聖グロの紅茶名についてですが、マッキーやガリガリ、石動にも付けることにしました。今回それが出てくるので、お楽しみにしててください。
それでは、どうぞ!
「今日の訓練、ご苦労であった」
『お疲れ様でした〜』
その後は訓練が行われ、戦車道の試合に於ける基本的な動作を確認した。
縦横隊での行進や砲撃の照準合わせ、開けた場所での戦闘方法、走行法など。ひとまず初心者が覚えておくべき項目を押さえ、この日の訓練は終了した。
戦車隊ではやはり、みほ達Aチームが一番動きが良かっただろう。経験者であるみほがいるのもあって、成績は一番良かった。
一方、モビルワーカー隊で単純な動きで一番良かったのは、三日月・オーガスだろう。
モビルワーカーに搭載された阿頼耶識システムというOSは、パイロットの脳波からその意思を読み取り、感覚的な操縦を実現する補助システムだ。
しかし弱点もあり、阿頼耶識によるその補助は、あくまでもパイロットの空間認識能力や反応速度、脳波の伝達速度に依存する為、使い熟せないと通常の物より動きが落ちてしまうのである。その為現在ではパイロット依存という点が不安視され、AIを搭載した補助システムが主に搭載されている。
だが逆に言い換えれば、それさえ出来ればAI補助の機体よりも優位に立てるという事でもある。AI補助の機体は安定性に重きを置いており、ある程度サンプリングされた運動性能である為、フレキシブルな稼働を実現する阿頼耶識に運動性では敵わない。
その為戦車と異なり、高機動戦を主として展開されるモビルワーカーの戦いでは、使い熟せば乱戦などで非常に優位に立てるのだ。
だからこそ今回の訓練では、モビルワーカー隊はまず阿頼耶識に慣れるという点に重きを置いたのだが____その中でも三日月はその扱いに天賦の才があったようだ。前回の試合でもかなりの活躍をしていたが、この訓練でさらに上達したようだ。
次に上手かったのが、昭弘・アルトランドだ。三日月ほどでは無いにしろ、どうやら阿頼耶識のコツを掴んだらしい。その次がシノで、最後がオルガとユージンだ。最も、オルガとユージンもだからと言って悪い訳ではなく、三日月達同様コツを掴めたようである。
そんな訓練が一通り終わり、皆が一様に疲れ切った表情を見せる。
そして終了間際に、生徒会からある知らせがあった。
「えー、急ではあるが、今度の日曜に、練習試合を行う事になった」
『!?』
突然の知らせに、皆が一様に驚きの表情になる。
それも当然だろう、何しろ彼ら彼女らは戦車やモビルワーカーを動かしてまだ二日しか経っていない。基本的な戦術どころか、操縦も細かく詰めれば、まだ危うい部分があるのだ。
しかしそんな様子を見ても、生徒会は特に何も反応せず、淡々と告げる。
「相手は、
『っ………』
河嶋から告げられたその校名に、みほ、オルガ、そして優花里の表情が厳しいものになる。
「どうしたの?」
「……聖グロリアーナ学院は、過去に一度全国大会で優勝した事もある強豪です」
「優勝!?」
「はい。その時の隊長である、アグニカ・カイエルという人が凄い隊長で………その意思を継いで、今でも全国大会で上位に入賞しているんです」
「保有してる戦車も、選手の練度も、俺らとは比べ物になんねえ強さだ」
優花里とオルガの言葉に、Aチームの皆が緊張した面持ちになる。
「日曜は、学校に朝六時に集合!」
そして河嶋が次に告げたその集合時刻に、思いっきり嫌そうな顔をする生徒がいた。麻子だ。
「……やめる………っ」
「はい?」
「……やっぱり戦車道やめる」
『もう!?』
沙織を除いたAチームの全員とオルガが、一斉に麻子の方を向いて突っ込む。
「麻子は朝が弱いんだよ……」
「だからって辞めるまで言うか………?っておい、ちょっと待て!」
沙織が皆に話してる間に、麻子は列を離れて家に帰ろうと歩き始めた。それを皆が止めようとする。
「ま、待ってください!」
「……六時は無理だ」
「モーニングコールさせていただきますっ!」
「家までお迎えに行きますから!」
「朝飯作ってやっからよ!」
「……朝だぞ。人間が朝の六時に、起きれるか!?」
まるで、『人に羽根を生やして飛べるか?』と同じくらいの無理難題だと言わんばかりに、今までにないほどの迫真の声で振り返り、みほ達に問い質す。
「いえ、六時集合ですから、起きるのは五時くらいじゃないと……」
優花里が遠慮しがちに補足すると、麻子はコマ回しのように後ろへ向き直し、再び歩かんと前を向いた。
「……人には出来ることと出来ないことがある。これは後者だ。短い間だったが世話になった」
そう言い切り、家に帰ろうとした、その時。
「駄目だよ麻子」
麻子の手を、誰かが強く引き止めた。三日月だ。
「……離せ三日月。これは私の手には負えない案件だ」
