ウチの駄メイドをよろしく   作:倉崎あるちゅ

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 お久しぶりです。




ごわ

 

 

「ご主人! 猫欲しい!」

「はい?」

 

 仕事から帰ってきて晩御飯も食べ終わった頃。そろそろお風呂に入ろうと思っていたら、突然あくあがそんなことを言ってきた。

 どうやらホロライブで猫がブームらしく、次々と猫を飼うメンバーが増えているようだ。

 そういえば確かに、フブキさん重大発表とか言ってたな。

 あの時はフブキさんが誰かと結婚するのか、とか彼氏ができたのか、とか要らぬ不安を抱えたものだ。私はフブミオ、夏色吹雪派なのでな。

 

「おかゆが猫飼ったの!」

「へえ、おかゆさんも飼ったんだ」

「ほら、これ!」

 

 見せられたのはあくあとおかゆさんのLINEのトーク画面。

 なに、わたしという愛猫がいながら手毬とかゆう女連れてきやがって、って。そしてキレるな。というかお前は猫じゃない。

 猫耳もないだろ、と内心ツッコミを入れる。いや、そういうことではないのだけども。

 子猫の写真を載せられ、可愛いと反射で打ったのだろう。次にはちがうだろぉぉぉ、と叫んでいる。忙しいやつだな。

 

「可愛いよね!」

「そうだね」

「だからさぁ……ねぇ?」

「ねぇじゃないが?」

「ご主人! 猫飼おうよぉぉぉ!」

「うるさ」

 

 ねぇねぇ、とスリスリと寄ってくるあくあを引き剥がし、私はお風呂に入る。

 

「ねぇぇぇ、ご主人ってばぁ」

「ゆっくり湯船にも浸からせてくれないのか己は」

 

 体を洗って湯船に浸かってから一分もしないうちに、駄メイドが声をかけてきた。相変わらずこういう時はしつこい。

 

「ねぇぇったらぁぁ、猫飼おうよぉ」

「そんな衝動で飼えるわけないでしょ」

 

 ひとつの命を扱うのだ。衝動で飼ったら悲惨なものになるかもしれない。

 確かに私も猫飼いたいけど。

 私がお風呂に入っている間、ずっとあくあは猫〜ネコ〜NEKO! と駄々を捏ねていた。

 お風呂から上がって、私はあくあをお風呂に叩き込むが入浴中でも猫〜、と言っている。

 

 

 

「ふぇ? 研究?」

「そ。猫飼いたいんなら、その大変さを研究して来なさい」

 

 ちょうどいいことに、ホロライブメンバーは猫を飼っている人たちが多い。猫を飼っている長さで言えばミオさんがいい例だろう。

 おかゆさんの家に泊まってどんなことをしているか、とか大変なことを聞いてくるとか、やり方はいくらでもある。

 

「Twitterでもなんでも、あくあクルーの人たちに訊いてみてもいいよ。ただし、ネットにころがってる記事を最初から見ようとするな」

 

 ネットにころがってる情報も十分いいとは思うが、人からしっかり聞いた方が大変さがより伝わる。

 私がそう言うとあくあは真剣な表情になり、大きく頷いた。

 

「わかったよご主人! あてぃし、しっかり研究する!!」

 

 うん、やる気があっていいと思うよ。でも真剣な顔であてぃし言うのやめて。笑う。

 

 

 

 

 ▷

 

 

 

 

 その日の夜から彼女は、猫を飼っているホロライブメンバーにdiscordを用いて大変さや可愛さを聞いたり、Twitterではリスナーに猫が欲しいとツイートをして情報をもらったりなど積極的に行動していた。

 お前どんだけ猫飼いたいんだと思ったが、あくあの本気さが伺えた。

 そして、今日はあくあは家にいない。おかゆさんの家でオフコラボをしている。配信は明日の予定だが、私は今あくあと通話をしていた。

 

『どう手毬は〜?』

『え、めっちゃかわ……いくないけどぉ??』

 

 認めろよ。可愛いって認めろよ。

 ずっとこれである。

 

