みなさん、落ち着いて聞いてください。もうすぐ2025年が終わってしまいます。どうもシヴェ・リアです。
今回はついにプロローグのラストエピソードになります!どんなお話なのかは……お楽しみに!ですがプロローグのラストってことは……?
ということで早速どうぞ!!!
━━時は流れる。
見事ラブライブ!2年完全制覇を成し遂げた亜里沙、雪穂、真癒美、瑞希は音ノ木坂学院を卒業した。その後、真癒美はダンスチームからのスカウトを受けてその道へ、他の3人は大学に進学した。
亜里沙と雪穂は大学進学と共に亜里沙が暮らしていたマンションの部屋で2人暮らしを始めた。そして亜里沙と同居していたナオキと絵里は…………
「「……………………」」
「はっはっは!2人共驚いてくれてるみたいだな!」
「あの……おじさん?本当にいいの……?」
「もちろんだ!2人の結婚祝いにと約束したからな!」
ナオキと絵里は
ナオキ達が見つめている建物というのは、晋三が2人の結婚祝いにとプレゼントした2人の新居であった。しかしその新居は思っていたよりも大きいもので、その予想外の規模に2人は言葉を失ってしまっていたのだ。
「あ、の……本当にいいんですか?なんだか2人には勿体無いような……」
「はっはっは!なんと屋上付きの3階建てだ!何人子供が増えても安心の部屋数だし、これで未来も安心だな!」
「ちょっ……おじさんッ!」
「いやぁ〜2人共まだ若いからな!これぐらいあった方がいいだろう!」
なんだか楽しそうに話す晋三の言葉に頬を染める2人だったが、こんなにも自分達の結婚を喜んでくれていることに嬉しさも感じていたため怒るに怒れない状況であった。
「……ありがとう、おじさん」
「御礼を言うのはこっちだよ。ナオキにはその年齢で会社の社長を任せることになったし、これからきっと沢山苦労を掛けるだろう。絵里さんはかわいい甥っ子を婿にもらってくれたし、これから末永くこいつのことをお願いしたいからね。これぐらいはさせてくれ」
「もう、おじ様ったら……」
「絵里さん、改めてナオキのこと、よろしくお願いします」
「い、いえ!こちらこそ……!」
和やかな雰囲気の中、ナオキは自分を思う晋三の愛の大きさに少し恥ずかしい思いをしていたが、同時にそれがとても有難く感じていた。
「じゃあ中を案内しよう。荷物が来る前に確認した方がいいだろう」
「「お願いします」」
そして晋三に連れられて2人は新居の中に足を踏み入れていき、新居内の部屋の多さや設備に驚く時間を過ごした。
「疲れた〜……」
「お疲れ様」
「ありがとう。ん〜ひと働きした後の水は美味い!」
ナオキは搬入されたソファーに腰掛けて声をあげると、それを労うように絵里は買ってあったペットボトルに入った水を手渡して、ナオキはその水で引っ越しの荷物の搬入を終えて疲れた体を癒した。
「でも……本当に広いわねぇ。前まではマンションだったからまだ慣れないわ」
「ははっ、違いない」
「これなら亜里沙達も一緒に暮らせたんじゃない?」
「そうかもなぁ……」
「寝室に、私達の自室に仕事部屋、お客さん用の部屋……贅沢に割り振っちゃったけど、これからどうなるのかしらね?」
「なっ……!?」
「ふふっ……」
絵里はナオキの隣に腰掛けながら2人でそんな甘い会話をして、しばらく無言の空気が流れる。
「……今日は出前を頼もうか。絵里も疲れたろ?」
「あ、じゃあお寿司頼んじゃう?」
「いいね〜!」
そして2人はお寿司の出前を注文し、新居で初めて過ごす夜はとても幸せなものであった。
2人はそんな夜を過ごしながら、愛する人とこれから過ごしていく日々はきっとこの夜のように幸せなものであると確信し、胸をときめかせていた。
━━━━翌日。
ナオキは会社の社長室で2月に行われたラブライブ!冬大会決勝の映像を見返していた。
昨年、後輩達から新入部員が来ないと相談を受けて心配していたナオキだったが、無事に新入部員が入ったことにより母校である音ノ木坂学院のアイドル研究部は無事に現在も存続していた。