「駄目だよ。みんなの事放ったらかして、自分はやめようなんて、そんなの筋が通らない。麻子がいなくなったら、みほ達が困る」
「……私にはもう無関係だ。だから離せ……っ!」
「それにいいの?単位、足りてないんでしょ」
「うっ……!」
三日月が放ったその一言に、麻子は今までにないようなうめき声をあげた。そう。朝の出来事からも分かるように、彼女は遅刻と欠席の常習犯。成績は二年生主席の優等生だが、その凄まじいまでの遅刻欠席履歴が全てを帳消しにしていたのだ。
「進級できなきゃ、みほやオルガ達を先輩って呼ばなきゃいけなくなるよ。それに、もし麻子が留年したら、俺と同じ学年になる」
「……お前と同じ学年、だと……?ぐぐ………」
「戦車道を取れば、少なくとも二百日分は遅刻が帳消しになるし、授業の単位も三倍になる。進級するには問題なくなるよ」
「……しかし、だな……」
「……それに何より。ちゃんと卒業できなきゃ、おばあちゃんに怒られるよ」
「おばあ…………ッ!」
三日月が最後に発した『おばあちゃん』のワードを聞いた途端、まるでゾンビか幽霊にでも出くわしたように震え上がり、やがて諦めたようにガクッと項垂れて言った。
「……分かった。やる」
その言葉に、全員がホッと一息つく。取り敢えず、Aチームの有力な操縦手を失わずに済んだのだから。
「……それより三日月。そろそろ手、離せ。逃げないから」
「ん?ああ、ごめん」
◆
その日の夕方に行われた会議で、戦車隊隊長をみほが、モビルワーカー隊隊長兼、全隊副隊長をオルガがやる事となった。
聖グロの戦車隊は強固な装甲と連携力を生かした教習戦術を得意としている。その為作戦は、一両が囮となって味方のいるエリアまで引きつけ、残りがこれを叩くというものに決まった。オルガとみほは聖グロが囮作戦を想定し、逆包囲する可能性も進言したのだが、結局押し切られる形となった。
「____よし、これで装備する武装の確認は終了だな」
「お疲れ、おやっさん」
夜の学園の倉庫で、オルガと褐色肌の大柄な男性、この学園の面々から『おやっさん』と呼ばれ親しまれている、自動車部顧問の非常勤講師、ナディ・雪之丞・カッサパがモビルワーカーの武装の確認作業を行なっていた。その向こうには自動車部の面々が、戦車のチェックを行っているところだ。
「今度の日曜に早速か、例の学校とやり合うのは」
「ああ。それで本土の大洗に行って、いざ試合だな」
「ここも静かになるなぁ。ま、何にせよ初の試合なんだろ?良かったじゃねえか」
「何が良いもんか。向こうの方が戦車の性能も、踏んで来た場数も違う。まともにやり合えば、すぐに終わっちまうだろうさ」
「……そりゃ、なあ。この学校が戦車道をやってたのは、もう何十年も前の話だ。それが急に復活したって、すぐに勝つなんざまあ、普通は無理だわな」
タバコを一服しながら、雪之丞が懐かしがるように言う。彼は今でこそ非常勤講師だが、昔はこの大洗で、よく戦車やモビルワーカーの整備をしていた腕利きの整備士だったようだ。今でも十分に腕利きだが。
しかし、同時に苦労も多かったらしい。義足となっている両の脚が、それを如実に物語っていた。
「まあどっちにしろ、決まっちまったもんはしゃあねえ。やれるだけやるしかねえさ。それに……俺にも意地があるからな」
そう言ってオルガは、倉庫の空いた扉の向こうを見る。それを見て雪之丞は口に入れたタバコを取り出し、煙を燻らせた。
「……カッコ悪いところは見せらんねえよ」
「……西住と三日月には、か?」
雪之丞がそう聞くと、オルガは肯定するように小さく笑った。
それを見て雪之丞もまた小さく笑うと、タバコを地面に落とし、その鉄の義足で踏みつけた。
「____苦労すんなぁ。隊長」
「_____そうだな。……あ、そうだ。おやっさん。自動車部の奴らと一緒に、ちと頼みてえことがある」
「うん?何だぁ?」
「実はよ_______」
◆
宇宙から帰還した聖グロ学園艦は、本土に向けて航行していた。
そしてその学園艦の居住区にある学生寮の一室で、二人の男がティーセットを開いて紅茶を飲んでいた。
「____しかし大洗か。学園としては特に特筆すべき点もない、地味目な学校だ。俺たちの学校が、わざわざ試合に応じるほどの相手なのか?」
「ああ、確認しておいてくれ。それでは。______そんな学校との親善試合は退屈か?ガエリオ_____ドアーズ」
ドアーズの名で呼ばれた、紫髪の男_____ガエリオ・ボードウィンは、わざとらしい退屈げな表情から、一転して親しみのある笑いを浮かべた。
「まさか。紅茶の名前を与えられた者として、試合はきっちりこなすさ。マクギリス____いや、シッキム」
