バーサーカーの鉄塊のような剣がジョニィに飛ぶ!右、左、上、下とありとあらゆる方向から旋風が巻き起こる。まるで竜巻のようなそれは人間の対処できるものではない。ジョニィのひ弱な身体はひき肉になってしまうだろう。彼が普通の人間ならば……。
「タスクact3ッ!」
「へぇ、お兄ちゃん魔術使えるんだね」
イリヤと名乗る少女は感心したようにうなずいた。
(魔術だと……ファッションといい痛い娘だ)
ジョニィは魔術と言われてもピンとこなかった、しかし回転の技術にスタンド、聖人の遺体と奇妙なものには慣れている。魔術が存在しても不思議ではないだろう。この娘は魔術師か。言われてみればホウキが似合いそうだ。
「今考えなくちゃあならないのはそんなことじゃあないッ!黄金長方形の形を探すんだッ!」
「■■■■■■――!」
今最も重要なのは狂戦士との戦いをどう切り抜けるかだ。どうやらスタンドは見えていないらしいが……。
ジョニィはact3を使いバーサーカーの猛攻をなんとかしのいでいた。地面に潜り、距離をとる。既に終わった人々を悼む静かな墓地は生命を極限まで輝かせる戦場に早変わりする。このまま戦い続けると更地になるだろう。猛攻のバーサーカーに逃げるジョニィ。情けないかたちだがバーサーカー相手に命があるという時点で超一流と言える。しかしジョニィは困惑していた。
(おかしい。この筋肉男はぼくの想像以上に強い。Dioの恐竜より速くパワーも桁違いだッ!普段のぼくならもう死んでいる……。強くなっているのかぼくはッ!)
☆
イリヤスフィールも困惑していた。バーサーカーは最強のサーヴァント。しかも相手はサーヴァントもつれてないただのマスター。確かに殺すな、手加減をしろと命令した。
それにしたってバーサーカーと戦って生きているあの男は絶対におかしい。雪がとけないのと同じ、ありえないことなのだ。
「何やってるのよっバーサーカー!あんな素人に手こずるなんて!」
イリヤの怒号にバーサーカーの動きは更に加速する。
「■■■■■■■■■■■■━━━!」
バーサーカーの一閃にジョニィは死を覚悟した。こいつにはスタンドは見えていない。しかし当てようにも速すぎるのだ。この筋肉は。
ジョニィはよく健闘した方だろう。しかしバーサーカーは無敵の怪物。ジョニィの奮闘むなしく、バーサーカーの一撃がジョニィの身体を20m近くゴルフのボールみたいにぶっ飛ばした。
☆
だれかの声がする。どんなにつらい状況でもニョホと笑みを浮かべてぼくを元気づける彼の声。彼のくだらないジョークはいつだってぼくを楽しくさせた。彼がいなければ自分は失意と絶望の人生を送っただろう。彼はぼくの人生を救ってくれた。とるにたらないぼくを。一番の友……。
「ジャイロ……?」
しかし現実は非情である。目の前にいるのは友でなく、自分の命を狙う少女と怪物だった。
「この役立たず!死んじゃったらどうするのよっ!」
イリヤという少女はどうやら自分を殺したいわけではないらしい。叱られているバーサーカーは少しへこんでいるように見えなくもない。
(あの娘……イかれてるぞッ!あんな巨漢に襲われたら挽肉だッ!それで殺すななんて――――)
敵の圧倒的強さにジョニィは恐怖と怒りを抱いた。ぼくは故郷に帰りたいだけだ。過酷なレースを終えて少し休みたいだけなのだ。なのに現実はスタンド使いが襲ってくるなんてもんじゃあない。怒れるジョニィがふと自分の身体を見るとボロぞうきんのようになっていた。左腕はあさってのほうを向いてるし、右足は骨が突き出て傘立てみたいな有様だ。もう立ち上がれない。
「うううううううッ!なんでこうなる……」
命があるのはタスクでとっさにガードしたからだろう。スタンドはスタンドでしか干渉できないルールが命を救ったのだ。しかし人間がボールみたいに飛んだら壊れる。ジョニィも例外ではない。涙が止めどなくあふれる。
「うそ……息があるの!?」
イリヤは驚いた。突然姿を消してどこからか現れる奇術といい、切嗣は息子を強く育てたらしい。
「でもお兄ちゃんもついてないね。あれで死んでたらこれから苦しむこともなかったのに」
悪魔のような笑みを浮かべイリヤはジョニィの手をつかんだ。街灯が照らす彼女の瞳は吸血鬼のようだ。獲物の首に歯を突き立て逃がさない。そしてイリヤは涙を流すジョニィに嗜虐心を抱いた。
かわいいお兄ちゃん。これから城に連れて行って地獄を見せるからね。
「やめろッ!はなさないと脳天ぶち抜くぞッ!」
必死にもがくジョニィを前にイリヤは悪魔ですら躊躇する命令を下した。
「威勢がいいね。ますます楽しいわ。バーサーカー、お兄ちゃんの両手両足切断して軽くして」
ジョニィは顔を青ざめた。何を言っている。頭がおかしいのか?
