ウチの駄メイドをよろしく   作:倉崎あるちゅ

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 お久しぶりです。今回はバレンタインのお話です。





ろくわ

 

 

 二月十四日。

 世間ではバレンタインデーと呼ばれ、愛する人または家族、友人にチョコやマカロンなどといったお菓子を渡す日だ。

 まっ、私には関係ない話なのだけど。

 

「……なぁ」

「なんですか、課長」

 

 今忙しいのだが。

 

「あくたんからのチョコなんて……あったり……?」

「あるわけないじゃないですか。なんで貰えると?」

 

 そもそもあまり知らない相手に送るわけないだろう。しかもコミュ障のあくあが送るはずがない。

 それに、何日か前から彼女はホロライブメンバーの家に転がり込んでオフコラボをしている。当然私も貰ってないし渡してもいない。

 

「まぁ、日頃の感謝として私から課長に缶コーヒーくらいなら渡しますが」

「お前から貰ってもなんも響かん。あくたんがいいんだ」

「アホか」

「アホに決まっているだろ、いい加減にしろ」

 

 もうダメだこの上司。というか仕事をしてくれ。

 

「お前はいいよなぁ……あくたんから貰えるんだから」

「手作りじゃなくて既製品ですけどね」

「あくたんから貰えるという事実があるだろう! あくあクルーからしたら羨ましいんだよクソが!」

「本性現したなクソ上司」

 

 こんな調子で一日上司と喋りながら仕事をしていた。

 精神は擦り切れ、電車の窓で自分の顔を見れば死んだ魚の目をしている。

 すれ違う人達がひっ、と小さく悲鳴をあげた。

 ごめんねこんな目してて。

 家に着くと鍵は開いてた。どうやらあくあは帰ってきているようだ。

 

「ただいまー」

 

 家の中に入ると数人の声が聴こえてきた。

 

「? あくあ、誰か来てるの?」

 

 リビングのドアを開けるとそこには、あくあと取っ組み合う宝鐘マリンさんと、それを笑うすいちゃん。その後ろで何故かハンドグリップをゴリゴリしてる四期生の天音かなたさん。

 

「あっ、ごひゅひん!」

「まっへ! まっへあくたん! せんひょうの、せんひょうのほっぺがぁっ! あ゛あ゛ぁぁぁぁ!」

 

 私を見つけた瞬間、あくあがマリンさん──船長の頬を思い切り捻り上げた。

 大丈夫かな、船長のほっぺ。

 

「ご主人お邪魔してまーす!」

「お疲れ様ですご主人さん」

 

 すいちゃんとかなたさん──かなたんが私に挨拶してくれる。私も彼女たちに挨拶をし、着ていたスーツの上着を脱いだ。

 

「で、あの二人は何故取っ組み合いを?」

「あー、あはは……」

「えーとねー」

 

 二人がすぅ、と目を逸らした。

 

「え、なに。なにがあったの?」

 

 普段ならあくあマリンの絆などなんだかんだ言っているのだが。

 

「あてぃしが先に渡すの! 船長はあと!」

「じゃんけんで負けたのあくたんじゃんかー」

「そうだけどぉ!」

 

 うぅー、とあくあが唸る。

 ホントになんの話しをしているのだろうか。

 

「すいちゃん、これホントに何?」

「えーとねー、今日はなんの日?」

「バレンタインでしょ? 今日チロルチョコ何個かあげたし貰ったわ」

「え、ご主人貰ったの?」

「なにその意外、みたいな顔してるのかな?」

 

 てへっ、と舌ペロをしてもダメです。可愛いけど。

 

「……で?」

「この四人で渡す順番をじゃんけんで決めたんですよ。それで、勝ち残ったのがマリンちゃんなんですけど……」

 

 かなたんが説明を継いだ。

 

「駄々をこねると」

「そうなんだよねー」

 

 この駄メイドめ。いつでも良いだろうに。

 

「しょーがないなぁ、あくたんはぁ。一番最初はあくたんに譲ってあげますよ」

 

 あくあの頭を優しく撫で、船長は慈母のような微笑みを浮かべて私の方に彼女を送り出した。

 流石船長。昭和を生きた人は違う。

 

「違いますぅ! まだ若いんですぅ!」

 

 心を読むな。あと動きがおばさん臭い。

 

「ご、ご主人!」

「ん?」

 

 目の前に来たあくあが私を呼ぶ。視線を下げて彼女の目を見つめる。

 スッ、と視線が逸らされた。コミュ障め。

 

「これ、作ったからご主人にあげる!」

「……へっ? 作った?」

 

 予想の斜め上のことを聞き、素っ頓狂な声が出てしまった。

 

頑張れーあくたん!

あくあちゃんイケー!

あくたんなら行ける!!

 

 上から順に船長、すいちゃん、かなたん。

 小さく叫ぶとか流石アイドルだな。どうやんのそれ。

 

「そのぉ……ちょこ先生に頼んで一緒に作ってもらったんだけど……」

 

 もじもじと彼女は身をよじる。

 この場にキャップがあれば目深に被って完全に視線をシャットアウトしていたに違いない。

 

「最初はマカロンがいいなって作ったら失敗しちゃって……。ぶなん? なチョコにしたんだ」

「なるほどね」

 

 手作りだから一番先に渡したかったのか。なんともまぁ、子供っぽいなぁ。

 

「ありがとう。ちゃんと食べるよ」

「……うん! 感想聞かせてよねっ」

 

 緊張したのか、ふぅぅぅ、と息を吐いてすいちゃんたちの下へ倒れていった。

 倒れた先はすいちゃんの胸。

 

ドンッ

 

 え????

 

「いたっ」

 

 痛い????

 

「あ、あくたん大丈夫?」

「壁ドンしちゃいましたねー」

 

 壁ドン……?

 え、普通胸ってドンッて音する?

 

「ごめんなぁ……あくあ、ごめんなぁ……すいちゃんの胸まな板だからよぉ……」

 

 キラリ、とすいちゃんの目に涙が浮かんだ。

 

 

 

 

 ▷

 

 

 

 

「ホロメンからのバレンタインチョコやお菓子ありますからねー! 良かったですねご主人」

「お、おぅ……」

 

 ときのそらさんから五期生まで、テーブルの上に山盛りにお菓子が積まれた。子猫の小麦が不思議そうにテーブルの上を見つめている。

 確かに私もウチの駄メイドがお世話になってるからそれぞれお菓子用意したけどさ。それにしても多くない?

 

「すいちゃんのもあるからねー」

「僕のもありますよー!」

 

 テーブルの上に積まれたものと別に、すいちゃんとかなたんがずいっと箱を渡された。

 ありがとうとお礼を言って受け取った。

 

「これは、返すのが大変だなぁ」

 

 昔はなにもないバレンタインだったのだが、あくあが来たことにより、とても喧しく楽しいものになった。

 船長もすいちゃんもかなたんも、本当にありがとう。

 

 

 

 

 上司に自慢しよ。

 

 

 

 






 今月のホロライブのライブ見たい……。bloom見たすぎる。

 
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