機動戦士ガンダム 紺碧の空へ   作:黄昏仮面

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第13話 潜入

 

 イスカと名乗る少女を保護し、教団のアジトと思わしき場所を特定した翌日、未だ上層部からの連絡も無く俺達は依然待機中であった。

 

「ふぅ……。」

 

 軽くウォーミングアップし身体をほぐす、今の俺は機体も無いしやる事が殆どない。

 アーニャはアーニャで今もあの子と一緒に部屋にいるだろう、わざわざ押しかけてもいらぬ勘繰りをされてしまうだけだろうし、何処にスパイが潜んでいるか分からない状況で油断は見せない方が良いだろう。

 

 瞑想のようなポーズを取り呼吸を整えながら頭の中を整理する。

 仮想敵、と言うより現状かなりクロな存在であるニュータイプ教団。

 そしてその教団の拠点と思われる所で出会した謎のガンダム。

 先手先手を打たれ続けている俺達連邦軍特務部隊。

 

 ……敵と呼ぶべき存在はハッキリ言ってかなりの未知数な存在だ。

 なんてったって俺の知識は全く役に立たない、こんな教団の存在もガンダムも俺は見たことも聞いたこともないのだ。

 そして機体性能の差もあるが撃破寸前まで簡単に追い込まれた、アーニャの為に肉体的強化を施してかなりの戦闘機動に耐えられるようになった強化人間とも言える俺がだ。

 そんな存在達が連邦軍上層部すら碌に影も捕まえられない状態で放置されている……。

 

 ……とは言っても本当に上層部がこの組織と無関係であるかと言うのも疑問が残る。

 ジャン中尉が散々言っている内部のスパイ説、俺達の行動が向こうに読まれている以上はその可能性は否めない、勿論敵にかなりのニュータイプがいて未来予知までするようなのがいるとなれば話は別だが……流石にそんなレベルのニュータイプがいたらお手上げだ。

 とするとスパイによって俺達の情報が敵にバレていると想定した場合、誰が内通してるかって話にもなる。

 末端の人間じゃ得られる情報はたかが知れている、軍事行動ともなれば実際に作戦開始となるまで内容は分からない訳だから末端の人間がスパイという説は消える。

 そうなると少なくても下士官以上の存在が怪しくなる、俺達パイロットやミデアの機長、指揮管制機(ノーマッド)の誰かという線。それか俺達に指令を下しているジャブローの将校、そして俺とアーニャにこの作戦を遂行するように命令したジャミトフ・ハイマン……。

 

 ……無理だな。ファズ大尉も言っていたがスパイを正確に炙り出す方法でもない限りはこんな候補の多い中からスパイを探すなんて不可能、そもそも個人とも限らない訳なんだから。

 

 結局脳内会議は堂々巡りだ、何度やっても答えには辿りつかない。そもそも答えに至る材料が無いわけだからなぁ。

 

「はぁ……。」

 

 溜め息を吐くとジャン中尉がクスクスと笑う。

 

「忙しい奴だなオマエ、さっきから顔が落ち着いてねぇぞ。」

 

「そりゃ、全く進展がないし自分で考えようとしても上手く纏まらないもので。」

 

「俺はもう考えるのはやめてるぜ。こういう時は考えずだ。」

 

 ねえ頭で考えてもしょうがねえからな。そう小声で呟くジャン中尉。

 

「けど中尉って不真面目そうにしてて実はかなり博識じゃないですか?ここ数日の感触ですけど。」

 

「なんだぁ?お前俺のことそんなジロジロ観察してたのか、野郎のケツ見るより女のケツを追え女のケツを。」

 

「そういう所ですよ、冗談言ってるようで実際は俺が何を見てたか結構考察してますよね?」

 

 頭の回転が早そうなタイプだ。そんな人が敢えて不良軍人を装っている感じがして他人を演じてる俺と同じように違和感を覚える。

 

「……仮にお前が言うように俺が博識だとしてもだ、今はマジで考える時じゃねえよ。」

 

「……情報が少なすぎる。」

 

「そういうこった。カードの枚数も役も全く足りねえのにポーカーをやるヤツはいねえ、作戦中止にならねえなら考えるのはまだまだ先だ、こっちの手札が揃うまではな。」

 

 基地襲撃に失敗した時も、キャンプと同時に奇襲された時もスパイの可能性に彼は怒っていたが、それも作戦中止を狙っていたからか?