亜里沙達が卒業した後に迎えた夏のラブライブ!にはアイドル研究部……Shooting Starsは出場しなかった。理由は2年生となった舞里のトラウマ克服とダンスのブランク、そして部員全員の能力を高めるための特訓期間に充てていたためであった。ダンスの経験がある舞里をはじめとした部員達は歌唱しながら踊るスクールアイドルには苦戦したが、元μ'sのメンバーを含む卒業生達に指導役を申し出て、その指導と武者修行とも言える様々なイベントの参加や、他のスクールアイドルとのステージ対決を経て、その実力は他の経験のあるスクールアイドルと大差ない物となっていた。
Shooting Starsが参加していなかった夏のラブライブ!では、昨年までの先輩達の屈辱を晴らすカタチで大坂学園のナニワオトメが王者を奪還。あまり喜びというような感情を表に出さない千羽が涙ながらに喜ぶ姿は多くの人を感動させた。
しかしその翌回の冬のラブライブ!では満を持してShooting Starsが出場。予選ではギリギリの順位での突破となり、世間からは優勝は期待できないという評価を受けながらもそれを追い風に変えて東京地区予選決勝は堂々と勝利。1枠しかない本戦決勝出場の枠を勝ち取った。
そうして迎えた本戦決勝では、どのスクールアイドルも素晴らしいステージで誰が優勝するかわからない状況であった。しかしその中でも、近畿地区からは前回王者のナニワオトメが1位で通過していたため今回の優勝候補となっていた。しかしそんな状況の中で、Shooting Starsは今までで1番のパフォーマンスを魅せて見事優勝し、音ノ木坂の実力は衰えていないのだと世間に示す結果となった。
「……スクールアイドル人口は今も増え続けている。それに求められる実力も跳ね上がっている。これは次のラブライブ!も面白くなりそうだ……!」
ナオキは次のラブライブ!やスクールアイドルの未来にワクワクした気持ちを抑えきれず、その映像を見ながらも満面の笑みを浮かべていた。
「社長、よろしいですか?」
「あ、すみません。どうかされましたか?」
そんなナオキに声をかけたのは社長秘書を務める新戸 美書子。まだこの会社が"ラブライブ!運営委員会"という名前の時から働いている社員で、他の社員より年齢が低くはあるが、彼女が持つその優秀さから晋三に新社長であるナオキの秘書に抜擢され、スケジュールの管理等の仕事をこなしていた。
「今日のご予定を確認しよっと思いまして」
「よろしくお願いします」
「かしこまりました。まずは前回のラブライブ!の反省点や改善点をまとめ、次回大会の日程等を決める役員会議がございます。その後はオンラインで各支部の代表とのオンライン会議。昼食の後は書類のサイン等ございますが……恐らく、次のラブライブ!の日程が決まればUTX高校の理事長様にお知らせした方が宜しいかと思います」
「確かに……いつもラブライブ!の開催決定はUTXのモニターでしていますからね」
「はい。他に何か気になる点はございますか?」
「いえ、特にありません。いつもありがとうございます」
「仕事ですから。それでは会議の時間が近付きましたらお迎えにあがります」
「わかりました。よろしくお願いします」
「はい。失礼致します」
予定の確認が終わると美書子は社長室を出ていき、それを確認すると姿勢を正していたナオキは椅子の背もたれに体重を預けて大きく息を吐いた。
━━━まだ慣れないなぁ……社長っていうのは。
ナオキはそう思いながら、これから行われる会議に向けての準備を始めた。慣れない仕事ではあるが、1年経験したことでそれにはだいぶ慣れた方ではあるがまだ覚束ないところが多かった。だがナオキはそんな中でも大好きなスクールアイドルのため、そして叔父である晋三から託された仕事のため、必死にその役目を果たしていた。
その日の昼過ぎ。ナオキの姿は秋葉原にあった。その目的は、UTX高校の理事長と今後のことについて直接話をするためであった。
