男が歩む永遠《とわ》の道   作:シベ・リア

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皆様、明けましておめでとうございます!
昨年の終わりから再開した私の小説活動ではありますが、本年はできるだけ投稿させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。
さてさて、新年1発目の投稿は前回と同じくプロローグのお話となっております!今回のプロローグの主役は誰になるんでしょうね〜?
それでは、どうぞ!




EP.2「希望(かがやき)を求めて」

 

 

 

 

━━━これは、μ'sが手にした"輝き"を目指してスクールアイドルを始めた"彼女達"のお話。

 

 

 

 

 

(わたくし)、μ'sみたいなスクールアイドルになってみせますわ!』

 

そう憧れであるμ'sのメンバーであったナオキと絵里に宣言したダイヤは浦の星女学院(うらのほしじょがくいん)に入学してからもその夢は消えることはなかった。

 

浦の星女学院……静岡県沼津市内浦にある、全校生徒が100人前後しかいない小さな女子校。山や海の自然豊かな場所にある高校であったが、近年"とある問題"が明るみになってきていた。

2.3年生は2クラスになるぐらいの人数だが、ダイヤ達1年生は20人前後と1クラスに収まってしまうぐらいの人数で、年々入学希望者も少なくなっていることを地元住民や教師・生徒等学校関係者達は不安に感じていた。ただの不安で済めばよかったが、生徒数や毎年のオープンキャンパスに来る中学生の人数からより現実的なものになっていた。

そんな問題を抱える浦の星女学院に入学したダイヤはその家柄から生徒会にスカウトされて、日々その活動に勤しみながら、どうにかその問題が解決する術を模索していた。

 

 

━━そんな夏が近づき暑さも増してきたある日であった。

 

 

「っ……それは本当か!?」

燐花(りんか)、落ち着いて。まだ話が出ている(・・・・・・)っていう段階よ」

「しかしだな美春(みはる)……その話が会議で話が出たとなると、いよいよ時が迫っているということだぞ!」

「わかっているわ。だからこそまずは落ち着いて、対策を練るべきなのよ」

「それはそうだが………」

 

そんな生徒会室で落ち着いた様子で手を組んで話すのは牡丹 美春(ぼたん みはる)。綺麗な青々しい髪のロングヘアで学内でもその名の通りに美しいと評判の生徒会長である。

そしてそんな美春の話を聞いて手を勢いよく机について立ち上がり声を荒げていたのは藤 燐花(ふじ りんか)。茶色いショートヘアで前髪を黒いピンセットで留めており、凛々しい雰囲気と強気な性格をしている副会長である。

そしてそんな2人とダイヤを合わせた3人がこの浦の星女学院の生徒会メンバーで定例会議が行われていたのだが、美春の出した"話"を聞いた他の2人は動揺を隠せなかった。

 

その話とは………

 

「さっきも話したけれど、前々から噂になっていた"統廃合"に向けての議題がこの前の理事会で提案されたらしいの。ついに話が動き出してしまった……と言うべきかしらね」

「くそっ……!一体どうすれば……」

 

そう、美春の口から出たのはこの学校の統廃合へ向けた議題が理事会で出てしまったということであった。それは前々から噂になっていたことがついに現実味を帯びてきたということであり、生徒会の面々は唸り声をあげて統廃合を阻止するために何かできないかと頭を悩ませた。

 

「統廃合…………」

「黒澤さん、ごめんなさいね。入って間もないのにこんな重い責任を負わせてしまって……」

 

美春は自身が生徒会にスカウトしたダイヤに、今後の自分達の行動がこの学校の統廃合を左右してしまう責任を負わせてしまっていることを申し訳なく思い、ずっと俯いている彼女に声をかけた。

 

「………黒澤?」

 

しかし、美春から声をかけられても反応がないダイヤを不思議に思った燐花もその名を呼んだ。それでもダイヤからは反応は返ってこず、2人は余程ショックなのであろうと顔を見合わせた。

 

「……統廃合っ!!」

「「えっ……!?」」

 

そう2人が思った刹那、元気そうな声をあげて立ち上がったダイヤに驚きを隠せなかった。心配していたダイヤは落ち込んでいるどころか、どこか嬉しそうであった。

 

「く、黒澤さん……?どうしてそんなに嬉しそうなの?」

「そ、そうだぞ黒澤!この学校が無くなるかもしれないんだぞ!」

「だからこそですわ!」

「はぁ?!」

「統廃合……つまりは廃校……!これはチャンスなのですわ!」

「チャ、チャンスぅ?!」

「はい!」

「………黒澤さん、何を考えているか教えてくれる?」

「そ、そうだぞ!今のお前はまさに気が狂っているとしか思えん!説明しろ!」

 

