機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第6話 ガンダムレギオン

 

「何をボケっとしてやがるテメェら!ガンダムっても敵ならよぉ!」

 

 ジャン中尉が言葉と共に攻撃を仕掛ける、ジム改のマシンガンが敵のガンダムへと向かうが後退され回避される。

 

「動きが速い!エイジス、ジャン中尉を援護しろ!」

 

「……!了解!」

 

 こちらもマシンガンを構え攻撃を開始する、ジャン中尉の攻撃に合わせ敵の回避先へと攻撃の先手を打つつもりで放つが……。

 

『甘い。』

 

 ガンダムは上空に跳ね上がり回避する、その機動力はガワだけがガンダムではないと証明するように高かった。

 

「しかし……!上空に上がってしまえば!」

 

 アーニャのナイトシーカーも敵の動きに合わせ上空へと舞い上がる、ナイトシーカーの機動力なら上空でも相対できるし、何より上昇したMSは行動に限りがある、援護射撃もより正確にできる筈だ……!

 

『甘いと言っている。』

 

「な……!」

 

 ビームサーベル同士の鍔迫り合い、敵のガンダムはブースターの出力を上げナイトシーカーを圧倒していく。

 

「ナイトシーカーが……パワー負けを……!」

 

 アーニャの驚きに俺も同じく驚愕する。

 出力だけならヴァイスリッターすら凌駕するナイトシーカーをまるで苦にしていない、何なんだこの機体は……こんなレベルの機体をどうやって……!

 

「これ以上やらせるかぁ!」

 

 メガセリオンキャノンのありったけの火力を放つ。腕に持ったマシンガンと肩部キャノン砲、そして胸部ミサイル。

 過剰と言われようとあの機体は怪しすぎる、パイロットもだ。

 生かしておくとマズい、そんな予感がある。

 

「当たれぇぇぇ!」

 

 放たれた砲撃の嵐はガンダムレギオンと呼ばれる機体へと一直線に向かう。

 だがキャノンやミサイルはまるで弾道を読んだかの如く回避され、マシンガンは致命打にならないように防御される。

 この先読みする行動力……!

 

「ニュータイプだとでも言うのか……!?」

 

「ニュータイプだと!?流石に冗談だろ……!こうなったらよぉ!」

 

 ジャン中尉はマシンガンを乱射しながらガンダムを後退させるとハンドグレネードを投げる。

 

「スモークだ!今の内に基地の制圧を急ぐんだよ!こんなのをわざわざ相手にする必要はねぇだろ!」

 

 ……!そうだ、俺達の主任務はあくまで基地の制圧だ。ガンダム一機に構っていては敵に立て直しの手段を与えることになる……だが……!

 

「あの機体を無視して基地の制圧なんて出来るんですか!?」

 

「……ッ!」

 

 こちらが引いた所で敵が素直に逃してくれるとは思えない、奴らからすれば自分達の拠点が制圧されるのを指を咥えて見る理由なんてないからだ。

 

「ジャン中尉!スモークはまだあるんですか!?」

 

「あぁ、まだまだ残ってるがそれがどうしたってんだ!?」

 

「自分に全部渡してください、此処は自分が引き受けます!施設を傷付けずに拠点制圧するにはキャノンの火力は不向きです、それなら自分が……!」

 

「無茶です!そんな旧型の機体では……!」

 

 心配し声をかけてくるアーニャ、だが俺も無策ではない。

 

「その為のスモークです!これなら敵の目を撹乱しつつ攻撃できる、その間にみんなで拠点制圧を!敵も拠点が制圧されては防衛する理由もなくなるでしょう!」

 

「……エイジスを信じるしかない、俺達にはやらねばならん任務がある。だがエイジス……!」

 

「えぇ、死ぬつもりはありませんよ!さぁ早く!」

 

「各機!フォーメーションを組み直し速やかに敵中枢を確保する!ここは任せるぞエイジス!」

 

「くっ……無事を祈りますエイジス中尉……!」

 

 陣形を組み直し三機で突入していくアーニャ達を見送る、そして深呼吸。

 ……ここからが本番だ。

 

「全力でやらせてもらうぞ……!」

 

 メガセリオンキャノンに仕掛けられていたリミッターを外し、各種機体パラメータを使い慣れた仕様に変更する。

 これで見た目はキャノン仕様だが生半可な汎用機よりは動く様になった。

 

『仲間を逃したか、余程自信があるようだな。』

 

「あぁ、逃げるなら今のうちだぞ?」

 

『面白い、我々にどれだけ足掻けるか見せてもらおう。』

 

 ガンダムはサーベルを抜きこちらに急接近する、それに合わせるようにこちらもサーベルを抜く。

 

『ほう、一騎打ちに応えるか。』

 

「あぁ……だが!」

 

 左右に細かくステップを刻み動きを撹乱させる、地上戦で俺が得意とする戦法だ。これを抜ける相手は早々いないぞ……!

 

『成る程、エース級と言うわけか。面白い。』

 

 一気に間合いを詰めサーベルで死角から切り込む、これなら……!

 

 

『並のパイロットとMSなら、今の攻撃で撃破されている訳か。砲撃機でその機動力、そして並のパイロットなら失神するレベルの負荷の掛かる戦闘機動、お前も()()寄りか。』

 

「なっ……!防がれた……だと……!?」

 

 渾身の一撃が難なく対応されてしまう。

 それに今の言葉……コイツ……まさか……!

 

「貴様……強化人間か!?」

 

『強化人間……?違うな、我らは神に認められた超越者、レギオン(軍団)であり世界を一度闇に包むレギオン(悪霊)。』

 

「意味のわからないことを!お前達の目的は何だ!誰の差し金で何をしている!」

 

『貴様らには理解できんよ、我らを敵と勝手に決めつけ、そして身勝手にも攻撃をしてきた貴様らにはな。』

 

 何度かの剣戟、手応えが無さすぎる。まるで柳を相手にしてるかのように奴からは殺気や闘志と言ったMSパイロットと戦う時に感じる独特の感覚が感じられない。

 だがここで奴を倒せば、機体も組織のことも掴める。やるしかない。

 

「くらえ!」

 

 再度スモークグレネードを複数個投げる、これで敵は堪らず動き始める筈だ。

 煙幕が不自然な流れになったらそこに一斉射撃を喰らわせてやる……!

 

「……。」

 

 動きが無い、俺の狙いは読まれているのか?それはそれで好都合だ、煙幕が晴れる瞬間を狙って即座に撃ち込んでやる。

 一年戦争時から集中力だけは自信がある、奴より先に先手を打ってやる。

 

「……。」

 

 徐々に煙幕が晴れる、そして微かにガンダムフェイスを確認すると同時に一気に間合いを────

 

『一手、遅かったようだな。』

 

「──なっ

 

 言葉を言い終わる間も無く、頭部を切り落とされる。

 急いでサブモニターに切り替え対応しようとするがこちらが身構える間も無く一気にサーベルを持っていた右腕までもが切り落とされた。

 

「くっ……!?」

 

 やられる……!間違いなく……!グレイやアーウィンと言った猛者達よりもコイツは強い……!死を覚悟したその時だった。

 

「ジェシー!」

 

「あ……アーニャ……!?」

 

 ナイトシーカーがこちらへ向かいガンダムへ攻撃を仕掛ける、俺を撃破する寸前でガンダムは後退し様子を窺っている。

 

『ほう、もう援護に戻ってきたか。その理由を知りたいところだな。』

 

「ジェシー!モニターは生きているのですか!?ここから急ぎ撤退をします!」

 

 アーニャは慌てている、短距離通信とは言え俺の名前を普通に呼ぶのだから相当だ。一体何が……。

 

「落ち着け!()()()少尉!任務はどうなっているんだ!?」

 

「……!……エイジス中尉!この基地は間も無く自爆します、急ぎ撤退を!退却ルートはフォズ大尉達が確保しています!」

 

「自爆……!?」

 

『ほう、()()()に早々に気付くとは優秀な人間がいるみたいだな。』

 

「仕掛けだと……!?」

 

 なんだ……奴らはまさか俺達が襲撃してくると分かっていたとでも言うのか……!?

 

『また会おう連邦のパイロット、お前達にその資格があるのならそう遠くない内にまた会えるだろう。』

 

「な……逃がすか!」

 

「ダメです!今は撤退を!時間がないのですよ!それにその機体ではもうまともに戦えません!」

 

「くっ……!」

 

 悔しいが俺の完敗だ、だが……次こそは奴らの狙いを突き止めてみせる……!

 

 

 

ーーー

 

 

  新サイド5、EC社支部。その主計局長室に約1ヶ月におけるペズンの視察を終えた一人の男が入室する。

 

「只今戻りました局長。」

 

「お疲れ様ですわアルベルト、首尾はよろしくて?」

 

「えぇ、クロエ技師長には戸惑われましたが彼女はそれよりグノーシスの量産化不決定の方に気を取られていたので。」

 

 アルベルトはEC社主計局長のアレクサンドラ・リヴィンスカヤに一つのファイルを手渡す。そこにはあるMSの基本構造から詳細な設計図までがズラリと並んでいた。それを受け取るとアレクサンドラはソファーに座りそこにアルベルトも同席させる。

 

「ありがとうアルベルト……(わたくし)の我儘に付き合わせてしまって。」

 

「いや僕はアレクサンドラさんの為なら……、しかし本当にアンナさん達には伏せていた方が良いのかなこの件は……。」

 

 先程の上司と部下の話し方から、フランクな物言いに変わる。これが本来の二人の話し方なのだろう。

 

「仔細は情報が確定してからでないと余計な心労をアーニャ様達にかけたくはないのです。」

 

「せめてクロエ技師長には説明しておくべきだったのでは?彼女の知見が役に立つでしょうこの件は。」

 

「それは私も思いました。しかし事が大きくなった場合に彼女では責任が取れませんわ、それにあの人はEC社よりもアーニャ様達の盟友となって支えてもらうべき立場……何かあった時に責任を取るのは私だけで良いのです。」

 

「……だからこの情報を手に入れたのか、何かあった時に一人で責任を取るために……。」

 

「やはり察しが良いですわね貴方は、この任も何も言わずにやってくれましたし。」

 

「僕は貴方に拾われたから今の立場がある、だから貴方の為に身を粉にしようと思ってるだけだよアレクサンドラさん。」

 

 真剣な眼差しでアレクサンドラを見つめるアルベルト、その姿にフッと彼女は笑う。

 

「貴方はもう少し自己評価を上げるべきですわね、私が拾わなくともアーニャ様は貴方を見出し今と同じ地位に立っていた筈ですわ。」

 

「そんなことは……。」

 

「さて、今はそれよりも本題を進めましょう。……この件を野放しには出来ませんからね。」

 

「……確かに。」

 

 二人は持っていた端末を開くと一つは先程のMSのデータを移し、もう一つの方でアマテラス級旗艦アマテラスに搭載されているAI『メルクリウス』に遠隔でアクセスする。

 

「さて……どうなる……。」

 

 アルベルトは息を呑む、今から起こることはEC社の、そしてアンナ・フォン・エルデヴァッサーの進退に関わるかもしれない大きな案件となるのだ。

 

 

【ガンダム ニグレド】

 かつてペズンでアーウィン・レーゲンドルフによって起こされた事件により一時奪われたMS、そしてその際彼によってハッキングされ流出した基礎設計図と、奪われた基礎フレームのみ完成した機体本体。

 それは後に非公式ながらアナハイムで装甲を変え、そして一年前のデラーズの叛乱で最終的にレイ・レーゲンドルフから返却されリング・ア・ベル隊で再び運用されることとなった機体だ。

 

 今問題となっているのはそのペズンで事件が起きた際に流出した基礎設計図、恐らくアーウィン・レーゲンドルフか彼を手駒にしていた連邦軍高官が所持していたもの、それが関わっている。

 

 

 

 アレクサンドラ・リヴィンスカヤは自身の持つ情報網でとある話を聞いた。

 それは『EC社製のMSの設計図が、とあるテロ組織に使用された可能性がある』との報告だ。

 そして今回その疑惑のMSの外観、そして戦闘記録の映像を手に入れた。それをメリクリウスに読み込ませ判別を行うことにしたのだ。

 この数年、連邦軍内部のゴタゴタは増している。ジオン残党やアクシズと手を組む者や愚連隊となり略奪を働く者達、組織的なのか個人的な動きなのかの違いはあれど想像以上に治安維持の状況は悪化している。