「____大洗は、今年戦車道が復活した、いわばルーキー達だ。そんな彼らの成長を促すためにも、戦車道の先達たる、【
立ち上がったシッキムことマクギリスは、窓の向こうを眺めて、前髪を弄った。
その様子を見たドアーズことガエリオは、やれやれと言った様子で手を振り、目を瞑った。
「しかし、向こうはモビルスーツだって持ってないんだろう?そんな素人が、俺たちといきなり戦って大丈夫なのか?正直、同情する」
「____こんな言葉を知っているか?運命は浮気者。どちらに転ぶか分からない……」
「____うちの戦車隊長の受け売りか?しかし、そいつはどういう………」
「今年の大洗には、黒森峰から二人の兄妹が転入して来たらしい。………案外、人の同情をしている暇は、無いかもしれんぞ?」
そう言うと
◆
そして、遂に迎えた日曜日。聖グロとの親善試合当日。
予想通り目覚めていなかった麻子を家まで戦車で迎えに上がり、本土の大洗までやって来た。
本土の商店街には今回の親善試合の事が大々的に取り上げられ、まるで祭りのような盛り上がりを見せていた。
しかしそれも当然と言えば当然だろう。何しろ、何十年も前に廃れた大洗の戦車道が、いきなり復活したのだから。否が応でも盛り上がるし、客足も数多かった。アウトレットには見学席も設けられている。
そんな大勢の人々に見守られながら、いよいよ大洗隊聖グロの試合が、始まろうとしていた。
「______ねぇねぇ、あそこの金髪の人、スッゴイイケメンじゃない?」
「______確かに……日本人では無いみたいですが……」
「______はぁ〜、あんな人が彼氏だったらなぁ」
そう言って沙織が熱を上げているのは、彼女の視線の先にいる金髪の聖グロ生徒____マクギリスこと、シッキムだった。
「____君が、大洗の隊長かな?私の名は、
「オルガ・イツカ。モビルワーカー隊の隊長だ。こちらこそ、わざわざ試合に応じてくれて感謝する」
挨拶をし、握手を交わす二人。
すると、隣に控えていた同じ金髪の女子_____聖グロの戦車隊長、ダージリンが、笑いを堪えるように口元を押さえた。
「それにしても、個性的な戦車ですわね」
「むっ……」
まるで小馬鹿にするような言い草に、河嶋がムッとした表情になる。
「ですが……私達はどんな相手にも全力を尽くしますの。サンダースやプラウダのような下品な戦い方は致しませんわ。
そう言い括ると、大洗と聖グロ、両者の間に立っていた審判が、開始の合図をした。
「それではこれより、
その合図とともに礼を交わし、それぞれのチームが己が戦車に乗り込もうとする。
するとその途中、みほがオルガに話しかけた。
「……それで、どうする?相手は聖グロだし、もしかすると……」
「……まあまだ分からないが、一先ず向こうの出方を見るしかねえな。それに、いざって時には
「っ、アレ、使えるの?」
「ああ。おやっさんや自動車部のみんなに協力してもらってな。一応登録したが……果たして使うことになるのやら」
「おいオルガ!早く乗れよ!」
「ああ、分かった!」
ユージンから催促を受けたオルガは、すぐさま自身の乗機に乗り込む。みほもⅣ号へと乗り、規定の位置へと着いた。
今回は戦車が5両、モビルワーカーが5両まで投入可能な殲滅戦のルールだ。しかし、大洗側は戦車の数は同じものの、モビルワーカーは4両しか無い。既に10対9と、数の上で一つとは言え不利な状況であった。
それぞれのチームが、車内で緊張の面持ちになり試合の開始を待つ。
みほも目を閉じて、試合が始まるのを静かに待っていた。すると、その時。
『用意はいいか?隊長』
「あっ、はい」
通信機から、河嶋の声が聞こえて来た。
『全ては貴様に掛かっている。頼んだぞ』
「……はい」
その言葉の重圧に悩みながらも、みほは返事を返した。
するとまた別の声が、通信機から聞こえてくる。
『……あんまり気を詰めんなよ、みほ』
「オルガ」
『ここはもう、あの時とは違うんだ。……遠慮するこたぁねぇ』
「っ……うん」
その
そしてその通信が終わるのを見計らったように、フィールドに声が響いた。
『試合、開始!』
その声と共に、全ての車両が前へと進み出したのだった。
聖グロの隊長のマクギリス?シッキム?って人……すっごくカッコよかったなぁ……!
なんか、異国の王子様って感じがして、超イケメンだよね!
うちの学校の男子はみんな暑苦しいからねぇ……やっぱ彼氏にするならああいうイケメンでクールなな人がいいなぁ。
あ、でもうちの学校にも、結構良さげな人いるよねぇ……いやぁ、モテる女は困っちゃうなぁ〜!
次回、ガールズ&パンツァー 鉄血のオルフェンズ!
第伍話『隊長、頑張ります!』
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