そんな嬉しそうに話し出すダイヤに美春は興味深そうに、燐花は理解できない様子でその張本人に説明を促した。するとダイヤはどこか誇らしげにその訳を話し出した。

 

「フッフッフ……先輩方、かつて廃校の危機に陥った学校を救い、さらには共学にまでさせた"ある方々"をご存知ではないですか?」

「廃校を救ってさらに共学ぅ?!そんな奇跡みたいなことが現実に……?」

「………確かに聞いたことがあるわ。それは東京のスクールアイドルの……?」

「その通りです!流石は会長ですわ!!」

 

思い当たる節がない燐花であったが、美春が統廃合を阻止するために調べていた時に知った"あるスクールアイドル"のことを話題に出すとダイヤはさらに興奮したような声を出した。

 

「スクールアイドル……というと、高校生がやるアイドル活動みたいなものか。確かにそれなら私も聞いたことがあるが、それとこれがどう関係が……?」

「副会長……確かに実在したのですわ。私が先程お話した"奇跡"を起こしたスクールアイドルが」

「なっ……!?」

「そのスクールアイドルは日本、そして世界にまでその名を轟かせ"伝説"と呼ばれるまでになっているのですわ!」

「で、伝説って……?」

「はい。その御名を……μ's。東京の音ノ木坂学院という高校に所属していたスクールアイドルです」

「"ミューズ"というと、音楽の女神の名前か……」

 

燐花は聞いたことのないそのスクールアイドルの話題に興味を示してダイヤの話に耳を傾け、美春は自分がスカウトしたダイヤの見込んだ能力に間違いはなかったのだと確信し、嬉しそうに微笑んでいた。

 

「流石は副会長ですわ!そう、そのμ'sはスクールアイドル活動で学校の名を広め、魅力を伝え、そしてその学校を廃校から見事救ったのですわ!」

「なるほど……アイドル活動で全国の中学生達の興味を自分達の学校へ向かせたという訳だな」

「その通りですわ!つまり私が言いたいのは……!」

「っ……まさかこの学校でもスクールアイドルを!?」

「その通りですわ!!!!」

「………黒澤、お前ちょっと怖いぞ……?」

「っ……こほん、失礼致しました」

 

燐花は向かいの席に座っているのにも関わらず、身をこちらへ向けて机に乗り出すダイヤに動揺していた。それは普段の大人しく容姿端麗な(自身の敬愛する美春には負けると思っている)ダイヤからは想像ができない姿であったからだ。

 

「なるほど、スクールアイドルね……確かに効果はありそうね」

「いいえ、確実にありますわ!断言できます!」

「言うわねぇ……!で、誰がそのスクールアイドルを?」

「もちろん!!私ですわ!!!」

「く、黒澤がアイドルぅ!?」

「はい!ずっと憧れだったのですわ!かのμ'sのようなスクールアイドルになることが、この黒澤ダイヤの夢なのです!」

「ふふっ、いいわね……私は賛成よ」

「私も異論はないが……」

「っ……ありがとうございます!そこで1つ提案があるのですわ!」

「「提案……?」」

 

するとダイヤはそんな2人にある提案を持ちかけようと椅子に座り直し、興奮していた気分を深呼吸をして落ち着かせてから話を続けた。

 

「はい。実は全国のスクールアイドルで1番を決める"あるイベント"があるのです」

「ほう……」

「……"ラブライブ!"のことね。聞いたことがあるわ」

「その通りですわ。しかし、それに出るには"学校公認のスクールアイドル"であることが条件なのです」

「学校公認……ということはそれを部活動として認められなくてはいけないということか?」

「はい!」

「黒澤……お前この学校の"部活動"についての規定は知っているだろうな?」

「はい。だからこそ、ここで提案させていただいているのですわ」

 

この浦の星女学院では部活を立ち上げるには最低5人の部員が必要であるという規定がある。ダイヤがスクールアイドルを始めることには賛成している燐花であったが、部活ともなるとそれは話が変わってくる。流石に1人ではラブライブ!に出るための最低条件である公認のために部活として認めるのは生徒会を担う1人として特別扱いはできないと考えていた。

 

「……黒澤さん。貴女がそう言うということは、なにか"条件"があるのよね?」

「っ……美春!何を言って……!?」

「燐花、一度話を聞いてあげてみたら?」

「………わかった」

「ありがとうございます。会長のおっしゃる通り、そのために私から提案があるのですわ。それを条件とし、それが達成できた暁にはスクールアイドル活動を学校公認の生徒会活動(・・・・・・・・・・)として認めて頂きたいのです」