 命の危険が内に存在しているからこそ危機を抱いたのであればあの時の彼の怒りも察せられる。

 

「ジャン中尉はこの任務、実際どう感じていますか?」

 

「前にも言ったがキナ臭ぇ。特務だって言うのに昨日のガキが見つかるまで行き当たりばったりで碌な情報が手に入らなかったのもお前らのキャンプと俺らが同時に襲われたのも、その前に遭遇したガンダムも、何もかもな。終わったらバカンスだと思ってたのによ、これじゃあいつ死ぬか分かったもんじゃねえ。」

 

 俺の堂々巡りと似たように思ってるようだ、確かにこんな何人もの思惑が蠢いて謀略を張り巡らしてるような現状は直接関わってる何も知らない人間には胡散臭さしかないもんな……。

 

「中尉はそもそもなんでこの特務を受けたんです?」

 

「あ?それを聞いてどうすんだよ、軍人は命令されたら従うしかねえのと報酬に釣られてに決まってんだろ。オメェも似たよなもんだろ。」

 

「まぁ……報酬以外は確かにそうですけど……。」

 

 あんまり変な質問して機嫌を損なわれても厄介だし話を打ち切ろうと思った矢先、今度はジャン中尉に質問される。

 

「へへっ、質問攻めのエイジス中尉を参考に俺もちょっとオメェを引っ掛けてやる。いい時間潰しになるし良いよな?お前が言うちょっとは頭が良さそうなとこを見せてやる。」

 

 う……、何か嫌な予感がするが先程まで俺がやってたことだ、断れないなこれは……。

 

「え、ええ。お手柔らかに……。」

 

「よっしゃ。まずお前のことだエイジス・ガルド中尉。事前に渡されてた作戦計画書に書かれてあったお前の経歴だ、星一号作戦前に士官学校を卒業してそのまま宇宙に送られてア・バオア・クー攻略戦に参加、当時の乗機はジム。その後はずっとルナツー勤務だったな。」

 

「ええ。」

 

 ジャン中尉は確か戦車乗りでソロモン前に宇宙に上がりMSパイロットをやって、一年戦争後はずっと地上軍勤務だった……よな?面識はないからそこで何か言われる事はないだろうけど。

 

「それ、嘘だろ。」

 

「え?何でですか?」

 

 引っ掛けられてる可能性もある、俺は顔や行動に反応が出やすいとかよく言われてるので冷静に返す。

 

「ここ数日の感触だけどな、俺も一応少しは宇宙戦の経験がある。んで宇宙戦ばっかやってる奴ってのはどれだけシミュレーションで地上戦を経験しても得られねえもんがある、何か分かるか?」

 

 ここまで聞いて「あー……」となった。真面目に戦闘をこなしていたらやはりそういう所を見る人はいるよな……。

 俺は恐らくジャン中尉が思っている答えを返した。

 

「地表の状態に合わせてマニュアルで機体の歩行システムを変えること……。」

 

「そういうこった。シミュレーションのは都合良く最初から最後まで歩行システムの調整はオートでしてくれる。だがリアルじゃそうはいかねぇ。雨が降ったり川が近かったり湿地帯だったりで足の取られ易さは変わってくる。宇宙戦しかやってこなかった連中じゃ理屈とやり方はわかってても実戦でそれを上手く切り替えられはしねぇ。まぁオートでも無難にやれるからそこまで致命的になる訳じゃねえから良いんだがな。だがオメェは宇宙勤務って言うわりに地上戦を熟知している、だからあのキャンプでオンボロを乗りこなしてジムやメガセリオンを撃破できた、違うか?」

 

「……。」

 

 仮に彼がスパイなら俺はここまで手の内を見せていたと言うことになる。

 だがあの時は民間人を守る為全力を出す必要があった、仕方のない事ではある……。

 

「沈黙こそが雄弁って言う。オメェは諜報向きじゃねえってこった。だからこそ今は逆に信用できるけどな。」

 

「スパイをやれるほどの技量が無いって事ですか?」

 

「ちげーよ、何か別の目的でこの特務に参加したんだよって事だ。そもそもオメェがスパイなら難民キャンプの人間は全員死んでた。この線からハンナ少尉もシロに近い。まぁそれも計画の内って言われたらお手上げだけどよ。」

