お待たせしました。四話目。
今回は少し文章が多め。
遂にやってきた翌日。
私は一人であくあに料理を教えたくないので助っ人を呼んだ。
「それじゃあ、お願いします。フブキさん、まつりさん」
今回のこの企画。面白くなりそうだとあくあ自身とフブキさんとまつりさんの意見で配信することになった。
配信には出ないと誓っていたはずなのに出てしまっているのが情けない。
あと、本当は
くっ、次は来てもらうぞ、一期生、ホロゲーマーズ、二期生、三期生に四期生!!!! ちょこ先生も逃げたし!!!! るしあさんに至っては料理できるって知ってるんだからな!!!!!!!
「あはは、わかりました!」
「あくあちゃんの料理かぁ……大変そう」
音声だけでもありがてぇ……
料理得意なフブキングなら大丈夫やろ
いうてご主人もいるしなんとかなる
ご主人ならいける
頑張れご主人!!
「おおい! まつりは!? ねぇまつりは!?」
コメント欄を見たまつりさんがそんな声を上げる。
こう見えてまつりさんは料理ができる女子力のある女性である。こう見えて。
まつり? 知らない子ですね
まつりちゃんって料理できるの?
まつりは料理できるよ
知らんかった……
今から知っていけばええんやで
コメント欄が暖かい。今日も平和でなによりだ。加えて、私がいることにも反対意見がないので一安心だ。
今回の料理企画。あくあのお母さんにもお願いします、と言われているのでなんとしても成功させなくてはいけない。
「えーと、ご主人。わたし、なに作ればいいの?」
「あぁ、それはもう考えてあるよ。今回はお菓子を作ってもらいます」
昨日のお寿司で反省したからね!! あくあにはまだ本格的な包丁の扱いはお預け!!
私はそう思いながら、彼女の指に巻かれた絆創膏を見つめた。
包丁の件は既にフブキさんとまつりさんに話は通しているので問題ない。
「パンケーキやクッキーを作るんですよね、ご主人さん」
「はい、そうです。先にクッキーを、その次にパンケーキに行きましょう」
「あ! じゃあパンケーキはスフレにしようか! まつりはそれがいいなー」
「あぁぁぁわかるぅ!! わたしもスフレがいい!!」
スフレかぁ……美味そう
ナイスまつりちゃん
あくあちゃんが作るクッキー、丸焦げにならん?
丸焦げは草
草
つか、キレてないご主人クールだな
わかる
成功しか見えんな!!!
フラグを立たせるのはやめてくれ。
そんなこんなで始まったあくあ強化企画。材料はしっかり用意したので、あとはレシピ通りに計量して進めていけば失敗せずに終わるだろう。
──そんなことを思ってた時期もありましたよ!!!! バァァァァァァァカ!!!!
「「……」」
「ははっ、ハハハハハハ! まって!! お腹痛い!! アハハハハハ!!」
何をどうしたら間違えるんだ……
流石あくたんww
ずっとまつりちゃん笑ってるじゃんww
ご主人とフブキング黙ってるし
丸焦げクッキーができあがり、カメラを皿に盛り付けられたクッキーに向けてリスナーに見せる。
なにこれ、ホームセンターに売ってる木炭になってない? 現実でこんな感想出てくるなんて思わなかったよ。ラノベの世界だけにしてよ。
「んー、なんで失敗しちゃったのかなぁ」
当のあくあ本人はなぜ失敗したのか気づいていない。私もフブキさんもまつりさんもわからない。なぜ失敗した。
「もう一回やってみようよ、あくあちゃん」
「まだ材料はあるから、遠慮しないで使ってください。ほら、まつりさんも笑ってないで手伝ってください」
いつまで笑ってんだ、この人。掃除してるとはいえ床に寝転がって笑うのはやめなさい。
気を取り直して、再度計量してクッキー作りを開始。
さっきはあくあ主導のもと調理していたので、次はフブキさんとまつりさんを軸に調理するようにした。何事も問題なく進み、綺麗なクッキーができあがった。
あれ、ご主人なにもしてなくね?
そういえば……
なんだ文句あるか。私だって好きで何もしていないわけじゃないんだ!!!!!
「大丈夫ですか、ご主人さん?」
「無理です……まつりさん、水取って下さい」
「しょうがないなー。はい」
「ありがとうございます……」
「えーと、その……ご主人、ごめんね?」
何を隠そう、実は丸焦げのクッキーを一人で食べたせいでダウンしているのだ!!!!!