「部活ではなく、生徒会の……というわけか。考えたな、黒澤」

「確かにそれならば校則を破ることなく"学校公認"にできるわね。で、その条件は?」

「はい。それは……体育館でライブを行い、そこを満員にすることが出来れば、学校公認の生徒会活動としてスクールアイドル活動を認めて頂きたいのです!」

 

そのダイヤから提案された条件に2人は今日1番の驚いた表情を浮かべた。

 

「体育館を満員に……!?全校生徒を集めてもあの体育館は満員にはならないぞ?!最低でも地域の方々にも来て頂かないと……」

「だからこそですわ!」

「……それほど自信があるということよね、黒澤さん」

「はい!」

 

そのダイヤの言う条件に燐花は顎に手を当てて難しそうな表情を浮かべていたが、美春は自信満々な態度を取り、一切ぶれない決意をダイヤに感じて微笑みを浮かべた。

 

「……いいわ。生徒会長権限で黒澤さんが言う"条件"を達成できたら、スクールアイドル活動を"統廃合阻止のための生徒会活動"として認めてあげてもいいわ」

「っ……美春!?」

「いいじゃないの燐花。あの黒澤さんがここまで言うのよ?"先輩"として"副会長"として……それに"浦の星女学院の存続を願う生徒"として、黒澤さんに託してみても」

「………わかった。黒澤、私もそれに賛成してやる」

「っ……ありがとうございます!」

 

美春、そして少し難色を示していた燐花からも了承が得られたダイヤは再び立ち上がって深々と頭を下げた。

 

━━ここからダイヤの念願であるスクールアイドル活動が始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………本当に大丈夫だろうか」

「ふふっ、燐花も後輩思いね」

「なっ……!」

「照れなくていいのよ。後輩思いなのは、貴女だけじゃないのだから」

 

会議も終わり、ダイヤが帰宅した後の夕陽が差し込む生徒会室では美春と燐花が話していた。

燐花は美春にそう言われると手に持っていたスマホの画面に視線を戻して重々しい声を出した。

 

「………先程調べたんだ、スクールアイドルのことを。確かに黒澤が言った"μ's"のように素晴らしい功績を残したスクールアイドルはいくつか見受けられた。しかし……」

「……しかし?」

「………スクールアイドルの"壁"の高さに現実を知り、その活動を諦めてしまった子達もいたようでな。黒澤がそうならないか心配なのだ」

 

燐花はスクールアイドルについて調べていた時に、今やその数やレベルを数年前より右肩上がりに伸ばしている現状と、その壁にぶち当たって夢を諦めてしまったスクールアイドルの書き込みを見つけて、ダイヤがその子らと同じようになるのではないかという不安を感じていた。それは燐花だけではなく美春も同じであった。

 

「そうね……でも、あの黒澤さんなら成し遂げてくれる気がするの」

 

しかし先程のダイヤを見た美春は、その不安よりも期待の方が大きく感じており、ダイヤの座っていた席に微笑みながら視線を移した。

 

「………だな。その"壁"を乗り越えるためにあのような条件を出したのだろうな、黒澤は」

「えぇ。託してみましょう……私達の夢を。そして、この学校の未来を」

「あぁ……そうだな」

 

もしかすればダイヤなら、体育館を満員にするという無謀とも取れる条件をクリアし、本当にこの学校を統廃合から救ってくれるかもしれないと期待していた。

この学校の絶望的な状況に希望という名の光が刺すように、夕陽はその生徒会室を照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━翌日。

 

「School idol……?」

 

ダイヤは翌日、自身のクラスの教室で幼馴染である松浦 果南(まつうら かなん)と共に、ぽかんとして席について2人の顔を見つめる同じく幼馴染の小原 鞠莉(おはら まり)に前のめりになってスクールアイドルの話をしていた。

 

「はい!学校を廃校の危機から救うためには、それしかありませんのッ!!」

 

普段のダイヤからは想像できない興奮のしようであったが、幼馴染2人にとっても、クラスメイトの生徒達にとってもそれは偶に見る光景であったため、誰もその様子には驚いていなかった。

 

「鞠莉スタイル良いし、一緒にやったら絶っ対注目浴びるって……!!」

「……Sorry. そういうの……興味ないの」

 

 

━━━果南やダイヤには悪いけど、留学のためにお勉強を沢山しないといけないから、今の私にそんな時間なんて………

 

 

鞠莉は席を立ってそんなことを考えながら2人に背を向けて教室から去ろうとした。

鞠莉の家は近くにあるリゾートホテルを経営している"小原家"の愛娘だ。幼少期に果南達と出会い、度々家を抜け出しては3人で遊んでいた。そんな鞠莉には両親も苦労しており、自室も最初は低階層であったがどんどんと上の階になっていったのがその証拠であろう。