イリヤは青ざめるジョニィの頭を優しくなでた。
「大丈夫。ちゃんと死ねないようにからね」
バーサーカーがゆっくりと、ベルトコンベアのように感情無く剣を振り上げる。
(ぼくはこの娘に捕まっておもちゃになるのか……ジャイロの遺体も送り届けず、家にも帰らずで。)
そんなの嫌だ。ぼくの足は動くんだッ!帰る場所もあるんだッ!なのにこんな娘にもてあそばれて、惨めに死ぬだなんて――――マイナスに逆戻りじゃあないかッ!
ジョニィは祈った。まだ戦える。戦わせてくれッ!
バーサーカーの一撃が迫る。
3
死ぬような思いは何度もした。でも乗り越えた。
2
ぼくが死んだらジャイロはどうなるッ!ジャイロの旅を知っているのはぼくだけだッ!
1
彼の家族に伝えられるのはぼくだけなんだッ!!
☆
バーサーカーの一閃がきらめいたその時だった――――――――ジョニィの左手が赤く輝いたのは。
「それは令呪!?まさかここで召喚を!?」
いや左手だけではない。全身が明るく光っていた。まるで生まれ変わるかのように。魔力が周囲に漏れる。まるで火をつけっぱなしにしたスープ鍋のように。
「いやっこの気配は違う!!召喚したんじゃないっ!お兄ちゃんはお兄ちゃんじゃない!」
目の前にいる少年は膨大な魔力を携えていた。それはまるでサーヴァントのようで……。
「■■■■■■■■■■■■■■■■――――――!」
バーサーカーが剣を叩きつける。理性と本能が全力で命令している。ここで殺さなければ!コイツは何かがおかしい!
しかし衝撃がイリヤとバーサーカーを襲い、奇襲のチャンスは失われた。
ジョニィの頭に様々な情報が流れ込む。魔術、サーヴァント、聖杯戦争。
「そうか、ぼくを呼んだのはスタンドでもないし、遺体の力でもない。士郎――――君だったというわけだ」
ジョニィのボロボロの身体が元に戻る。衛宮士郎の身体が消えていく。そしてかわった帽子をかぶった、金髪の外国人が現れた。騎手として鍛え上げられた肉体が復活する。ジョニィは衛宮士郎の身体を奪ったと思っていた。しかしそれは間違いだ。彼は仮面をかぶり、はがすことを忘れていただけだ。僕は最初からジョニィ・ジョースターだったのだ。拳に力が入る。
「ぼくはサーヴァント・フォーリナー。マスターは衛宮士郎だッ!」
衛宮士郎は強く願ったのだ。人を平気で傷つける誰かを許せない。士郎はただ一心で、誰かの幸せを願った。そして自分の命を犠牲にしたイレギュラーな召喚を行ったのだ。自分を殺した青い男を止めてくれと。
「マスター、君の敵はとる」
そのためにこいつらは始末する。
本性をあらわしたジョニィにイリヤはがっかりした。私の生きる理由はここにいないらしい。イレギュラーきまわりない、そもそもフォーリナーとはなんだ?まぁ殺してから考えよう。
「そう、あなたは切嗣の息子じゃない、赤の他人なのね――――――だったらやっちゃえ、バーサーカー」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――――――!」
バーサーカーの咆哮が世界を揺らす。だがジョニィは今さらこれくらいで退かない。
「来てくれッ!スローダンサーッ!」
ジョニィの後ろから待ってましたといわんばかりに愛馬・スローダンサーが登場した。ジョニィは後ろに回転し、スローダンサーの首を上って騎乗した。
「黄金長方形のパワーッ!見せてやるぞッ!」
最強の矛を持つジョニィ・ジョースター。最強の盾・
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――――――!」
「タスクact4ッ!」
決着は止まる時よりも『早く』着くだろうッ!
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンちゃんかわいい