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【旅狼・男子の会】
オイカッツォ:もうやだ……
オイカッツォ:あのテンションに振り回されるの
オイカッツォ:辛すぎるんだけど
サンラク:こっちも大概キツイわ
サンラク:そういえばルストは?
オイカッツォ:ネフホロのほうで忙しいからって伝言だけしにきてた
サンラク:うまく逃げたな
サンラク:俺も幕末に行こうか……
オイカッツォ:多人数の妻を捨てて夜逃げかな?
サンラク:バカ言え、三行半突きつけられての離婚だって
サンラク:言い逃れて………言い逃れられるか……?
オイカッツォ:ま、相手がなまじっか権力者の関係者多めだし
オイカッツォ:ペンシルゴンがいる時点でチェックでしょ
サンラク:そこらの野良プレイヤーで穴埋めのほうが良かった説
オイカッツォ:サンラクは嫌だった?ペンシルゴンとか秋津茜ちゃんとの結婚
サンラク:嫌だって言ったら俺が悪党になるだけなんだよなぁ…
サンラク:エムルはともかく、サイナにもきちんと合わせた衣装が装備されたし
オイカッツォ:征服人形ガチ恋勢が血涙流してたからね
オイカッツォ:特にサンラクとサイナさんは悪目立ちしてたし、サイナさんの好意も世界にバレてたし
オイカッツォ:スクショだけでもって話題になってたわ
サンラク:は、バカ言え
オイカッツォ:独占欲?
サンラク:………意外と、そうかもしれん
オイカッツォ:まぁ俺も、他人がシルヴィアやメグのウェディングドレス姿のスクショとか言い出したら
オイカッツォ:怒るかもしれないしさ
サンラク:………でもなぁ……
オイカッツォ:まぁ、サンラクはラス1がヤバイしねぇ
サンラク:聖女ちゃん肝入りで、秋津茜、ペンシルゴン、聖女ちゃん、兎二羽、人形と結婚式だぞ
オイカッツォ:字面に現すとホント意味が分からないんだけどさ
サンラク:安心しろって、俺もだよ
オイカッツォ:……互いに頑張ろうな
サンラク:ゲーマーはこんなところで挫けないんだよなぁ…!
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どうやらプロゲーマーにも不可能は多々あるらしい。
少し前、キメ顔で逃げ切ってみせると言ったオイカッツォだが、速攻で確保されて花婿行き。
とはいえ、満更でも無さそうなのは何より。
仮にも最大速度を冠する身の上、逃げようと思えば幾らでも逃げられはする。
ぶっちゃけログアウトしてしばらく音沙汰を無くせば、この狂騒は鳴りを潜めるだろう。
だがそれをしたとき、次に俺を待つのが何なのか考えたくもない。
ヴァッシュや聖女ちゃん、親衛隊たちを敵に回し、長らく戦いを共にしたエムルやサイナにさえそっぽを向かれるだろう。
秋津茜やペンシルゴンに関しては肉入りのプレイヤー、しかも縁も深いと来たものだ。
クソゲーを愛好してはいるが、自分から望んで地に堕ちる真似をする悪趣味は持ち合わせてはいないわけで。
「サンラクサン、準備が整いましたわ」
いつもの調子で頭に乗るエムルの声が、心なしか浮かれているようにも聞こえる。
「よっしゃ、カチコミだな!」
「結婚式場に入るのをカチコミって言うのはサンラク君だけかな?」
「頑張りましょうね!」
「よろしくお願いします、サンラク様、ペンシルゴン様、秋津茜様」
エムルに続いて現れた姿に、思わず息を飲んだ。
三者三様、華やかさに満ちたペンシルゴン、快活さを隠そうともしない秋津茜、不思議な神聖さと妖艶さを内包したような聖女ちゃんが、そこにはいた。
「……………みんな綺麗だ」
「そうですか!ノワルリンドさんとは融合しないように言われているんですよ!」
「真顔で褒めるあたり、本気で照れてるなー?」
「そうですね……サンラク様は、『花嫁全員を幸せにしてくれる』のでしょう?」
「当たり前ですわー!サンラクサンと私達が揃えば怖いもの無しですわ!」
「期待しすぎるなよ」
自信満々の秋津茜とエムルに釣られるように、不敵に笑うペンシルゴン。
聖女というか慈母のような微笑みを見せる聖女ちゃん─イリステラ。
呆れ顔ながら、満更でも無さ気なビィラック。
飽和した感情の行き場を求めてか、涙という形で解消するサイナ。
ただ一人の新郎を囲みながら、今架空の結婚式が始まる───
結婚式をバックレたらプレイデータ消去のほうがマシと思える目に合いそうなメンツ…!