そしてそんな両親は高校生になった鞠莉をいつか留学させたいと考えており、彼女自身も将来へ向けてそれもアリだと思い始めていたのもあり、いつも一緒だった3人で同じことをしたい気持ちを抑えて2人からの誘いを断ろうとしていた。

 

━━しかしそんなことは、この松浦果南にとってはお見通しであった。

 

「ハグっ……!」

「Wow!?」

 

鞠莉が去ろうと足を進めた時、その姿を見て考えていることを察した果南は、舌を出して意地悪そうな表情を浮かべながら勢いよく鞠莉を後ろから"ハグ"をし、体や顔を密着させて鞠莉を離そうとしなかった。それに驚いた鞠莉はそんな果南から逃れようと体を動かし続けたが、身体能力と力が同い歳よりも強い果南から逃れることはできなかった。

 

 

━━━もう、果南さんったら……ふふっ。

 

 

ダイヤはそんな2人を見て、少しは驚きつつもいつもと変わらないそんな光景に堪らず笑顔を浮かべて笑いが止まらなかった。

しかしそれはハグされている鞠莉も同じで、嫌がっているように見えたがその表情は嬉しそうな笑顔だった。

 

「何するの!?」

「うんって言うまでハグする!」

「離してよ〜!」

「ハグっ……!」

「もう辞めてよ果南っ〜!」

「辞めないっ!」

「……ふふっ、もう!私も仲間に入れてください!」

「ダイヤまでぇ〜?!」

 

そしてずっと2人を見て笑っていたダイヤも果南と違う方向からハグをしに行きその輪に混ざり、3人はいつものように笑い合った。

 

「さぁ!どうするの?鞠莉……!」

 

そんな中、果南は再び鞠莉にスクールアイドルをするか否か問いかけた。そう聞かれた鞠莉は目を丸くて2人の顔を交互に見つめた。

 

━━ハグ。それは、3人が今のように仲良くなった時に遡る………

 

 

 

『み、見つかったら怒られますわ……!』

『へーきだよ!』

 

小学生の時、ダイヤと果南は転校して来た鞠莉と仲良くなろうと、果南の誘いでその放課後に小原家の屋敷に忍び込んでいた。噴水の影に隠れながらダイヤは小声で、これを企んだ果南に声をかけ、果南は臆病なダイヤに無邪気な笑顔を浮かべた。

 

『あなたたちは……?』

『ピギィ……!?』

『あ……えっ………と………』

『ん?』

 

そんな中、庭を歩いていた鞠莉に見つかってしまい、ダイヤは驚いて鳴き声をあげながら立ち上がり、果南はどうにか誤魔化そうと視線を泳がせた。そんな2人を鞠莉は不思議そうに見つめ続けていた。

そして果南は目を泳がしながら、ダイヤと図書館で鞠莉と仲良くなるために本を読んで調べていた

 

『なるほど……』

『何か書いてあった?』

『はい。どうやら、オハラさんの住んでいたところでは、あいさつで"ハグ"をするようです』

『ハグ……?ねぇねぇ、それをしたらあの子とも仲良くできるのかな?』

『……なにを考えてますの?』

『ねぇ!がっこーが終わったら、行ってみない?あの子のところ!』

 

そして小原家の庭でのことに至る。

そのことを思い出した果南は噴水の影から離れて鞠莉の前に出て、きょとんと見つめてくる彼女に微笑んだ。

 

『あ……ハ、ハグ……!』

『………え?』

『ハグ……!しよ……?』

『……!OK!』

 

そして果南は両手を大きく広げ、鞠莉もそれを見て挨拶のハグをしたいのだとわかるとそんな果南に近付いてそのハグを受け入れた。

 

『ほら、ダイヤも!』

『ピィ……!?う……ハ、ハグ!ですわ……!』

『OK!ハグ……!』

 

それから果南の誘いで、最初は恥ずかしがっていたダイヤも鞠莉とハグをした。

 

『わたし、まつうらかなん!』

『く、くろさわダイヤですわ!』

『わたしはおはらまり!』

『"ハグ"したから、わたしたち"ともだち"だよね!』

『とも……だち……!』

 

 

………そうして友達になった3人は毎日のように遊び、そして今のように仲良くなったのだ。

3人にとってその"ハグ"はつまり"友達のシルシ"であった。

 

 

そして果南やダイヤからそんなハグをされた鞠莉は大きく息を吐いてから微笑んで、逃れようと入れていた力を抜いた。

 

「……わかったわ、降参よ。ほんと仕方ないわねぇ……果南もダイヤも」

「「っ……!じゃあ……!!」」

「やろう、School idol!学校を救うために……!」

 

