の合図で、全員が車内でお辞儀をする。

 

『それでは、試合開始!』

 

その声と共に、試合がスタートしたのだった。

 

 

 

 

「そんでオルガ、どうするよ。取り敢えず撃ってみるか?」

 

「ちょっと待てよ。闇雲に撃ったら、敵に居場所を教えるようなもんだ。まずはここから………」

 

試合がスタートしてしばらく。オルガとユージンが乗る【TK-53】指揮官機は、ひとまずそのままの状態でいた。まだマップを完全に把握しているわけではないので、進路を決めてから行く事にしよう____と、考えていたその時。

 

 

_______ドゴォォォォオンッ!!

 

 

オルガ達の周囲に、轟音が響き渡った。

 

「うおわぁっ!?じ、重砲!?どっから!?」

 

「落ち着けユージン!あれは………」

 

オルガが周囲を見渡すと、茂みの向こうからⅢ号突撃砲の砲口がこちらを狙っていた。どうやら、既にこちらの動きは掴まれていたようだ。

 

 

「……まずは二人乗りを叩くぞ」

 

「了解」

 

「賽は投げられたか」

 

 

「取り敢えず逃げるぞ!ユージン移動!」

 

「移動はいいけどよ、どうすんだよ!」

 

「大丈夫だ。あのタイプの突撃砲は砲塔が曲がらねえ。こっちを追撃するには時間がかかるはずだ。その内にルートを迂回して、なんとか撒くぞ!」

 

オルガの指示のもと、ユージンがモビルワーカーの操縦桿を握り、走り抜ける。阿頼耶識システムの恩恵とモビルワーカーの機動性によって、どうにかⅢ突を撒くことに成功する。オルガの言葉通り、砲塔が曲がらないⅢ突はこちらを追撃するまで時間が掛かるだろう。

 

だが、もちろん敵は、彼女らだけではない。

 

「よっし、上手く撒けたな………」

 

「おいオルガ、前!前!」

 

「あぁ?」

 

ユージンの焦ったような声に反応して前を見ると、二つに分かれた道の左側に、青色のモビルワーカーが見えた。既に二つの砲塔はこちらに向けられており、いつでも撃てる構えだ。

 

「あの機体は昭弘か……!右斜め前だ!」

 

「お、おう!って、早速撃ってきやがった!?」

 

『お前ら!この勝負、勝たせてもらうぜ!』

 

「昭弘の野郎………!」

 

オルガの指示が終わると同時に、昭弘の駆るモビルワーカーから砲撃が放たれる。昭弘の挑発に毒づきながら、ユージンはどうにか右方向の道へと向かっていった。銃弾も音も止み、相手からどんどん離れていく。

 

「ふぅ………なんとか撒けたな」

 

「ったく、ハナっからヘビーすぎるだろ………」

 

 

 

 

その後、みほ達と協力する事にしたオルガ達は、砲撃地帯を少し抜けた草原の方へと前進していた。

敵は追撃を諦めたのか、はたまた振り切ったのか。どちらにせよ、敵の砲撃から逃れられたのは僥倖だ。心理的にも作戦的にも、ほんの少し余裕が生まれる。

今はオルガ達のモビルワーカーもみほ達のⅣ号に合わせて速度を落としているが、普通に走ればⅢ突が追いつく速度ではない。

 

「ここまでくりゃ、ある程度時間に余裕があるな。……みほ、これからどうする?」

 

『うん。まずはここを抜けて______』

 

と、みほと今後の打ち合わせをしていた、その時。

 

「ッ!?ユージン、スピード落とせ!」

 

「うぉっ!?ど、どうした!?」

 

「そこのお前!危ねえぞ!」

 

