『ウエディングドレス姿も素敵です!やっぱり永遠様は何でも着こなしちゃうんですね!』
『もう一人の花嫁さんもすごく美人ですね!あんなスタイルの人に少し憧れちゃいます!』
『あの……永遠様やもう一人の花嫁さんと一緒に写ってる人は誰なんですか?』
◆ ◆ ◆ ◆
「Fluegel」に届いたファンメールは、概ね上述の3つのバリエーションに絞られる。
ウエディングドレス姿の花嫁だけじゃあ映えないからね。
やっぱり新郎がいてこそ新婦は輝くのさ!
別に恋人とかじゃないよ?仲のいい友達にコスプレしてもらったんだよ。
カボチャのマスクは顔バレを防ぐための処置なの。
私やもう一人と並べられたら、大概の男は見劣りしちゃうもんね。
舌先三寸とはこのことかと百が呆れ返るほどの弁舌で、天音永遠は疑惑を払拭していく。
百はといえば、永遠が返信しているのを眺めながら嘆息をひとつ。
(似合っている、か。花嫁衣装が似合っている……勘違いするぞ)
胸がやけに押し出された、ある種破廉恥極まるような姿の気もしたのだが。
少なくとも、天音永遠のような清楚さを全面に押し出したような、いかにも『花嫁です!』と言わんばかりの写真ではなかったが。
確かに自分の傍らに彼はいて、不慣れな撮影を二人で共に熟して。
恥じる自分を励まして、褒めてくれた。
永遠には軽口を叩いていたあたり、巻き込まれたことに腹を立てていたのかもしれないが。
それでも、胸だけを見て評価するようなことをされなかっただけでも、百にとっては幸福なことなのだ。
「なぁ永遠、お前は彼───サンラクをどう思う?」
「んー?まぁ悪友かなー」
「悪友?」
「そう、本当の自分を見せても構わない悪友。モモちゃんみたいに長い付き合いじゃないけど、サンラク君やカッツォ君も信頼してる悪友だよー!」
「そうか」
ほう、と安堵の吐息が漏れて。
───安堵。何故?
鈍い娘ならここで迷いもするのだろうが、生憎と斎賀百は才女。
一連の流れを線で繋ぐなど、容易も容易だった。
「あぁ、そうか」
(私は───妹が焦がれる男に、同じように心を惹かれたのか)
外見だけで評価・判断されなかったことが、こんなにも自分の中で大きなことだとは。
そしてそれを自覚してからは、何気ないものだった彼の有り様そのものが彼女の中で膨らんでいく。
リュカオーンに二度挑み、認められ、影とはいえ打倒した力も。
破天荒に世界を駆け、致命兎や征服人形と共に在る姿も。
羨望や憧憬の類だったものが、恋心をスパイスとして変異して。
恋愛に縁遠かった友人が変わり果てる様を目の当たりにして、天音永遠は呟いた。
「モモちゃん、ちょっと耐性なさ過ぎない?チョロすぎるよ?」