そうして、ダイヤ、鞠莉、そして果南のスクールアイドル活動が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━黒澤家。

 

「「体育館を満員に!!??」」

「はい!それが生徒会公認……ひいては、学校公認のスクールアイドルになるための最低条件ですわ!」

 

放課後、3人は最初のライブに向けてダイヤの家で話し合いをするために集まっていた。そこでダイヤから教えられた学校公認のスクールアイドルになるための"条件"を聞いた果南と鞠莉は驚きの声をあげた。

 

「最低条件……つまり、体育館を満員にできなければ"ラブライブ!"に出れないってこと?」

「そうなりますわね」

「でも、その"Love Live"に出られなければ学校を救える程の大きな人気は得られない……」

「不可能ではありませんが、それが1番確実な方法ですわね」

「「……………」」

 

その思いもよらぬ厳しい条件に果南と鞠莉は難しい表情を浮かべて黙ってしまった。しかしダイヤは自信がある表情を浮かべていて、そんな2人に喝を入れるように声をあげた。

 

「ぶっぶー!ですわ!」

「ダ、ダイヤ……?!」

「そんな顔をしていては成功できませんわ!私達なら必ず満員にできます!」

「……へぇ、凄い自信だね、ダイヤ」

「当たり前ですわ!果南さんの運動神経と鞠莉さんのスタイルがあれば必ずできるという確信がありますわ!」

「……それにダイヤの綺麗な動きもね」

「なっ……!?」

「そうそう。私達3人が揃えば、なんでもできちゃうんだから!」

「ふふっ、そうですわね!」

 

そんなダイヤの言葉で喝が入った2人の表情にも自信にみなぎり、そして3人で見つめ合って頷いた。

 

「やろう!体育館を満員にして」

 

果南が右手を開いて机の中央の真上に掲げる。

 

「私達のFirst liveを成功させて」

 

そして鞠莉がその手に自分の右手を重ねる。

 

「学校を廃校から救いましょう!」

 

さらにダイヤもその手に右手を重ねた。

 

『おー!』

 

そして3人は再び見つめ合ってからその手を掛け声と共に挙げて気合いを入れ、ファーストライブに向けての準備が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

━━━ダイヤの部屋。

 

「お姉ちゃん……お母さんがご飯できたよって」

「ルビィ、帰っていたのですね。おかえりなさい」

「うん、ただいま……お勉強?」

 

ダイヤの妹、ルビィがご飯が出来たためダイヤを部屋まで呼びに行くと、そこにいたダイヤはルビィが帰って来ていたことに気付かなかった程集中して机に向かっていた。

 

「いえ。果南さんと鞠莉さんとスクールアイドルになることになりまして、そのグループ名の候補を考えているところですわ」

「スクールアイドル!?」

「えぇ!」

「すごいすごい!!」

 

ダイヤは3人で始めるスクールアイドルのグループ名の候補をノートに書いており、それを聞いたルビィは軽く飛び跳ねながらダイヤがスクールアイドルを始めたことを喜んだ。

 

「学校を廃校から救うため、3人でスクールアイドルになるのですわ!」

「すごい!μ'sみたい!お姉ちゃん、がんばルビィ!」

「えぇ!もちろんですわ!」

 

ダイヤはそんな最愛の妹ルビィに鼓舞されて、さらにスクールアイドルへの情熱を高めていた。ルビィも親愛する姉のダイヤが憧れのスクールアイドルになれることを嬉しく思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━翌日。島郷海水浴場。

 

 

3人は広く使えるここで練習をしようと、学校が休みということもあり朝から集まっていた。まず3人は、昨晩考えた自分達のグループ名を砂に書いて案を出し合った。

 

「"浦の星大三角"……ダイヤ本気?」

「どういう意味ですの!?夏の大三角と私達3人を掛けた渾身の1作ですわよ?!そういう果南さんこそ、"浦の星マーメイズ"はあり得ませんわ!」

「え〜!?いいじゃん!」

「2人ともセンスがNothingで〜す!」

「……鞠莉さんもなかなかですわよ?」

「"Ultra woman's"はなんというか……ダサい」

「What's!?」

 

3人とも案を出し合うがなかなかピンと来るものが誰からも出ず、3人はただ他の2人の候補を酷評するだけの時間が続いた。

 

「も〜〜!!全っ然決まんないじゃ〜ん!」

「2人ともガンコだからね〜」

「それは鞠莉さんもですわよっ!」

「う〜ん………」

 

既に砂浜にはいくつもの案が書かれていて、3人とも石階段に座りながらそれらを見つめつつ頭を悩ませていた。

 

