ウチの駄メイドをよろしく   作:倉崎あるちゅ

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 大変お待たせしました。
 今回はあくたんではなく、つい最近デビューしたホロライブ六期生、holoXの一人に焦点を当てました。


ななわ holoXの頭脳! コヨーテの博衣こより

 

 

 

 金曜日。

 明日は休みで気分はウキウキの状態で、私は会社に出勤した。

 すぐ近くの課長が机に突っ伏して撃沈してるが、見ないふりをする。

 

「おはようございます」

 

 私がそう挨拶すると他の数少ない社員たちが挨拶を返してくれる。

 ……さて、今日の仕事は、と。

 席について設けられたPCを立ち上げ、本日の仕事内容を確認する。

 すると、

 

「お、助手くん来たね〜」

「……」

 

 後ろからそんな可愛らしい声が聞こえてきた。

 その瞬間、顔が引き攣ったのが自分でもわかった。

 

「助手くんこんこよ〜」

「……おはようございます」

 

 みんなもこんこよ〜、とほわほわとした雰囲気で他の社員たちに挨拶する。

 後ろを振り向き、私のすぐ後ろに立つ人物を見た。

 桃色のウェーブがかった長い髪を流し、愛らしい獣耳をピクピクと動かす美少女。お腹を見せた服を着こなし、その上から襟が髪と同じく桃色の白衣を羽織るその人物の名は、

 

 ──博衣(はくい)こより。

 

 私が働く、秘密結社holoX(ホロックス)の頭脳である。

 

「博衣博士、私になにかご用で?」

「あ、そうそう! 助手くんには、今日の研究を手伝ってもらおうと思ってね。来てくれる?」

「……わかりました」

 

 ……これ、何時に帰られるんだろ。

 ……あくあに連絡しとこうかな。

 他の社員たちに可哀想なものを見るような目で見送られ、課長は撃沈しながらもサムズアップして見送ってきた。

 

 

 

 

 ▷

 

 

 

 

 私が働くこの会社、秘密結社holoXは表向きは普通の小規模な企業だ。小さなビルの一フロアを借りて仕事を行っているが、ビルの地下ではholoXの総帥や幹部、そして今私の目の前でふわふわな桃色の尻尾を揺らす博士たちが日々何かをやっている。

 詳細は私は知らない。

 

「博衣博士、私はなにやらされるんですかね」

「もぅ、こよのことは名前で呼んでって言ってるじゃーん」

「仮にも上司なんで」

「こよはただの研究者だし気にしなくていいんだよ?」

「気にします」

 

 むぅ、と少女は頬を膨らませる。

 少女、と言っても彼女は私と同じく成人を迎えた大人だ。ただ少し言動がアレなだけで、立派な大人なのだ。

 

「で、なにやるんです?」

「えっとね、今日はマヨネーズを使った料理を研究して、あとは新しい薬の開発かなー」

「……試食と実験体ですか」

「料理はそうだけど、実験体になんてしないよっ! 助手くんをそんな酷い目に遭わせるなんて、こよはしないんだから」

 

 心外だなぁ、と紫色の瞳が私を見つめる。

 確かに彼女は新薬の実験など、危険が伴う実験を私にしない。そこは信頼してもいいだろう。

 

「でもこの間、私薬飲まされて体光ったんですけどね」

「……スゥゥゥ」

 

 ウマの娘がレースするゲームの影響で、博衣こよりという研究者は体が七色に光る薬を完成させ、その実験体に私が選ばれた。

 まるでウチの駄メイドのような反応に、私は呆れて一つ息をつく。

 

「さ、さぁ! 今日も研究するよ助手くんっ!」

「はぁ」

 

 なんで私、この会社辞めてないんだろ。

 そんな思いが心を占める。

 給料もあまり良くない。日々よく分からない薬を飲まされ、体が光る。そんな状況なのになぜ私は辞めていないのか。

 あくあのこともあるし、辞められないのはそうなのだが、不覚にもこの職場が少しだけ楽しいと思えてしまったのが原因だろう。

 ……給料うんぬんは、あくあが稼いでくれてるし問題ないし。

 あくあクルーからのスパチャがとんでもない数字を出しているので私の給料など鼻で笑う程度だ。

 

「あ、そういえば助手くん聞いた?」

 

 自嘲気味な思考をしていたが、博衣博士のその声で止まる。

 

「なにがです?」

「こよたちholoXが配信者になるってこと」

「……は??」

 

 なにも聞いていないが?????