UTX高校の受付の警備員に要件を伝えると、職員がやってきて理事長室まで案内してくれ、ナオキはそこのソファチェアに腰掛け、理事長は向かいにあるソファチェアに腰掛けて2人は向かい合う形になり、挨拶がてら雑談をして和やかな雰囲気が理事長室を包み込んでた。
ここの理事長である
「━━━そうだ。ラブライブ!の日程についての話だったね。つい盛り上がってしまったね」
「いえ!優木さんとのお話は楽しいので大歓迎ですよ」
「はっはっは!嬉しいことを言ってくれるじゃないか!」
「ありがとうございます。こちらが今回のラブライブ!の日程になります」
「ふむふむ……まぁ、いつもと同じぐらいだね。映像のデータはまたいつも通りに?」
「はい。こちらで作成したものを後日送らせていただきます」
「かしこまった。担当の者に伝えておこう」
「いつもありがとうございます!」
「いやいやお礼を言うのはこちらこそだよ。いつもウチのスクリーンで発表させてくれるから色々助かっているよ」
「恐れ入ります」
ひと通りラブライブ!の日程についての話が落ち着くと、武尊は腕時計を確認してからニヤリと笑ってナオキに言葉をかけた。
「実は君に紹介したい生徒達がいるんだよ」
「僕に……ですか?」
「あぁ、そろそろ来るはずなんだが……お、来た来た。入りたまえ」
「はい!失礼します」
そう話しているとドアをノックする音が聞こえ、武尊の声を聞くとその音の主がドアを開けて姿を現した。
「あ、貴女は……!?」
「ふふっ、久しぶりね。ナオキくん」
「ツバサさん!?それに、英玲奈さんにあんじゅさんも!?」
「やぁ」
「お久しぶり〜」
その主とは、スクールアイドル時代には第1回ラブライブ!を優勝し、μ'sやナニワオトメと共に"三大スクールアイドル"とも呼ばれ、現在はプロのアイドルとして活動するA-RISEの綺羅 ツバサ、統堂 英玲奈、優木 あんじゅであった。ナオキはまさかの再会に驚きを隠せずにいて、A-RISEの3人と武尊は「してやったり」と言わんばかりの微笑みを浮かべていた。
「優木さんが紹介したい人ってA-RISEの……!?」
「まぁ、それもあるがね、本当に紹介したいのは
「はい、お父様。貴女達、入ってらっしゃい」
「「「はい!」」」
あんじゅは父である武尊からそう言われると、ドアの外に待機している人達に向かって手招きをして室内に招き入れる。すると3人の女子生徒達がゆっくりとドアを通り、ナオキは思わずその3人の姿を目で追ってしまい、そして息を呑んでしまっていた。
「っ……こ、この子達は……!?」
「流石はナオキくんね。この子達の"力"にもう気付いてる」
そう、ナオキは3人の姿を見てその"アイドル力"とも言えるもの……所謂オーラを感じたため目で追い、そして息を呑んでしまっていたのだ。
ナオキはその3人を見て思った……A-RISEを初めて見た時と同じだ、と。
「紹介しよう……この子達は"
「2年前から……?」
「あぁ。君達μ'sにA-RISEが敗れてしまった時に私とあんじゅ、ツバサくん、英玲奈くんの4人で提案したカリキュラムでね。芸能科以外からも学科問わず希望者を募り、オーディションやレッスンを2年間で繰り返して成績優秀者を3年目にスクールアイドルとデビューさせるものなんだ」
「3年目に……ということは活動するのは……」
「そう。1年だけよ」
「その1年の活動のために競い合い、高めあう」
「そしてこの1年で"輝き"を得る。最っ高にスクールアイドルって感じと思わない?」
「っ……確かに!その方法は思い付きませんでした。この学校の優秀な3人の生徒を集めて結成されたA-RISEと、それを産み出した優木さんだからできるカリキュラム……!」
「そういうことだ。正式発表の前に、S.I.C.の社長である君に紹介しておこうと思ってね」
「さ、みんな」
「はい。
「
「
「「「よろしくお願いします」」」
「S.I.C.社長の香川 ナオキです。よろしく」
3人は1人ずつ名前を告げてから揃って一礼すると、ナオキも座ったまま頭を下げた。
「この子達は沢山いた応募者の中でも特に頭が抜けていて、生徒達からはそれぞれの名前を取って"