「グループ名を決めるだけでこんなに時間がかかるとは……」

「ほんとにね〜……」

「他のスクールアイドルもこんなに悩んだのかなぁ……?」

「思ったよりも険しいのねぇ……School idolって」

 

3人は思ったよりも険しいスクールアイドルの壁を感じ、自信が少し削れたような表情を浮かべていた。

 

「もういっそのこと、みんなの案を引っ付けてみる?」

「引っ付ける……?」

「そうだよ!例えば……"浦の星"と"マーメイド"と"アクアマリン"で、"浦の星マリンマーメイド"とか!」

「長すぎますわ!」

「じゃあもっと短めに……"浦マリド"?」

「もうわけがわかりませんわ!」

 

痺れを切らした果南が3人の案を引っ付けて無理矢理名前を作ると、ダイヤはそのめちゃくちゃな名前にツッコミを入れた。しかし鞠莉は果南の"引っ付ける"という考えを元にぼーっと色んな名前の候補を見回していた。

 

「…………あ。これ、いいかも」

「っ……何か思いついた?!」

「教えてくださいませ!」

 

そして鞠莉の呟いた声に2人はついに均衡が破られる予感がして、鞠莉に発言を促した。すると鞠莉は置いていた木の棒を持って砂浜に足を進めた。

 

「"Aquamarine"って"海水"って意味を持つ宝石のことなの。つまり"Aqua"だけだと……」

「"海"……ですか?」

「Yes!だから"Aqua"って良いと思わない?あとはもうひと捻り欲しいところだけど……」

「ひと捻り?じゃあ……"Aquas"とか?」

「アクア……アクアズ……アウアー……?」

「っ……アウアー!?Oh,my god!良いこと思いついたわよ!」

 

鞠莉が砂浜に書いてあった"Aquamarine"と書いてあった文字の周りに"Aqua"と書いてそれらの意味を2人に説明して、果南の意見でそのあとに"s"を付け加えてからさらに良くしたいと頭を悩ませていると、ダイヤのひと言で何か閃いたように木の棒で勢いよく文字を書き始めた。

 

「鞠莉、なにか思いついた?」

「えぇ!ダイヤが言った"アウアー"でね!」

「ふぇ……?!」

 

ダイヤはまさか自分が適当に言った言葉がヒントになるとは思わず変な声をあげて目を丸くしたが、そんな中でも鞠莉は色々文字を書き進めていた。

 

「アウアー……きっと"私達"を意味する"ours"のことよね?!流石はダイヤ!」

「え、えぇ……!と、当然ですわ……!」

「………絶対適当だ」

「だから、これとさっきのを組み合わせて……!」

 

鞠莉はダイヤの何の意味もなく言った言葉を"ours"であると勘違いしていて、それと自分が出した案である"Aquamarine"の"Aqua"と組み合わせて"Aqours"という文字をどれよりも大きく砂浜に書いてドヤ顔を浮かべた。

 

「……これ、なんて読むの?"エイキューアウアーズ"?」

「これは……所謂造語ですか?」

「Yes!これは"Aqours(アクア)"って読むの!」

「「Aqours………!」」

 

その鞠莉の考えた造語……Aqoursという文字を見た2人は顔を見合わせて笑顔を浮かべた。3人とも、その名前がしっくりと来たようだ。

 

「……決まり、だね!」

「えぇ、そうですわね!」

「じゃあ、これから私達の名前は………」

 

『Aqours!!!』

 

━━これがAqoursの始まりだった。

 

それから3人は来たるファーストライブに向けての練習を開始したのであった。

 

3人は基礎体力トレーニング、ボイストレーニング、そしてダンストレーニングと、体育館を満員にしてライブを成功させるためにハードなトレーニングを日々重ねていった。

そのトレーニング以外にも、鞠莉と果南が制作したライブの告知するチラシを沼津駅周辺、そして学校始め地元でも配って宣伝活動も欠かさなかった。

衣装に関しては手先が器用なダイヤが作成し、昔共にμ'sのコスプレ衣装を作ったりして"スクールアイドルの衣装"の知識があるルビィもアイデアや小物等の作成を中心に手伝っていた。

 

 

そしてそんな日々もあっという間に過ぎ去っていき、ついにAqoursファーストライブ当日を迎えた。

 

 

 

 

 

 

━━━━━浦の星女学院。体育館。ステージ裏。

 

 

その日の照明や音響はクラスメイトに手伝ってもらい、美春や燐花はライブの行く末を見届けるため、今回のライブでは場所や物品の貸し出し許可を出す以外には関与せずに当日を迎えていた。なので体育館に来るお客さんの整理等もクラスメイトが手伝ってくれている。ダイヤ達が学校のために立ち上がったことを知り、クラスメイト達も何か手伝いたいと自ら3人に申し出てくれたのだ。