オルガの視線の先に、人がいたのだ。

制服を着ていることから、大洗の生徒だ。進路上に置かれていた切り株を枕代わりにして、顔の上に本を乗せて寝ている。その生徒は起き上がると、オルガ達の方へとのろのろと歩き始め、眼前に迫った所で飛び上がり、オルガ達のモビルワーカーの上に飛び乗った。_____ただし飛距離を見誤ったのか、飛び乗った瞬間に「ぴぎゃっ……」と間抜けな声を出していたが。

 

「っ、お前、今朝の………」

 

飛び乗って来たのは、冷泉麻子だった。

今朝より幾ばくかハッキリとした、しかしまだ気怠さの残った雰囲気で、オルガの前に立ち上がる。オルガ達は一度安全のため、会話が聞こえる程度にスピードを更に下げた。続くように、並走していたみほ達もスピードを下げ、さらにハッチからみほが身体を乗り出してくる。

 

「オルガー、どうしたの?」

 

「いや、それがよ…………」

 

オルガが説明しようとすると、みほの後方のハッチから頭を出した沙織が、麻子の姿を確認して驚いたような表情になる。

 

「あれ?麻子じゃん」

 

「……沙織か」

 

麻子も沙織を知っていたようで、名前を呼んで反応した。

みほが沙織に尋ねる。

 

「あっ、お友達?」

 

「うん、幼馴染。……何してんのこんなところで。授業中だよー」

 

「……知ってる」

 

「……はぁ、またサボりね」

 

沙織は慣れたような口調で、深くため息をついた。

 

 

 

 

その後、モビルワーカーの方にはスペースがなかった為、麻子はみほ達のⅣ号側に乗ることになった。「……酸素が薄い……」と呟きながら、辛そうに目を細めていたが。どうやら、彼女は低血圧らしい。朝が辛いのもそのせいだとか。

 

 

______ドッゴォォォォォ!!

 

 

 

そうこうしていると、再び敵からの砲撃が降り注いできた。Ⅳ号とTK-53の周囲を土煙が舞い、強い衝撃が内部を揺らす。

そうして逃げ回っているうちに、二台とも吊り橋の付近まで追い込まれてしまっていた。TK-53がⅣ号の背面を守るような形で橋の前に立ち塞がり、Ⅳ号は橋のど真ん中で立ち往生している。

 

 

「____撃てーいッ!」

 

 

______ドガァァァァァッ!!

 

 

そしてそんなⅣ号の隙を突くように、オルガ達が見張っていた方向より反対の方向から、Ⅲ突の重砲が鳴り響き、Ⅳ号に命中した。

 

「っ、みほ!大丈夫か!?」

 

「私は大丈夫!でも華さんが………!」

 

「何だとっ!?」

 

後ろを振り向くと、ハッチからぐったりとした様子の華の姿が見えた。どうやら、先の重砲の衝撃で失神してしまったらしい。顔を出した優花里が、「操縦手失神!行動不能!」と報告していた。

 

「おいオルガ!なんか囲まれてんぞ!!」

 

「何っ!?」

 

ユージンの報告に、急いで周囲を見回すと、オルガ達がいた方向からシノのTK-53、生徒会Eチームの38(t)、一年DチームのM3が向かって来ていた。更に別方向からは歴女CチームのⅢ突と、バレー部Bチームの89式、昭弘のTK-53が迫って来ていた。

最悪の展開である。挟み撃ちにされた上に、下手に動けば集中砲火を浴びてしまうだろう。モビルワーカーは機動性の代わりに、戦車と比べて装甲が薄い。集中砲火を浴びては生き残ることが出来ないだろう。

 

「みほ達も動けねえんじゃ……」

 

と、その時だった。

 

『……オルガ』

 

「……っ!ようやくか……!」

 

突如入ってきた通信に、オルガは不敵な笑みを浮かべる。

 

「おいおいどうすんだよ!俺らこのまま挟み撃ちで全滅かよぉっ!?」

 

「いいや違うな」

 

ユージンの動揺した声音に、オルガは自信に満ちた声で返す。先ほど入って来た通信は、少なくともこの状況から立て直すことが可能な一報だった。

 