 そしてその離反者から軍の機密が漏洩していく、雑兵ならまだ良いが下士官や士官、技術士官など一個人というレベルでは済まない人材が離反すれば大きな損失を生むリスクがある。

 

 デラーズ紛争の折にアーウィン・レーゲンドルフはデラーズ・フリートに最終的に寝返る形となった、勿論それ以前にニグレドの設計図が奪われているのでジオンではなくアナハイムなどにも渡りそれが使用された可能性もある。

 だからこそ、この問題はEC社のスキャンダルに繋がる可能性がある案件だった。

 

 あの件は色々な思惑が絡んでいるせいで設計図が奪われた事で大きな責めを受けることはないだろうとはアレクサンドラは思っていた、迂闊に連邦がこの件で我が社を責めれば連邦軍がニグレドを無断使用した件やアーウィン・レーゲンドルフのことで反証される可能性もあるからだ、連邦とて迂闊に藪蛇を突きたくないだろう。

 だからと言って、そのまま無視することもアレクサンドラにはできなかった。何かあった際にはアーニャを守らなければならない。その使命があったからだ。

 

『データの照合が完了しました。』

 

「……!結果は……結果はどうなった!?」

 

 慌てるアルベルトにメルクリウスはありのままを伝える。

 

『まず第一に、あくまで私の出す結論は設計図から得られるデータによりMSがどのような動きをし、どの様に機動するかを既に蓄積されているデータから算出し導き出しているとの前提を忘れないでください。』

 

「構いませんことよメリクリウス、何も100%の判別をしろと言っているのでは無いのですから。」

 

 とは言ってもこれから導き出される結論は殆ど間違ってはいないだろう。

 MSは使用された機材、OS、モーションパターンなどで機体ごとに特有の細かな癖がある。

 それは余程のパイロットやメカニックで無ければ分からないレベルのものではあるが、構成されているパーツが異なる機体同士では同じ挙動や行動を取っても100%同じモーションにはならない、使用されているものが違うのだから当たり前だがそれにより内部構造が同じパーツを使用した機体であるならば完全に一致とはいかないが70〜80%は同じ挙動をするだろうとアレクサンドラは踏んでいた。

 だからこそ、この機体がニグレドの設計図を流用していたものであるなら一つ一つの動きにニグレドの癖が見受けられるはずだ。

 

『では結論を申し上げます、この機体の戦闘記録から得られたモーションパターンはEC社に記録されているガンダムニグレドのモーションパターンの76%が類似しています。戦闘記録から得られた外観からはジオンにも見受けられる機体に見えますが流体パルスシステムではなくフィールドモーターシステムの挙動音が確認される事からこの機体は連邦軍製、或いは連邦系の技術が使用されている可能性が大きく、それを踏まえてもガンダムニグレドの設計図が使用されている可能性が高いです。』

 

「……っ。」

 

 アレクサンドラもアルベルトも息を呑む、目の前に映っているガンダムは紛れもなく連邦軍に対する『敵』が使用しているMSだ。

 それがどうやってガンダムニグレドの設計図を入手し、そしてそれをどうやって完成させたのか、それを想像すると頭が痛くなる。

 

「ひとまずは各方面に根回しの準備を、この機体がニグレドの設計図を使用したと分かれば其処を狙う政敵は必ず出てくるでしょう。その際に味方となる者を増やさなければなりません。」

 

「アンナさんを支持、或いは中立の立場にいる軍関係者は僕が折衝するよアレクサンドラさん。貴方は財界関係の方を。」

 

「ごめんなさいアルベルト、迷惑をかけてしまいますわね。」

 

「頼ってくれて構わない、僕はそう思っていますよアレクサンドラさん。さあ、手は早く打ちましょう。」

 

 アルベルトは急いで各方面のアポイントメントを取り始める、最初にあった時に感じた弱弱しさなどない頼もしい殿方だ……そうアレクサンドラは感じながら同じように財界関係者にアポイントメントを取る。

 視線の先には先程見ていたガンダムの姿があった。

 

 

 

 彼女達はまだ知らない、そのガンダムこそ今ジェシー・アンダーセンやアンナ・フォン・エルデヴァッサーが戦っているガンダムレギオンだという事に。

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