「おかゆさん、トイレとかって大丈夫なんですか?」

『んー、たまに変なところでしちゃうからそこかなぁ』

「あぁ、やっぱり」

 

 まだ三ヶ月とのことだったので、そうなんだろうなと思っていた。

 

『はぁぁん……♡ かわ、いい……』

『あくあちゃんメロメロじゃん』

「まずったかなぁ」

 

 大変さもわかるだろうけど飼いたいって欲を刺激してしまったかもしれない。

 

「それじゃ、おかゆさん。そろそろ切りますね」

『はーい』

「では、ウチの駄メイドをよろしくお願いします」

『出た〜お決まりの言葉』

 

 うるさいやい。

 ぶつりと通話を切り、PCに張り付く。

 何をするかって? 猫の種類を検索するんだよ。その種その種で性格も変わってくるからね。

 

 その翌日。

 あくあは雑談枠で得体の知れないものを描いていた。

 なに、この虚無の笑みを浮かべている黒い怪物。

 

「NEKOだよ!」

「全世界の猫に謝ってこい」

 

 リスナーの中にはこのNEKOをグッズ化して欲しいという意見もあるので需要はありそうだが、こんなものをグッズ化してしまったらAちゃんの心労が絶えなさそうだ。なんなら私の胃に穴が空く。

 

 

 

 なんだかんだ言いつつ、しばらくの時が経った。

 私が今いる場所はペットショップである。

 

「はー、可愛い」

 

 ガラス越しの猫を見て、私はそんなことを呟いた。

 ちなみに今日はあくあの母親も来ている。今は親子ふたりで、私とは少し離れたところで猫や犬を見ている。

 

「結局こうして来てしまっているあたり、アウトだな」

 

 ペットショップに来てしまったら飼いたい欲が強くなってしまう。そう思って来ないようにしていたのだが、ついに来てしまった。

 というか、もう一時間くらい滞在してませんかね。そろそろ私帰りたいのですが。

 まぁ、もう飽きて帰るだろうと思った。

 

 ──そんなことはなかった。

 

 あれから、かれこれ三時間くらい滞在している。

 え? どうしてそんなにいられるの?

 

「はぁぁ、可愛いこの子ぉ!」

 

 何回言ってんの。その子見るの何回目だと思っている。

 あと、お母さん? 何回も頷かないでもらっていいですか。

 

「これ、近いうちに飼いそうな予感」

 

 頬が引き攣った。

 その数日後。

 我が家に家族が増えた。そうだと思ったよバーカ!

 

「にゃあ〜♪」

 

 そんなあくあの甘ったるい声がリビングから聴こえてくる。

 会社から帰ってきた私がリビングに入ると、白いもふもふな子猫を抱えたあくあが出迎えてくれた。

 

「おかえりご主人! ほら、むーちゃんもご主人におかえりーって♪」

 

 小さくにゃ、と子猫が鳴く。あくあはそれを聴いてえへえへと気持ち悪く笑っている。

 子猫の名前は小麦。愛称はむーちゃん。マンチカンの男の子である。

 

「はい、ただいま」

 

 わたしちゃんとお世話するから! とあくあが強く宣言し、彼女の母親からも後押しされ、私の家で小麦を飼うことになった。

 

「あ、ご主人! 今日はわたしが晩ご飯作ったよ!」

「え、あ、そ、そう」

 

 え、何作ったの。ちゃんと食べられるの、それ。

 

「今日のは自信作!!」

「怖っ……」

 

 多少作れるようになったとはいえ、怖いものは怖い。

 恐怖心を抱きながら、私は食卓につく。その後ろをついて歩き、小麦が私の脚にすり寄る。

 

「あ゛ぁぁぁぁ!! ご主人羨ましいぃぃぃ!! あてぃしまだむーちゃんにそんなことされてないのにぃぃ!!」

「うるさっ」

 

 ホントにウチの駄メイドはこれだから……。

 この家は、もっとうるさくなりそうだ、と私は溜息をついた。

 

 

 





 12月21日と22日、ホロライブのオンラインライブがありますね。
 豊洲の時は参加できなかったので、今回は両日参加します。みんなのアイドルしている姿を目に焼きつけるんだ……。


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