機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第二部最終話 新しい未来へ

 

 後に「デラーズの叛乱」と呼ばれる一連の事件が終わってから約2週間が経った。

 

 戦後処理も殆ど終わり連邦軍内でのゴタゴタも一応の目処がついた。

 まず今回の一件で核搭載MSを開発、そして強奪されたコーウェン中将はその責任を負うこととなり、阻止限界点での戦いでの試作3号機の活躍もあり降格こそ無かったものの軍内での求心力は低下、旧レビル閥からも見放される事となり結果的に連邦内での影響力は大きく下がる事となった。

 そして観艦式を失敗させてしまったグリーン・ワイアット大将もまたその責任を問われ地上軍の僻地での司令官として事実上の左遷を言い渡された。

 

 そしてこの戦乱でジャミトフ・ハイマンの策を推し進め、収める立役者となったジーン・コリニー大将は元帥へと昇進しその側近であったジャミトフ・ハイマン准将は少将から最短の任期を経て中将への昇進が決定している。

 

 俺達リング・ア・ベル隊はと言うと……。

 

「准将への昇進おめでとうございますアンナ隊長。」

 

 地球へ向かう道中のアマテラスのブリッジでジュネットから祝辞が贈られる。そう、アーニャもまたコロニー落下阻止のためにソーラ・システムが起動されるというのにコロニーに侵入してそのコースを修正しようとしたこと、更にソーラ・レイを使用しコロニーを破壊した功績が認められ准将への昇進が言い渡されていた。

 

「ついでにアンダーセン『少佐』もだねジュネット。」

 

「あぁ、こっちはおまけのようなものだがな。」

 

「おーい、失礼だぞ二人とも……。」

 

 そう、俺もまたコロニー破壊の為にジャミトフとネオ・ジオンでの極秘の任務をしていたという建前があり、ソーラ・レイの移送を提案していたこともあって昇進に至った。

 

「それで、今アマテラスは何処に向かっているんだ?」

 

「着いてからのお楽しみですよ、何の為にみんなが行き先を黙ってると思ってるんです?」

 

「うぐ……グリム、なんかちょっと辛辣じゃないか?」

 

「誰かのおかげで新米達の面倒から鬼軍曹の世話まで文字通りグリムは激務だったからな、今の内に言われておいた方がマシというものだ。」

 

 ジュネットから釘を刺される、確かにあの面々を俺のいない間相手にしてきたとあれば塩対応になるのも仕方ないか……。

 

「鬼軍曹の世話なんて随分な言い様じゃないか、アタイだって新米達の世話はして来た方さ。」

 

「カルラの場合は一緒になってハメを外す時もあるからね、ハァ……思い返すと碌な2年じゃなかったですよ本当に。」

 

「すまなかったなグリム、だがグリムがここまで頼もしくなってるとは嬉しいよ。」

 

「嬉しいよ、じゃないわよジェシーくん。もしかしたら今はグリムくんの方が強いかも知れないんだから。碌に戦技データも渡してもらえなかった分は取り返してもらいますからねぇ?」

 

 クロエからも釘を刺される、確かに2年と言う間時が止まっている俺とは違いみんなはその間に日々の訓練を積んでいるわけで……これは遅れを取り戻すのも一苦労かもしれない。

 

 そんなこんなで話をしていると大気圏突入の準備が始まる、ミノフスキークラフト搭載型の巡洋艦とは聞いているがペガサス級とは違うので本当に大丈夫なのか少し心配になる。何しろプランは聞いてはいたが俺の知らない艦船なのは間違い無いのだから。

 

「アマテラス……それに曙光か。」

 

 どれも日本の言葉だ、天照……光を照らすという言葉、曙光も夜明けからの光と言った闇を祓うという意味合いをどちらも持っている。

 

「本当は別の名前にする予定だったみたいだけど、シショーと最後に旅行した場所から名前を付けたいって言ってたんだよ。アタイは好きだけどねこの名前。」

 

「……あぁ、俺もだ。」

 

 明けない夜はない、例え世界が闇に向かっていてもいつかは夜明けが来て光を照らしてくれる……。俺達がそうして見せるんだ。

 

 地球へと降下する、位置座標を確認すると欧州……これは……。

 

「マハル孤児院に向かうのか?」

 

 降下ポイントは欧州でも重要な拠点付近では全くない、近くにあると言えばシーマさんが施設を運営しているマハル孤児院くらいだろう。

 

「俺達の用もマハル孤児院にあったから願ったり叶ったりだアンダーセン、地球に降りようと思ったら高い金を払わなきゃならなかったからな。」

 

