全員まとめて幸せにしたい〜百股男の恋愛無双戦〜   作:讃岐うどん屋さん

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クライマックスです。


【第8話】四条眞妃は見極めたい②

翌日。

 

三者三様に夕食を平らげ、食後の紅茶をすすりながら、眞妃は昨日の続きを始める。

 

「私と羽香里、両方とつきあいたいって話だったけど」

「二股をかけたいってことで、間違いないわよね」

 

「正確には少し違うんですけど、まずはその通りということになってしまいます」

 

何が少し違うのか。それを聞くのはさておいて、眞妃は率直な気持ちを伝える。

 

「はぁ。アンタ、脳みそ腐ってんじゃないの?」

「……返す言葉もございません」

 

自覚はあるらしい。

 

「羽香里も羽香里よ。二股かけられようとしてるのに、何でアンタは何も言わないの」

「私は、恋太郎君にフられることさえ無ければそれでいいです」

 

エキセントリック。羽香里がこんな恋愛観をしていたとは知らなかった。

 

 

「全く」

「私はアンタと、つきあえればそれでいいわけじゃないの。ちゃんと幸せになりたいの」

 

あ。

言っちゃった。

 

失言に気づいてチラリと恋太郎を見るが、その表情には特段の変化はない。羽香里がサッと下を向いたのはちょっとムカつく。

内心真っ赤に茹で上がりながらも、努めて平静を保って眞妃は続ける。

 

「たたた例え話よ!仮につきあったらってことよ!」

 

訂正。平静は別に保てていない。

 

「とにかく!そんな無法なことを通したいなら、まずは理由を聞かせなさい」

「一人の女とつきあうのなら、他の女とは別れるのが道理よ」

「どうして当たり前のことができないのか、私が納得するように説明してみなさい」

 

 

「……理由は、あります。でも、今は話せません」

 

 

――恋太郎と結ばれなければ、眞妃はなんやかんや不幸な目にあった後、死ぬ。

 

神から教えられた残酷な運命を、伝えることは簡単だ。

 

 

だが、それを聞かせて結ばれたところで、一体何になるというのだ。

そんなのは、まるで脅迫だ。そんな関係性に、未来はない。

 

いよいよとなれば、伝えなければならない。でもそれは、あくまで最終手段。

恋太郎は恋太郎自身の力で、運命の人の愛を勝ち取るのだ。でないと、幸せにすることなんてできない。

命を賭けて茨の道を歩むと決めた男の、覚悟であった。

 

 

「話にならないわ。二股はかけたい。理由は言えない。そんな理屈が通るとお思い?」

 

「簡単に通るとは、思っていません」

「それでも俺は、この想いを絶対に通さなければいけないんです」

「絶対に、あなた達を幸せにしてみせる」

「だから、眞妃さん。俺の恋人になってください」

 

「……平行線ね」

 

こんなやりとりをしている隣で、羽香里はメロメロである。

 

「恋太郎。正直、アンタのことは嫌いじゃないわ」

「ど、どうしても。アンタがどうしても私とつきあいたいって言うのなら、聞いてあげないこともないわよ」

 

精一杯の虚勢。羽香里が噴き出しそうになるのを抑えているのがわかる。……そろそろ本当にぶん殴ろうか。

 

「でも。二股を受け入れるなんて、私にはできないわ」

「アンタだって、わかってるでしょう。二人の女を同時に愛するのが、どれだけ無謀なことなのか。欲望に任せて無茶をしていたら、アンタだって幸せになんかなれないわよ」

「二股でも、幸せになれるって。そう確信できる何かを示してくれれば、考えてあげないでもないけれど」

 

「そんなもの、あるわけが――」

 

「眞妃さん」

 

それまでずっと身悶えし、一言も発しなかった羽香里が、口を開く。

 

「そういうことなら、いい方法があります」

「……?」

「次の土曜日。私の家に来てください」

「面白いものを、見せてあげますよ」

 

――――

 

「恋太郎。こんなことしてて、本当に大丈夫なの?」

 

場所は○○高等学校。

屋上へ向かう階段を二人で上りながら、眞妃はそう尋ねる。

 

土曜日。約束通り花園邸へ赴いた眞妃を待っていたのは羽香里ではなく、恋太郎一人だけだった。

 

「羽香里はちょっと準備があって、別の場所にいます」

「一緒に、俺の高校へ来てください。そこに、見せたいものがあります」

 

 

そう言われ、不審がりながらもここまでついてきた眞妃。

恋太郎はただ眞妃の手を引くばかりで、答えない。

その表情に少し陰が落ちているのは、気のせいか。

 

そして屋上へ続く扉は開かれ。眞妃の目に飛び込んで来たのは。

 

 

赤、黄、赤、赤、赤、黄色のコスチュームに身を包み、後ろを向いて並んでいる、6人の女達であった。

 

 

”パパパパーパパー♪♪♪”

 

陽気なミュージックが流れ、順番に振り向いていく彼女達。

 

 

「私こそは、一番に名乗りを上げた者!宝物は、ピンクの四つ葉のクローバー!脳みその色もピンク色!ハカレンジャイ!」

 

「わ、私だって同じ日に告ったんだから!宝物は、ピンクの四つ葉のクローバーなんかじゃないんだからね!カラレンジャイ!」

 

”内に秘めた静かなる想いは、主人への何よりの忠誠の証!弱さこそが明日の強さへ繋がる!”「シズレンジャイ(羽香里の声)!」

 

「効率重視。ナノレンジャイ」

 

「ドパミン!オキシトシン!エンドルフィン!今日も今日とておクスリ天国!シャブはまだだよ!クスレンジャイ!」

 

「若さが何よ!私の色香にひれ伏しなさい!女が一番輝くのは、二十代後半って言われてるんだから!ハハレンジャイ!」

 

我ら6人揃って――――

 

ゴレンジャイ!!!!!