「はぁっ?」

 

「そんなので、終われるわけがねえ。なぁ………ミカ!」

 

『______ごめん、待たせた』

 

オルガの声と共に、オルガ達の眼前にいたチームの更に後方から、白のモビルワーカー______三日月の駆るTK-53がやって来た。

 

 

「なっ!?嘘だろっ!?」

 

 

シノが混乱した声を上げるも、遅い。三日月のTK-53はすぐにシノの後方に回ると、二門の30mmマシンガンを斉射。不意をついた事もあってか全発が命中し、シノの機体はたちまち崩されてしまった。

 

「………っ!」

 

しかし、すぐさま機体を回転し、別方向へと走行する。瞬間、先程まで三日月の機体がいた地面の上に弾痕が走り、後方に青のモビルワーカー____昭弘の機体が待ち構えていた。どうやら別のルートを迂回して、三日月の後方まで来たようである。

 

 

「このタイミングで躱すかよっ、三日月!!」

 

 

「へっ………」

 

その回避の手応えに、思わず得意げになって舌を出す。さらに砲塔を昭弘機に向けると、一瞬の猶予も許さず斉射。完全に不意打ち狙いだった昭弘機は対応しきれず、 瞬く間に白旗判定となってしまった。

 

『Fチーム第三分隊、TK-53の3番機。並びに第四分隊の4番機。共に行動不能!』

 

 

 

 

「……すっごぉ…………」

 

その光景を見ていたみほ達Aチームは、思わず感嘆の声を漏らしていた。前方で繰り広げられていた、三日月機による交戦。モビルワーカーの長所を活かした高機動戦と、阿頼耶識システムの補助の性能。そして何より、三日月の腕。今日初めて操縦したとは思えないほどの、圧倒的な技量だった。

 

「あれも、阿頼耶識ってやつのおかげなの?」

 

「さぁ……」

 

『よし、今のうちに立て直すぞ!橋の上じゃ不利だ。みほ!後退できるか!?』

 

「っ、そうだ!運転は苦手だけど、こうなったら……うわっ!?」

 

そうして呆然としていたところに、オルガからの通信が入ってくる。

今みほ達は運転手を欠いた状態だが、いつまでも橋の上で立ち往生する訳にもいかない。みほが運転を変わろうとした、その時。

突然Ⅳ号が動き始め、後方へとバックしていった。

 

運転席を見ると、そこには麻子が座っていた。前にマニュアルを設置し、ページをめくりながら操縦桿を握っている。

 

「麻子運転できたんだ!?」

 

後ろから覗き込んだ沙織が、心底驚いたような声を挙げる。

 

「……今覚えた」

 

「今!?」

 

「さっすが学年主席………」

 

あっけらかんとそう言ってのける麻子に、流石の優花里も驚いたようだった。

それを見て大丈夫と判断したみほは、すぐさま通信をオルガにつなげる。

 

「オルガ!こっちは大丈夫だから、地上に出て!」

 

『分かった!』

 

みほからの指示を受け、オルガが橋から地上へ進む。

 

 

「とにかく撃ち込め!」

 

「連続アターック!」

 

『それそれそれぇっ!!』

 

 

「おい、撃ってきたぞ!」

 

「みほ達が立て直すまで耐えるぞ!こっちも撃ち返せ!」

 

「お、おう!」

 

みほ達が橋の上で硬直しているのを好機と見たのか、Bチームの89式から機関銃砲が放たれる。オルガ達はその前に庇うように立ち塞がると、機体両側に備え付けられた30mmマシンガンを斉射した。

弾は全発とまではいかずともかなりの数が命中し、89式は白煙を吹いて白旗を上げることになった。

 

「____あとは頼んだぜ!みほ!」

 

 

 

 

「分かったよ!オルガ、そこから退避して!____秋山さん、砲塔を回転させて!」

 

『分かった!ユージン移動だ!』

 

「っ!了解!」

 

みほの指示のもと、Ⅳ号の砲塔が回転。同時にオルガ機はⅣ号の射線から離れるように移動した。

砲塔は百八十度回転し、Ⅳ号の向きと反対方向にいた、Ⅲ突へと射線が向けられる。

 

「発射用意______撃てッ!!

 

 

 

_______ドッゴォォォォォォォォオッ!!

 

 

 

空気が震えるような鳴り響く轟音と白煙と共に、Ⅳ号の7.5cm砲撃が放たれた。

砲弾は直線を描いて放たれ、鼻先に捉えたⅢ号突撃砲を捉えると、爆音とともに命中した。Ⅲ突は白旗を上げ、行動不能となる。

 

「………すご………」

 

「ジンジンします………」

 

「何だか………気持ちいい……………」

 

「……………」

 

みほを除くAチームの全員が、その砲撃の轟音と衝撃に驚愕していた。約一名、変な驚き方をしていたが。

 

『有効!Cチーム、行動不能!』

 

「っ、また来る!」

 

しかし、喜んでいたのも束の間。背後から生徒会が乗る38(t)が迫って来ていた。砲門をこちらに向け、今にも撃てる構えだ。

 

 

「ふっふっふっ…………ここがお前らの死に場所だ!」

 

 

Ⅳ号も砲塔を回転させ、38(t)へ照準を絞る。

 

「撃てッ!!」

 

次弾が38(t)の砲撃と同時に放たれ、38(t)の躯体に命中する。一方、38(t)が放った砲撃は的外れの方向へと飛んで行った。

命中した砲弾は38(t)から白煙を噴かせ、白旗が上部から飛び出た。

 

 

「あーあ、やられちゃったね」

 

「桃ちゃんここで外す……?」

 

「桃ちゃんと呼ぶなぁっ!」

 

 

「やっぱ西住流半端ない!」

 

「逃げよ逃げよ!」

 

「そうしよそうしよ!」

 

「急げー!」

 

「逃げろーっ!」

 

遠くからその戦闘を見ていたM3も、逃げようと履帯を回転させる。

 

『逃すわけないでしょ』

 

だが、それを待ち構えていたように三日月のTK-53が先回りし、30mmマシンガンを叩き込んだ。弾丸は履帯と本体を直撃し、M3も白旗判定となる。

そして次の瞬間。

 

 

『タイムアップ!!試合終了!!』

 

 

通信から、蝶野の声が聞こえてくる。どうやら残ったオルガ達三チームが決着を付けるより前に、制限時間が来てしまったようだ。その場で残ったⅣ号と、TK-53二台が停止する。

 

 

『Dチーム、M3。Eチーム、38(t)。Cチーム、Ⅲ号突撃砲。Bチーム、89式。いずれも行動不能。よって。Aチーム、Ⅳ号。Fチーム第一分隊、第二分隊、TK-53の勝利!』

 

 

「……私達、勝っちゃったの?」

 

「……みたいです」

 

ハッチから顔を出した沙織と華が、信じられないと言わんばかりの声音でそう呟いた。

 

「ああ…っ、何とかな」

 

オルガもまた張り詰めた気をほぐすように、背を伸ばしながら返す。

 

「凄い……!西住殿のお陰です!」

 

同じくハッチから身を乗り出した優花里が、感極まった様子でみほに抱きついた。

 

「……勝ったというか、タイムアップで生き残ったという方が正しいな」

 

一方で、冷静に勝負の結果を分析する麻子。すると近くにいた三日月が、そちらに視線を向けた。

 

「………ていうか、なんで麻子がいんの?戦車道取ってたっけ」

 

「……三日月……何故お前が」

 

「俺、戦車道だったから。それより、どうして?」

 

「……別に。ちょっと、借りを返しただけだ」

 

「ふーん……」

 

お互い口数少なく、やり取りを交わす。だが、両者ともお互いの言いたい事が分かったようで、それ以上は特にやり取りも_____否。

 