「グレイ、それにヘルミーナさんも。」

 

「子供をあそこに置いてきちゃったから。心配してると思う。」

 

 数年前に生まれたばかりだし親がいないと子供は不安がるだろうな……。

 子供……子供か……。

 

「グリム、アーニャは今どこに?」

 

「隊長だったら司令室にいる筈ですけど、どうしたんです?」

 

「いや。ちょっと用を思い出した、行ってくるよ。」

 

 話さなければならない事がある、それはきっとこれから先の未来に関わる事でもあるのだから。

 

「やれやれ、また勝手に突っ走ったようだな。」

 

 ジュネットは呆れる様にため息を吐く。

 

「あの人の悪い癖ですよ、自分の中で考えを完結させようとする。まあでも良いんじゃないですか?アンナ隊長の所に行ったんだったら遅かれ早かれ自分の考えてる事の馬鹿馬鹿しさも理解しますよ。」

 

 クスクスと笑うグリムに釣られてララサーバルもまたハッハッハと大きく笑った。

 

「シショーもネングノオサメドキってやつさね。」

 

「あの朴念仁も今日で見納めになってくれれば良いけど、どうなる事かしら?」

  

 リング・ア・ベル隊の面々はやれやれとした表情を見せる、それに釣られてグレイとヘルミーナもまた笑うのであった。

 

 

 

「アーニャ、いるか?」

 

「はい。開いていますよ。」

 

 ドアを開けて部屋に入る。

 

「アーニャ、話があるんだ。」

 

「何ですか?時間には余裕がありますから問題ありませんよ。」

 

「……伝えておかなければならない事がある、俺の身体の事についてだ。」

 

「貴方の身体?」

 

「……報告書にも書いたと思うが、ペズンで失踪した後俺はサイド8で保護されていた。その時お前を護るための力が必要になると思って俺が強化措置を取ったのは知っているだろ?」

 

 アーウィン、そしてレイとは違う精神的な方にも作用するやり方ではなく単純に肉体面のみの強化、薬物投与や手術などで俺の身体能力は飛躍的に向上した。

 これにより強化人間で無ければ耐えられないような戦闘機動にも対応できるようにはなった。しかし……。

 

「えぇ、貴方が所謂強化人間化を行なった事は知っています。それがどうしたのですか?」

 

「その……だな。当たり前の話になるが自分から志願した事だから人道的、倫理的には問題ないんだが……その……。」

 

「何か問題があったのですね?」

 

「……あぁ。医者は保証できないと何回も念押しされた、寿命のこと、そして自分の遺伝子を後世に残す事は難しいだろうという事を。」

 

「……。」

 

「サイド8はあくまで断片的に持っていたフラナガン機関のデータを使用して俺を強化してくれた。強化的な面では今は問題なくても何年、何十年後に重い症状が出ないとも限らない。だから……。」

 

「婚約は破棄した方が良い、と言いたいのでしょう?貴方が考えそうな事ですジェシー。」

 

「……。」

 

 エルデヴァッサー家は名家だ。それに一年戦争で主要な一族が殆ど死んだとなればその血筋は残さなければならない、であるならば今の俺という存在は彼女のパートナーとしては相応しくないだろう。

 

「家名や血筋、その様なものは重要ではありません。誰といるか、誰と進むかが重要なのですよジェシー。」

 

 そう言うと彼女は俺の手を取る。

 

「私には貴方が必要なのです、今までもこれからも。だから私から離れる事は二度と許しません、良いですね?」

 

「……本当に良いのか?」

 

「えぇ。それに……私はもう子は産めませんから。」

 

 アーニャはシャツをズラし腹部を見せる、そこには大きな傷跡が残っていた。

 

「アーニャ……その身体は……。」

 

「大きな怪我をしたのです、貴方がいなくなってから。その時に腹部を手術し医者からは子供をもう産むことはできないだろうと言われました。」

 

「……っ。」

 

 俺がいない間にそんなことが起きていたとは……。

 

「貴方のせいではありません……と言いたい所ですが、貴方がいればまた別の未来があったかもしれませんね。」

 

「……すまなかった……本当に。」

 

「良いのです、さてもう直ぐマハル孤児院ですよ。いつまでも辛気臭い顔をしていたらシーマさん達から怒られますよ?」

 

「……あぁ、分かった。」

 

 小さな片田舎には不相応な着陸場へと天照は着陸する、定期的に軍の査察がある為に用意されたものだ。

 艦から降りて空気を吸う、風や土の匂い……地球へと帰ってきた。

 