 

ズドバ――――ン!!

 

 

ものすごい勢いとともにポーズをとる彼女達を見て、呆気にとられる眞妃。

 

「……これ、どういうこと?」

 

眞妃の口から、一切の笑みは零れない。

 

「ほらー!だから言ったじゃないか、流石に滑り散らかすって!」

「だいたいコレ、私たちが生まれる前のネタじゃない!誰よこんなの持ってきたの!」

「こんなのとは何ですか!私が子供の頃はこれに皆夢中になったのよ!」

”パーティーを組むのならば、役職は分けるのが普通。戦士と武闘家ばかりのその一行は、異様な雰囲気を放っていた”

「どうせなら全部赤にするのが効率的」

「そこで新開発!『目に見えるものを全部赤くしてしまう薬』なのだー!」

 

わいわい。ぎゃいぎゃい。

 

 

仲良く言い争う女たちをよく見ると、それはいつかのウェディングドレスの写真に写っていた、周りの娘たちだと気づく。

 

「羽香里。これはいったい、何のつもり?そもそもあなた達、どういう関係なの?」

 

「私たちはですね……」

 

少し胸を反らして威張りながら、羽香里は告げる。

 

「恋太郎君の、恋人です!」

 

それは知っている。一瞬そう思った後、その真の意味に気づく。

そんな、まさか。

 

そのまさかを、確認する。

 

「恋人って……まさか、全員?」

「全員です!」

 

元気よく返ってきた返事に卒倒しそうになりながら、顔を見渡す。

よく見ると、羽々里さんまでいる。明らかな、異常事態。

にも関わらず、全員の顔は晴れやかで、慈愛と幸福に満ちていて。

 

「眞妃さんに、見せたかったんです」

「私たち、全員、幸せですって。こんな風に協力してばかな事ができるぐらい、仲良くやっているんですよって」

「今更眞妃さん一人増えたところで、恋太郎君は問題なく愛してくれるって。そう伝えたかったんです」

 

「幸せになれるっていう、確信。感じてもらえましたか?」

 

 

全くもって、理解不能。眞妃の理性は、そう告げている。

しかしながら、彼女の本能が囁く。

 

もしかしたら私は、今日から、幸せになってもいいのかもしれないと。

この男に、幸せにしてもらえる未来が、あるのかもしれないと。

 

 

そう実感した瞬間、胸から溢れ出し、脳天を貫く至福の感覚。

今までずっと報われない日々を送ってきた少女に訪れた、天使の福音。

 

そのファンファーレを聞きながら、眞妃は抱腹絶倒する。

 

「……あはははは!あははははははははは!」

「あなたたち、面白いわ!どうしてそんなことをしているのかも、何で全員納得しているのかも、全然理解できないけれど」

 

「一つだけ、確認させて」

「恋太郎とつきあって、幸せ?」

 

最後の確認に、答える6人。

 

「幸せです」

「し、幸せなんかじゃないんだからね!」

”それは至高の幸福であった”

「幸せ」

「幸せなのだ!」

「幸せよ」

 

約一名、素直じゃないの(自分と同類)が混ざっていることに気がつくが。

その答えに、眞妃の心が決まる。

 

「わかったわ。私、アンタにつきあってあげる」

「言っとくけど、アンタが好きかどうかはもうわからないわよ。てゆーか、たぶん、好きじゃない」

 

嘘よ。大好き。

 

「けど、私はアンタたちに興味が湧いた」

「アンタのこと、見ててあげる。本当に私たちを幸せにしてくれるのか見極めがつくまで、アンタについていってあげる」

 

「だから、私を。惚れさせてみせなさい」

 

それは彼女に残された、最後の虚勢。

それを受けて、恋太郎は。

 

「眞妃さん」

「約束します。絶対に、あなたを幸せにしてみせる」

 

最高に、格好いい顔で返し。

そのまなざしを眞妃が忘れることは、きっと生涯ないだろう。

 

 

「そんな可愛い顔したからって……」

「私は簡単に落とされたりなんか、しないんだからね!!」

 

 

そのセリフを聞いて、目尻の涙を拭う、花園親子。

優しい微笑みを浮かべる、静、凪乃、楠莉。

深刻なキャラ被りにおののく唐音。

 

そして、幸せ満開の笑顔を見せる眞妃。

 

晴れ渡る空に、笑い声だけがこだました。




皆様、ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第一章、『四条眞妃』篇これにて完結です!

本当にたくさんのUA、お気に入り、感想、評価をいただき、小躍りして喜ぶと同時に創作意欲に燃えております。

この後は箸休め回を1回挟んで新章突入予定ですが、ストックさんが全くないので、ここでいったん書き溜めるフェイズに入ろうと思います。
1週間~2週間後をメドに、次の話を投下できればいいなと思っております。

この物語は、まだ始まったばかり。今後とも、よろしくお願いします!
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