「………ん」

 

「……?」

 

「……火星ヤシ。食べる?」

 

「……貰う」

 

三日月がポケットから火星ヤシを取り出し麻子に渡すと、摘んで一つ口に放った。三日月も別のを取り出すと、自身も口に運んでいった。

そこからの事は回収班に任せて、皆校庭の方に戻っていったのであった。

 

 

「………やはり、あの二人に戦車道を受講させたのは正しかった」

 

「………作戦通りだね」

 

 

その裏で生徒会は、目論見が成功したように不敵な笑みを浮かべていたのだった。

 

 

 

 

翌日。

 

『……………』

 

オルガのみほは、身の前に広がった光景に呆然としていた。

 

目の前には、戦車やモビルワーカーがある。先日使用したものなので、特にその()()に目新しさはない。

 

しかし前日までと確実に異なるのは、みほ達のⅣ号や、オルガ、三日月、昭弘のTK-53以外は、それぞれが色を塗り替えられていた事だった。

その塗り替えた色も赤やピンク、中には金色という派手にも程があるカラーリングまである始末だ。また色は塗り替えてないものの、側面に【バレー部復活!!】と大きく書かれたものまである。

 

 

「かっこいいぜよ」

 

「支配者の風格だな」

 

「うむ」

 

「私はアフリカ軍団仕様が良かったのだが」

 

歴女のCチームのⅢ突は、赤と黄色のカラーに、上には二枚の旗が立てられているという、あまりに目立つ出で立ちだった。彼女達らしいと言えば、彼女達らしい戦車だろう。

 

 

「これで自分達の戦車がすぐに分かるようになったー!」

 

バレー部のBチームはカラー変更はしてないものの、側面に【バレー部復活!!】と大きく描かれている。確かにすぐに見分けはつくだろう。

 

 

「やっぱピンクだよねー!」

 

「可愛い!」

 

「おっ!お前らその色チョイスするとは、センスあるじゃねえか!」

 

「あれ?シノ先輩もピンク色にしたんですか?」

 

「おうよ!名付けて………【流星号】だっ!」

 

『おぉ〜!!』

 

一年のDチームと、シノは自機を派手なピンク色に変えていた。しかもシノに至っては、【流星号】という新しい名前まで付けている。

 

 

「いいねぇ〜……この勢いで()()()()()()()

 

「はっ。連絡してまいります」

 

「えっ?何ですか?」

 

そんな個性的なカラーリングの中でも一番目立つのは、生徒会のEチームだろう。なんと全面金色という、どこかの大尉の機体のようなカラーリングだ。

 

 

「昭弘も色変えなかったんだ」

 

「ああ。別に色に拘りねえからな。今でも十分目立つしよ。つーか、それ言うならお前もだろ」

 

「うーん、俺もいいかなって。白色ってのも、なんか好きだし」

 

「ま、俺とオルガのに至っては形ですぐ分かるからな」

 

一方で三日月、昭弘の機体はそのままだった。元より発見された当初からカラーリングが特徴的だったのと、二人とも特にそういうのには頓着しない性格だ。自分のだと見分けられれば十分という、ストイックな考えだった。

 

そしてそんな二人を除く全員の戦車の中で、元のカラーリングだったⅣ号とTK-53指揮官機は、この個性の爆発事故現場のような空間にあって、逆に違和感を放っているとも言えた。

 

「あぁ〜っ!!38(t)が!Ⅲ突が!M3が89式がTK-53がなんか別のものにぃ〜っ!!あんまりですよねっ!?」

 

「ったくあいつら………」

 

優花里はそんな機体を見て、ショックを受けたように頭を抱えて絶叫した。オルガも苦笑して、頭をかく。

しかし、優花里が同意を求めるように聞くと、みほは_____

 

「ふふっ、ふふふっ…………!」

 

「に、西住殿?」

 

「みほ?」

 

みほは、心の底から可笑しくて、でも______それと同じくらい、楽しくて仕方がないという様子で、笑っていた。

 

「戦車やモビルワーカーをこんな風にしちゃうなんて………考えられないけど、なんか()()()ね!戦車で楽しいなんて思ったの初めて!」

 

「っ……!」

 

みほが、戦車で初めて、笑った。

 

その事実に、オルガは驚くと同時に、胸の中に嬉しさが込み上げてくるのが分かった。

今までは家に言われるがまま、そこに楽しさを見出す余裕もなく、やっていた戦車道。

 

当然みほは、それを好きになれるはずも無く、さらに()()()()をきっかけに、もう二度と戦車はやらないだろうと思っていた。

 

 

それが今、こんな風に仲間に囲まれて。

 

戦車を見て、久しく見ていなかった程の笑顔を浮かべている。

 

 

その事実だけが、オルガにとって充分だった。

 

 

「(そうか………やっぱりここは、みほの()()()、なんだよな)」

 

 

この光景を見れば、改めてそう思える。

 

仲間と笑いあえるこの場所が。みほの辿り着いた居場所なのだと。

 

 

「(だったら………俺に出来る事なんて、決まってる)」

 

 

_____守る事。

 

 

みほの笑顔を。この居場所を。守る事が、今のオルガに出来ることだ。

 

_____かつて自分から手放したそれを、今度は絶対に離す事のないよう。

 

オルガは、自分に固く、鉄のように強く決意した。

 

 

 

 

(セント)グロリアーナ学園艦、旧称【ハーフビーク級】戦艦。

今は宇宙を飛ぶその艦内の一等地に建つ、学園艦と同じ名を持つ学校、【聖グロリアーナ学院】。

 

その一室で、四人の男女が優雅なティータイムを楽しんでいた。その部屋の一番目立つ位置にある絵画には、黄金の二刀を携えた、白と青の騎士が、戦車を守るように描かれている。

 

「……大洗学園?……戦車道を復活されたんですの?おめでとうございます。………ええ、結構ですわ。……受けた勝負は逃げませんの」

 

今時古風なダイヤル電話を片手に、そう話す少女_____ダージリンは、嫋やかな、しかし芯にある強さを感じさせる笑みでそう言い結び、電話を戻して紅茶を口に運んだ。

 

「……我々に試合の申し込みでも、あったのかな。ダージリン」

 

そう言って優雅に紅茶を飲む男は、口元に笑みを携えて訊いた。

 

「ええ。大洗学園ですって。今年から戦車道を復活されたようで、その練習試合の相手になって欲しいと」

 

「成る程。……であるならば、確かに。我々聖グロリアーナが、受けないという手を取るわけにいかないな」

 

「ええ。でも……ひょっとしたら、貴方の出番は無いかもしれないわよ?マクギリス

 

「そうなれば、それでもいい。君のその強さと可憐さは、今更疑うべくも無いからな」

 

「あら。相変わらず、口の上手な事」

 

ふふふ、ははは、と互いに笑みを交わすダージリンと、男_____聖グロリアーナ三年生、マクギリス・ファリド

 

その様子を見ていた両隣の女生徒____オレンジペコアッサムは、いつもの事だと気にすることもなく、優雅な手つきで紅茶を口に運んだ。

 

 

 

 

 




戦車道……実際やってみると、やはり良いものですね。
何よりあの重砲の衝撃………はぁぁ……癖になってしまいそうです。

全身を伝わる衝撃に、当たった瞬間の達成感………華道に勝るとも劣らない素晴らしさです。
この戦車道の良さを、どうにか華道に取り入れてみたいですが………どうしたら良いのでしょう………?

器に油を入れる……いえ、それでは香りが駄目になってしまいますね。もっと知恵を絞らないと。


次回。ガールズ&パンツァー 鉄血のオルフェンズ。

第肆話『対決!聖グロリアーナです!』。

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