「お嬢!お元気で!」

 

 デトローフ・コッセル元大尉がジープで駆けつけてきた。

 

「はい、コッセルさんもお元気そうで何よりです。シーマさんはどうしたのですか?」

 

「あぁ、それが……運送屋の子供を連れて親父さんらの墓に行ったんです。どうしてもと駄々をこねられたんでお頭も仕方なく……。」

 

「ふふっ、子どもたちの前ではシーマさんもお母様ですものね。義父様のお墓ですね、向かいましょうか。」

 

「あぁお嬢、あの二人も……。」

 

 その言葉にアーニャは人差し指を立てて何かを呟く。

 

「はぁ……分かりやした。それでは案内させてもらいます。運送屋の二人も一緒に乗ってくれ。」

 

「隊長ぉー、アタイらは先に孤児院の坊やたちに会ってくるよー。」

 

「えぇ、頼みました。」

 

 ララサーバル達とは分かれ、俺とアーニャ、グレイ夫婦とコッセルさんとで親父……アンダーセン艦長の墓へと向かう。その道中グレイがコッセルさんに話しかける。

 

「すまないなコッセルさん、娘が迷惑をかけてる様だ。」

 

「気にするこたぁねぇ。子守する子供が一人増えただけだからな、ただあの子が宇宙に帰るってなったら孤児院の連中は泣きじゃくるだろうなぁ。あの子は不思議な子だ、みんなとすぐ仲良くなったんだ。」

 

 グレイの子供について語るコッセルさんはもう軍人の顔はしていない、親父が救った命は今、未来を進む子供達の道を示す人達となっていた。

 

「さて、もうすぐだ。これ以上はクルマじゃ進めねえから悪いが歩いて行ってくれ。俺はここで待たせてもらう。」

 

「ありがとうございましたコッセルさん。さぁ、行きましょうかジェシー。」

 

「あぁ。」

 

 道を歩く、何度か来たことのある道だ。特に迷うこともなく親父とアーニャの母親の墓へと辿り着く、そこには……。

 

「……!?パパ!?ママ!?」

 

「どうしたんだい急に声を出して……?っと、ようやく帰って来たかい。」

 

 驚きの声を上げる小さな少女と俺達の顔を見てフッと笑うシーマ様。

 そしてその小さな少女は……。

 

「……似ている……。」

 

 双子の妹から生まれたのだから当たり前の話だが、マルグリットに似ている。彼女の面影を残したその小さな少女は俺を見つめると途端に大喜びする。

 

「おじちゃん!ありがとうね!」

 

「……?」

 

「あたしのおばちゃんとおじちゃんが凄く喜んでたの!これからはずっとずっと一緒だって!あたしに教えてくれたの!」

 

「グレイ……この子は……。」

 

「感受性が豊かな子だ。俺やヘルミーナなどよりもっとな、よく母親に似た女性が会いに来てくれると言っていた事もある……。つまりはそういう事だ。」

 

 新しい時代を生きる希望の子供達、彼女もまたその一人なのだろう。人は変わっていく、それを体現するような……。

 

「さあマリー、パパとママのところに行って来な。」

 

「はーい!おかえりなさい!パパ、ママ!」

 

「あぁ、ただいま。」

 

「ただいま、マリー……。」

 

 マリーと呼ばれたグレイ達の子供は駆け足で二人に飛び込む。子供を抱きしめるグレイとヘルミーナさんの三人の光景は……きっとマルグリットもジェシー・アンダーセンも望んだ姿だろう……。

 

「さて、次はアンタらの番だね。」

 

「……?」

 

 シーマ様はそういうと一瞬俺を見つめたと思ったら俺の頬をビンタする、一瞬何が起きたのか分からないまま混乱していると次はアーニャにも同じようにビンタをした。

 

「お前達!()()()()()()をほっぽり出して今更ノコノコ呑気に帰ってきて!どういう了見だい!」

 

「……!?」

 

 今のシーマ様の言葉は一体……!?

 

「……返す言葉もありません、この数年私はあの子達に何もしてあげられませんでしたから。」

 

「アーニャ……?一体これは……?」

 

「……。」

 

「お嬢……アンタまさかコイツに何一つ話していないのかい?」

 

「えぇ……。何と言えば良いか分からず……。」

 

 二人は俺を無視しながら話を続ける、一体どういう事だ……?