 

 この人もこの人で別の目的があるのかもしれない。それくらい洞察力の高さが窺える。

 そして彼がスパイならここまで聡明な所を敢えて見せる真似はしないだろう。そういう部分でも彼が俺を少しながらは信用してくれてるんだろうと少しながらの信頼が生まれる。

 

「今は上の指示を待つ、考えるのはそっからにしようぜ、休むのも兵士の仕事だ。」

 

「了解です!」

 

 実際の階級は下ながらも俺は上官に対する態度で敬礼する。

 もしかしたらジャン中尉の実際の階級も上かもしれないし何より人間的な部分が師に値するしなぁ。

 

「俺はもっかい寝るわ、また奇襲でもされたら堪らねえしな。」

 

「なら邪魔にならない様に俺は外に出ておきますね、何か命令がくるかもしれないし。」

 

「おう、後なエイジス。」

 

「はい?」

 

「地上戦のくだりだが、ああいう時は自信満々に『俺は特務に選ばれるくらいのエリートだからそれくらいやれて当然』くらいの返事は思いつくようにしとけ、あの嬢ちゃんならそう返してくると思うぜ。」

 

「……以後気をつけます。」

 

 敵わないな、そう感じながら一旦部屋を出た。

 

 しかしながらここまで指摘されるくらいのボロをそれなりに出してるのはちょっと悔しいな、今度から気を引き締めなきゃな……!

 

 そう思ってると小腹が空いてきた、現実は非情である。

 そろそろ昼も近いし早めにメシでも済ませておくか。

 

 ミデアの機内にある詰所に行くとアーニャとイスカが既に食事をしていた。

 

「こんにちは。えっと……お兄さん。」

 

「あぁ、こんにちは。」

 

「レーションを食べてたのか。」

 

「えぇ、機内に現在生鮮食品はありませんから。本当は何か作ってあげたかったのですが。」

 

 アーニャがそう言う。まぁ軍用機内でしっかりした食事って長距離移動があるような時間と人間に余裕がある時くらいだし仕方ないか。

 

「美味しかったかい?」

 

「うん。軍人さんが食べる物ってもっと簡素で栄養素の高いものだって前に本で読んだけどこれは美味しかったよ。」

 

 どうやらイスカからは好評だったようだ、ふふん……実はこれには理由がある。

 

「そうだろうな、これは『アンダーセン式糧食』と言ってだな、かつてレーションで地獄を見た軍人が作ったレーションなんだ。」

 

「アンダーセン式糧食?」

 

「あぁ、その男は一年戦争の時に多くのレーションを食べる事になってな……、当時のレーションは今キミが言ったように栄養重視で味は簡素も簡素、人の生活になくてはならない食事の楽しみが全く感じられない物が多かった。」

 

 普通の食事もできる環境でもストレステストという名目で延々と食べさせられたあの過酷な日々を思い出す……うるっと涙が出たのは秘密だ。

 

「その時彼は思ったらしい、レーションが不味いなら美味いレーションを作れば良いじゃないか!とね……。」

 

「へぇ……。」

 

 無駄にテンションの高い俺に少し引いているイスカ、そして冷ややかなを向けるアーニャ……。

 

「……あー、そして彼は戦争後にとある令嬢と結婚した。その女性はとてつもない実業家で幾つもの会社の複合体ともいう企業のトップだ。彼はそこで頼み込んだ訳だ。」

 

「美味しいレーションを作るのを?」

 

「うむ。周りからはどうせ大した出来にはならないと思われていたらしいが、彼の軍用食にかける思いは並大抵では無く、幾つかのバリエーションのレーションを立案しサンプルで幾つかの部隊に送ると、何ということでしょう……大反響も大反響になったのです。」

 

「エイジス中尉、そのナレーションじみた物言いは少し気持ち悪いのでやめてください。」

 

「あ、ハイ……。」

 

 少しノリにノってしまったか、結構ドン引きしてるアーニャに釘を刺される。

 でもアーニャだってあの時は褒めてくれたじゃないか……と少し拗ねながらも話を続ける。

 

「まぁ結果的に言うと一年戦争時代レーション地獄に陥っていた彼の作ったレーションは、同じ様に今まで簡素なレーションに飽きていた軍人に高評価となって今では宇宙、地上問わず多くの部隊で供給されるようになったという訳だ。彼はそれだけで軍人1人が食っていくには苦労しないくらいの利益を得たと言うわけさ。」

