少なくとも、魚見慧にはそれが惨劇、もしくは修羅場にしか見えなかった。
斎賀家の別荘(らしい)を借りて行われる運びとなった、クラン【旅狼】《ヴォルフガング》のオフ会。
ネフホロのイベントと重なったがゆえに不参加となったルスト、モルドの二人の代わりと言ってはなんだが、保護者役として参加したのは剣聖ことサイガ-100。
シルヴィアやメグがいれば怨念を放ちそうな彼女だったが、存外に外道耐性も強く気安かったのは幸いだった。
最も───
◆ ◆ ◆
「サンラク、えらくモテるじゃん?」
「は?」
「サイガ姉妹に、秋津茜ちゃん。ペンシルもそうかな?みんなサンラクにデレデレじゃないか?」
「全く意味が分からないんだが???クラメンとして仲良くするのは当たり前だし、玲さんは同級生──しかも同じ学校。斎賀姉やペンシルはいい大人だしな。秋津茜はまぁ、懐かれてるようなもんだろうし」
「え、それ本気で言ってるの?ギャグじゃなくて?」
「俺は自分がモテるとか思ってないから?モテモテのカッツォさんと違ってさぁ?」
「……………」
「そうだ、200スレ達成おめでとうございまぁす!最近じゃTS全米一やTSナツメグ氏がアツいみたいだけど、当事者のカッツォさんからしたらどっちが本命なんですかねー???」
「………シルヴィアやメグに魔境の存在がバレたんだぞ。ヤバかった。正常に戻すとか訳のわからないことで結託するし」
「……………」
「…………どうした?笑えよサンラク」
「あー………うん。すまん」
「そこで謝られると……」
「………………」
「………………で、サンラクの本命は?」
「別に……恋愛で考えたこともないし」
「マジ?」
「むしろVRでクラン組んだ相手に惚れましたとかヤバイ奴認定待ったなしだろ」
「それもそうか……」
「……でも、いつかは結婚とか考える日が来るのかね…」
「お?サンラク君も結婚を考える年頃?」
「いやな、言いたくはないけど俺はクソゲー狂なのは事実だし、この性分は一生変わらない気もするんだよ」
「それに合わせられる相手、ねぇ……」
「ま、いつかは見つかると思うけどさ」
「…………ペンシルもサイガ姉妹も茜ちゃんも苦労するなぁ…」
「ん?」
「何でもないよ」
◆ ◆ ◆
魚見慧は、サンラクと二人の時間を好んでいる。
魔境の人々の語るような理由とは違い、気のおけない友人との時間。
シルヴィア・ゴールドバーグや夏目恵たちといるときにはない、気安く付き合える相手。
プロゲーマー・keiではなく、魚見慧として接してくれる友人。
ひどく鈍感なようだが、サンラクが他人の感情の機微に敏いことは重々承知もしている。
彼にとって、恋愛はまだ遠い先の話だと思いたいに違いない。
そう考えると笑みも漏れようものだ。
「な、サンラク?」
「ん?」
「俺達、親友……だよな?」
「さぁ、親友ってのがどういう付き合いの間柄のことを言うのかはイマイチ分からないけどな」
「そこは『俺達、ズッ友だよな!』っていうところだろ?」
「………そうだな、まぁ一番の友達ってなるとカッツォかな」
「……俺も、そうだからさ」
どちらからともなく、含み笑いの声が漏れて。
翌日、普段以上に仲良さげにしている楽郎と慧を見た女性陣が、あらぬ方向に邪推することになるのは、別の話である。