 

「その反応だと聞いてないんだね〜」

 

 そっか〜、と彼女はピクピクと獣耳を動かした。

 

「詳しく言うと、ラプちゃんとルイルイたちとやるんだけどね」

「総帥と幹部なにやってんの」

 

 思わずそう突っ込んでしまう。

 いや、ホントになにやってんの。

 

「配信者になるのはいいんですけど、具体的には?」

「んーっとね、ラプちゃんが言うにはホロライブに所属して全世界を手に入れる、とかなんとか……」

「なに言ってんだあの人」

 

 ホロライブに所属……?? ホントになにを考えてるんだあの人。

 ということはこの人たちがホロライブ六期生?

 

「頭痛い……」

「あはは! そっか、助手くんはこよの助手くんだけど、ご主人でもあったね」

「知ってたんですか」

「ふっふっふっ、holoXの頭脳であるこよを舐めないでもらおうか」

 

 ドヤァ、とその整った顔が鬱陶しいくらいに歪む。

 

「助手くんのことは、なんでもこよにはお見通しなのさっ♪」

 

 うざっ。

 

 

 

 

「もうマヨネーズなんか見たくない」

「えぇー!? そんなこと言わずにもっとマヨネーズかけて食べようよぅ!」

 

 マヨネーズご飯なんてもういらないんだよ!!!!

 もうお腹いっぱいだし! 口の中マヨネーズの味しかしないし!!

 

「うっぷ……」

 

 今私は新薬の開発の空き時間でマヨネーズをかけた何かを食わされている。

 もう解放してくれ。

 

「ん?」

 

 吐きそうになっているところにスマホに通知が届いた。

 アプリを開いて見てみると、そこにはあくあからの連絡が来ていた。

 

 あくあ〔ごめんご主人! スバルのおうち泊まってオフコラボすることになった! いってくるねー!〕

 

 私に天使はいなかった。ダメな天使だった。

 ポロリと涙を流し、私は気をつけていってらっしゃい、と返信をしてスマホを閉じた。

 

「あ、薬完成したよ助手くん!」

「……ソウデスカ」

 

 

 体が発光しました。

 

 

 

 

 ▷

 

 

 

 

「今日も研究楽しかったね、助手くん」

「ホントに楽しいって思ってるのがタチ悪いんだよなこの博士」

 

 研究室とは別の部屋、博衣博士の私室にて私たち二人は酒を飲んでいた。

 あくあが家にいないので家に帰る意味もないな、と思った私はあれから博衣博士の実験体として働き、一通り終わったらしく、そのあとは博士が私室に置いている日本酒を頂いているわけだ。

 

「うーん、やっぱり『たか〇よ』は美味しいなー!」

 

 ふにゃ、と愛らしい獣耳が倒れ、美味しそうにお猪口を傾ける美少女。

 この女性、さっきからすごい飲んでるけど酔わないのか……?

 

「博衣博士、そんなに飲んで大丈夫なんですか?」

「大丈夫だよ〜。そんなに酔わないんだぁぼく」

 

 確かに酒を飲んで頬は赤くはなっているが、酔った感じはしないし、つまみを持ってくる足取りも普段通りだ。

 

「それより、助手くんはいつになったら名前で呼んでくれるの?」

「え、まだ言ってるんですかそれ」

 

 朝からずっとだぞ。

 

「こよがこんなにも名前で呼んでって言ってるのに、頑なに名前呼ばないんだもん。そりゃ言うよ」

「いや、そこは諦めてくださいよ」

「やーだよっ!」

「えー……」

 

 大の大人がそんな子供みたいに言わんでください。

 それにしても、そんなに名前で呼んで欲しいのか。わからん。いつも会社以外だとご主人呼びされてるし、博士の研究してると助手くんって呼ばれるし、わからないな。

 

「酒が空ですよ、博士」

「むぅ、またそうやって……」

「そんなにむくれないでくれますか」

「助手くんには呼んで欲しいのー!」

 

 お酌するとすぐさまグイッと飲まれ、たんっ、とお猪口がテーブルに置かれる。

 お猪口に酒を再び注ぐと、つまみがなくなったことに気づいたのか、博衣博士はおもむろに立ち上がり、キッチンの方へ向かう。

 