 

 EC社の食品関係の子会社で一応俺が社長でもあるのがそのレーションを開発している会社というのはあまり知られていない。まぁ知ってても特に意味もないもんな……。

 

「へぇ……そのアンダーセンって人は今でも軍人をしてるの?」

 

「ん?あぁ、宇宙で少佐をやってるらしい。」

 

 目の前にいる男がそうなんだよ、とは言えない。

 

「ふーん……お金持ちになったのにまだ軍人するなんて変な人だね。平和に暮らせば良いのに。」

 

「……彼もそう思ってるだろうけど、今の世の中じゃそれも難しいんじゃないかな。軍人をやめて企業人として暮らしてもいつ平穏が崩れるかなんか分からないしね。」

 

「……よくわからないや。」

 

 彼女的には平和に暮らせる環境があるならそうしたいのだろう。気持ちは分かる。

 だがこの世界をより良い未来に変えるために俺はまだ軍人をやめる訳には行かないのだ。

 

 そう思っているとファズ大尉が詰所に入ってきた。

 

「ここにいたかエイジス、ハンナ少尉。……ジャン中尉は?」

 

「部屋で休んでますよ。どうかしましたか大尉?」

 

「あぁ、ノーマッドから次の作戦についての話が決まった。……彼女も関わってくる。」

 

 大尉はイスカの方に目を向けた。

 

「まさか……。情報協力者とは言え彼女は一般人ですよ!?」

 

「分かっている、だが上の考えだ。」

 

 上の考えとはいえ……少し憤慨しながらも先ずは内容をちゃんと確認しないと今ファズ大尉に怒っても仕方ない、まずジャン中尉を起こさなければ……。

 

 

 そしてジャン中尉を起こして作戦室に集まると大型のモニターにノーマッドの指揮官が映る。

 

『ファズ隊、全員集まったようだな。これより作戦内容を通達する。』

 

「……。」

 

 どんな内容なのか、場合によっては身元を明かしてでも止めなければならない。

 

『まず、敵教団のアジトを突き止めた事である程度の主目的は達せられた。そして先日の難民キャンプ襲撃の救援報告で我々の存在が正規軍にも露見したらしく上層部は話し合いの末、中東方面の正規軍と合流し作戦遂行せよと命令が下った。』

 

「正規軍に……か。」

 

 ジャミトフとしては隠密で事を進めたかっただろうがこの前の戦いで派手に知られたみたいだな。

 こうなると連邦特有の派閥争いみたいなのが絡んでくるんだろう、仕方なくジャミトフが折れたか、或いは正規軍とやった方が現状得と判断したか。

 

『これに伴い我々は指揮権を中東方面軍に譲る、今後は上空から君達の支援に徹する。』

 

 中東方面軍か……確か……。

 

『失礼、以後は私が君達に任務を下す。私はジョン・コーウェン中将だ。』

 

 コーウェン中将、デラーズ紛争時は宇宙軌道艦隊所属であったがガンダム2号機強奪とかのヘマで降格こそ無かったがこっちに異動になってたみたいだ。

 原作みたいにフェードアウトしてないのは何よりだ、彼は有能な将校だからな。

 ファズ隊全員が敬礼をする、あのジャン中尉ですらビシッと敬礼していた。それにコーウェン中将も返礼すると、おや?とした顔をした。

 

『ふむ?君はジャン中尉か?』

 

「ハッ!お久しぶりであります閣下。」

 

 そこには不良軍人らしさなどカケラも見せない彼の姿があった、もしかしたらこっちが素なのかもしれない。

 

『積もる話もあるが今はこの先の事を考えよう。君達特務部隊が探っていたニュータイプ教団だが、我々も彼らには手痛い目に遭っていたのでな。先日の難民キャンプに対しての愚連隊の襲撃、そしてそれを防ぎ救援を送った君達から上層部が内密に調査していた事を知り、内部情報を集めていた君達と協力を申し出たく貴官らの上司にあたるジャミトフ中将に話を付けさせてもらい君達を中東方面軍に一時組み込む事にしてもらったのだ。』

 

 ふむ……、それ自体は問題ないが肝心なのはこの先の事だ。一体コーウェン中将はどんなプランを立てているのやら……。

 