そんなクラスメイト達、そしてこの学校の存続を願う色んな人達の思いを背負いながら、3人はダイヤの作った衣装を着て開演時間を待っていた。

 

「なんだか緊張してきたわね……」

 

「そうですわね……」

 

「大丈夫だって!このために練習してきたんだから!」

 

「ふふっ、そうね!」

 

「そうですわね!3人でこの学校を救うために!」

 

鞠莉やダイヤは強張った表情をしていたが、度胸のすわっている果南の言葉にそれは柔らいでいき、3人ともやる気に満ち溢れた表情を浮かべて顔を見つめ合って頷いた。

 

「………そろそろ時間ですわね」

 

「やってやりましょう!」

 

「よし、行こう!」

 

「えぇ!」

 

「はい!」

 

ダイヤが時計を確認して開演時間が迫っていることに気がつくと、3人は幕裏まで足を進めて各々配置について、その幕が上がるのを待った。

3人が着ているのは浦の星のような袖が殆どない夏服をイメージした衣装で、果南と鞠莉は白色、ダイヤは紺色のものだった。胸部分に果南は大きめな緑色の、鞠莉は細めで紫色の、そしてダイヤは大きめで赤色と、それぞれがイメージカラーとする色のリボンをつけているシンプルなデザインであった。さらにそのイメージカラーはスカートの内部分の生地にも使われており、ひと目見て"スクールアイドルの衣装"だとわかりやすいものだった。

 

ダイヤは精神統一をするように目を瞑り、数年前に東京で開かれたパーティーで憧れであるμ'sの元メンバーナオキと絵里の前で宣言した日のことを思い出していた。

 

『限られた時間で必死に輝いてみろ。それはきっと君にとって良い体験になると思う。おれ達が経験した"輝き"を手に入れてみろ』

 

『私、絶対にスクールアイドルになって輝いてみせますわ!』

 

 

━━━ついに、この日がやってきましたわ。

 

私だけじゃなく、果南さんと鞠莉さんとスクールアイドルという道を歩み始めるこの日が。

 

そして歩んで行って……私達で輝きたい(・・・・)

 

 

ダイヤがそんな願い、決意を胸に浮かべたと同時に、開演を知らせるブザーが鳴って幕が上がった。

 

3人はこれからの期待を胸に幕が上がるのとほぼ同時に目を開けて、その先に広がる景色を……

 

 

 

 

 

 

 

 

ペンライトで照らされている満員の体育館を、目を輝かせながら見つめた。

 

 

 

 

━━━おめでとう、黒澤さん。

 

 

体育館の後方で集まった観客とステージで感動を露わにしている3人を、美春は腕を組みながら見つめていた。

 

「……ほら、ダイヤ」

 

「あ……み、皆様!本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます!私達は……」

 

『Aqoursです!よろしくお願いします(致します)!』

 

『ワァ━━━━!』

 

3人の真ん中に立っていたダイヤ、そして果南と鞠莉も続いて一歩前に出て揃って頭を下げると、観客達から待ち侘びたような大きな歓声と拍手が湧き起こった。

 

「私達AqoursのFirst Live!」

 

「この日のために沢山練習してきました!」

 

「その成果と、浦の星女学院を救うための決意を、ご覧ください!」

 

そう言って3人が配置についてポージングをとると、観客達からはさらに拍手が送られた。

照明も暗くなり、3人を眩しいほどのスポットライトが照らして、いよいよAqoursのファーストライブが始まった。

 

今日披露する曲は、ライブまでの日程をそこまで先にしたくなかったため、ラブライブ!の出場条件である"未発表のオリジナル曲"を作るよりも、ダンスを完璧に仕上げることを優先し、そしてこれから歩み出す良いスタートダッシュ(・・・・・・・・)を切るために、伝説と呼ばれるスクールアイドルの曲を選んだ。

 

『START:DASH!!』

 

それが今回3人がAqoursとして初めて披露する曲で、今では伝説と呼ばれ、そしてダイヤの憧れであるμ'sのファーストライブでも歌われた曲だ。

3人はそのファーストライブの映像を何回も見返して練習を重ねたお陰でそのダンスを完璧に再現することに成功していた。観客達も知っている人はその完成度に、それを知らない人は3人の綺麗なパフォーマンスに感動していた。

それを見た誰もが、この3人ならば必ず人気が出るスクールアイドルになり、そしてこの学校を廃校の危機から救ってくれるかもしれないという希望を抱いた。

 