「って、博士酔ってません?」

「酔ってない」

「いや、酔ってますって。少しふらついてますよ?」

 

 というより酔ってないって言う人ほど酔っているものだ。

 仕方ないので私もキッチンに向かう。

 

「今度は何食べるんですか」

「……これ」

「ほう、アマ〇フーズのパスタですか」

「うん。美味しそうかなって」

「じゃ、私これ温めるんで戻っててください」

「やだ」

「なんでだよ」

 

 ホントになんでだよ。

 

「こよもここにいるの」

「……わかりましたよ」

 

 なぜか駄々を捏ね始めたので深堀せずにそのまま従う。

 パスタが温め終わり、二人でテーブルへ戻る。

 

「んー! 美味しい〜」

「あ、確かにこれ美味しいですね」

「でっかいキノコあって美味しいねぇ」

「ンンッ!」

 

 やめろ。むせただろう。

 この人ホントに予期せぬところでぶっ込んでくるから怖い。

 しばらくして日付が変わり、テーブルの上を片付け終えてから、私は帰る支度をしていた。

 

「えー、助手くん帰っちゃうの〜?」

 

 ソファの上で足をプラプラさせ、博衣博士はつまらないといった表情でこちらを見つめる。

 

「帰ります。いくら明日が休み、それにあくあがいないとはいえ上司の部屋に泊まれないです」

 

 この人、寝てる時に何するかわからないからできるだけ隙はなくしたいんだよな。私が今日酒飲んでるのは、私も酒に酔わないタイプだとわかってたからだし。

 

「ま、仕方ないかぁ」

「おや、素直ですね。もっと駄々を捏ねるかと思ってました」

「こよは大人なんだよ〜?」

 

 酒飲んでましたからね。大人じゃないと困る。

 

「じゃ、会社の入口まで送っていくよ」

「ありがとうございます」

 

 未だに秘密結社holoXの地下の構造を把握できていないので送っていくという申し出は本当にありがたいものだ。

 博士に案内され、私は無事会社の入口まで辿り着いた。

 

「博衣博士、ありがとうございました」

「うん、いいよ。この間みたいに地下を迷っても困るもんね」

「あはは」

 

 あやうくあくあが餓死するんじゃないかってくらいまで遅くなってしまったからな。あの時は、用心棒として雇われている風真(かざま)いろはさんが助けてくれたからなんとかなったけど。

 ついこの間のことを思い出していると、トンッ、と突然衝撃が来た。

 

「え、っと、博衣博士?」

「……名前で呼んで」

「いや」

「呼んで」

 

 私は少し下にあるふわふわな桃色の髪の毛を戸惑いながら見つめる。

 緩く抱きしめられ、私の両手はどこにやったらいいものかと彷徨う。

 私は一つ息をついた。

 

「……こより、さん」

「ん」

 

 ぴょこ、と獣耳が跳ねる。

 

「どうしてこんなことに??」

「ちょっと寂しくなったから」

「……そーですか」

 

 まぁ、総帥や幹部、風真さんやなんか知らんけど変なアイマスクつけた人がいても、この少女は一人であの研究室と私室にいるのだ。一日中共にいたのだから少しくらい寂しくなってもおかしな話ではない。

 抱きしめられるのは想定外だが。

 

「へへっ、ごめんね」

「いえ、まぁ、驚きましたけど」

「助手くんの驚いてるところ可愛い♪」

「……うざっ」

 

 おっと、つい口に出てしまった。

 

「じゃあ、気をつけて帰ってね助手くん」

「はい。博……じゃない、こよりさんもちゃんと寝るんですよ」

「んふふふ、はーい♪」

 

 ふさふさの尻尾が揺れ、こよりさんは手を振って私を見送る。私は会釈をし、会社に背を向けて歩き始めた。

 

 

 ……思ったより、酔いが回っていたのかもしれない。歩いて帰ろ。

 

 

 

 

 






 三週間での配信でとてもこよちゃんが可愛くて推しになりました。
 他のホロライブメンバーもいろいろありましたね。そちらの方も書きたい……!!

 こよちゃんが朝に配信している朝こよRadioはリスナー(助手くん)に台詞を募集してそれを読んで悶えさせてくるのでオススメです。
 
 感想、評価お待ちしております。
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