『それと、君達には良い報告と残念な報告もある。君達が先日救い救援要請を送った難民キャンプだが、数人を残し殆どが教団の人間により連れて行かれたようなのだ。』

 

「なんですって……!?」

 

 これには俺達全員が驚く、場の雰囲気が一触即発だった事もありすぐ去ってしまったがまさかあの後そんなことになっていたとは……。

 

『参謀本部はあの襲撃自体が信者を増やすための教団の策だった可能性も示唆していた。愚連隊を煽りキャンプを襲わせ物資を奪わせるも良し、正規軍が動き難民を助けた所でそもそもが連邦軍の内部分裂が元になっての事だ、連邦への憎しみを増やした彼らを信徒に出来れば尚のこと良し、と言う下衆が思いつくような行動をしたのだろう。』

 

 それが本当なら最低な連中だ。人の心に余裕を無くし狂信へと導く……そんな事は許されるわけがない。

 

『だが良い報告もある。教団が彼らを根城へ導くにはどうしても隠密には動けない、人数が人数だからな。現在ノーマッドが高高度からの偵察中だ。恐らくは君たちが情報提供者から入手した教団の本部と思われる湖へと向かっている。つまり本命の居場所は間違いないということだ。』

 

「それで、我々はどの様な任務を遂行すればよろしいのですか閣下。」

 

 ファズ大尉がコーウェン中将に問う。

 

『恐らく敵は潜水艦を利用して内部に侵入するだろう。それに乗じて君達も教団内部へと潜入して欲しい。侵入には水陸用のMSであるアッガイを用意してある。闇夜に乗じて湖の中に隠れ、潜水艦が彼らを回収した時にそれを追跡し入り口を見つけ次第潜水用の装備に着替え敵に気付かれない様に潜入したまえ。』

 

 ふむ……一応は理にかなっているけど問題は……。

 

「閣下、教団へは水路以外にも直通のエレベーターがあるとの情報もあります。それを利用された場合は如何なさいましょう?」

 

『キャンプから連れてきている人間は多い、余程の重要人物でもない限りは潜水艦を使わざるを得ないだろうエイジス中尉、そこは心配する必要はない。』

 

「ハッ、了解です。」

 

『そして教団本部に着き次第、イスカと呼ばれる情報提供者の協力を得て内部の情報を集められるだけ集めよ。その後の作戦は無線にて伝える。』

 

「しかし閣下、彼女は民間人であります。このような危険な任務にはとても同行させられません、せめて無線からの情報提供の方がよろしいかと。」

 

 ファズ大尉がそう進言するがコーウェン中将は首を振る。

 

『ならん、不正確になり得る可能性は摘んでおきたいのだ。曖昧な記憶からくるものより実際に見た方が彼女も判断しやすいだろう。』

 

「しかし……!」

 

「大丈夫だよおじちゃん。私……やるから。」

 

 イスカはそう大尉に言うが……幾ら彼女がそれを望んでも生きて帰れないリスクだってあるんだぞ……?コーウェン中将は一体どうしてこんな考えを……。

 

『細かな詳細はまた追って伝える、君達はアッガイを受領次第夜間に湖へと侵入してもらう。それまで待機せよ。』

 

「了解です。」

 

 通信が切れる。

 教団へ忍び込む目処は立ったがやり方が気に入らない、そもそもジャミトフも極秘に俺やアーニャに指揮権が変わる事の連絡くらいはしてくれても良さそうだが……まぁ疑っていても仕方ないか。

 

「不本意だがイスカ少女を連れて行く。本当に大丈夫なのか?」

 

「うん……、あそこには監視カメラとかがあるからバレないように行くなら私がいた方が良いよ。私も逃げるのに色々調べてたのが役に立つと思う。」

 

「……俺は納得出来ませんよ大尉……この子は民間人だ。」

 

「分かっている……分かってはいるが上はそう思っていないようだ。俺達は従うしかない。」

 

 ……軍人である以上は上の指示には従わなければならない……か。

 これじゃあ離反する人間が出てくるのも仕方ないじゃないかと嘆きたくもなる、この子に頼らなければままならないなんて状態も含めて。

 こうなった以上は教団の情報も集めながらも彼女を絶対に護り切らなければならない、そう思いながらこの先の任務に不安を感じるのであった。

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