「そうなんですか……!それは楽しみです!」
「"楽しみ"とは……ふふっ、キミらしいな」
「自分の母校のスクールアイドルが負けちゃうかもしれないのにね」
英玲奈とあんじゅが笑みを浮かべてそう言うが、ナオキの表情は興奮に満ちたものだった。
「だってそうじゃないですか!?A-RISE以降、UTX高校はスクールアイドルを輩出してなくて、それがこの1年のための準備期間で、満を持してのB-RAVEの3人!今年のスクールアイドル全体としてのレベルも上がりますし、そんな中で開催されるラブライブ!もどうなるか楽しみしかありませんよ!音ノ木坂だけではなく、僕はスクールアイドルみんなを応援しているんですから!」
「スクールアイドルのことになると本当に熱くなるね、君は」
「あっ……すみません、つい」
「はっはっは!結構結構!それだけ楽しみにしてくれて嬉しいよ!な、君たち」
ナオキの興奮した様子に武尊は驚いたことによりナオキは少し頬を赤らめたが、武尊の満足気な言葉にA-RISEやB-RAVEの面々は笑顔で頷いた。
「その期待にお応えしてみせます」
「例え
「ルナの言う通り。どんな相手でも勝ってみせます」
「あぁ!楽しみにしているよ!」
涼、ルナ、そして華姫の言葉にその期待感をさらに膨らませたナオキは、理事長室を後にした帰り道でも今後のことを想像して笑顔が隠せなかった。
UTX高校のB-RAVE、大坂学園のナニワオトメ、そして音ノ木坂学院のShooting Stars。この3校のスクールアイドルが揃うのはμ'sとして参戦した"あの時"以来で、きっとファンや他のスクールアイドルも盛り上がるに違いないとナオキは確信していた。
「……本当に、楽しみだ」
UTX高校を出て空を笑顔で見上げてそう呟いたナオキ。太陽が雲ひとつない青空で眩しいぐらいに輝き、それはまるでスクールアイドル達の輝きを期待させるかのようなものであった。
しかし突如として強風が吹き荒れて、ナオキは思わず目を瞑って下を向いてしまった。
「ん……?これは……メイド喫茶のチラシ?」
そして目を開けたナオキの足元にはメイド喫茶のチラシがあり、それを拾い上げると先の道に何枚も同じような紙が散らばっていた。
━━その刹那、ナオキは顔の横を白い羽根がひらひらと舞っているような気配を感じた。
『〜〜〜〜♪』
同時に耳に入り込んでくる
「……『START:DASH!!』か。そうか、確か今日はμ'sの動画が流れる日だったな」
スタダとファンから呼ばれて愛されるその曲は、ナオキもサポート役として所属していたμ'sの大人気曲だ。今日はUTX高校の外にあるスクリーンでμ'sの映像が流れる日だったということをナオキは思い出して視線を前へ向ける。
「ん?あの子は……?」
そんなナオキの視線の先には目を輝かせながらスクリーンを見上げるオレンジ色の髪をした制服の少女だった。
━━その少女に向かっていく白い羽根に導かれるように、ナオキの足は自然とその少女へと向かっていた。
━━━━時は遡り………
『次は、秋葉原。秋葉原です』
「あ、もうすぐ着くよ!」
「早いね〜!流石は東京!」
電車の席に座りながら目的の駅である秋葉原駅に思ったより早く着くことに感動する2人の少女達。
「ごめんね、千歌ちゃん。付き合わせちゃって」
「ううん!曜ちゃんこそ、大会で疲れてるはずなのに……」
「私は大丈夫であります!水泳と観光の体力は別だから!」
「そういうもんかなぁ〜?」
「そうだよ!いやぁ〜楽しみだなぁ……制服とか、制服とか制服とか!」
「制服しかないじゃん!?ゲームセンターは!?おっきなビルは!?」
「も、勿論!それもある……よ?」
"千歌"と呼ばれた少女は"曜"と呼ぶその少女の制服への執着心に呆れたような表情を向け、曜はそれを誤魔化すかのように電車の天井へと視線を移した。
「ほんとかなぁ……?まぁでも、曜ちゃんが行きたいところに付いていくよ!」
「いやぁ〜持つべきはやはり千歌ちゃんですな〜!」
