隠岐紅音は、多くの人を尊敬している。
テレビで見るようなプロのスポーツ選手たちは言うまでもなく。
諦めずにチャレンジを繰り返す不屈の魂も、頂点に有りながら駆けることを止めぬものも、夢をただ追うものも、須く憧れの対象になる。
彼女がプレイしているゲーム【シャングリラ・フロンティア】で、彼女と特に親密にしているクラン【旅狼】のメンバーたちは皆尊敬している。
各々形は違えど、それぞれの輝きで世界を照らしているから。
天覇のジークヴルムとの決戦時など、彼らの力がなくては紅音が出来たことなどどれだけあったのか。
そして、その中でも特別親密なプレイヤー───サンラクへの感情は、憧憬や尊敬の類から徐々に変わり行き。
恋慕の情だと紅音が自分で気付いた頃には、もう止まれなかった。
好きだと告白したい。
憧れ続けていると打ち明けたい。
彼の傍らにいるヴォーパルバニーや征服人形へと嫉妬心を抱いたときに、ようやくソレは自覚へと昇華した。
………のだが。
◆ ◆ ◆
『サンラク君に告白したい?』
『はいっ!たくさんお世話になってますし、いっぱい一緒にいましたから!これからもずっとサンラクさんと居たいんです!』
『うーん……でも、サンラク君はモテるよ?』
『そうなんですかっ?』
『そうそう。そりゃああんなに走り回ってるからね、人目にも付くし。アレで人当たりもいいから、いくらでも人を誑し込むさ』
『………………………』
『ただでさえ周りにエムルちゃんやサイナちゃん、茜ちゃんがよくいるからね。恋人もいないから周りに侍らせてるって思われてるよ?』
『…………………………』
『────茜ちゃん。今なら、サンラク君はフリーだよ』
『え』
『恋愛ってのはね?過程や方法なんてどうでもいいんだよ。夜討ち朝駆け、ハニートラップに騙し討ち。世間の力を借りてもいい。成就してこそ意味があるんだ』
『………』
『何もせずにサンラク君が別の女の人のものになってもいいの?』
『で、でも…』
『今は悪魔が微笑む時代なんだよ』
『悪魔が………微笑む………』
『さ、行くんだ茜ちゃん!』
『分かりました!ありがとうございます、ペンシルゴンさん!』
『フフ、どうってことないよ!礼には及ばないってね!』
◆ ◆ ◆
ラビッツの一角にて。
「ペンシルゴンさんに教えてもらったんです!手段なんて問わなくていい、付き合ってしまったらそれでいいって!」
「それは相談する相手を根本的に間違ってるな」
秋津茜にのしかかられたサンラクが呆れ顔になる。
「なので、特に可愛いって言われたノワルリンドさんと融合したときの格好で告白しに来ました!」
「やっぱノワリンいるのか」
「はい!」
「で、告白?何を?」
「私、サンラクさんが大好きです!」
「あ、それはありがとう」
「それで、もしよければお付き合いしてください!」
「お付き合い?どこのダンジョンかな?」
「恋人の方です!」
「………まぁ、シャンフロの中でなら。リアルだと顔も合わせたことないだろ?」
「分かりました!なら今度外でも会いましょう!」
「ええ…………勢いあり過ぎじゃないか?」
「過程や方法なんてどうでもいいから、付き合っちゃえばいいんだって!ペンシルゴンさんに言われました!」
「あいつ…!」
◆ ◆ ◆
「えーっと…………」
「…………………」
「……クランメンバーを唆して、サンラクに告白させたらしいな?」
「落ち着いてよモモちゃん、レイちゃん。茜ちゃんにめっちゃくちゃ迫られちゃってね?そりゃああぁいうしかなかったんだってば」
「でも、やりすぎでは……」
「ちょっと反省してるよぉ」
「これでサンラクと秋津茜が付き合ってしまったらどうするんだ?」
「………………はっ!私の誘惑になびかなかったんだし、大丈夫に違いないよ!万が一は考えてないよ!」
「考えてなかったんですね……」
◆ ◆ ◆
隠岐紅音には、変なアドバイスすると暴走しそうな気もする
そして暴走しだすと止まらないし、修正も効かなくなると思う
ノワリンと融合した時に告白した場合、ノワリンにも告白は聞かれるんだろうけど
その時のノワリンの気持ちはどんなものだろうね?