 

「呆れてたね……おい、バカ亭主。途方に暮れた顔をしてるんじゃないよ、今からアンタがどれだけ無責任で最低の男かアタシがお嬢に変わって説明してやる。」

 

「は、はい……!」

 

「まずアンタがいなくなったあの日、お嬢はアンタに何か伝えようとしていたらしいね。覚えているかい?」

 

「え、えぇ。機体のテストが終わったら話したい事があるって、でもアレはその日俺とアーニャが出会った日で……。」

 

「バカな奴だね、そういう記念日にだからこそ伝えたい事がお嬢はあったんだよ!あの時お嬢は……。」

 

「シ、シーマさん……そこから先は私が言います。ジェシー……。」

 

 深刻そうな顔をしながらこちらを見つめるアーニャ、それは勇気を出して言葉にしようとしている表情だった。

 

「あの時……私は妊娠していたのです。……貴方の子供を。」

 

「……!」

 

 まさか……いや、しかし……確かにその前に日本で旅行した時に……。

 

「そして貴方がいなくなって数年、私は軍務から遠ざかっていました。それは子供達が私を必要としなくなるまで育てなければならなかったからなのです。」

 

 数年軍務から離れていたのは報告書を見て知っている、しかし……。

 

「だがアーニャ……その腹部の怪我では……。」

 

「お嬢はね、帝王切開だったんだよ。未成熟な身体付きでもあったしそれに何より()()も産む事になったんだから出産は困難を極めたのさ。それこそ母子共に死ぬかもしれないリスクまであった。」

 

「二人……。」

 

「えぇ、シーマさん。あの子達は?」

 

「さっきからずっとそこにいるよ。」

 

 シーマ様が顔を向けた先にはレジャーシートと日よけのパラソルが立てかけられている。

 

「……アーニャ、俺は……俺は行っても良いんだな……?」

 

「……はい。」

 

 心臓がどんどん高まって行くのが分かる、止まっていた時間を取り戻すように……。

 一歩、また一歩と近づき……そして……。

 

「……っ。」

 

 幸せそうな寝顔をしている二人の少女、アーニャに似ている様にも見えるし俺にも似ているようにも見える。

 

「アーニャ……、俺は……ずっとお前のそばにいて良いんだよな……っ。」

 

 自分の存在が分からなくなっていた。ジェシー・アンダーセンの居場所を奪い、そして見知った世界の歴史を大きく変えた俺という人間は許されて良い存在なのかと。

 

「はい……私には貴方で無ければダメなのです。」

 

 その俺と共に歩んでくれると言ってくれる人がいる、そして俺を許してくれる人が……。

 

「アーニャ……ありがとう……今までも……これからも……。」

 

 彼がマルグリットを愛したように、何度生まれ変わってもまた彼女を愛し続けると誓う。愛する人を護り続ける、それがジェシー・アンダーセンなのだから……。

 

 俺の流した涙が子供達に溢れ落ちる。それに気づいたのか二人は目を覚ましてこちらを見つめた。

 

「パ……パ……?」

 

「あぁ、俺が君達のパパだ……ずっと待たせて……ごめんな……。」

 

 壊れてしまわない様に、優しく抱きしめる。アーニャもこの子達もずっと……ずっと護ってみせる。そう心に誓う。

 

 

 そして進んでいくと決めた、この新しい世界を。愛する人達と共に……。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

「えぇい!ジャミトフめ!エルデヴァッサーめ!よくも私をここまでコケにしてくれたな!」

 

 ジャブローの一室、そこでジョン・コーウェン中将は自分のデスクを壊してしまいかねないぐらいの力で叩きつける。

 勢力を取り戻しつつあったレビル閥は今やジャミトフやエルデヴァッサーへ媚び諂い始めていた、最早以前程の求心力は無いに等しい。

 

「そもそも……奴らはこの紛争を知っていたのでは無いのか!でなければここまで用意周到に対策など打てるはずがない!」

 

 この一連の戦い、特に敵がコロニー落としをすると分かってからのあの二人の動き方は異常だ、未来を知っていなければ有り得ないほどに。

 

 

「ニュータイプ……!」

 

 戦後ニタ研との距離を近づけたジャミトフ、そして自身がニュータイプだと称されていたエルデヴァッサー。彼らの裏にはニュータイプの力があったのでは無いのか?そうコーウェンは訝しむ。

 

「ニュータイプ……そしてガンダムさえあれば私も……!」

 

 そう、一年戦争の英雄であるニュータイプとガンダム。そしてまたこの戦いを終わらせたのもその二つだ。

 自分にもそれさえあれば名誉挽回のチャンスは幾らでもある。

 

 そしてそのうちの一つは既に手中にあるのだ。

 