「えっへん!制服のお店を征服しちゃうぐらい周っちゃってもいいからね!あ、今のは"制服"と"征服"をかけていて……」
「あ、着いたみたいだよ。降りよ、千歌ちゃん」
「ちょっと!?待ってよ〜!」
曜はまだ若干冬の寒さが残る(?)春の空気を感じながら電車を降り、千歌はその後を追いかけるように電車を降りて行った。
「「わ〜〜!!」」
「ビル!ビル!ビルしかな〜い!」
「流石は東京だねぇ〜!」
「うん!」
「千歌ちゃん!あっち行ってみよ?!」
「お〜!」
千歌と曜はビルが立ち並び多くの人が行き来する街を見回してテンションが上がっている様子を見せていた。そして曜が指差した方向に歩き出すと千歌もワクワクした気持ちを抱えながらその後を追いかけようと足を前に出した。
「どうぞ!」
「え?わ〜メイドさんだ〜!ありがとうございます!」
「メイドさん!?」
「わっ!?曜ちゃんいつの間に……」
「はい、貴女もどうぞ」
「ありがとうございます!」
その時、千歌はチラシを配っているメイドの格好をした女性からそれを受け取り、メイドと聞いて瞬間移動してきた曜も同じようにチラシを受け取って敬礼のポーズをしてお礼を言った。
「きゃっ!?」「「わっ……!?」」
するとそんな3人を突如として強風が襲い、女性はメイド服のスカートが大きく捲れてしまいそうになって咄嗟にそれを押さえたが、その拍子に持っていたチラシが辺りに飛び散ってしまった。千歌と曜は急いでそれを拾い集めに行き、女性も続いて近くのものを拾い集め始めた。千歌と曜だけではなく近くを歩いていた人もそれを集めてくれ、それぞれ何枚か拾うと女性に手渡していた。
千歌はチラシをある程度集めて渡しに行こうとしたが、ふと少し先に1枚のチラシが見えてそれを拾いに行こうと駆け寄った。
するとそのチラシはヒラヒラと風に乗って千歌から逃げるように舞い、彼女はそれを追って走り出した。
千歌はそれを追って秋葉原駅の中に入り、そこを通り抜けて電気街口の方へ出て、チラシを捕まえれるかと思いきや、少し風が強まって目の前のビルに向かって飛んでいき、千歌は諦めずに階段を駆け上がってそれを追いかけた。
「あっ……!よし、捕まえた……!」
そして千歌はやっとの思いでそのチラシを拾い上げて安堵の表情を浮かべた。
しかしその安心も束の間、強い風が千歌を襲って彼女はその勢いに目を瞑って髪を押さえるが、その勢いによって折角集めたチラシは宙を舞ってしまった。
━━そんな千歌の目に、
『Love Live!SECOND WINNER
Shool idol is……』
「ラブ……ライブ……?」
千歌は聞いたことがない単語を不思議そうに見つめていると、制服を着た女の子達が踊る映像が流れ始め、彼女はそれに目を釘付けにされた。
━━高海 千歌は"普通"であった。
普通の女子高校生で、普通な日々を過ごし、曜みたいに何か人より抜きん出た能力等もなく、何か夢中になるものもなく、今まで見つからず遂には高校2年生をもうすぐ迎えてしまう。これからもそんな日々は変わらないのだと……思っていた。
しかし、スクリーンに映る女の子達は自分と同じ高校生だった。そんな彼女達がとても輝いているように見え、千歌の中で燻っていた"何か"が水が沸騰するように沸々と沸き上がってくるような感覚を覚えていた。
ただただ無心で、この世界には自分と彼女達しかいないと錯覚してしまうように、千歌はそんな女の子達の踊る姿を見つめていた。
━━そんな千歌の目の前を白い羽根が横切ったように感じ、それによって彼女はハッと現実世界に戻されたような感覚を感じた。
「……君、ちょっといいかな?」
「え……?」
そんな千歌は自分を呼ぶ声が聞こえて視線をそちらに移した。
ナオキは1枚のチラシを片手に持ちながらスクリーンを見上げる少女に声をかけた。
━━この時、
千歌はスーツ姿のナオキを見つめて、こんな歳上の男性が自分に何の用があるのかと疑問を感じていた。
━━━ハッ!?まさかこれが噂の"スカウト"……!?と、東京って凄い……!