『ワァ━━━━!!!!』

 

そして3人が最後の決めポーズをとって曲が終わると、割れんばかりの歓声と拍手が体育館に響いた。3人はそれを聞いて汗を垂らして息を切らながらそんな体育館を見回し、その表情も唖然としたものから徐々に笑顔になって見つめ合った。

 

そうしてAqoursのファーストライブは大成功で幕を下ろした。

 

 

 

━━━━━数時間後。

 

 

 

「では!ダイヤちゃん、果南ちゃん、鞠莉ちゃん達Aqoursのファーストライブ成功を祝して……乾杯!」

『かんぱーい!』

 

体育館の片付けや撤収作業を完了させ、ライブに協力したクラスメイト達と共にダイヤ達3人は、その打ち上げを1年生の教室で行なっていた。机を引っ付けてそこへ飲み物やお刺身やオードブルを置いて、皆紙コップを片手にダイヤ達を労いの言葉を掛けていた。それを受けた3人は協力してくれたことに感謝しつつ、照れながらもその言葉を受け取っていた。

 

そんな和やかな雰囲気が教室を包む中、唐突にドアをノックする音がして、美春と燐花がそこへ入ってきた。

 

「お邪魔するわね。黒澤さん、ちょっといいかしら?それに松浦さんと小原さんも」

『は、はい!』

 

クラスメイトに囲まれていた3人は少し緊張した表情を浮かべながら、教室の入り口から自分達を呼んだ美春の元へ足を進めた。

 

「まずはライブお疲れ様。とても良いライブだったわ」

『ありがとうございます……!』

 

3人が目の前に来ると美春は順番にその顔を見回してから笑顔で労いの言葉をかけ、3人はその言葉に内心安堵しつつ頭を軽く下げた。

 

「黒澤さん」

「は、はい!」

「貴女は……いいえ、貴女達Aqoursは体育館を満員にしてライブを成功させたわ。だから約束通り、Aqoursのスクールアイドル活動を生徒会活動の一環として認めましょう」

『おぉ〜!』

「あ、ありがとうございます!」

 

美春の言葉は真の意味(・・・・)でライブの成功を意味し、皆はそれを祝福するように声をあげて拍手をした。

 

「それでね、生徒会活動(・・・・・)ということは生徒会役員の必要があるから、松浦さんと小原さんには生徒会の役員になってほしいと思ってね」

「「私達が!?」」

「それはそうだろう。生徒会役員じゃない生徒が生徒会活動だなんておかしいからな」

「そういうことね。いいからしら?」

「私達がなっていいのなら……」

「喜んで!」

 

美春と燐花の言葉に果南と鞠莉が同意の意思を伝えると、美春は微笑みながら頷いた。

 

「……決まりね。じゃあ私達は校長先生にこの書類を出してくるわ。黒澤ダイヤ、松浦果南、小原鞠莉3名のスクールアイドル活動を、学校公認の生徒会活動として認める書類を」

「生徒会長、何から何までありがとうございます……!」

「私は何もしてないわよ。これは黒澤さんが……いいえ、黒澤さん達の力で手に入れたものよ。これぐらいはさせて頂戴」

「そうだぞ黒澤。美春も私も、お前達と同じくこの学校の廃校をなんとかしたいのだからな」

「会長、副会長……!」

「それじゃあ、お邪魔したわね。ゆっくり楽しんで」

「お前達!夕方には片付けも終わらせて帰るんだぞ!ゴミもしっかり捨てるように!」

『はい!』

 

美春と燐花はそう言い残すと教室を出て、その書類を出すために職員室へと向かっていった。2人が教室のドアを閉めると、クラスメイト達は喜びを露わにして3人を囲んで口々にお祝いの言葉をかけていった。

3人は美春達の言葉、そしてクラスメイト達の言葉を受けて、改めて必ず学校を廃校の危機から救ってみせるという決意をしたのであった。

 

 

 

━━━次回へ続く。

 

 





ありがとうございました!
気になる今回のプロローグの主役はダイヤちゃんでした〜!いかがでしたか?この3人のエピソードはサンシャイン!!の中でも好きなので力を入れさせていただきました!
前回の梨子ちゃんの回でもうおわかりかと思いますが、ほとんどはオリジナルで書かせていただきました!
アニメをご覧になった方はわかると思いますが、もう1話続きます!近日公開しますので次回更新をお待ちください!

そういえば、今週末は現在進行してるコンテンツの蓮ノ空さんがラブライブ!の決勝プレーオフ生放送されるみたいですよ!?な、なんだってー!?これは!もう!見るしかない!!!!!!

それではまた次回!お会いいたしましょう!今回は読んでいただきありがとうございました!
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