「見ていろ……私はまだ終わるつもりはない……!」

 

 かつての清廉さは消え失せ、そこには権力という欲に飲み込まれた男だけが存在していた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「元帥への昇進おめでとうございますコリニー提督。」

 

「……。」

 

 まるで興味のないようにコリニーは無言で頷く。

 

「盟約に基づき引退後の生活は保証致しますよ、最早軍などに興味はありはしないのでしょう?」

 

「今の連邦でどれだけ地位を築いた所でたかが知れているのはお前が一番良く分かっているのでは無いのかジャミトフ?」

 

「えぇ、内紛の種を抱えた今の連邦ではリスクだけが付き纏う。だからこそ早期に引退を決めておられるのでは?」

 

「……エルランの事もある、今の私ではその問題を解決出来るとも思えんしな。」

 

 引き際を弁えている、ジャミトフはそう感心する。あと数年若ければ陣頭指揮を取る事も可能ではあっただろうが、しかし今は内乱を企てる者、またそれを実行できる力を持った者の前では力不足であると分かっているのだ。

 

「だがそのリスクすら、お前は自分の目的の糧とする事が出来るのであろうジャミトフ?安心しろ、お前が動きやすいようにはしておくつもりだ。」

 

 共存共栄、共に地球に巣食う寄生虫ではあるがその利害は一致している。

 

「期待しております元帥……。」

 

 もうすぐだ、そうジャミトフは確信する。

 地球環境を保全する為に、その為にはニュータイプの力は絶大だと分かっている。

 

 だからこそ必要なのだ、ニュータイプという英雄が。

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

「大佐、間も無くアクシズとの通信が可能となります。」

 

「うむ。」

 

 アステロイドベルトまでまもなくと言った所でようやくまともに通信可能な距離まで来ることが出来た。

 

「ガトー少佐はどうしている?」

 

「ハッ、自室にてデラーズ閣下の喪に服しております。」

 

「フン、古風な男だ。」

 

 死者を弔った所で死人が生き返るわけでもない。自己満足に過ぎない事をやるよりも今はやるべき事が多くある筈だ。

 

「リューゲ大佐、アクシズからの通信です。」

 

 その言葉に意識を切り替える、雑念を頭に入れていてはあのお方の眼前に立つのは失礼だとフォルシュ・リューゲは思った。

 

「よし、繋げ。」

 

「ハッ。」

 

 モニターの映りは悪い、デブリの影響だろう。音声はクリアになっているので問題はない。

 

『ご苦労だったな大佐。』

 

「ハッ。このフォルシュ・リューゲ、任務を果たし終わりました。」

 

『報告は全て聞いている、アナハイム製ガンダムの入手……それにEC社製のガンダムの設計図まで手に入れるとは僥倖だな大佐。』

 

「えぇ、EC社製のガンダムについては私も想定外でありました。連邦にも連邦を恨む者がいたと言う事でしょう。」

 

 アーウィン・レーゲンドルフという男は世界を恨んでいる節があった。そのおかげで我々は接触が出来たのだから連邦には感謝する他ない。

 

『ガンダム……一年戦争でアムロ・レイやシャア・アズナブルが乗っていた英雄的MS……エギーユ・デラーズのコロニー落としを阻止する為に阻止限界点での戦いで数機のガンダムが活躍したと聞いている。』

 

「はい。一戦交えましたがその力はやはり侮れるものではないと感じました。」

 

「だからこそ、ガンダムという力は我々にとっても要となる。我々が地球圏へ次に帰還する時は人類の革新を彼らは目にする事になるだろう。」

 

「えぇ、その時こそ閣下のお力を世界に知らしめる事となるでしょう……。」

 

「それではアクシズへ到着するのを待っているぞマ・クベ。」

 

「ハッ、承知しました。ハマーン様……。」

 

 

 

 

機動戦士ガンダム 紺碧の空へ

第二部『星屑の記憶編』完

 

次回第2.5部『キャスバル暗殺事件』に続く

 

 

 





第二部『星屑の記憶編』終了となります。
相変わらずの遅々とした投稿、そして至らない内容ばかりで申し訳ありません。
ラスト数話くらいしか主人公が出てこないのはどうかと自分でも反省しておりますがやりたい事はやれたと思うので後悔はしていません。

原作を少しでも辿るストーリーはここで終了となります、次回以降はある程度似通った部分はあるかも知れませんが基本的には原作無視のストーリー展開となりますので最後までお付き合いできれば幸いです。
次回以降もまたよろしくお願いします。
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