「あぁごめん、怖がらせちゃったかな?これ、君のかな?同じチラシ持ってたからそうじゃないかな?って」
「え、チラシ……?あっ!そうだった!私、メイドさんのチラシを集めてたんです!ありがとうございます!」
「そうだったんだ。偉いね」
「えへへ……」
━━━ん?この子の制服どこかで……
「……君は、この辺の子じゃない……よね?」
ナオキはその照れる仕草を見せる千歌の制服に既視感を感じ、少なくともこの周辺の学生ではないことはわかっていたが、その確認をするために彼女にそのことを尋ねた。
「あ、はい……!静岡の沼津……あ、田舎の高校生なんです!今は友達と観光に来てて……」
「なるほどねぇ〜」
━━━沼津……あ、思い出した。確かダイヤちゃん達の"浦の星女学院"の制服だ。通りで見覚えがあるわけだ。
ナオキが千歌の制服に見覚えがあった理由。それは2年前の夏に開催した"TOKYO SCHOOL IDOL WORLD"に参加した"Aqours"の所属する学校の制服だからであった。あの時にダイヤ達と話した時に制服姿だったことと、
「…………」
「……ん?あぁ、気になる?あの子達のこと」
「え!?あ……はい……」
ナオキはチラチラとスクリーンの方を確認する千歌に気付いて声を掛けると、図星だった千歌はそれを誤魔化さずに照れながら頷き、ナオキもスクリーンに視線を向けて嬉しそうな表情を浮かべた。
「もしかして、初めて見るのかな?」
「っ……はい!とてもキラキラしてて!凄い!って思って!」
「はははっ!そうかそうか……」
「あ……すみません……」
「いいよいいよ?!興奮しちゃう気持ちもわかるよ。凄いもんね、彼女達の"輝き"は」
「輝き……!はい!あの女の子達って……?」
「"スクールアイドル"だよ。数年前まで活動してた」
「スクール、アイドル……!?そ、それってなんなんですか!?」
ナオキからスクリーンに映る彼女達のことを聞いて目を輝かせる千歌。ナオキはまだスクールアイドルのことを知らない高校生もいることに若干驚きつつも言葉を続けた。
「スクールアイドルっていうのは、あの子達みたいな学生が歌って踊るアイドルをする部活動みたいなものだね。ああやってライブをしたり、地域とかのイベントに参加したり、後は全国大会もあったりするんだ」
「大会まで……!?」
「うん。"ラブライブ!"って言うんだけど、そこで優勝したのが彼女達なんだ」
「そうなんですね!?優勝かぁ……!」
「そう。それに彼女達は特に凄くてね……大きな大会で優勝しただけではなく、なんと!自分達の学校を廃校の危機から救ってしまったんだ!」
「ええええええええ!?」
千歌はナオキの話したことに身を反りながら驚き、ナオキはそのリアクションに嬉しくなって笑顔を浮かべた。
「凄いだろ?彼女達はスクールアイドルを始める前は
「っ……普通、の……!?」
千歌の胸の中でマグマの様に沸々と湧き上がる思い。千歌の目は先程までよりも大きく、そして輝いていた。
「あぁ。そんな彼女達がこんなにも輝く……それがスクールアイドルの素晴らしさなんだ」
「わぁ……!」
千歌はナオキの言葉を聞いてさらに目を輝かせてスクリーンを見つめる。ナオキもどこか懐かしい気持ちを感じながらスクリーンを見つめると同時に、千歌がそんな彼女達を笑顔で見つめている様子をより強く嬉しく感じていた。
━━そして、そんな千歌の中に新たな気持ちが
━━━私も、この人達にみたいに……
「私、やりたいです……!」
「ん?」
「私、スクールアイドルやりたい!!だから、失礼しますっ!!」
「え!?ちょっ、チラシは〜!?……はははっ、なんかあの感じ、思い出すなぁ」
ナオキはそう言って走り出す千歌を見て、自身がμ'sに所属している時に決めたことに全力で走り出すように皆を引っ張ったリーダーである穂乃果のことを思い出して、それを懐かしむように微笑んだ。
「あれ……え!?千歌ちゃん!?」
「おや?もしかしてさっきの子の友達かな?」
「あ……はい……?」
そしてそんな千歌と入れ違うようにやってきた曜にナオキが声を掛けると、曜は少し警戒したような仕草を見せていた。
「怪しい人じゃないんだ、ごめん。さっきの子にこのチラシを返そうと思ったんだけど、渡す前に行っちゃったからさ」
「あ、そうなんですね!?すみません」
「ううん!急に話しかけられたら警戒しちゃうもんね。これ、君に渡しても大丈夫かな?」