申し訳なさそうな顔をしているあくあに笑みを向けるが、おそらく引き攣っているだろう。悪気があって丸焦げにしたわけではないのはわかっているので強く言えない。
「わたしも食べるって言ったんですけどねー。ご主人さん全部食べちゃって……」
え、なにを??
食べてダウン??? え、まさか
あっ(察し)
これは草
「あくあちゃんが作った丸焦げクッキーを食べたんだよねー。流石にまつりも全部は無理だけど、すげぇなご主人」
お陰で少しお腹いっぱいですけどね!!!
美味しそうにできたクッキーは三人で食べてもらい、私は水を飲んで苦味を洗い流す。
「さ、次はあくあちゃんが一から作ろっかー」
ダウンしている私を放置し、まつりさんがあくあにそう伝える。彼女はふんすと鼻を鳴らして頑張る! と意気込んでいる。
三回目なだけあって手際も良くなってきている。変なものも入れていないし大丈夫だろう。
「あとはオーブンに入れるだけ! どうご主人! ここまでのわたしは!!」
「うん。ちゃんとできてるよ」
「えへへ、でしょでしょ!」
やっぱりあくあちゃんとご主人の関係って、親子なんだよな……
主従とかじゃない。親子なんだ
はーー、俺もご主人みたいな親が欲しいー!
ええい、私は親ではない! こんな体が大きい──一四二センチだけど──子供なんていらないぞ!
声には出さずにコメントに突っ込んでいると、あくあがオーブンにクッキーが乗ったバットを入れて温度と時間を設定した。
ふと、その時、
「「「ステイ」」」
「ふぇ???」
私とフブキさん、まつりさんの声が重なった。
「あくあちゃん? オーブンの温度高くない……?」
「オーブンは予熱してるし、そんな高温でやらなくていいんだよ??」
「丸焦げの正体がこれだったか! ちゃんとレシピを見ろこのポンコツメイド!」
「あ、あれ!? ち、違ったの!?」
フブキさんがレシピが映ったタブレットをあくあの目の前に持っていき、まつりさんがオーブンの温度と時間を指す。
「ッスゥゥゥゥゥ……」
オーブンの温度かぁ……
灯台もと暗しってこのことか
原因判明してよかったやん
最初から注意深く見ておけばよかった……こんな些細な失敗だったなんて。
その後、先程のフブキさんまつりさん作のクッキーと同じくらい美味しそうにできたクッキーの粗熱を取りつつ、次のお菓子の準備に取りかかった。
作るものは、まつりさんが提案したスフレパンケーキ。
卵黄と卵白を別に取り分けて、卵白は冷蔵庫で冷やす。冷やした卵白を泡立ててメレンゲを作るなど、少し凝った調理方法だが、できあがったら柔らかくて非常に美味しい。
「むぅ……少し焦げた……」
「あはは、仕方ないよー。慣れが必要だからね」
今はフブキさんがあくあを見てフライパンでパンケーキを焼いている。その隣では、まつりさんが綺麗にスフレパンケーキを焼いて、ひっくり返していた。
「流石ですね、まつりさん」
「へへ、これくらいは楽勝楽勝!」
あれ、またご主人暇してない?
いやさすがに三人キッチンにいたら無理じゃ……
あぁそれもそうか
ん? レンジの音したぞ
リスナーも気づいたか。そう、私はただなにもしていないわけではない。電子レンジでイチゴジャムを作っているのだ。
その他にもホイップクリームも冷蔵庫から出しているから暇なんてしていない。
無事にスフレパンケーキが人数分できあがり、フブキさんが盛り付けてくれた。ちなみに、私の分はあくあが担当してかなりのクリームの量があった。
「どう、かな。すこーし焦げちゃったけど」
「大丈夫。さっきの丸焦げクッキーに比べたら美味しいよ」
「まって、比較がおかしいから……! ふふっ」
「クッキーもパンケーキも、マスターできたし、良かったねあくあちゃん!」
「ちょっと、ご主人!! 他にもあるでしょ!? もぅ……フブキちゃんもまつりちゃんも、その、ありがとー!!!」
まぁ、これでメイド
後日。
体重を量ったあくあの悲鳴が家中に響き渡った。
そら失敗したやつ捨てるなんて勿体ないから食べるしかないからね。体重も増えるさ。ご主人もやばそうだけど。
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