双つの完熟メロンが弛むたび、人々の視線が吸い寄せられる。
慣れたものはいうが、どうせ今後もこの贅肉と付き合い続けねばならないと知ってはいるが、しかしだからといって心地の良いものでもないのだ。
そんな自分を妬ましげに見つめる腐れ縁。
カリスマモデルとして名は売れているし、外面が隔絶していいことも知覚しているが、内面だけは理解し難い邪悪の権化。
二人で会うことは慣れきったものだが、今回はそこにもう一人。
ハロウィンでもないのにカボチャのマスクを着けた、謎の存在感を醸し出す不審者がいた。
「で、トワ。そこの不審者は誰だ?」
「よくぞ聞いてくれました!彼はなんと、我ら
「あぁ、サンラクか。トワが迷惑をかけてすまないな」
「ちょっ、最後まで言わせてってばー!」
それに迷惑って何!?と激昂してみせるが、それはポーズだと百は、そしてサンラクは理解している。
アレは相手に負い目を感じさせて、以後の交渉ごとを自分有利に運ぶための手法。
腐れ縁ゆえに知る百、そこまで長くないまでもディープなやりとりをしているサンラクだからこそ、容易に受け流せる類のモノだ。
「で?旅狼の時限爆弾を仕事の話し合いに連れてきた理由はなんだ」
「もー!サンラク君を連れてきた理由は簡単だよ、ウエディングドレス特集の時の相手役は私が選んでもいいって話だったでしょ?」
「疑似とはいえトワの夫役をやらされるのか。言え、どう脅迫した?何をダシに脅迫したんだ?」
「脅迫はしてないかな。ただGGCの放送を見て、『顔隠しさんも名前隠しさんも素敵でした!出来たら共演したいな!』って呟いたりしただけで」
「よく言う」
百も、GGCの動画はミラーサイトであるとはいえ見た。
そこにあったのは、眼前の腐れ縁が悪の限りを尽くして人々を絶望せしめていたのと、全米一に容易くK.O.されていた姿である。
その時の名が『名前隠し』だったのも覚えている。
「それで?」
「サンラク君の妹ちゃんが私の熱心なフォロワーらしくてね?妹ちゃん伝手でリアルのサンラク君を少しずつ少しずつ晒していくよ?って」
「人はそれを脅迫というんだ。……全く、すまないなサンラク」
愚妹の想い人を何だと思っているんだ、との思いはメロンの片割れに封印して。
「いや、まぁコイツが無茶苦茶なのは常日頃から知ってるし構わないけどさ。なんか給料とか出るの?」
出来ればクソゲーの現物支給が、と呟いたのは聞かなかったフリで済ませて。
「後さ、ウエディングドレスとかだとペンシルよりそっち──斎賀姉のほうが映える気もするんだが」
「どこで比べてるのか知らないけど、それはちょっと……」
「私の方が映える、か?妙なことを言うな」
───サンラク曰く。
ペンシルはティーン向けの雑誌のカリスマモデルなんだから、結婚に縁遠いとかは言わないまでもやはり距離のある少女たちには、やはり厳しいものがあるんじゃないか。
そこへ行くと、斎賀姉は外面も美人だし、人目を惹き付ける武器も装備している。
クールな仕事人間の女が、ウエディングドレスを見事に着こなす姿のほうが、なんというかアリなのではないか。
結局胸かー!と吼えるペンシルを他所目に頷く百。
じゃれ合う二人を見ながら逡巡して──────
「だが、トワの写真がないのもよろしくない」
「ほら見ろ、私大勝利!やっぱり正義は勝つんだよ!」
「そこでだ。私とトワ、二人の写真を並べて対比する形にしてみよう」
「ヘイヘイ、格差社会を露わにするのは大罪だぜ?」
「格差社会どころじゃないだろーが」
格差社会の意味を理解した百はハッとしたが、悪い案ではないと自画自賛。
こうすれば恋愛に縁遠い自分にも進展が生まれるのでは?と考えながら。
「だが、言い出したからには付き合ってもらうぞ?」
いざとなれば道連れも辞さない覚悟で、斎賀百は微笑んだ。