「あ、はい!ありがとうございます!」
「じゃ、僕はこれで失礼するよ。早くあの子を追いかけてあげないとだろ?」
「あっ!そうでした……!迷子になっちゃう……!し、失礼しま〜す!」
ナオキからチラシを受け取った曜は一礼し、千歌の名前を叫びながらその後を追いかけるように走っていった。
「……青春だなぁ」
そしてナオキは曜の背中を見ながらそう呟いて、スクリーンに視線を向けてかつてのμ'sの姿を見つめた。
━━━μ'sはこうして今も"誰か"に希望や輝きを与えてるんだな……
ナオキは先程の千歌の姿を見てそう思いながらμ'sの輝きに感動していた。
そしてその輝きは誰かを照らすようにあり続けるのだと感じた。
━━あの青空に輝く太陽のように。
ナオキはその太陽に向かって手を伸ばしてそれを掴むように拳を握った。
『私たちは飛べる!どこまでだって行ける!どんな夢だって叶えられる!』
"あの日"に穂乃果が太陽を掴んだように。
「……あの子はどんな夢を叶えるのかな?」
「わぁ〜………!!」
「千歌ちゃんずっと見てるね」
「うん!だって凄いんだよこの人達!大きな大会で優勝したし、それに学校を廃校から救っちゃったんだって!?」
「へぇ〜!?」
帰りの電車の中でずっとスマホで先程知ったばかりのスクールアイドルの映像を見る千歌。そんな千歌の話を聞いて興味が出て来た曜はその画面を覗き込んだ。
「私、スクールアイドルやりたいんだ!」
「……え?」
「スクールアイドルやって、この人達みたいに輝きたい!この人達みたいになりたいんだ!」
「………そっか」
曜はそう語る千歌を見て優しく微笑んだ。
自分は普通だから、と曜が部活に誘っても断って、特に「これがしたい!」と言っていなかった千歌がこうして「やりたい!」と語って
いることが嬉しく感じていたのだ。
━━━こんな表情してる千歌ちゃん、久しぶりに見たなぁ……!
「ねぇねぇ、この人達なんて名前なのかな?」
「名前……?あ〜そっか。アイドルならグループ名があるもんね!えっと多分ここら辺に……」
2人が動画のタイトルを確認すると、そこには『μ's』と書かれていた。
「……なんて読むんだろう?」
「んん〜?"ゆーず"……かな?」
"ミューズ"である。
「へぇ〜……凄いねぇ」
「うん!」
本当の読み方を知らないまま、2人は電車で沼津に着くまでμ'sの映像を見続けていたのだった。
━━━μ'sという太陽に憧れて、その輝きを手に入れたいと手を伸ばし始めた少女。
その輝きを手に入れるために必死に腕を伸ばし、もがき始めた少女。
彼女のそんな"道"が、この瞬間拓けたのだった。
━━━━これは、とある少女が太陽に憧れて、その輝き手を伸ばして夢を叶える物語。
そして……
それを見守る1人の男の歩む
「……ここが、沼津」
「私は、貴女達ともう一度、輝きたいのですわッ!」
「はじめまして、Aqoursのみんな」
「これは、貴女が……貴女達が叶える物語だよ」
「行こうみんな!このステージで……最高に、輝こう!!」
『うん!』「はい!」
「Aqours〜〜!!」
『サーン……シャイーン!』
次回より
『男が歩む
サンシャイン!!編スタート!
━━━次章へ続く。
ありがとうございました!
はい!なんと!ついに!この物語はアニメのサンシャイン!!に突入します!!てかしました!ダイヤ達のお話を以前に投稿していたのですが、ついに千歌達の登場!
さらにはA-RISEの後継?UTXのスクールアイドルB-RAVEの登場!後継スクールアイドルに関しては前々から名前を考えておりAの次はBだろうと思ってこの名前にしました!これからどんな活躍をするのか、どのように登場していくのかは……お楽しみに!
そして!ついに次回からサンシャイン編がスタート!章の名前とかは考え中ですが、話の流れとかはある程度固まってはいるので早めに投稿したい気持ちではあります。お待ちください!
あと千歌がダジャレを言ってるのは、個人的にドラマCDのそういう設定が大好きなので絶対に入れたい!と以前から思っていたからです。キャラ崩壊ではありません!!!
さてさていよいよ年末ということで、今年はしずくの生誕記念の短編を投稿したりしましたが、この作品はあまり投稿してませんでしたがプロローグを終わらせたのでまぁいいでしょう。来年は今年よりはたくさん投稿したいですね。。。。ではみなさま、今年もありがとうございました!良いお年を〜!